認知症対策のひとつとして、法定後見制度より自由度の高い任意後見制度の利用を検討している人も多いかと思います。

しかし、任意後見制度にはメリットだけではなく、デメリットもいくつか存在します。

この記事では、任意後見制度のデメリットや、デメリットに対しての対策、手続きの流れや費用相場なども含めてわかりやすく解説します。

要約

  • 任意後見制度は、認知症などで判断能力が低下する前に任意の後見人と契約しておく制度
  • 任意後見制度には3つの利用形態があり、本人の健康状態や判断能力、生活状況などによって本人が自由に選ぶ事ができる
  • 任意後見制度には任意後見監督人から監督を受けるなど7つのデメリットがある
  • デメリットへの対策として、財産管理委任契約、見守り契約、死後事務委任契約、家族信託などの併用も検討すると良い

成年後見制度でお悩みの方へ

専門家のイメージ

成年後見制度では、財産の柔軟な管理ができない、家族が後見人になれない、専門家への報酬が高いなど、さまざまな課題があります。

認知症に完全になる前であれば、任意後見や家族信託など、他の制度を選択することもできます。費用や各制度のデメリットなど、専門家と相談し慎重に決めることをおすすめします。

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任意後見制度とは?

任意後見制度とは、将来認知症などで判断能力が低下する場合に備えて、あらかじめ契約を締結して自分の財産を管理してくれる「任意後見人 」を選任しておくという制度です。

選任された任意後見人は、家庭裁判所によって選任される「任意後見監督人 」の監督のもと、本人と締結された任意後見契約の内容に従って本人の財産の管理、身上監護を行います。

任意後見契約の流れ

任意後見制度と法定後見制度との違い

成年後見制度には「任意後見制度」と「法定後見制度」の2タイプがあります。

どちらも成年後見制度ですが、主に下記の点が異なります。

任意後見制度

  • 契約の締結時期:判断能力が低下する前の元気なうちに行う
  • 後見人の選任:本人が選ぶ
  • 後見開始の要件:判断能力が低下し、任意後見監督人が選任されたとき
  • 後見の内容:任意後見契約で定めておく
  • 監督する機関:家庭裁判所から選任された任意後見監督人
  • 取消権:なし

法定後見制度

  • 契約の締結時期:契約は不要だが家庭裁判所への申立が必要
  • 後見人の選任:家庭裁判所が選任する
  • 後見開始の要件:判断能力を欠く状態になり、後見人が選任されたとき
  • 後見の内容:家庭裁判所の審判によって決まる
  • 監督する機関:家庭裁判所
  • 取消権:あり
任意後見制度・法定後見制度の違い

任意後見制度には3つの種類がある

任意後見制度には3つの利用形態があります。

本人の健康状態や判断能力、生活状況などによって本人が自由に選ぶことができます。

任意後見制度の3つの利用形態

  1. 即効型の任意後見契約
  2. 移行型の任意後見契約
  3. 将来型の任意後見契約

1. 即効型の任意後見契約

任意後見契約の締結後直ちに家庭裁判所に任意後見監督人選任の申し立てをして開始する任意後見契約の形態です。

軽い認知症を発症している人などがまだ判断能力のあるうちに、自分が希望する人に決めたいという場合に使われることが多いです。

2. 移行型の任意後見契約

財産管理委任契約と任意後見契約を同時に締結し、徐々に支援を移行していく任意後見契約の形態です。

まだ判断能力があるうちは財産管理委任契約の内容に沿った財産管理をしてもらい、判断能力が低下してきたら任意後見契約に沿った管理をしてもらうことができます。

3. 将来型の任意後見契約

現時点の支援に関する委任契約などを締結せず、将来、本人の判断能力が低下した時点で開始する任意後見契約のみを契約しておく形態です。

まだ判断能力があるうちに任意後見契約を締結することができ、将来判断能力が低下しても慌てない様に時間をかけて準備をすることができます。

任意後見制度7つのデメリット

この章では、任意後見制度のデメリットを7つ紹介します。

実際に利用することを想定して確認してみましょう。

任意後見制度のデメリット

  1. 死後の事務処理は依頼出来ない
  2. 認知症になってからでは利用できない
  3. 任意後見監督人による監督を受ける必要がある
  4. 任意後見制度の利用について手間や費用がかかる
  5. 任意後見契約に記載のないことは出来ない
  6. 契約の効力発生には家庭裁判所への申立が必要
  7. 任意後見には「取消権」がない

以下で詳しく解説します。

1. 死後の事務処理は依頼できない

任意後見契約は本人が死亡することによって終了します。

そのため、任意後見人に葬儀の準備や財産の管理など死後事務や死後の支援を依頼することができません。

自分が亡くなった後の死後事務を誰かに依頼したい場合は、死後事務委任契約を別途締結する必要があります。

2. 認知症になってからでは利用できない

任意後見制度は、判断能力がないと契約をすることができません。

認知症が進行して判断能力を失ってしまうと、利用できる制度は法定後見制度のみとなります。

3. 任意後見監督人による監督を受ける必要がある

任意後見契約を開始すると、任意後見監督人の監督下で財産管理を行う必要があります。

任意後見監督人の役割は任意後見人が適切に財産管理を行っているかを確認することです。

家族が任意後見人になる場合の任意後見監督人は、第三者である専門家が就くケースが一般的です。

また、任意後見人は実施した職務内容を任意後見監督人に報告する義務があります。

4. 任意後見制度の利用について手間や費用がかかる

費用の相場は後ほど紹介しますが、任意後見制度を利用する際には、多くの手間や費用がかかります。

想定される手間と費用は以下の内容となります。

任意後見制度にかかる手間と費用

  • 任意後見契約書を作成する手間と費用
  • 公正証書を作成する手間と費用
  • 家庭裁判所へ申立をする手間と費用
  • 任意後見監督人へ支払う毎月の報酬(基本的に本人が亡くなる時まで発生)
  • 任意後見人への報酬(親族が任意後見人になる場合、無報酬で行うこともある)

※弁護士や司法書士などの専門家に依頼をする場合、費用が別途かかります。

5. 任意後見契約に記載のないことはできない

任意後見人は、任意後見契約の中にある「代理権目録」で定めた範囲でしか代理権限がないため、記載のないことはできません。

目録に記載されている事項に不備がないか慎重に確認をする必要があります。

6. 契約の効力発生には家庭裁判所への申立が必要

任意後見契約を締結していても、本人の判断能力が低下してきたら自動的に効力が発生する訳ではありません。

任意後見制度の契約を開始するには、家庭裁判所へ「任意後見監督人選任の申立」が必要です。

申立から選任されるまでの期間は2~3週間程度かかる場合もあります。

そのため、本人の判断能力低下による変化を日頃からよく観察しておきましょう。

7. 任意後見人には「取消権」がない

法定後見人は、日用品の購入やその他日常に関する行為以外について取消権がありますが、任意後見人には取消権がありません。

つまり、本人が独断で行った法律行為を取り消す事ができないということです。

例えば、高齢者が訪問販売員から必要のない高額商品を購入する契約をした場合、任意後見人はその契約を取り消すことができません。

任意後見契約の主なメリット

この章では、任意後見契約のメリットについて解説します。

任意後見契約のメリット

  1. 自分の意思で任意後見人を自由に選ぶことができる
  2. 本人が希望した財産管理を受けることができる

1. 自分の意思で任意後見人を自由に選ぶことができる

法定後見制度では、後見人を選ぶことはできず、家庭裁判所に選任された人が後見人になります。

これに対して任意後見制度では、まだ判断能力がある元気な状態で契約を締結するため、信頼できる家族や弁護士などの専門家など自由に任意後見人を選ぶことができます。

2. 本人が希望した財産管理を受けることができる

法定後見制度の場合、後見人が行えることは民法で決まっています。

これに対して任意後見制度では、任意後見契約の締結時に、財産管理や身上監護などの依頼内容を、本人の意思や希望に従って具体的に決めておくことができます。

任意後見人になれる人はどんな人?できることやできないこととは?

この章では、任意後見人になれる人、できること、できないことなどについて詳しく解説します。

任意後見人になれる人はどんな人?

任意後見人になれる人はどんな人なのでしょうか?

特に資格や経験を必要としないため、家族や親族でも、専門家などの第三者でも可能です。

任意後見監督人が選任された後は、任意後見人を解除する条件が厳格になってしまい、家庭裁判所の許可が必要となります。

財産や自身の身体にかかわることですので、信頼できる人を選びましょう。

ただし、未成年者、破産者、過去に家庭裁判所から解任された補助人、保佐人、法定代理人などは任意後見人になれませんので注意が必要です。

任意後見人ができること

任意後見人ができることは本人の 「身上監護 」と「財産管理 」です。

身上監護
本人の生活・健康・療養に関して支援をすること

例)生活費の送金、医療費の支払い、入院の手続き、介護サービスの契約手続き、要介護認定の申請手続き、介護施設への入所手続き、介護費用の支払い

財産管理
本人の財産を管理すること

例)自宅などの不動産の管理、預貯金や有価証券の管理、税金や公共料金の支払い、年金の管理、社会保障関係の手続き、本人が行うべき法律行為(遺産分割協議や賃貸借契約など)

任意後見人ができないこと

任意後見人ができることは、主に契約や支払い、手続きなどの後見事務です。

介護サービスなどを任意後見人が自ら提供をすることはできませんので注意しましょう。

例えば、食事介助、入浴の介助などは任意後見人ができないことに含まれます。

また、婚姻、離婚、遺言書の作成など、本人のみしかできない法律行為も行うことはできません。

任意後見制度の利用が向いている人

ここでは、任意後見制度はどの様な人が向いているのかを解説します。

家族や専門家など、特定の人を任意後見人にしたいという希望がある場合

法定後見制度では、家庭裁判所が法定後見人を選任するため、弁護士などの第三者がなることがほとんどです。

家族、いつも相談をしている弁護士、信頼をおいている友人など特定の人物に後見人を依頼したいという人に向いています。

障害を持っている未成年の子供がいる場合

子どもが障害を持っている場合、未成年の時は親が生活全般のサポートをしやすいですが、成年になってからの財産管理や生活のサポートはとても複雑になり大変です。

成年になり自分で財産管理ができないと判断されると、法定後見制度を利用することになります。

しかし、弁護士や司法書士などの専門家が後見人になると、親子の希望に沿った財産管理が難しく月々の報酬もかかるため、経済的な負担はとても大きいものとなってしまいます。

任意後見制度は、障害を持つ子どもが未成年のうちに契約を締結することができ、 「成人した後も引き続き親が財産管理やその他契約、生活サポートなどを行いたい」 という希望を持った人に向いています。

成年後見制度でお悩みの方へ

専門家のイメージ

成年後見制度では、財産の柔軟な管理ができない、家族が後見人になれない、専門家への報酬が高いなど、さまざまな課題があります。

認知症に完全になる前であれば、任意後見や家族信託など、他の制度を選択することもできます。費用や各制度のデメリットなど、専門家と相談し慎重に決めることをおすすめします。

家族信託の「おやとこ」
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任意後見制度のデメリットによって後悔しないための3つの対策

任意後見制度のデメリットに対して検討すべき3つの対策があります。

  1. 任意後見制度と他の制度をセットで契約することでデメリットを補完する
  2. 家族信託の利用を検討してみる
  3. 任意後見制度と家族信託の併用を検討してみる

以下で詳しく解説します。

1. 任意後見制度と他の制度をセットで契約することでデメリットを補完する

任意後見制度にはいくつかのデメリットがありますが、下記に挙げる契約をセットで締結しておくと、ある程度補完することができます。

a. 財産管理委任契約(任意代理契約)

財産管理委任契約とは、財産管理や身上監護に関する事務手続き などの任せたい事項を契約によって代理権を与える委任契約のことをいいます。

「任意代理契約」とも呼ばれ、委任者と受任者との当事者間の同意によって契約内容を自由に定めることが可能です。

判断能力が不十分になってからでないと効力が生じない「任意後見契約」とは異なり、まだ判断能力があるうちから委任を開始することができます。

財産管理委任契約の利用をおすすめするのは以下の場合です。

財産管理委任契約を利用すると良い場合

  • 今すぐ財産管理を誰かに任せたい
  • 判断能力が低下する前から手続きを任せておきたい

財産管理委任契約を利用する際の主な注意点としては以下の通りです。

財産管理委任契約を利用する際の注意点

  • 委任者が行った契約を受任者が取り消す事ができない
  • 受任者を監督する公的機関がない
  • 財産管理委任契約の対応が不可の金融機関もある

公正証書での契約や登記を必要としていない個人間の契約であるため、金融機関によっては財産管理委任契約の対応が不可のところもありますので、事前に対応可能かを確認しておく必要があります。

b. 見守り契約

見守り契約とは、任意契約締結後から判断能力が低下して効力が発生するまでの間、定期的な訪問や電話で本人とコミュニケーション をとりつつ、確認をしてくれる契約です。

見守り契約をしておくと、判断能力の状態変化に気づきやすくなります。

c. 死後事務委任契約

死後事務委任契約とは、委任者である本人が受任者に対して、亡くなった後の事務手続き に関する代理権を与えて死後の事務を委任する契約のことをいいます。

死後事務の主な内容は以下の通りとなります。

死後事務の主な内容

  • 葬儀や埋葬に関する対応
  • 行政への手続き
  • 病院・施設の退去手続き
  • 遺品整理に関する対応
  • 契約の解約や費用の精算等に関する事務
任意後見制度と併用できる契約

2. 家族信託の利用を検討してみる

家族信託について任意後見制度と比較をしながら解説します。

家族信託とは

家族信託とは、本人の判断能力が低下する前に信託契約を結び、信頼のおける人物家族に特定の財産管理を任せる仕組み のことをいいます。

家族信託の仕組み

任意後見制度と似ていますが、目的が大きく異なります。

  • 任意後見制度
    判断能力が低下した時の身上監護と財産管理が目的

  • 家族信託
    判断能力の低下に関係なく信託した財産の管理が目的

家族信託のメリット・デメリットに関してはこちらの記事で詳しく解説しています。

家族信託は「認知症による資産凍結」を防ぐ法的制度です。認知症が進行し意思能力を喪失したと判断されてしまうと、銀行預金を引き下ろせない、定期預金を解約できない(口座凍結)、自宅を売却できないなどのいわゆる「資産凍結」状態に陥ってしまいます。そのような事態を防ぐために、近年「家族信託」が注目されてきています。この記事では家族信託の仕組みやメリット、デメリットをわかりやすく解説します。
家族信託とは?わかりやすくメリット・デメリットを徹底解説します

任意後見制度と比較した家族信託のメリット・デメリット

ここでは、家族信託のメリット・デメリットを任意後見制度と比較をします。

1. 家族信託のメリットと任意後見制度を比較

家族信託には以下のメリットがあります。

家族信託のメリット

  • 月々のラニングコストがかからない
  • 判断能力が低下する前から信託を開始できる
  • 監督人がいない

これに対し任意後見制度は、

  • 任意後見監督人に毎月報酬を支払う必要がある
  • 判断能力が低下してから任意後見監督人選任の申立を行う
  • 任意後見監督人による監督を受ける

という違いがあります。

2. 家族信託のデメリットと任意後見制度を比較

家族信託には以下のデメリットがあります。

家族信託のデメリット

  • 身上監護の権限がない
  • 管理可能な財産の範囲が信託財産のみと限られている

これに対し任意後見制度は、

  • 身上監護の権限がある
  • 財産管理の範囲が広い

という違いがあります。

それぞれにメリットばかりでなくデメリットもあるため、どちらの制度が自分の状況に合っているのかを弁護士や司法書士などの専門家に相談してみましょう。

3. 任意後見制度と家族信託の併用を検討してみる

任意後見制度と家族信託を併用するという方法もあります。

家族信託は積極的な財産管理に優れていますが、管理できるのは信託した財産のみです。

信託財産以外の財産や、身上監護(入院の手続きや介護施設との契約などの契約行為や介護サービスの契約手続きなど)を行うことはできません。

これに対し任意後見制度は財産管理や身上監護はできますが、家庭裁判所に都度行う手続きに多くの時間や手間がかかるという難点があります。

そこで、任意後見制度と家族信託を併用することにより、両者のメリットを活かして柔軟に対応することが可能となります。

任意後見制度と家族信託の違い

任意後見制度・法定後見制度・家族信託を選ぶ際のわかりやすい判断基準とは?

ここでは、任意後見制度、法定後見制度、家族信託を選ぶ際のわかりやすい判断基準をまとめました。

それぞれの事情や状況によっても異なるため目安にすぎませんが、判断基準の一例として下さい。

「任意後見制度」を選ぶとよい場合

  • 本人の判断能力がある
  • 身上監護を必要としている
  • 特定の人に後見人になってもらいたい

以上に該当する場合は、「任意後見制度」をおすすめします。

「家族信託」を選ぶとよい場合

  • 本人の判断能力がある
  • 財産の積極的な活用を考えている
  • 第三者や家庭裁判所に関与されたくない
  • 月々のランニングコストをあまりかけたくない

以上に該当する場合は、「家族信託」をおすすめします。

「法定後見制度」を選ぶことになる場合

  • 既に判断能力を失っている
  • 身上監護を必要としている

どちらにも該当する場合は、「法定後見制度」の一択です。

任意後見制度と家族信託に関してはこちらの記事で詳しく解説しています。

もし認知症などで意思能力が低下したと判断されると、預貯金の引き出しが停止されたり、不動産の管理・売却などの法律行為を断られてしまいます。誰にでも起こりうる可能性があることから、昨今「家族信託」「成年後見制度(法定後見制度・任意後見制度)」などの制度が注目されています。この記事では、それぞれの制度について確認・比較していきます。
任意後見制度とは?家族信託と任意後見制度はどちらを選ぶべき?

任意後見制度を利用するための手続の流れ

ここでは、任意後見制度を利用するための手続きの流れを解説します。

手続きの基本的な流れは以下の通りです。

任意後見制度の基本的な流れ

  1. 任意後見人を選ぶ
  2. 契約内容を決める
  3. 公証役場で任意後見契約を締結する
  4. 公証人から法務局へ登記の依頼が行われる
  5. 家庭裁判所へ「任意後見監督人選任の申立」を行う
  6. 任意後見監督人が選任され、任意後見人としての職務開始

1. 任意後見人を選ぶ

大切な財産や身上監護を任せる役目であるため、信頼できる人を選ぶ必要があります。

家族や親族、友人の中で任せられそうな人がいない場合、弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門家を選ぶこともできます。

2. 契約内容を決める

財産の管理方法への希望や医療に関する希望など、しっかりと話し合って内容を決め、明文化しておくことが大切です。

任意後見人が行う業務に関する代理権の範囲なども詳細に記載しておくことで、後のトラブルをある程度避けることが可能です。

3. 公証役場で任意後見契約を締結する

任意後見契約は公正証書によって締結されなければいけないと法で定められています。

公証人は契約書の形式に関する不備などはアドバイスをしてくれますが、任意後見契約の内容に関してはアドバイスしてくれません。

弁護士などへ相談をしましょう。

4. 公証人から法務局へ登記の依頼が行われる

任意後見契約書を公正証書で作成して契約が成立すると、公証人は法務局に対して任意後見登記の申請を行います。

一般的には2~3週間程度で登記が完了し、「登記事項証明書」が発行されます。

この登記事項証明書は、公的機関や金融機関でも必要になる大切な書類ですので、任意後見登記が正しくされているのかを必ず確認しましょう。

5. 家庭裁判所へ「任意後見監督人選任の申立」を行う

本人の判断能力が低下してきたと感じ、任意後見契約の効力を発生させたい場合、家庭裁判所へ任意後見監督人選任の申立を行います。

家庭裁判所では申立を受けると、申立人、任意後見受任者に面接を行います。

その後、本人の意思確認や心身の状態を確かめる調査を行いますが、必要に応じて、精神鑑定を行われることもあります。鑑定費用は5~10万円程度が一般的です。

6. 任意後見監督人が選任され、任意後見人としての職務開始

家庭裁判所において、任意後見監督人の選任が必要と判断されると審判書が郵送され、任意後見人の仕事が開始されます。

任意後見制度を利用するためにかかる費用の相場

この章では、任意後見制度を利用するためにかかる費用や相場金額などについて詳しく解説します。

公正証書作成費用

公正証書での契約書作成にかかる費用は以下の通りです。

公正証書での契約書作成にかかる費用

  • 作成の基本手数料:11,000円
  • 登記嘱託手数料:1,400円
  • 法務局に納付する印紙代:2,600円
  • その他(本人に交付する正本等の証書代、登記嘱託書郵送用の切手代など)
  • 弁護士や司法書士など専門家へ報酬:10万円前後

自分で手続きをした場合、合計で2万円程度の費用がかかりますが、弁護士・司法書士などに依頼をした場合、別途10万円前後かかります。

任意後見監督人選任のための申立にかかる費用

家庭裁判所への申立には以下の費用がかかります。

任意後見監督人選任のための申立にかかる費用

  • 申立手数料:800円分の収入印紙
  • 登記手数料:1,400円分の収入印紙
  • 連絡用の郵便切手代
  • 弁護士や司法書士など専門家へ報酬:10~15万円前後

自分で手続きをした場合、合計で1万円程度の費用がかかりますが、弁護士・司法書士などに依頼をした場合、別途10~15万円前後かかります。

裁判所が精神鑑定を必要とした場合は、別途鑑定費用(5~10万円程度)が必要となります。

参考: 厚生労働省「成年後見はやわかり・任意後見制度とは(手続の流れ、費用)」

任意後見人への報酬

親族と任意後見契約を結ぶ際には、報酬は任意ですので、有償か無償かを決める必要があります。

これに対して、弁護士などの専門家に依頼をする場合、報酬の支払いが毎月発生します。

任意後見人への報酬

親族が任意後見になる場合:無償~3万円程度
専門家が任意後見人になる場合:(月額)3~5万円程度

以上が一般的な報酬金額ですが、専門家によっては報酬が高額になるケースもありますので、事前に確認をしておきましょう。

任意後見監督人への報酬

任意後見監督人への報酬額は家庭裁判所で決定されます。

下記のように、管理財産額に応じた報酬額となります。

任意後見監督人への報酬

5,000万円以下:(月額)1~2万円
5,000万円超:(月額)2万5千円~3万円

参考: 東京家庭裁判所「成年後見人等の報酬額のめやす」

任意後見制度を利用する際に注意すべきポイント

任意後見制度を利用する際に注意すべき主なポイントは3つあります。

任意後見制度を利用する際に注意すべきポイント

  • 効力発生前は任意後見人契約を解除することができる
  • 任意後見開始後は自由に制度を終了することができない

以下で詳しく解説します。

効力発生前は任意後見人契約を解除することができる

本人の判断能力がまだ十分にあり、任意後見監督人が選任するまでの間(効力発生前)であれば、いつでも公証人の認証を受けた書面によって契約を解除することができるとしています。

「選任後」の場合には、正当な事由があると家庭裁判所が許可した場合のみ解除が可能となっているので注意が必要です。

任意後見開始後は自由に制度を終了することができない

任意後見を開始したあとは、後見人は途中で簡単に終了ことができません。

終了するためには、家庭裁判所が正当な事由があると認めた場合のみとなっています。

任意後見人を解任することができる事由としては、以下のものがが挙げられます。

任意後見人を解任することができる事由

  • 被後見人の財産を私的流用などの「不正な行為」
  • 後見人として品行がとても悪い、品位に欠けるなどの「著しい不行跡」
  • 業務の怠慢、家庭裁判所の命令違反などの「後見の任務に適しない事由」

任意後見制度や家族信託に詳しい専門家へ相談を

この記事では、任意後見制度のデメリットや、デメリットに対する対策、手続きの流れや費用、家族信託との違いなどについて詳しく解説しました。

どの制度を選んだら良いかなどの相談は、任意後見制度や家族信託の契約実績が豊富な専門家に詳しく聞いてもらい、適切なアドバイスを受ける必要があります。

認知症の症状がない今のうちに、任意後見制度や家族信託に詳しい弁護士や司法書士へ相談をしてみることをおすすめします。

成年後見制度でお悩みの方へ

専門家のイメージ

成年後見制度では、財産の柔軟な管理ができない、家族が後見人になれない、専門家への報酬が高いなど、さまざまな課題があります。

認知症に完全になる前であれば、任意後見や家族信託など、他の制度を選択することもできます。費用や各制度のデメリットなど、専門家と相談し慎重に決めることをおすすめします。

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