病気やケガなどのリスクは年齢を重ねるごとに高まり、時には入院を要する場合もあります。

1ヵ月ごとに入院費を請求する病院も多く、入院が長期化すると本人に代わって家族に請求されるケースも少なくありません。

しかし、診療内容によっては入院費が高額になることもあり「親の預金から入院費を捻出したいけれど、代理でおろせるの?」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。

本記事では本人以外が代理で預金をおろす方法や注意点、入院費の負担を軽減する方法などについて解説します。

親の入院費の支払いに不安のある方は、ぜひ最後までご覧ください。

要約

  • 本人の同意があれば預金は代理でおろせる
  • 本人の意識がなく同意が得られない場合は金融機関に相談する
  • 代理で出金する場合は窃盗・横領・使い込みを疑われないように注意する
  • 入院費の負担を減らすための制度を活用して、お金の不安を解消する
  • 入院時は同意があれば代理で出金できるが、認知症を発症したら口座凍結される
  • 資産凍結を防ぐ認知症対策は「家族信託」がおすすめ

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入院中の親の預金を代理でおろすとどうなる?

入院している本人に代わって入院費を請求されたため、親の口座から代理で預金を引き出したいものの「本人以外が引き出すのは違法になるのではないか」と不安を感じている方は多いでしょう。

本章では入院中の親の預金を代理でおろすとどうなるのか解説します。

代理で預金をおろしても本人の同意があれば違法にはならない

結論から申し上げると、本人が同意していれば本人以外が預金の引き出しを行っても違法ではありません。

本人から同意を得たうえであれば、家族などの代理人によって出金が可能です。

同意を得た証明としては委任状が一般的ですが、金融機関によっては本人に意思確認の電話をすることもあります。

参考: よくあるご質問(Q&A)|三井住友信託銀行

事後報告はトラブルになる可能性があるので、必ず預金をおろす前に本人の同意を得ましょう。

本人の同意なく代理で預金をおろすと罪に問われる可能性がある

本人の同意なく預金の引き出しを行うと、例え家族であっても窃盗や横領の罪に問われる可能性があります。

窃盗や横領によって科される刑事罰は以下のとおりです。

  • 窃盗:10年以下の懲役又は50万円以下の罰金(刑法第235条)
  • 横領:5年以下の懲役(刑法第252条)

ただし、親族間の問題であれば刑事罰は免除されます(刑法第244条)。

とはいえ、上記はあくまで刑事罰の話です。

本人の同意を得ずに預金を引き出すと、親族から損害賠償をはじめとする民事上の責任を追及される可能性があります。

預金の引き出しを代行する際は必ず本人の同意を得ましょう。

入院中の親の預金をおろす5つの方法

入院中の親の預金をおろす方法は以下の5つです。

  1. ATMでおろす
  2. 委任状を持参して窓口でおろす
  3. 代理人指名手続きまたは代理人カードを作成する
  4. 家族信託を組成する
  5. 意識不明などにより同意を得られない場合は金融機関に相談する

それぞれ順番に見ていきましょう。

方法1.ATMでおろす

入院中の親の預金をATMで下ろす

5つの方法のうち最もシンプルかつ簡単なのは、ATMを利用して預金を引き出す方法です。

キャッシュカードを預かり、暗証番号を把握していれば、窓口の順番を待つことなく短時間で預金を引き出せます。

ただし、ATMを利用する場合は以下の2点にご注意ください。

  • 本人の同意を得ている証明をしづらい
  • 引き出せる金額には限度がある

窓口での預金引き出しと異なり、ATMでは委任状がなくても出金が可能です。

しかし、それゆえに「本人の同意を得た証明が難しい」という問題点があります。

ATMを利用して出金の代行をする場合は引き出す金額と用途などを記帳し、本人にサインをもらうなど、承認を得た記録を残すと良いでしょう。

また、ATMで出金できる金額には制限があります。

出金できる限度額は金融機関によって異なりますが、入院費が高額になる場合はATMではなく、本人の委任状を持参して窓口に相談しましょう。

方法2.委任状を持参して窓口でおろす

入院中の親の預金を委任状を持参して窓口でおろす

委任状を持参すると、窓口にて代理で親の預金を引き出せます。

委任状とは、代理人による申請が本人の意思によるものであることを書面に記した文書です。

ATMと比較すると手続きに時間や手間を要しますが、本人の同意を得た証明が残ります。

窓口で預金の引き出しを代行する場合は、以下が必要になります。

  • 通帳・証書
  • 印鑑(お届け印)
  • 委任状
  • 名義人の本人確認書類(運転免許証・健康保険証など)
  • 代理人の本人確認書類(運転免許証・健康保険証など)

参考: 委任状|三菱UFJ銀行

ただし、持ち物は金融機関によって異なる可能性があるため、事前に金融機関にご確認ください。

また、委任状は本人による自署が原則ですが、病気やケガの程度によって直筆できない状況も考えられます。

その場合は、金融機関に委任状の代筆可否や代筆時の記載内容を確認しましょう。

委任状の内容について本人に了承を得ずに代筆したり、本人が直筆できる状況にもかかわらず代筆したりすると私文書偽造等の罪に問われる可能性があります(刑法159条)。

委任状の代筆はやむを得ない場合に限り、本人の同意を得たうえで行いましょう。

方法3.代理人指名手続きまたは代理人カードを作成する

代理人指名手続きまたは代理人カードを作成する

代理人指名手続きをしたり、代理人カードを作成したりすると本人に代わって入出金が可能です。

事前に代理人として金融機関に届け出ているため、委任状は必要ありません。
参考: 代理人指名手続|三井住友銀行

頻繁に出金する必要がある場合は、ATMで利用できる代理人カードを作成すると便利でしょう。

ただし、代理人指名手続きや代理人カードの作成は以下に注意してください。

  • 本人による代理人指名手続きが必要なため、入院前に手続きしなければならない
  • 代理人の範囲や代理人カードの作成枚数は金融機関によって異なる
  • 代理人カードは認知症発症後の使用はできない

代理人指名手続きや代理人カードの作成は本人による手続きが必須であり、代理人が手続き自体を代行することはできません。

入院後、本人が窓口へ行けない状況になってからでは手続きできないので、ご注意ください。

加えて、代理人の範囲は「本人と生計をともにする親族」や「三親等以内の親族」など、金融機関によって様々なため、条件に合致せず代理人になれない場合もあります。

また、入院に限らず認知症を発症した場合も代理で預金の引き出しが必要となる可能性がありますが、認知症によって意思確認ができない場合は代理人カードの使用はできません。

代理人カードは本人の意思能力がある状態で使用できるものです。

「代理人カードを作成しておけば将来的に認知症になったときも預金をおろせて安心」というわけではないので注意が必要です。

銀行のサービスで「代理人カード(家族カード)」がありますが、高齢の親の認知症対策として十分と言えるのでしょうか? この記事では、本人のキャッシュカードを家族が管理するリスク、銀行の「代理人カード」、「家族信託」などを比較しながら司法書士が詳しく解説します。
銀行の代理人カードと家族信託、認知症対策になるのはどっち?

方法4.家族信託を組成する

家族信託を組成する

事前に家族信託を組成することで、入院中でも親の財産を動かすことができます。

家族信託で作る口座(信託口口座)から入院費を捻出する流れは下図のとおりです。

信託口口座から入院費を捻出する

家族信託では受託者(子)が管理する信託口口座から入院費を捻出するため、厳密に「親の口座から預金をおろす」という状況ではありませんが、信託口口座に入金されている金銭は親の資産です。

ですが、信託口口座の管理権限は受託者(子)に与えられているため、親の口座から代理で預金を引き出す場合と異なり委任状は不要です。

また、家族信託はもとより認知症による資産凍結を防止する制度であるため、代理カードのように認知症によって機能停止する心配もありません。

入院時のみならず将来的な認知症対策になるのが家族信託です。

ただし、信託口口座から入院費を捻出するためには、入院が起こるよりも前に家族信託契約が締結されていなければなりません。

家族信託の契約は、平均で1~2カ月ほど時間を要します。

入院後に家族信託を組成しようと考えても、退院までに契約手続きを完了させるのは難しい可能性があるのでご注意ください。

家族信託の詳細については後述します。

方法5.意識不明などにより同意が得られない場合は金融機関に相談する

本人の同意がない預金の引き出しは罪に問われるおそれがありますが、事故や病気の急変などにより意識がない状況も考えられます。

本人の意識がなければ、委任状の作成はおろか同意も得られません。

その場合は口座を所有している金融機関に相談をすると、対応してもらえる可能性があります。

意識不明などにより同意が得られない場合は金融機関に相談する

ただし、金融機関に相談をする際は「本人の同意が得られる状態でない」と証明できる診断書等を持参しましょう。

金融機関から病院に本人の状態を問い合わせても、個人情報保護の理由から回答は得られません。

つまり、診断書等による証明がなければ、金融機関は本人の状態を確認できないため、預金の引出しを断られてしまう場合があります。

また、預金の使途は医療費や施設入居費といった本人のために必要な資金に限定されています。

本人の預金口座から費用請求者への直接支払いが基本となるため、相談へ行く際は病院の口座情報等を確認しておくとスムーズでしょう。
参考: 「不測の事態における預金の払い出し」についてのガイドライン|一般社団法人全国銀行協会

入院中の親の預金をおろす場合の注意点

本人の同意があれば親の預金をおろすことは違法ではありません。

しかし、トラブルを避けるために以下の注意が必要です。

  • おろした親の預金を自分の用事に使用しない
  • おろした親の預金を自分の口座に入金しない
  • おろした金額と用途を記録に残す
  • おろした預金について親族間で状況を共有する

それぞれ順番に見ていきましょう。

おろした親の預金を自分の用事に使用しない

代理で引き出した預金は本人の用途に使わなければならず、当然のことながら自分のために使用してはいけません。

万が一私用に使ってしまった場合は横領にあたり、親族トラブルに発展するおそれがあります。

前述した正規の方法で親の預金を引き出したとしても、私用に使ってしまっては罪に問われる可能性があるのです。

とはいえ、故意ではなく「財布内で自分のお金と混ざり、誤って使ってしまった」といった状況も考えられます。

そのような事態を避けるために、親の預金と自分のお金を入れる財布を分けるなどの対策を施すと良いでしょう。

おろした親の預金を自分の口座に入金しない

代理で引き出した親の預金を自分の口座に入金することは避けましょう。

なぜなら、家族間であっても窃盗や横領が疑われるからです。

引き出した金額が大きいと「大金を手元に置いておくのは不安だから自分の口座に入れておこう」と考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、例え一時的な措置であっても、引き出した親の預金を自分の口座に入金するのは危険です。

また、親の預金口座から自分の口座に年間110万円以上を入金した形跡があると、贈与とみなされ贈与税が発生するおそれもあります。

あらぬ疑いをかけられないためにも、親の預金と自身の預金が混ざらないようにしましょう。

親の口座からおろした金額と用途を記録に残す

親の口座から代理で引き出した預金の金額と用途は記録に残すことをおすすめします。

その理由は、記録があると代理人の使い込みが疑われづらいからです。

金額の大小に関わらずレシートや領収書等は必ず保管してください。

また、電車賃や自動販売機での買い物などレシートが発行できない場合は、日付と金額をメモしておくと良いでしょう。

万が一使い込みを疑われても、おろした金額や使い道が記録されていれば説明が可能です。

面倒に感じるかもしれませんが、自分を守るためにも記録を残すようにしましょう。

おろした親の預金について親族間で状況の共有をする

親の預金口座からいくらおろして何に使用したのか、定期的に親族間で情報の共有をおすすめします。

親の預金は相続に関わってくることから、使い込みを疑われ親族間でトラブルが起こりがちです。

不要なトラブルを避けるためにも、親の口座から預金を引き出したり、入院費の支払いをしたりしたら報告をしましょう。

また、前段で解説した「おろした金額と用途の記録」があると信用度が高まるので、話し合いの際は活用してください。

入院費の負担を軽減する方法

入院日数や手術の有無などによって差はあるものの、入院費は高額になりがちです。

高額な医療費を支払うと預金残高は減り、その後の生活などが心配になることもあるでしょう。

しかし、申請をすればその負担を軽減できる可能性があります。

本章では、代理申請が可能な入院費の負担を減らす4つの方法をご紹介します。

  • 限度額適用認定証を申請する
  • 高額療養費制度の払い戻しを申請する
  • 傷病手当金を申請する
  • 医療保険の入院給付金を請求する

自主的に申請をしなければ得られないものもあるので、この機会に入院費の負担を軽減させる方法を知っておきましょう。

限度額適用認定証を申請する

限度額適用認定証とは、ひとつの医療機関に支払うひと月分の医療費の上限を定めるものです。

上限を超えた医療費は請求されないので、親の預金口座から代理で引き出す金額も少なくすみます。

設定される限度額は収入によって異なりますが、加入している健康保険に申請すると限度額適用認定証の入手が可能です。
参考: 医療費が高額になりそうなとき(限度額適用認定)|全国健康保険協会

大変便利な限度額適用認定証ですが、以下のような注意点もあります。

  • 限度額の対象は保険診療分に限られ、保険外負担分は対象外
  • 設定されているのは1ヵ月分の限度額であり、月をまたいだ引き継ぎはできない
  • 申請してから手元に届くまでは時間を要する場合がある

限度額の対象となるのは保険診療分に限られ、入院中の食事代や個室代といった保険外負担分の費用は含まれません。

保険外負担分の計算が抜け落ちていると、想定よりも医療費が高いと感じる場合があります。

そして、限度額適用認定証で定められた上限額はあくまで「ひと月分の医療費」です。

1回の継続した入院であっても月をまたぐと限度額はリセットされます。

自己負担割合3割・自己負担上限額57,600円の人が総医療費50万円(10割)の入院をした例で考えてみましょう。

ひと月間の入院と月跨ぎ入院の限度額の違い

入院と同月内に退院した場合は、ひと月分の限度額である57,600円の請求です。

しかし、上図のように月をまたいだ入院となると同じ診療内容であったとしても1月分の限度額と2月分の限度額を合計した115,200円が請求されます。

それでも3割負担の医療費よりは安くなりますが、限度額適用認定証に定められた上限額は1ヶ月分のものであることを承知しておかなければなりません。

また、加入している健康保険によっては申請してから届くまでに時間がかかる可能性があり、退院に間に合わない場合もあります。

その場合は病院に自己負担割合分(上図の例でいうと15万円)の医療費を支払い、加入している健康保険に払い戻しの申請をしましょう。

高額療養費の払い戻し申請については後段にて解説します。

高額療養費制度の払い戻し申請をする

高額な医療費を支払った場合、決められた自己負担分を超えた金額は払い戻しの申請が可能です。

払い戻し申請は加入している健康保険に行います。

限度額適用認定証を申請したものの、退院までに間に合わなかった場合もこちらの方法を利用します。

払い戻し後の最終的な自己負担の金額は限度額適用認定証を利用した場合と差はないものの、高額療養費制度では病院の窓口に一度、自己負担割合分の医療費を支払わなければなりません。

診療内容によって異なりますが、入院費は高額になることもあります。

したがって高額療養費制度を利用する場合は、親の預金口座から引き出す金額も大きくならざるを得ないでしょう。

高額療養費制度と限度額適用認定証

参考: 高額療養費簡易試算|全国健康保険協会

一方、限度額適用認定証は上限を超えた医療費は窓口で請求されないので、高額療養費制度の払い戻し申請をするよりも負担は少ないです。

限度額適用認定証を利用したい場合は、手元に届くまでに時間を要する可能性もあるので入院が決まったら早めの申請をおすすめします。

傷病手当金を申請する

入院した本人が働いている場合は傷病手当金の申請が可能です。

傷病手当金とは、病気やケガの療養によって労務不能となり、給与を得られない場合に支給されます。

参考: 傷病手当金|全国健康保険協会

傷病手当金を受けるためには支給申請書の記入が必要であり、本人や事業主の記入欄の他に医師の記入欄もあるため、病院に書類の作成を申し込みましょう。

代理で提出する場合の手順等は加入している健康保険や会社によって異なるため、本人の勤務先にご確認ください。

ただし、傷病手当金が支給されるのは社会保険に加入している方のみです。

自営業や非正規雇用の労働者として国民健康保険に加入している場合は傷病手当金の制度はありませんので、注意してください。

医療保険に入院給付金を請求する

入院した本人が加入している医療保険が、入院を給付金の対象としている場合は申請が可能です。

契約している保険内容や入院日数、手術の有無などによって支給金額に差はありますが、給付金が支給されれば入院費の負担が軽減されます。

ただし、給付金の請求をする代理人の範囲や特約など保険会社によって代理申請の条件が異なります。

医療保険に給付金の代理請求をする場合は、申請する前にご加入の保険会社に確認をすると良いでしょう。

入院時だけじゃない!預金の代理出金が必要となる認知症

これまで入院時の親の預金のおろし方や注意点について解説してきましたが、代理で預金の引き出しが必要となるのは入院時のみとは限りません。

認知症を発症すると口座が凍結されてしまいます。

病気やケガによる入院時は本人の同意のもと預金を代理でおろせましたが、認知症により意思能力が低下した場合は不可能です。

認知症患者数は年々増加しており、2050年には1,000万人を超えると言われています。

認知症は誰しもがなり得る病気であり、ひとごとではありません。

万が一の将来に備えて一時的に代理で預金をおろす方法だけでなく、早めの認知症対策が必要です。

認知症を発症した場合の親の預金をおろす方法については、後段で解説します。

認知症を発症した親の預金をおろす方法

前述のように、認知症を発症すると口座が凍結されてしまいます。

しかし、介護に関する費用や施設入居費など、認知症発症後もなにかとお金がかかるものです。

本章ではいざ認知症を発症してしまった場合に、親の預金をおろす方法について解説します。

家族信託

入院中の親の預金をおろす方法のひとつでもあった家族信託は、認知症対策としても有効的に活用できます。

もとより家族信託は認知症による資産凍結を防ぐために、あらかじめ家族などに財産の管理や運用を行う権利を与える制度です。

家族信託とは

前述のように信託口口座を作成し預金の凍結を防ぐのはもちろん、不動産や有価証券なども信託できます。

また、家族信託は遺言や二次相続以降の資産承継の側面も持ち合わせているため、下図のように従来であれば4つのフェーズに分かれていた高齢者の資産管理・保全対策を一貫して行えます。

ただし、家族信託は認知症発症後の組成はできません。

家族信託は契約行為であるため、本人の意思能力が低下する前に契約の締結が必要です。

認知症発症後に「家族信託を組成すれば良かった」と後悔することがないように、早めの検討をおすすめします。

家族信託の詳細は下記の記事にて解説しているので、興味がある方はぜひこちらもご覧ください。

家族信託は「認知症による資産凍結」を防ぐ法的制度です。認知症が進行し意思能力を喪失したと判断されてしまうと、銀行預金を引き下ろせない、定期預金を解約できない(口座凍結)、自宅を売却できないなどのいわゆる「資産凍結」状態に陥ってしまいます。そのような事態を防ぐために、近年「家族信託」が注目されてきています。この記事では家族信託の仕組みやメリット、デメリットをわかりやすく解説します。
家族信託とは?わかりやすくメリット・デメリットを徹底解説します

法定後見制度

法定後見制度とは成年後見制度のひとつで、認知症などにより意思能力が低下した人に後見人をつけ、法的に支援する制度です。

法定後見制度とは

後見人をつけることで、認知症による口座の凍結解除が可能になります。

認知症が発症した後にできる認知症対策は法定後見制度のみです。

しかし、法定後見制度には以下のような注意点があります。

  • 後見人は家庭裁判所によって選任される
  • 後見人に支払う報酬が毎月発生する
  • 投資・資産運用などの自由な財産管理はできない

法定後見制度における後見人は家庭裁判所により選任され、本人や家族による指名はできません。

そのため、司法書士などの専門職が着任し、面識のない人に通帳や印鑑を預けなければならない可能性があります。

加えて専門職が着任した場合、家庭裁判所が定めた報酬額を毎月支払わなければなりません。

後見は開始されたら原則として本人が死亡するまで続きます。

口座凍結などの問題が解決したからといって後見の中止はできないのでご注意ください。

また、成年後見制度はもとより「意思能力が低下した人の財産を保護」を目的としています。

したがって財産の使用は本人の生活維持に限られ、たとえ「本人の介護費用を捻出するため」といった理由であっても、家族信託のように本人の財産を用いた投資や資産運用などを行うのは難しいでしょう。

法定後見制度を含む成年後見制度の詳細は下記の記事にて解説しているので、興味がある方はぜひこちらもご覧ください。

成年後見制度(せいねんこうけんせいど)とは、認知症や知的障害などで判断能力が低下した人の契約や財産管理のサポートを行う制度です。「成年後見人」を家庭裁判所から選任してもらい、本人に代わって様々な手続きを行なってもらいます。この記事では成年後見制度についてわかりやすく説明し、同時に最近注目を浴びている家族信託との比較についても解説します。
【完全版】成年後見制度とは?司法書士がわかりやすく解説

任意後見制度

成年後見制度には法定後見制度のほかに「任意後見制度」があります。

法定後見制度と同様に、認知症などによる意思能力が低下した人に後見人をつけて法的に支援する制度ですが、任意後見制度では後見人の指名ができます。

つまり、親族などの信頼のおける人を後見人にできるので、法定後見制度のように面識のない第三者が後見人に着任する心配はありません。

任意後見制度とは

任意後見制度でも後見開始後であれば口座の凍結解除が可能です。

ただし、認知症発症後でも契約できる法定後見制度とは異なり、任意後見制度は認知症の発症前に契約をする必要があります。

本人の意思能力が低下した後では任意後見制度の契約は結べません。

また、法定後見制度と比較して後見人が指名できる点では使い勝手が良いものの、任意後見監督人による家庭裁判所の監督は必須であり、任意後見監督人に毎月の報酬が発生する点は類似しています。

そのため、任意後見制度を選択してもやはり家族信託のような自由な財産管理は難しいでしょう。

任意後見制度の詳細は下記の記事にて解説しているので、興味がある方はぜひこちらもご覧ください。

もし認知症などで意思能力が低下したと判断されると、預貯金の引き出しが停止されたり、不動産の管理・売却などの法律行為を断られてしまいます。誰にでも起こりうる可能性があることから、昨今「家族信託」「成年後見制度(法定後見制度・任意後見制度)」などの制度が注目されています。この記事では、それぞれの制度について確認・比較していきます。
任意後見制度とは?家族信託と任意後見制度はどちらを選ぶべき?

金融機関に代理人を届け出る

金融機関によっては代理人を届け出ることで、本人の意思能力が低下した際に代理人が預貯金の引き出しなどが可能となります。

利用するためには、本人が意思能力を有するうちに金融機関で代理人の指定手続きをしなければなりません。

ただし、代理人制度を取り扱っている金融機関は限定されており、懇意にしている金融機関で必ずしも利用できるとは限らないため注意が必要です。

また、入院時の預金の代理引き出しでは便利だった「代理人カード」は本人の意思能力がある状態での利用が前提であるため、認知症発症後は使用できません。

他にも信託銀行に預け入れた金銭の手続き代理人を指定する「認知症サポートサービス」などがありますが、これらは金融機関によるサービスです。

前述した家族信託や成年後見制度と異なり、法的な制度ではありません。

金融機関によって内容が異なるだけでなく、途中で規約やサービス内容に変更が生じる可能性があることを承知しておかなければなりません。

代理人登録や代理人カードに関する詳細は下記の記事にて解説しているので、興味がある方はぜひこちらもご覧ください。

親が認知症になってしまった際に、口座凍結の対策として家族信託が用いられるケースが非常に多くなりました。しかし、金融機関によっては「口座の代理人登録」制度があるケースもあります。では、この代理人登録をすれば、家族信託は不要なのでしょうか。この記事では、実務上の取扱いがどうなっているのかについて解説します。
親の口座の代理人登録したら、家族信託は不要?

入院中の親の預金は同意があればおろせる!認知症まで備えるなら家族信託がおすすめ

本記事では以下について解説してきました。

  • 入院中の親の預金は本人の同意があればおろせる
  • 意識不明で同意を得られない場合は金融機関に相談する
  • 代理で親の預金を引き出す場合は窃盗や横領を疑われぬよう注意する
  • 入院費の負担を減らす方法を活用してお金の不安を解消する
  • 入院時は親の預金口座から代理出金できたが、認知症発症後は不可能となる

病気やケガによる入院時は本人からの同意を得られれば、合法的に親の口座から代理で預金を引き出せます。

しかし、認知症となると話は別です。

認知症を発症すると意思能力がないとみなされ、預金口座をはじめとした資産が凍結されてしまいます。

また、入院だけでなく将来的な認知症まで見据えた対策をするのであれば、家族信託がおすすめです。

成年後見制度よりも自由な財産管理ができるだけでなく、遺言や二次相続以降の資産継承まで切れ目なく一貫して対策できます。

とはいえ、家族信託の詳細がわからず不安な方もいらっしゃるでしょう。

そんなときは専門家の無料相談を活用するのもひとつの方法です。

弊社には家族信託をはじめとした認知症対策の経験豊富な司法書士が多数在籍しております。

お話しをうかがい、資産額や所有する資産の種類などご家庭にとって最適な認知症対策をご提案いたします。

万が一の入院費の代理出金や将来的な認知症対策でお悩みの方はぜひ、お気軽にご相談ください。

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