認知症になった時に保険金を受け取れる認知症保険。

本当に加入する必要があるのかと悩む方も多いのではないでしょうか。

世の中には民間の介護保険や生命保険、生活習慣病保険など、多岐にわたる商品が流通しているため、消費者側も十分に理解した上で選ばなければなりません。

そこで、認知症保険の特徴や加入した方が良いケースについて詳しく解説していきます。

本記事を参考にすれば、本当に認知症保険への加入が必要なのか、どこに相談すれば良いのか、他に必要な認知症対策は何かが明確になるでしょう。

要約

  • 認知症保険は所定の認知症になった時に保険金を受け取れるもの
  • 認知症保険は現金給付が一般的で、介護費や医療費に手厚く備えられる
  • 認知症になったときにかかる費用を自己資金で賄えるなら認知症保険は不要
  • 認知症保険では認知症による資産凍結に備えられない
  • 家族信託を組成すれば本人の判断能力に関わらず柔軟な財産管理が可能
  • 加入を検討する際は保険金の支払い能力や契約内容を丁寧に確認すること

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認知症保険とは

認知症保険とは、保険会社が定める所定の認知症になったときに、一時金や年金が受け取れるものです。

認知症保険は民間保険のため、加入条件・支払い条件・月々の保険料などは、保険会社が提供する商品によって異なります。

例えば、「所定の認知症の状態が180日続くこと」「認知症により要介護1以上と認定されること」などの支払い条件を満たすと、まとまった金額を一度に受け取れる「一時金」や、終身にわたり「年金」として保険金を受け取れます。

認知症になると、介護や医療に多くのお金が必要となるため、保険に入っておいた方が良いと考える方も多いでしょう。

認知症保険と介護保険の違い

認知症保険と介護保険の大きな違いは、保険金の支払い条件が「認知症の診断」か「要介護認定か」ということです。
※ただし、条件は保険会社により異なります。

また、介護保険には公的介護保険と民間介護保険の2種類があります。

公的介護保険
40歳以上の方に加入義務があり、要介護度や所得により現物給付による介護サービスを1〜3割負担で受けることができます。

民間介護保険
公的介護保険と異なり加入は任意です。保険会社によって加入条件や支払い条件、保険料は異なります。現金給付のため、介護施設の入居費用や介護用具の購入費用、自宅の改装費用などに自由に充てられます。

世の中には公的な介護保険・医療保険以外にもさまざまな保険商品が流通しているため、自分や家族にとって真に必要な備えが分からないこともあるのではないでしょうか。

認知症保険も民間保険のため加入は任意ですが、

内閣府の平成29年度高齢社会白書 によると、2025年には5人に1人が罹患すると推計されている認知症ですが、認知症保険への加入は本当に必要なのか、みていきましょう。

認知症保険は必要か?

認知症保険は、認知症になった時の介護・医療・生活にかかる費用について、公的な介護保険・医療保険の範囲を超えてより手厚く備えておきたい場合には、必要だといえるでしょう。
(ただし、あくまでも認知症保険への加入は任意であり、必ずではありません。)

認知症保険は必要か?

逆に言えば、一般的な公的保険で介護・医療サービスを利用し、1割〜3割の自己負担分でやりくりできる方や、保険料を支払える余裕がない方は、認知症保険は加入しなくても良いでしょう。

もとより日本国民には、40歳以上になると公的介護保険への加入義務があり、要介護(要支援)に認定された場合に公的介護保険サービスを1割〜3割負担で受けることができます。

医療費についても、医療保険への加入が義務付けられていますので、70〜74歳の方は2割負担、75歳以上の方は1割負担と、現役世代よりも軽い負担で済みます(割合は所得によって変動します)。
参考: 医療費の一部負担(自己負担)割合について|厚生労働省

よって、公的介護保険や医療保険の範囲を超えて、老後の自己資金に不安がある方や、介護施設やサービスにこだわりがあり、高額な費用を要する方は、認知症保険への加入を検討してみましょう。

ではその判断基準を明確にするため、認知症になった場合お金はいくら必要になるのか、実際の統計データをもとに詳しくみていきましょう。

認知症になったときにかかる費用

認知症になったときにかかる費用はどれくらい?

公益財団法人生命保険文化センターによると、介護に要した費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)のうち、一時費用(住宅改造や介護用ベッドの購入など一時的にかかった費用)のこれまでの合計額は、平均「74万円」という結果でした。
参考: 2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査

一時費用は要介護度が高くなるほど高額になる傾向があり、要介護5では平均107万円となっています。

また、介護に要した月々の費用(月々支払っている(支払っていた)費用)をみると、1カ月当たり平均で「8.3万円」という結果でした。

さらに、介護を行なった場所別にみた場合「在宅」では4.8万円であるのに比べて「施設」では12.2万円と顕著な差がでています。

また、介護を初めてからの期間の平均は61.1カ月(5年1カ月)というデータがでており、これをもとに「認知症になった場合にかかる介護費用の目安」を試算してみると、以下のようになります。

在宅介護の場合
74万円(一時費用)+4.8万円(月額費用)×61.1カ月=約368万円

施設介護の場合
74万円(一時費用)+12.2万円(月額費用)×61.1カ月=約819万円

認知症の介護費用の例

また、慶應義塾大学と厚生労働省の共同研究グループによる推計によると、認知症に関する1人あたりの医療費は、入院医療費34万4,300円/月、外来医療費39,600円/月という結果がでています。
参考: 認知症の社会的費用を推計|慶應義塾大学

これらを踏まえ、在宅介護では500万円ほど、施設介護では1,000万円ほどの備えがあると好ましいといえるでしょう。

認知症保険の加入率

認知症保険(認知症特約)の世帯加入率は、平均で6.6%です。
参考: 2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査(p.69)|公益財産法人 生命保険文化センター

ただし、ここでの認知症保険は「所定の認知症になったときに、一時金や年金が受け取れるもの」を指し、民間の「介護保険(介護特約)」は含まれていません。

ちなみに、認知症で介護が必要となった時の備えにもなる、民間の介護保険(介護特約)の世帯加入率は平均で16.7%です。
参考: 2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査(p.70)|公益財産法人 生命保険文化センター

民間の介護保険(介護特約)は、認知症保険(認知症特約)よりも、より補償の範囲が広い(認知症以外で要介護認定された場合でも保険金を受け取れる)イメージのものです。

民間介護保険(介護特約)と比較して認知症保険(認知症特約)は加入率が1/3ほどですが、認知症保険は太陽生命保険が2016年3月に発売したものが日本初で、まだまだ歴史が浅いという背景もあります。
参考: 太陽生命、国内初の認知症対応保険 診断受けると給付金|日本経済新聞

今後、認知症患者の増加や、それによる要介護人口の増加が問題視されることにより、今後さらに注目度が増すかもしれません。

自己資金で賄えるなら認知症保険は不要

日本では、医療保険や介護保険への加入が義務付けられているため、認知症により医療や介護サービスを受ける場合でも、ある程度自己負担を軽減することは可能です。

その範囲を超えた介護施設の入居費用、介護用品購入費用、住居の改装費用、日用品費用などを自己資金で賄えるのであれば、認知症保険への加入は不要だといえます。

保険だけじゃない!検討すべき認知症対策4選

実は、保険だけでは、認知症になったときの大きなリスクに備えることができません。

それは、認知症による「資産凍結 」です。

認知症により判断能力が低下すると、手続きや契約ごとに必要な意思表示ができないことにより、預金口座からの引き出しや銀行窓口での手続き、所有不動産・株式の売却や運用も困難になります。

資産凍結を防ぐためには、認知症になる前の元気なうちに以下のような対策を施しておかなければなりません。

検討しておきたい認知症対策

  1. 家族信託
  2. 任意後見制度
  3. 遺言書の作成
  4. 生前贈与

それぞれ詳しく解説していきます。

対策1. 家族信託

家族信託とは、認知症になる前の元気なうちに、所有する財産の管理・運用・処分を信頼できる家族に託しておく制度です。

家族信託を利用すれば、財産の所有者本人が認知症になったとしても、財産を託された家族が本人の代わりに管理・運用・処分を行えるため、資産凍結を防ぐことができます。

では、その仕組みを詳しくみていきましょう。

家族信託で「認知症による資産凍結」を防ぐ

家族信託は、財産管理を委託する「委託者」、委託されて財産管理を実行する「受託者」、財産からの利益を得る「受益者」の3人で構成されます。

一般的に、子が受託者となって親(委託者)の財産を管理し、財産から得る利益(金銭や家賃収入など)は親が受益者として受け取る形で組成します。

家族信託の仕組み

家族信託の登場人物

  • 委託者(親):元気なうちに所有する財産の管理を委託しておく
  • 受託者(子):委託者から委託を受けて財産の管理・運用・処分を行う
  • 受益者(親):信託財産からの利益を受け取る

家族信託についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事もぜひご覧ください。

家族信託は「認知症による資産凍結」を防ぐ法的制度です。認知症が進行し意思能力を喪失したと判断されてしまうと、銀行預金を引き下ろせない、定期預金を解約できない(口座凍結)、自宅を売却できないなどのいわゆる「資産凍結」状態に陥ってしまいます。そのような事態を防ぐために、近年「家族信託」が注目されてきています。この記事では家族信託の仕組みやメリット、デメリットをわかりやすく解説します。
家族信託とは?わかりやすくメリット・デメリットを徹底解説します

このように、家族信託は、財産の価値(受益権)は親に残しておいたまま、判断能力が必要な管理や運用については委託を受けた家族(受託者)が行えるという制度です。

家族信託は、委託者と受託者の2者間で家族信託契約を締結することで組成しますが、まずは委託者がどのような財産を所有しており、受託者に何を託し、どのように管理・運用して欲しいのかを洗い出したり、家族で話し合うところから始めます。

その後、実際に契約書を作成し(法的証明力の高い公正証書での作成がおすすめです)、締結が済んだら、契約内容にしたがって受託者が信託財産(委託者が信託した財産)の管理・運用を始めていきます。

家族信託のやり方や流れについては以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひご確認ください。

家族信託の手続きは、家族会議→家族信託契約書の作成→信託口口座開設など信託の準備、という流れで進めていきます。本記事では、家族会議から信託開始までの全体の流れと、信託財産ごとに必要な詳細の手続きについてわかりやすく解説していきます。
家族信託の手続き完全ガイド|流れや必要書類を徹底解説!

金銭や不動産を信託財産に設定した場合の、財産管理のイメージは以下の通りです。

認知症の介護費用の例

実際に預金口座にある金銭を使えたり、売却や賃貸による利益を受け取れるのは受益者(=委託者、親)ですので、親や家族の不満を買うこともなく円滑に財産の管理や運用を進められます。

ただし家族信託は、設計することが非常に複雑な法的制度です。

家族信託を組成するためには委託者・受託者の両者が同意すれば成立しますが、法的に正しい設計を行わなければ信託そのものが無効と判断される恐れもあります。

家族信託を検討するなら、法律や登記の専門家である司法書士に相談することがおすすめです。

弊社では、家族信託のサポートに関する豊富な実績と蓄積されたノウハウをもとに、皆様の悩みから最適な家族信託の組成を一緒に進めさせていただきます。

専門知識を持つ司法書士やコンサルタントがご家族ごとの状況を丁寧にヒアリングし、家族信託や相続対策について、トータルサポートさせていただきます。

認知症保険の加入の是非も含め、まずはお気軽にご相談ください。

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対策2. 任意後見制度

任意後見制度は、認知症になる前に財産管理や身上監護に関する代理権を受任者へ与えておく制度です。
※身上監護:本人が生活を維持するために、医療・介護・その他身の回りに関する手続きや契約を行うこと。

家族信託との違いが分かりにくいと思われがちですが、任意後見制度は裁判所が関与し、ざ財産管理にやや制限が加わることや、受任者へ身上監護に関する代理権が与えられることなどが主な特徴です。

任意後見制度は、本人の判断能力が衰えた状況において、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時点で効力が発生します(任意後見契約に関する法律2条の1)。

任意後見制度はあくまでも本人の財産や生活を保護・維持するための制度なので、少しでもリスクの伴う不動産の運用や、直接本人の利益にならない金銭の消費などは認められません。

ただし、家族信託には含まれない身上監護(契約・手続きなど)の代理権が任意後見人に与えられるというメリットもあるため、家族信託と併用するという手もあります。

以下は、家族信託と任意後見制度についてまとめた表です。

家族信託 任意後見
契約タイミング 元気なうち 元気なうち
効力が発生する時 原則、契約締結時 判断能力が衰えた時
契約対象 財産(不動産、お金など) すべて(身上監護含む)
遺言機能をつけられるか 不可
監督機関 なし
※信託監督人をつけられる
裁判所
監督人になる人 - 弁護士などを裁判所が選任

以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひご確認ください。

もし認知症などで意思能力が低下したと判断されると、預貯金の引き出しが停止されたり、不動産の管理・売却などの法律行為を断られてしまいます。誰にでも起こりうる可能性があることから、昨今「家族信託」「成年後見制度(法定後見制度・任意後見制度)」などの制度が注目されています。この記事では、それぞれの制度について確認・比較していきます。
任意後見制度とは?家族信託と任意後見制度はどちらを選ぶべき?

どちらも認知症対策としてはメリットがある手段ですが、どちらを利用したら良いか、併用した方が良いか、家族や親族の状況によって異なります。

まずは司法書士などの専門家に相談してみましょう。

対策3. 遺言の作成

遺言は、自身が保有する財産について、亡き後の承継先や遺産分割の方法を指定するものです。

遺言は法律行為で、認知症で判断能力が衰えた状態では有効な遺言を残せないため、必ず認知症になる前に行わなければなりません。

「遺言」というと、ドラマなどでよく見る手書きの手紙のようなものを想像する方も多いかもしれませんが、実は法律の知識を理解しないまま作成すると、無効になってしまう可能性もあるのです。

そこで、遺言を作成する際は、司法書士などの専門家に相談し、法的証明力が高い公正証書で遺言を作成することをおすすめします。

また、遺言と家族信託を併用するという手段もあります。

なぜなら、家族信託では、委託者が受託者へ管理を託す財産(信託財産)についてしか定められず、その他の財産の承継については、遺言書で指定する必要があるためです。

さまざまな対策を組み合わせることにより、本人や家族の希望をより確実に叶えることが可能となりますので、まずはぜひ専門家へご相談してみてはいかがでしょうか。

対策4. 生前贈与

生前贈与は、その名の通り「生きているうちに財産を第三者へ贈与すること」を指します。

生前贈与をうまく利用すると、相続税を軽減できるケースがあります。

本来贈与税は相続税よりも税率が高く、基礎控除額も少ないため、税額が高くなりがちです。

そこで「暦年課税」や「相続時精算課税」という贈与税の制度を活用すると、受贈者・受遺者に課せられる贈与税や相続税が軽減されます。

ただし、贈与は法律行為であるため、認知症で判断能力が衰えた後では行えないため注意しましょう(だからこそ、認知症対策として早めに取り組むメリットがあります。)。

- 暦年課税

暦年課税は、1年間に110万円を超えない範囲で贈与を受けた場合は、基礎控除により贈与税が課税されないというものです。

暦年課税

※贈与者の相続開始3年以内(令和6年からは7年に延長)に受けた贈与額は、相続財産に加算されます。
また、令和5年度税制改正により、延長4年間に受けた贈与については総額100万円までは相続財産に加算されません。

• 相続時精算課税
贈与財産の合計額から2,500万円の特別控除額が控除され、上回った分の金額に一律20%の税率を乗じて贈与税額が計算されるというものです。

相続時精算課税に係る贈与者が亡くなった時に、それまでに受けた贈与財産額と相続財産額を合計した金額を元に相続税を計算し、すでに収めた相続時精算課税に係る贈与税相当額(特別控除額2,500万円・税率20%で計算されたもの)を控除して納めるべき相続税が算出されます。

相続時精算課税

※令和5年度税制改正により、相続時精算課税を選択した場合では毎年100万円まで非課税となる基礎控除枠が創設されます(令和6年1月1日以降に受けた贈与より適用)。

相続時精算課税を選択する場合は、税務署への申告手続きが必要で、その後は暦年課税に変更することはできません。

暦年課税・相続時精算課税のどちらが遺族にとって節税となるのか、またそもそも生前贈与は相続税対策に有効に働くのかどうかは、税金や法律の知識を持った専門家でないと判断が難しいこともあります。

認知症保険への加入を考えている方は、ぜひ相続対策も念頭に置き、生前贈与を含めて一度司法書士などの専門家へ相談することをおすすめします。

ここまで解説してきた認知症対策では、認知症になる前の元気なうちに資産凍結に備えたり、相続税の節税に備えたりすることができます。

認知症保険は、資産凍結や相続税対策に直接的な効果はありませんが、認知症保険でしか得られないメリットがあることも事実です。

何か一つの対策だけに焦点を当てるのではなく、視野を広く持ち、本人や家族にとって最も良い手段は何か、オーダーメイドで考えることが重要です。

認知症保険の加入が得策な3つのケース

認知症保険に加入した方が良いケースとして挙げられるのは、以下の3つです。

認知症保険に加入した方が良いケース

  • 認知症になったときにかかる費用を手厚くカバーしたい
  • 認知症が原因で損害を与えた場合に備えたい
  • 親が認知症になったときの介護費用に不安がある

それぞれ詳しくみていきましょう。

ケース1. 費用を手厚くカバーしたい場合

認知症になったときにかかる費用を手厚くカバーしたい方に、認知症保険はおすすめです。

医療費や介護費以外にも、状況に応じて以下のような費用がかかることが予測されます。

  • 介護施設入居費用…グレードの高い民間施設などはより高額になる
  • 住居の改装費用・バリアフリー化費用
  • 介護用ベッド・家具の購入費用
  • 認知症による徘徊防止のセンサーやカメラの購入費用
  • その他日常生活に必要な備品の購入費用

医療保険や介護保険により、一定割合は負担が軽減されますが、これらは医療や介護サービスの現物給付であるため、上記のような費用に充てられる現金の給付は受けられません。

認知症保険なら、所定の認知症の診断を受けて条件を満たした際に保険金の給付を受け、その使い道は自由です。

認知症になった際に、医療や介護サービスを受ける以外に必要な費用が多く考えられる場合は、認知症保険への加入を検討してもよいでしょう。

ケース2. 第三者に損害を与えるおそれに備えたい場合

認知症保険には、認知症と診断されたり、要介護となった時に備える「治療保障タイプ」と、認知症により第三者に損害を与えた場合の個人賠償責任を補償する「損害補償タイプ」があります。

損害補償タイプの認知症保険は、認知症により、第三者に損害を与えてしまった場合の賠償金や弁護士費用を補償する保険です。

認知症になると、記憶力の低下や見当識障害(現在の年月や時刻、自分がどこにいるかな ど基本的な状況を把握できなくなること)の症状が現れたり、徘徊など、家族が同居していても予測できない行動をするおそれがあります。

例えば以下のような例です。

  • 認知症の家族が店で商品を壊してしまった
  • 認知症の家族が水道の栓を止め忘れ下の階に漏水した
  • 認知症の家族が介護施設で暴れてスタッフや他の利用者にケガをさせた
  • 認知症の家族が火の不始末で火災を起こし延焼した

参考: 広がる認知症高齢者向け自治体補償-個人賠償責任保険を考える-|国民生活センター

このような場合、認知症等の「責任無能力者」が賠償責任を負うことはなく、法定監督義務者(配偶者や同居人など)が賠償責任を負う可能性があるとされています(監督義務を怠った場合)。

実際、平成28年にはJR東海・共和駅での認知症高齢者の事故における損害賠償責任について、最高裁判決が下された例があります。

認知症高齢者の事故における損害賠償責任

2016年3月 JR東海・共和駅での認知症高齢者の事故に関する判例

2007年12月、家族が目を離した隙に要介護4の認知症患者の男性(当時91歳)が線路内に立ち入って電車にはねられて亡くなり、JR東海は、男性の妻(当時85歳、要介護1)と別居の長男に対し、事故による振替輸送費等の損害賠償約720万円を求める裁判を起こしました。

一審では長男の監督責任と妻の過失責任を認め2人に約720万円の賠償を命じたものの、二審では同居して主に介護を担っていた妻に監督責任があったと約360万円の賠償が命じられました。

その後の最高裁判決では「監督義務者不在」と判断され、賠償請求は棄却されました。

ただし、認知症高齢者が起こした事故に対して家族に責任がないということではなく、あくまでも今回のケースにおいて「監督義務者不在」と判断されたに過ぎません。

見方を変えれば、監督責任を問える客観的状況があれば、離れて暮らす息子や娘も責任を問われる可能性があるというリスクが明確になったかたちです。


参考: 裁判例結果詳細|最高裁判所

上記の判例では「監督義務者不在」という最高裁の判決により、賠償請求は棄却されましたが、仮に配偶者や子に「監督責任がある」と判断された場合は、賠償金を支払わなければならないリスクが明確化された、と解釈されています。

このような事態に備えるために損害補償型の認知症保険に加入しておけば、配偶者や子の精神的な安定にもつながるでしょう。

ケース3. 介護費用の確保に不安がある場合

親が認知症になったときにかかる介護費や医療費について、資金の確保に不安がある場合は、認知症保険への加入を検討すると良いでしょう。

基本的には、親の介護や医療の自己負担分は親自身の財産から支払いますが、預貯金や資産が少ない場合は、家族が負担しなければならないケースもあります。

認知症保険なら、契約者が子、被保険者が親として加入することも可能ですので、家族で対策をしておくことで、経済的な不安も軽減できるでしょう。

ただし、将来に備えられるからといって、保険料を支払い続けなければ意味がありません。

必ず資金の計画を立てた上で判断しましょう。

認知症保険の6つのメリット

ここからは、認知症保険の6つのメリットをご紹介します。

認知症保険ののメリット

  1. 現金給付を受けられる
  2. 要介護認定を受けない場合でも給付を受けられるケースがある
  3. 指定代理請求制度を利用できる
  4. 保険料が比較的安価である
  5. 多様な商品から合ったものを選べる
  6. 保険会社の担当者とのつながりができる

それぞれ詳しくみていきましょう。

メリット1. 現金給付を受けられる

認知症保険の大きなメリットは、所定の認知症と診断された場合に、現金給付を受けられることです。

現金給付を受ければ、認知症になった時に必要な医療費・施設入居費・介護用具費・住居の改装費など、使い道は自由に決められます。

対照的に、公的介護保険や医療保険は、原則「介護や医療が1〜3割負担で受けられる」という現物給付なので、認知症により必要となった費用を賄うということはできません。

また、費用の支払い方法としては、一括で保険金を受け取る「一時金タイプ」や、終身に渡り一定額を毎年受け取る「年金タイプ」など、保険会社によってプランはさまざまです。

メリット2. 要介護認定の有無に関わらず保険金が給付されるケースがある

認知症保険では、要介護認定を受けていなくても保険金の給付を受けられるケースがあります。

例えば、楽天生命保険株式会社が提供する認知症保険では、要介護認定に関わらず、対象となる認知症と診断確定された場合に保険金が給付されます。
参考: ご契約のしおり-約款(p.54,223)|楽天生命保険株式会社

民間の介護保険では、その名の通り要介護認定を受けていることが保険金給付の前提となりますので、認知症保険ではその点、医師の診断だけで給付金を受け取れることがメリットです。

メリット3. 指定代理請求制度を利用できる

認知症保険では、指定代理請求制度を利用して、被保険者の代理人が保険金を保険会社へ請求できます。

被保険者が認知症で保険金請求の意思表示ができない場合でも、保険会社の規定に従って事前に指定代理請求人を指定しておけば、代理人が保険金を受け取り、問題なく被保険者の介護や医療の費用に充てることが可能です。

メリット4. 保険料が比較的安い傾向がある

認知症保険は基本的に、補償範囲が認知症に限定して設定されているため、他の民間介護保険と比較して保険料が安価なケースも多くあります。

内閣府の「令和4年版高齢社会白書」では、65歳以上の要介護(要支援)者に介護が必要となった主な原因として「認知症」が最も多く全体の18.1%を占めています。
参考: 令和4年版高齢社会白書

介護の原因として大きな割合を占める認知症に的を絞って認知症保険に加入することで、費用を抑えて認知症になった場合の経済的な負担を抑えることができるでしょう。

また、認知症保険だけで不安な場合は、保険会社によって特約を付加することも可能です。

費用面や条件面などを総合的に考えて選択することが重要です。

メリット5. 多様な商品から自身に合ったものを選べる

認知症保険は民間保険であるため、保険会社によって多様な商品が展開されています。

後段の認知症保険の選び方でも解説しますが、加入条件・補償範囲・月々の保険料・支払い基準・保険金の額・受取方法などが異なる多様な商品から、自分や家族の経済状況・健康状態などにマッチするものを選べることもメリットです。

ただしその分、商品について十分理解せずに契約したり、認知症による資産凍結対策を怠ると、大切な本人の財産が無駄になってしまったり、動かせなくなったりするリスクもあります。

前段でも述べた通り、認知症対策は保険だけでなく、視野を広く持って検討することが重要です。

メリット6. 保険会社の担当者とのつながりができる

認知症保険に加入すると、保険会社の担当者と定期的にお話ができたり、認知症対策に関する情報提供を受けやすくなります。

保険会社の担当者の方は、業務上、弁護士や司法書士と繋がりを持っている方も多く、信頼できる先生を紹介してもらえる可能性も高まるでしょう。

認知症保険の選び方

認知症保険を選ぶ際は、以下の7つの基準を吟味しましょう。

認知症保険を選ぶ基準

  1. 補償範囲(治療補償タイプor損害補償タイプ、定期型or終身型など)
  2. 保険金額
  3. 月々の保険料
  4. 加入条件(年齢、持病の有無など)
  5. 支払い基準(認知症の診断、要介護認定など)
  6. 保険金の受取方法(一時金タイプor年金タイプ)
  7. 認知症以外の補償やオプション(認知症に関する情報提供や相談サービス、認知症以外の疾患に関する特約)

さまざまな判断基準がありますが、主にこれらの7つの基準を確認し、本人や家族の状況に合わせて総合的に判断することが重要です。

高齢化や、認知症患者が増加しているからといって、無理な勧誘やサービスに惑わされるのではなく、司法書士などの専門家にも相談したうえで最適な対策を選択しましょう。

認知症保険に加入する際の4つの注意点

認知症保険に加入する際の注意点は以下の4つです。

認知症保険に加入する際の注意点

  1. 認知症と診断されてもすぐに保険金を受け取れるわけではない
  2. 加入条件や支払い基準を確認しておく
  3. 解約返戻金がない掛け捨て型が多い
  4. 家族や親族と相談して決める

詳しくみていきましょう。

注意点1. 認知症の診断後と診断されてもすぐに保険金を受け取れるわけではない

認知症保険に入ったからといって、認知症と診断されたら必ず保険金を受け取れるというわけではありません。

例えば、朝日生命保険相互会社が提供する「人生100年時代の認知症保険」では、保険金の支払い条件として、以下①②のいずれにも該当したときと定めています。

①所定の認知症と診断されたとき
②公的介護保険制度の要介護1以上と認定されたとき

「所定の認知症」とは、器質性認知症と診断確定され、「認知症高齢者の日常生活自立度判定基準」がⅢ、Ⅳ、Mのいずれかであると判定されている状態をいいます。

※器質性認知症:
脳神経細胞が異常をきたしている認知症を指し、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、脳血管性認知症、前頭側頭型認知症などが該当します。

※認知症高齢者の日常生活自立度:
高齢者の認知症の程度を踏まえた日常生活自立度の程度を表すもので、介護保険制度の要介護認定で用いられる指標。


参考: 人生100年時代の認知症保険|朝日生命保険相互会社

つまり、医師により認知症の確定診断を受けたとしても、要介護度が「要支援1」の場合や、日常生活自立度がIの場合は保険金の給付を受けられない、ということになります。

このように、保険会社によっては認知症の診断だけでは保険金を受け取れないものもありますので、細部まで確認しておきましょう。

注意点2. 加入条件や支払い基準を確認しておく

認知症保険にも、保険会社によって加入条件が定められています。

通常、認知症保険に加入する際は、既往歴や現在の生活状況、健康状態に関する告知が必要です。

例えば、SONPOひまわり生命保険株式会社が提供する「笑顔をまもる認知症保険」において、加入時に求められる告知(すべての質問に対する回答が「いいえ」でなければならない)の例として、以下が挙げられます。

①今までに、認知症(軽度認知障害を含む)と医師から診断を受けたことがありますか。または認知症(軽度認知障害を含む)の疑いがあると医師から指摘されたことがありますか。

②下記のいずれかに該当していますか。
(1)現在、以下①~⑤の日常生活の動作のいずれかにおいて、他の方の介助または補助具を必要としますか。①歩行 ②衣服の着替え ③入浴 ④食事 ⑤排せつ
(2)40歳以上の方におうかがいします。今までに、公的介護保険制度の要介護または要支援の認定を受けたことがありますか。または、現在、認定申請を行っていますか。

参考: 笑顔を守る認知症保険(パンフレット)|SONPOひまわり生命保険株式会社

このように、被保険者の健康状態や既往歴によっては加入できない認知症保険もありますので、必ず確認しておきましょう。

注意点3. 解約返戻金がない掛け捨て型が多い

認知症保険は、一度加入すると、途中で解約した場合に解約返戻金を受け取れない、いわゆる「掛け捨て型」のものが一般的です。

つまり、保険金の給付も受けられず、それまで支払った保険料も戻ってこないということです。

よって、認知症保険への加入を検討している方は「定められた期間保険料を払い続けられるか」「定年退職し、年金生活になっても払い続けられるか」など、事前に丁寧にシミュレーションを行いましょう。

注意点4. 加入検討時は家族や親族と相談する

認知症保険を検討する場合は、必ず家族や親族と相談しましょう。

主な理由は以下の2つです。

1. 認知症になったら、保険金請求の際に指定代理請求人が必要となるため

認知症保険の保険金が支払われるのは、被保険者本人が認知症と診断されてからです。ただし、認知症の本人は保険金請求の意思表示ができない可能性が高いため、事前に「指定代理請求人」を定めておかなければなりません。

指定代理請求人は指定を受けたことについて同意し認識しておく必要があるため、必ず家族・親族間で認知症保険の内容について相談・共有しておきましょう。

一般的に、指定代理請求人には「被保険者の戸籍上の配偶者」「被保険者の3親等内の家族」「被保険者と同居又は同一生計の方」の1名を指定できます。
※詳細は保険会社によって異なります。

2. 認知症保険に加入していることを忘れるおそれがあるため

認知症になると、被保険者本人が認知症保険に加入していること自体を忘れる可能性があります。

せっかく加入した認知症保険の保険金を受け取り損なうということの内容、指定代理請求人を含め、家族や親族で加入内容について共有しておきましょう。

認知症所対策は専門家に相談をして不安のない老後生活を

認知症保険に加入すれば、本人や親が認知症になったときの介護や医療にかかる費用に備ええられます。

ただし、毎月の保険料の支払いが発生することは避けられず、また認知症保険だけでは、認知症になった時の「資産凍結」には対策できません。

資産凍結が起こると、保険金を受け取ったとしても、預金口座からの引き出しや不動産・株式の売却・運用、手続きなどもできなくなってしまいます。

そこで、本記事内でも紹介したように、認知症対策・相続対策として「家族信託」を始め「任意後見制度」「生前贈与」「遺言の作成」をぜひ検討してみてください。

特に家族信託は、認知症による資産凍結を防ぐために、信頼できる家族に財産管理を託すことができます。

初期費用として、司法書士などの専門家への相談費用や、家族信託契約書の作成費用はかかりますが、認知症保険のような毎月のランニングコストは原則かかりません。

本人や家族の状況や関係性、所有している財産の額や種類などによって、最適な認知症対策の手段は異なります。

まずは、どのような対策を取れば良いかという部分から、ぜひ司法書士などの専門家に相談してみましょう。

弊社は、家族信託の経験と実績が豊富で、かつ認知症対策全般についての相談についても、皆様のご状況をお聞きした上で最適な提案をさせていただきます。

相談は無料ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

認知症対策で
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