家族信託を利用している方が亡くなった場合、どうなるのでしょうか?

家族信託を設定していても、委託者(財産を信託した人)が亡くなれば基本的に財産の承継が発生します。

しかし、その手続きや財産の承継方法は通常の相続とは異なる場合があります。

本記事では、家族信託と相続に関する重要事項を時系列に沿って整理し、手続きの期限や必要書類、注意点まで分かりやすく説明します。

要約

  • 信託契約の内容によっては、相続が開始しない場合もある
  • 信託財産は受益権として相続税の対象となる
  • 信託契約で定められた方法で財産が承継されるため、遺言や遺産分割協議とは異なる手順をたどる可能性がある

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家族信託は相続税対策になるか

結論からお伝えすると、家族信託は直接的な相続税対策・節税にはなりません。

とはいえ、適切に活用することで、将来の財産承継を円滑に進められる可能性があります。

まずは、その理由と効果的な活用方法について詳しく解説します。

家族信託が直接的に節税に繋がることはない

そもそも家族信託では、財産を信託したからといって課税関係は変わりません。

なぜなら、財産を信託しても実質的な所有者は変わらないためです。

ただし、以下のような間接的な効果は期待できます。

【間接的な効果の例】

  • 受託者への信託報酬設定による財産評価額の調整
  • 財産の有効活用による将来的な相続財産の適正化
  • 不動産の収益化による生前贈与の原資確保

ここで重要なのは、家族信託はあくまでも財産管理の手法であり、節税対策を主目的とするものではないということです。

相続税対策としては、不動産の有効活用や生前贈与など、他の方法と組み合わせて検討することをおすすめします。

【具体例:不動産活用のケース】

例えば、賃貸物件を所有している場合を考えてみましょう。

認知症などで所有者の判断能力が低下すると、賃貸契約の更新や大規模修繕の判断ができなくなり、収益性が低下する可能性があります。

家族信託を活用すれば、受託者が適切に物件を管理・運用できるため、財産価値の維持・向上につながります。

この記事では、家族信託をすることで相続の対策(相続税対策)ができるのか、家族信託と税金の関係について解説します。また、相続対策としての家族信託の実際の活用事例や、その際支払う税金についても、わかりやすくご紹介します。
【家族信託と相続税対策】家族信託をすると節税できるって本当?

家族信託についてさらに詳しく見る場合は、こちらの記事を参照ください。

家族信託は「認知症による資産凍結」を防ぐ仕組みです。本記事では家族信託の詳細や具体的なメリット・デメリット、発生する費用などについて詳しく解説します。将来認知症を発症しても、親子ともに安心できる未来を実現しましょう。
家族信託とは?メリット・デメリットや手続きをわかりやすく解説!

認知症対策としての家族信託

家族信託は、認知症対策として非常に有効な手段の一つとして注目されています。

その最大の特徴は、認知症になる前財産の管理・処分権限を信頼できる家族に任せることができる 点にあります。

たとえば任意後見制度と比較すると、家族信託には大きな違いがあります。

項目家族信託任意後見制度
手続きの柔軟性家庭裁判所の監督が不要で、
柔軟な対応が可能
家庭裁判所の監督が必要
財産の処分信託契約に基づいた財産処分が可能財産の処分には制限あり
発効のタイミング信託契約締結時から有効任意後見監督人選任後に発効
費用初期費用、継続サポート(任意)定期的な監督費用が発生

実際の活用場面としては、認知症になった場合でも自宅の建て替えや改修工事、預貯金の管理、生活費の支出、投資用不動産の運用継続などがスムーズに行えます。

財産が凍結されるリスクを防ぎ必要な管理・処分を継続できる点が大きな利点です。

ただし、家族信託を設定する際は以下の点に注意が必要です。

設定時の重要事項内容
受託者の選定信頼できる家族から慎重に選ぶ必要がある
管理方針の明確化財産の使用目的や方法を具体的に定める
報告体制の整備定期的な報告方法を予め決めておく
解除条件の設定どのような場合に信託を終了するか明確にする

一度信託すると簡単には解除できないため、専門家としっかり相談しながら慎重に検討することが大切です。

特に受託者の選定は、その後の財産管理に大きく影響 するため、十分な話し合いを行うことをおすすめします。

家族信託契約中に相続が発生した場合の相続税

家族信託の契約中に、相続が発生した場合の相続税はどうなるのでしょうか。

以下で詳しく説明していきます。

信託財産(受益権)が相続税の対象になる

家族信託では、信託した財産の「所有権」は受託者に移転しますが、財産から生じる利益を受けとる受益権受益者が保有します。

この受益権は、受益者が亡くなった際に相続税の対象となります。

ここで重要なのは以下の3点です。

  • 相続税は財産的価値が他者に移転するタイミングで課税されます
  • 受益権の評価額は、通常の金銭や不動産と同じ評価方法で計算されます
  • 所有権が信託財産となり受益権になっても、評価額は変わりません

また、受益権の場合でも通常の相続財産と同様に、小規模宅地の特例や配偶者控除などの特例を活用できます。

家族信託で相続税が発生した場合の課税対象者

受益者が亡くなり、信託財産(受益権)が他者に承継されると、その財産を承継した人物に相続税が課税されます

承継方法は信託契約の定め方によって、主に以下の2つに分かれます。

(1)受益者の死亡により信託契約を終了させ、帰属権利者に引き継ぐ方法

実務上、最も一般的な形態は、委託者=受益者となる自益信託において、「委託者兼受益者の死亡」により信託契約を終了させる方法です。

この場合のポイント

  • 信託契約で定められた承継者(帰属権利者)が信託財産を所有権として取得
  • 取得した財産が相続税の課税対象になる

(2)受益者の死亡により信託契約は終了させず、受益権として引き継ぐ方法

受益者連続信託」と呼ばれるこの方法では、第二受益者、第三受益者と受益権を順次引き継いでいきます

特徴と活用方法

  • 最初の受益者死亡時に、第二受益者に相続税が課税
  • 遺言と異なり、複数世代にわたる承継が可能
  • 認知症の配偶者や障害がある子の財産管理に有効
  • 一定の制限はあるものの、柔軟な財産管理が可能

このように、信託契約の内容によって相続税の課税タイミングや課税対象者が異なります。

契約設計時には、将来の相続も見据えた慎重な検討が必要です。

まずは相続手続きの期限を確認しよう

期限手続き項目                    
3ヶ月・4ヶ月以内遺言書の有無の確認
相続人の調査
相続財産の調査
所得税の準確定申告
10ヶ月・1年以内遺産分割協議の開始
相続税の申告
預貯金・有価証券等の名義変更
不動産の名義変更
その他、各種財産の名義変更
遺留分侵害額請求
2年・3年以内健康保険の埋葬料・葬祭費の請求
生命保険金の請求
5年以内遺族年金の請求

3・4ヶ月以内に行うべき相続手続きの流れと方法

家族が亡くなった後、3・4ヶ月以内に行うべき相続の流れとその手続き方法を確認していきましょう。

【3ヶ月以内】遺言書の有無と種類の確認

被相続人の遺言書の有無は、相続手続きの進め方に大きく影響します。

遺言書があれば、その内容に従って財産を分割できますが、ない場合遺産分割協議 を行わなければなりません。

また、万が一、遺産分割協議の完了後に遺言書が見つかると遺産分割協議のやり直しが必要となる恐れがあります。

そのため、亡くなった人から事前に遺言書の有無を知らされていなかった場合も、相続手続きを始める際には遺言書を探しておくことが非常に大切です。

遺言書の種類による対応
遺言書の種類   保管場所検認の要否特徴と注意点            
公正証書遺言公証役場不要・公証人の面前で作成
・原本は公証役場で保管
・相続人は謄本を取得可能
・最も確実な方法
自筆証書遺言自宅など/法務局原則必要
(法務局保管は不要)
・自書で全文作成
・法務局保管制度の利用可
・費用は安価
・方式違反に注意

【3ヶ月以内】相続人の調査

遺言書が見つからず遺産分割協議を行う際は、相続人の調査を行い、抜け漏れのないよう洗い出しておく必要があります

遺産分割協議の完了後に協議に参加していない相続人がいることが判明すると、遺産分割協議は無効となり、やり直しが生じる恐れがある からです。

相続人の調査は、戸籍謄本などの書類を収集して行います。

収集した戸籍謄本は、金融機関の名義変更手続きにおいても使用することが可能です。

相続人の調査および戸籍謄本の収集を行うときのポイントは、主に以下の通りです。

相続人の調査および戸籍謄本収集の際のポイント

  1. 個人の死亡時から遡り、出生までの戸籍謄本を取得する
  2. 相続関係を特定するための戸籍を収集する
  3. 遺言書がある場合、必要な戸籍の種類が少なくて済む
  4. 戸籍の見方・読み方を把握しておく

1.故人の死亡時から遡り、出生までの戸籍謄本を取得する

故人の戸籍謄本は死亡時点だけでなく、出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要です。

相続人が知らない子や婚姻歴の有無がないかなどをしっかりと調査し、法定相続人にあたる人物を特定するため です。

戸籍謄本は法改正や結婚・転籍などにより、3〜8通程度ある人が多いと言われています。

死亡時点から遡って、戸籍謄本を取得しましょう。

2.相続関係を特定するための戸籍を収集する

故人の戸籍謄本の収集が完了したら、法定相続人の特定を行うための戸籍収集を行います。

法定相続人は、優先順位が以下のように定められています。

法定相続人と法定相続分

たとえば故人に配偶者と子がいる場合、配偶者と子が「法定相続人」となり、故人の親や祖父母は法定相続人にはなりません。

法定相続人が確定したら、次は相続人全員の戸籍収集を行います。

このように相続人の戸籍収集が必要な理由は、相続開始時に相続人が生存していたことを証明するため です。

3.遺言書がある場合、必要な戸籍の種類が少なくて済む

遺言書がある場合は、遺言により相続させる人が決まっていることから、戸籍収集を行い全ての法定相続人を特定させる必要はありません

そのため、故人が遺言書を遺していた場合は以下の戸籍のみで相続手続きが事足りるのです。

遺言書がある場合に必要な戸籍

  • 亡くなった人の死亡の記載がある戸籍謄本
  • 相続人(もしくは受遺者)の戸籍謄本

ただし、遺言書の検認手続きを行う際は故人の出生から死亡までの連続した戸籍相続人全員の戸籍が必要です。

4.戸籍の見方・読み方を把握しておく

故人の連続した戸籍謄本を収集する際は、取得した戸籍に記載の情報を読み取る必要があります

戸籍謄本を読み取る際のポイントは、主に以下の通りです。

戸籍は親と子で構成されており、以下の情報が記載されています。

戸籍謄本の内容

  • 本籍地
  • 氏名
  • 生年月日
  • 身分事項(出生、死亡、婚姻など)

戸籍に記載の改製理由や前の本籍地などを確認すれば、戸籍を遡って取得が可能です。

戸籍謄本の取得方法や必要書類は、以下の通りです。

戸籍謄本取得方法
取得できる窓口本籍がある(あった)市区町村役場 ※郵送可
取得できる人・本人
・配偶者
・直系血族
・代理人
手数料の目安・戸籍謄本1通:450円
・除籍謄本や改製原戸籍謄本1通:750円
必要なもの・申請書(窓口または各役所のHPよりダウンロード可)
・本人確認書類
・代理の場合は委任状
・郵送の場合は定額小為替など

なお、戸籍謄本の取得方法は各市区町村のホームページで確認できます。

前もって請求先の市区町村ホームページを確認しておくと安心でしょう。

【3ヶ月以内】相続財産の調査

相続財産の調査

相続人が確定し、戸籍謄本の収集が完了したら、次は相続財産の調査 を行いましょう。

相続財産の調査を済ませておかないと、多額の借金まで相続してしまったり、何度も遺産分割協議をやり直す手間がかかるといった可能性もあるからです。

相続財産の調査の流れは、以下の通りです。

相続財産調査の流れ

  1. 相続財産の種類を把握する
  2. 相続財産の資料を探す
  3. 相続財産の種類に合った調査を進める

1.相続財産の種類を把握する

相続財産は、現金や預貯金などプラスの相続財産 と、借金などのマイナスの相続財産 に分けられます。

それぞれの、以下の通り挙げられます。

【プラスの相続財産】

  • 現金、預貯金などの現物財産
  • 不動産
  • 借地権など不動産上の権利
  • 自動車、貴金属などの動産
  • 株式、国債などの有価証券
  • その他証券
  • 著作権などの知的財産権
  • 故人が受取人の生命保険金

【マイナスの相続財産】

  • 借金、ローンなどの負債
  • 連帯保証などの保証債務
  • 損害賠償債務
  • 未納の税金などの公租公課
  • 買掛金
  • その他、未払債務

※以下の財産は、相続財産には含まれません。

【相続財産に含まれないもの】

  • 墓地・仏壇・遺骨などの祭祀財産
  • 香典や葬儀費用、埋葬料
  • 故人以外が受取人の生命保険金

2.相続財産の資料を探す

次に、相続財産の資料や手がかりを探していきましょう。

故人の自宅や貸金庫などを中心に、大切なものを保管していそうな場所を探していきます。

主に以下のような資料が、相続財産の手掛かりとなります。

相続財産に関する資料

  • 預金通帳やキャッシュカード
  • 銀行や証券会社等からの郵便物
  • 不動産の権利証、登記簿謄本
  • 不動産の売買契約書
  • 不動産の納税通知書
  • 借用書、請求書
  • 確定申告書の控え

預金通帳は残高の把握だけではなく、過去の入出金記録から他の相続財産を把握するのにも役立ちます。

過去の取引明細も必ず確認していきましょう。

3.相続財産の種類に合った調査を進める

故人が所有していた相続財産の種類を把握できたら、具体的な財産の評価 に移ります。

財産の種類に合った調査方法を選択することで、どんな財産をどれほど所有していたかを把握でき、スムーズでしょう。

財産ごとの相続財産の調査方法は、以下の通りです。

財産ごとの相続財産調査方法

  • 不動産:登記事項証明書・名寄帳を取得する
  • 預貯金や有価証券:口座を開設していそうな金融機関に問い合わせ、相続発生の事実を伝える
  • その他の相続財産:生命保険会社などに問い合わせ、名義変更・解約手続きなどの確認をする

【4ヶ月以内】所得税の準確定申告

故人が自営業者や不動産所得がある人だった場合、相続人は故人に代わって所得税の申告を行います。

これを準確定申告 と言い、相続開始から4ヶ月以内に行う必要があります。

準確定申告が必要なケースは、主に以下の通りです。

準確定申告が必要なケース

  • 給与所得がある場合
  • 不動産所得がある場合
  • 事業所得がある場合
  • 退職所得がある場合

一方、以下のような場合は申告が不要となることがあります。

準確定申告が不要なケース

  • 給与収入が103万円以下
  • 65歳以上で公的年金等の収入が400万円以下
  • 所得が基礎控除額以下

準確定申告に必要な書類は以下の通りです。

必要書類など備考
準確定申告書税務署で入手可能
死亡証明書の写し
または除籍謄本
故人の本籍のある市区町村役所で入手可能
源泉徴収票給与所得、退職所得がある場合
医療費の領収書医療費控除を受ける場合
相続人の印鑑各書類に捺印
相続人の口座情報還付金がある場合

申告の手順としては、まず故人の所得を計算し、所得控除を差し引いて税額を確定させます。

納付すべき税金がある場合は申告期限までに納付し、逆に還付金が発生する場合は相続人の指定した口座に振り込まれます。

なお、以下のような場合は特に注意が必要です。

特殊なケース注意点
年の途中で死亡した場合その年の1月1日から死亡時までの所得を申告
確定申告の時期と重なった場合両方の申告が必要
複数の相続人がいる場合代表者を決めて申告することも可能

申告を忘れたり、期限に間に合わない可能性がある場合は、すぐに税務署に相談することをおすすめします。

また、不明な点がある場合は、税理士などの専門家に相談することで、スムーズに申告を進められるでしょう。

準確定申告は相続手続きの中でも比較的早い段階で必要となる重要な手続きです。

期限管理を適切に行い、必要書類を揃えて確実に手続きを進めることが大切です。

10ヶ月・1年以内に行うべき相続手続きの流れと方法

家族が亡くなった後、10ヶ月・1年以内に行うべき相続の流れとその手続き方法を確認していきましょう。

【10ヶ月以内】遺産分割協議の開始

遺産分割協議は、相続人全員相続財産の分け方を話し合う重要な手続き です。

遺言書がない場合は必ず必要となり、相続税申告の期限である10ヶ月以内に完了させることが望ましいとされています。

協議は必ずしも全員が一堂に会する必要はなく、電話やメール、オンラインツールを活用して進めることも可能です。

ただし、以下のような相続人がいる場合は、家庭裁判所による代理人の選任が必要となるので注意しましょう。

対象者必要な代理人
認知症になって判断能力を欠く人成年後見人
行方不明者不在者財産管理人
未成年者法定代理人

遺産分割の方法を検討する際は、相続財産の性質や相続人の状況を総合的に考慮する必要があります。

分割方法は大きく以下の4つに分類されます。

分割方法概要
現物分割相続財産をそのまま分ける最もシンプルな方法
換価分割財産を売却して現金で分ける方法
代償分割特定の相続人が財産を取得し、他の相続人に金銭を支払う方法
共有分割相続財産を共有する方法

意見の相違がある、連絡が取れない相続人がいるなど、話し合いでの解決が難しい場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます

調停でも解決できない場合は、審判や訴訟による解決を検討することになります

また、合意に至った場合は、遺産分割協議書を作成します。

この書面には、相続人全員の署名・押印に加え、分割する財産の特定や分割方法を明確に記載しましょう。

また、代償金の支払いがある場合は、金額や支払時期、方法についても具体的に記載することが大切です。

なお、遺産分割協議書は、今後の名義変更手続きなどで必要となるため、十分な部数を作成し、各相続人で保管することをおすすめします。

【10ヶ月以内】相続税の申告

相続財産の分割方法が決定したら相続財産の評価額を算出し、相続税の計算 をしましょう。

相続税がかかる場合は、10ヶ月以内に相続税の申告・納税を済ませる必要があります。

相続税には基礎控除額が用意されており、相続財産の合計評価額が基礎控除額に収まる場合は相続税の申告・納付は必要ありません

相続税の基礎控除額の計算方法

相続税の基礎控除額の計算方法は以下の通りです。

相続税の基礎控除額は3,000万円+法定相続人の数×600万円で計算

例えば、相続人が2名の場合
「3,000万円+2人×600万円=4,200万円」基礎控除額です。

そのため、相続財産の評価額合計が4,200万円以内の場合は相続税の申告・納付ともに不要となります。

相続税の申告手続きの流れ

相続税の申告を行う流れは、以下の通りです。

相続税申告の流れ

  • 相続財産の評価額を算出
  • 相続税の総額を計算
  • 申告書の作成・納税

相続税は固定資産税などとは異なり、税務署が税額を計算し納付書を送ってくれるわけではありません。

相続人自らが相続税の計算を行い、税務署に相続税の申告・納税を行う必要がある のです。

また、相続税は基礎控除額の他にも様々な控除特例が用意されています。

控除や特例を利用できる場合は、基礎控除額の相続財産評価額であっても相続税がかからない可能性もあります。

利用できる控除や特例があるか、相続税を節税できる方法がないかなど、相続に詳しい専門家に相談すると良いでしょう。

【10ヶ月以内】預貯金・有価証券等の名義変更

遺産分割協議書の作成完了後各相続財産の相続手続きが可能 になります。

預貯金・有価証券等の名義変更手続きの流れは、以下の通りです。

預貯金・有価証券等の名義変更手続きの流れ

  • 金融機関や証券会社に連絡する
  • 残高証明書の開示・照会請求を行う
  • 所定の届出用紙(相続手続依頼書)を入手する
  • 届出用紙・必要書類を提出する
  • 相続人が口座開設を行う ※有価証券等を相続する場合

必要書類の種類や手続きの流れは、各金融機関によって異なる場合もあります。

まずは、故人が利用していた金融機関に連絡をしましょう。

金融機関の名義変更手続きを行うときに必要な書類は、主に以下の通りです。

状況必要となる書類
全てのケース・本人確認書類
・通帳
・キャッシュカード
・貸金庫の鍵など
遺言書がある場合・相続届(相続手続依頼書)
・遺言書
・相続関係を証明する戸籍謄本など
・払い戻しを受ける者の印鑑証明書など
遺言書がない場合・相続届(相続手続依頼書)
・相続関係を証明する戸籍謄本など
・相続人全員の印鑑証明書
・遺産分割協議書など

【10ヶ月以内】不動産の名義変更

故人が不動産を所有していた場合、不動産の名義変更手続きが必要です。

この手続きは一般的に「相続登記 」と呼ばれ、法務局に必要書類と登記申請書を提出し、手続きを行います。

なお、相続人が不動産を売却すると決めている場合であっても、まずは故人名義から相続人名義へと変更する必要がある ことを把握しておきましょう。

相続登記の手続き方法・必要書類は以下の通りです。

相続登記手続き方法
提出先不動産の所在地を管轄する法務局
提出できる人・不動産を相続する人
・代理人
費用不動産固定資産評価額の0.4%(登録免許税)
(目安:1,000万円の場合は4万円、2,000万円の場合8万円)
必要なもの・登記申請書(法務局のHPよりダウンロード可)
・故人の出生から死亡までの戸籍謄本
・故人の住民票除票または戸籍附票
・相続人の戸籍謄本
・遺産分割協議書
・印鑑証明書
・遺言書など

これらの相続登記は、司法書士に代行してもらうことも可能です。

2024年より相続登記を行うことが義務化されたため、必ず行うようにしていきましょう。

【10ヶ月以内】その他、各種財産の名義変更

ここまで解説した、預貯金や有価証券・不動産以外の相続財産名義変更手続きが必要です。

代表的な相続財産の名義変更方法をご紹介します。

自動車の名義変更方法

故人が所有していた自動車の名義変更の方法と、必要書類は以下の通りです。

自動車名義変更方法
提出先管轄する運輸局または自動車検査登録事務所
手続きする人・自動車を相続する人
・代理人
費用手数料500円
必要なもの・移転登録申請書
・自動車税申告書
・自動車検査証
・自動車保管場所証明書(車庫証明)
・手数料納付書
・戸籍謄本
・印鑑証明書
・遺産分割協議書など

バイクの名義変更方法

故人が所有していたバイクを相続する場合はまず廃車手続きを行い、相続人名義での再登録を行います。

バイクの大きさにより、手続き先の窓口が以下の通り異なります。

手続き先窓口

  • 125cc以下:市区町村役場
  • 126cc以上:運輸局

ゴルフ会員権の名義変更方法

故人が登録していたゴルフ会員権を相続した場合、運営会社へ名義変更の申請が必要です。

相続の際に会員権の売却を希望する場合、名義変更することなく売却できる場合もあるため、まずは運営会社へ確認すると良いでしょう。

ゴルフ会員権の名義変更に必要な手続き・書類は、運営会社により異なります。

電話加入権の名義変更方法

電話加入権とは、電話回線を利用するためにNTTと契約する権利のことです。

電話加入権の名義変更には、承継 という手続きが必要です。

電話加入権は1回線につき1,500円程度の財産価値があると言われています。

相続手続きの手間を回避するため、契約解除を申請し権利を無料で放棄することもできます。

詳しくはNTTのホームページ等でご確認ください。

損害保険の名義変更方法

故人が損害保険に加入していた場合名義変更して継続または解約するかの検討が必要 です。

損害保険の名義変更・解約手続き方法は保険会社によって異なるため、保険会社の担当者に確認しましょう。

また損害保険が積み立て型の場合名義変更後に受け取れる満期返戻金や、解約後に受け取れる解約返戻金相続財産として扱われます。

よって、誰が相続するのか相続人全員で決めておく必要があります。

損害保険の名義変更・解約手続きの方法
提出先各保険会社
手続きする人相続人
必要な書類各保険会社所定の書類
・各種(解約)名義変更申請書
・保険証券
・故人の戸籍謄本
・相続人の戸籍謄本
・相続人の印鑑証明書
・本人確認書類など

【1年以内】遺留分侵害額請求

遺留分侵害額請求とは、遺留分を侵害した相続や生前贈与が行われた場合、遺産を多く受け取った人物に対して、遺留分侵害額相当額の金銭を請求 する行為です。

配偶者や親・子などの法定相続人には、最低限度の遺産を受け取ることができる遺留分 という権利があります。

例えば、遺言書に「全ての財産を愛人に相続させる」と記載されていた場合でも、配偶者や故人の子は遺留分にあたる金額を愛人に請求することが可能です。

ただし、遺留分侵害額請求を行えるのは、以下の期間までです。

遺留分侵害額請求期間

  • 相続開始と遺留分の侵害を知ってから1年以内
  • 相続開始から10年以内

2年・3年以内に行うべき相続手続きの流れと方法

相続手続きの中には、比較的長期の請求期限が設定されているものがあります。

ただし、できるだけ早めに手続きを進めることをお勧めします。

【2年以内】健康保険の埋葬料・葬祭費の請求

故人が加入していた健康保険により、埋葬料や葬祭費が支給される制度 があります。

請求期限は死亡日から2年以内です。

また、国民健康保険・後期高齢者医療制度の適用対象者である場合は葬祭費も支給されます。

<制度の概要>

  • 埋葬料:健康保険の被保険者が死亡した場合
  • 葬祭費:被扶養者が死亡した場合
  • 埋葬費:国民健康保険の被保険者が死亡した場合

支給額は加入していた保険制度により異なります。

保険の種類支給額の目安
健康保険(協会けんぽ)50,000円
国民健康保険市区町村により異なる(概ね50,000円程度)
提後期高齢者医療制度50,000円

健康保険による、埋葬料や葬祭費の請求手続きの流れは以下の通りです。

請求手続きの流れ
1.必要書類の準備・埋葬料(葬祭費)支給申請書
・死亡診断書または除籍謄本
・葬儀の領収書
・申請者の印鑑
・振込先の通帳
2.申請窓口への提出・健康保険(協会けんぽ):年金事務所または協会けんぽ
・国民健康保険:市区町村の国保窓口
・後期高齢者医療制度:市区町村の後期高齢者医療担当窓口

請求の際の注意点は以下の通りです。

請求時の注意点

  • 実際に葬儀を行った方が請求者となります
  • 葬儀を葬儀社に依頼した場合は、葬儀社が代理で請求することもあります
  • 複数の保険制度に加入していた場合は、それぞれに請求が必要な場合があります

このように、埋葬料・葬祭費は比較的長い請求期限が設けられています。

ただし、請求に必要な書類は早めに準備しておくことをお勧めします。

特に葬儀の領収書などは時間が経つと紛失するリスクもあるため、できるだけ早期の請求を心がけましょう。

【3年以内】生命保険金の請求から開始

家族が亡くなった後、3年以内に行うべき生命保険金の請求の流れとその手続き方法を確認していきましょう。

生命保険金は受取人が請求する必要があり、自動で支払われることはありません。

この生命保険金の請求期限は、死亡してから3年以内です。

家族が亡くなると、やるべき手続きが多く忘れてしまいやすいでしょう。

どこの生命保険会社に加入していたかなどを確認し、速やかに保険金の請求を行えるよう準備をしましょう。

手続き方法や必要書類は、以下の通りです。

生命保険の請求方法                       
提出期限死亡日から3年以内
提出する人保険証書に記載されている受取人
提出先契約している保険会社の請求窓口
必要書類・死亡保険金請求書
・保険証券
・最後の保険料の領収書
・保険金受取人と故人の戸籍謄本
・死亡診断書
・受取人の印鑑証明書など

加入先の生命保険会社によって手続き方法や必要書類が異なる可能性があります。

事前に確認しておくとスムーズでしょう。

【5年以内】遺族年金の請求

家族が亡くなった後、5年以内に行うべき遺族年金の請求の流れとその手続き方法を確認していきましょう。

配偶者や未成年者の親が亡くなった場合、遺族年金が遺族に支給 されます。

遺族年金も他の支給金と同様、受取人が申請しないと支給されません

請求期限は、死亡から5年間です。

速やかに申請を行い、給付を開始してもらいましょう。

手続き方法や必要書類は、以下の通りです。

遺族年金の請求方法                       
提出期限死亡日から5年以内
提出する人故人の配偶者・子など
提出先住民地の市区町村国民年金窓口
必要なもの・国民年金遺族基礎年金裁定請求書
・故人の年金手帳
・戸籍謄本
・死亡診断書のコピー
・源泉徴収票
・受取先金融機関の通帳
・印鑑など

家族信託で相続による財産承継が生じないケース

相続は通常、民法に基づき死亡と同時に開始され、相続人が被相続人の権利義務を承継します(民法882条、896条)。

しかし、家族信託を利用している場合は異なる承継方法が可能 です。

なぜなら、信託法は民法の特別法として位置づけられており、信託財産については民法の相続ルールよりも信託法が優先して適用されるためです。

つまり、財産の大部分を信託している場合、通常の相続手続きが生じないケースも考えられます。(ただし、農地など信託できない財産については、従来通りの相続手続きが必要)

では、委託者兼受益者に相続が発生した場合、具体的にどのような点に注意すべきでしょうか。

以下の3つのポイントについて詳しく解説します。

(1)どの財産が信託されているのか信託契約書で確認

まずは委託者兼受益者の財産のうち「どの財産が信託されているのか」という確認を行うことが重要です。

信託されていない財産については当然通常の相続が開始するため、信託していない財産の承継方法について遺言がなければ、遺産分割協議によって決めていくことになります。

信託財産については、以下の方法で確認が可能です。

信託財産確認方法

  • 信託契約書の確認
  • 不動産の場合は登記簿での信託登記の確認
  • 金銭の場合は信託口座の有無の確認

(2)委託者死亡により信託が終了する契約かどうか

家族信託では、委託者(兼受益者)が死亡したとしても、即座に信託が終了するわけではありません。

信託を終了させる事由は信託契約で自由に定めておくことができる ため、契約内容に沿った形で終了するかどうか が決まります。

もし委託者(兼受益者)の死亡により終了する場合、残余財産の行方は次のようにわかれます。

信託契約で承継人が指定されている場合

  • 帰属権利者等に承継
  • 信託契約に基づく承継のため、相続は発生しない

信託契約で承継人の指定されていない場合

  • 委託者の相続人が帰属権利者として承継(信託法182条)
  • 信託していない財産については通常の相続手続きが必要

(3)受益権の承継方法について信託契約に定められているか

受益権の承継方法は、信託契約の内容によって大きく異なります

契約の内容次第で、信託法のルールか相続のルールのいずれかが適用されることになります。

そのため、以下の点を事前に確認しておくことが重要です。

  • 受益権の承継者は指定されているか
  • 承継の条件はどのように定められているか
  • 受益権の分割は可能か
  • 相続人の遺留分は考慮されているか

家族信託と相続に関するよくある質問とその答え

ここでは、家族信託と相続に関するよくある質問とその答えについて、紹介します。

Q1 家族信託を利用すると相続税は軽減されますか?

A1 家族信託を利用しても、直接的な相続税の軽減効果はありません。

なぜなら、信託財産の評価額は通常の相続財産と同様の方法で計算されるためです。

ただし、信託財産の管理・運用方法によっては、間接的に相続税対策につながる場合があります。

たとえば、受託者への信託報酬を設定することで信託財産の評価額を抑える効果や、信託財産の有効活用により将来的な相続財産の増加を防ぐといった方法が考えられます。

相続税対策を考える場合は、家族信託単独ではなく、他の対策と組み合わせて検討することをおすすめします。

Q2 家族信託中に委託者が亡くなった場合、すぐに相続が始まりますか?

A2 家族信託中に委託者が亡くなった場合の相続の開始は、信託契約の内容によって異なります。

信託が継続される場合には、受益権が次の受益者に移動し、この時点で相続税が課税されます。

一方、信託が終了する場合には、指定された帰属権利者に信託財産が移転し、この時点で相続が発生します。

いずれの場合も、相続税の申告期限は委託者の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内となる点に注意しましょう。

Q3 家族信託を利用している場合、遺言書は必要ありませんか?

A3 家族信託を利用していても、遺言書を作成することが推奨されます。

その理由は以下の通りです。

遺言書を作成した方がよい理由

  • 信託財産以外の個人資産の取り扱いを明確にできる
  • 信託契約で定めていない事項について指示を残せる
  • 相続人間の争いを防ぐことができる

遺言書と家族信託は、それぞれの特徴を活かしながら、補完的に活用することでより効果的な財産承継が実現できます。

相続手続きだけでなく承継についても充分な検討を

家族信託を活用した財産承継を検討する際は、以下の3つの観点から十分な検討が必要です。

1. 財産の性質に応じた承継方法の選択
財産の種類や性質によって、最適な承継方法は異なります。不動産、金融資産、事業用財産など、それぞれの特性を踏まえた承継方法を検討することが大切です。

2. 家族の状況を考慮した承継計画
家族の年齢、健康状態、経済状況、居住地などを考慮し、現実的な承継計画を立てることが大切です。特に認知症対策として家族信託を活用する場合は、より慎重な検討が必要です。

3. 将来を見据えた柔軟な対応
社会情勢や法制度の変更、家族の状況変化など、将来的な変化にも対応できる柔軟な信託契約の設計が重要です。必要に応じて契約内容の見直しも検討しましょう。

早い段階から専門家に相談し、十分な準備期間を確保することで、より良い財産承継が実現できます。

また、定期的に計画を見直すことで、状況の変化にも適切に対応できるでしょう。

家族信託は財産承継の有効なツールの一つですが、万能な解決策ではありません。

相続手続きと併せて、総合的な観点から検討を行うことが大切です。

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