家族のために保険に加入していても、加入者本人が認知症になってしまった場合はどうなるのでしょうか。

また保険の受取人が未成年の場合や、保険請求できる家族が未成年のみという場合、保険金の手続きをすることは可能なのでしょうか?

具体的な事例や対策法を含めて手続き方法をお伝えします。

まずは家族信託について詳しく知りたい、あるいは家族信託のメリット・デメリット・費用について調べたい場合は、こちらの記事をご参照ください。

要約

  • 保険加入者が認知症になった場合の請求方法は2つ
  • ①保険加入者の親族が「成年後見人」を立て、代理で請求をする
  • ②保険加入者が事前に「指定代理請求人」の届出を出しておき、代理で請求をする
  • 未成年者が親の死亡保険金を請求するには、未成年後見制度を利用する
  • しかし不安が残りやすいため「指定代理請求人」を決めておくと安心
  • または遺言書を作成しておく方法もあるが2パターンあるので要確認
  • 家族を守る方法は様々。最適な方法を選択するためお早めに専門家へご相談を

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保険加入者が認知症になった場合の保険請求

最初の事例は、保険に入っていた方が認知症になってしまったら、保険の請求はできるのかというお話です。

ガン保険加入者がガンと診断され、保険請求をするケースです。

しかし加入者本人は、その診断を受ける前に認知症になってしまいました。

保険金の請求には本人の意思表示が必要になります。本人が意思表示をできない場合、保険金を受け取ることはできるのでしょうか。

[1]保険加入者が『成年後見人』制度を利用した場合

法律上の観点から考えると、認知症などで本人の意思表示が難しい場合、「成年後見人」を立てその人物が本人の代わりに保険の請求をします。

成年後見人は、ご親族が家庭裁判所へ申立てをし、裁判所が選んだ人物が後見人となります。成年後見人が保険会社へ請求し、保険金の受取りもします。

ただし後見人の選定には数か月を要することもあり、保険金を使うときも成年後見人が必要だと思う範囲内でしか使うことができません。

また、後見人に弁護士・司法書士等の専門家が就いた場合、所定の専門家報酬を支払わなくてはなりません。

成年後見制度を利用する場合の注意点については下記記事にて解説しています。

この記事では、成年後見制度の注意点やデメリットの中から、5つのポイントに絞って解説します。家族が将来、同制度を利用するかもしれないと考えている場合はぜひ参考にしてみてください。
成年後見制度の5つのデメリットとは?利用による問題点や生じた事例と対策も解説

[2]事前に『指定代理請求人』の届出をしておく

こういった成年後見人のデメリットがあるため、この制度を使わないで済むよう皆様にやっておいて欲しいことがあります。

それは『指定代理請求人』を保険会社へ届け出しておくことです。

『指定代理請求人』とは、意思表示ができない被保険者の代わりに保険金などを請求できる人で、事前に指定しておくことができます。

《指定代理請求人になることができる人物》

指定代理請求人の範囲は生命保険会社によって異なりますが、おおよそ以下のような人物となります。

  • 本人からみた配偶者、直系血族、同一生計の三親等内親族
  • 家族信託を契約している場合は、その「受託者」など

認知症になってからガンと診断されても、指定代理請求人が保険会社へ請求することで保険金を受け取ることができます。

また保険金は加入者の口座ではなく、指定代理請求人の口座に振り込まれますので、受け取った人が医療費として自由に支出することが可能となります。

未成年者が親の死亡保険金を請求するには?

保険請求時に困ってしまうパターンがもう一つあります。保険金の請求ができる家族が未成年者のみというケースです。

次のお話は弊社で実際にご相談を受けた事例です。

家族構成は夫、妻(相談者)、子の3人家族で、お子様は10歳でした。夫に問題があり離婚し、親権は妻が持つことになりました。

妻は、もし自分に万が一のことがあっても子が大学を出ることができるだけのお金を遺せるよう死亡保険に入りました。

仮に今、妻が死亡したら、保険金の請求ができるのは誰か。原則はお子様です。

しかし今回の場合、お子様は未成年者です。未成年者は法律上、行為能力がないので、お子様が保険金を請求することはできません。

(1)成人年齢の改正について

まず、成人年齢についての民法改正について記載します。

民法が改正され、2022年4月から成人に達する年齢は18歳となります(民法第4条)。そのため、2022年4月1日に18歳・19歳の人は同日、新成人という扱いになります。

18歳以上であれば、法定代理人の同意を得ずに、成人として契約締結をはじめとした法律行為を行えるようになります。

(2)『未成年後見』制度では不安が残る場合も

行為能力のない子(未成年など)の代わりに『未成年後見』という制度があります。

家庭裁判所に、未成年者の親族や未成年者本人、利害関係人(児童相談所長や里親等)が申し立て、後見人の選定を申請します。

未成年後見人は親権を持つことになり、保険金の請求もこの未成年後見人がすることになります。

では、未成年後見人には誰が選ばれるのでしょうか。

家庭裁判所は、成年後見人と同じように親族、あるいは専門家の中から適切な人を選びます。妻が残した預金や保険金が多額であればあるほど専門家が選ばれる可能性が高くなります。

また他に候補者がいなければ、別れた夫が未成年後見人になる可能性もあります。夫が保険金を請求し、自分のために使ってしまうことも考えられるわけです。

それでは妻としては不安ですよね。

(3)『指定代理請求人』を決めておくと安心

そのため、やはり考えていただきたいのが「指定代理請求人」を決めておく方法です。

指定代理請求人は、保険金・給付金を請求する時点で未成年の場合は、指定代理請求人の親権者または後見人が手続きをすることになります。

そのため、未成年後見人をあらかじめ決めておくと安心です。

事前に決めておく方法として、妻(子の母親)が遺言書を作成し、
「私が死んだら自分が親権を行使している子どもの未成年後見人は〇〇さんに依頼をします」ときちんと定めておくのです。

こうしておけば、妻がこの人であれば任せられるという人物を未成年後見人に推薦することができます。

家庭裁判所へ未成年後見人を申し立てた際に、その時点で仮に上記の立候補者が不適切だと判断されれば第三者の専門家が就任することになりますが、少なくとも不本意な人物が選任される状況を避けることができます。

(4)遺言の作成について

遺言書には「公正証書遺言」や「自筆証書遺言」があります。

2020年7月から法務局で自筆証書遺言の「保管制度」が開始したため、遺言書の管理方法が増えて利便性も高まっています。

●公正証書遺言…「公証役場」で保管
●自筆証書遺言…「法務局」に保管する方法/全文を自書して「検認」を受け、自宅で保管する方法

自筆証書遺言の「保管制度」は全国の法務局のうち、法務大臣の指定する法務局が「遺言書保管所」として遺言書の保管に関する事務を行います。 (遺言書保管法4条1項)

遺言書の利用を検討する際は管轄署を確認しておきましょう。

遺言書の作成についてはこちらの記事内でも解説しています。

認知症になってしまうと遺言やエンディングノートを遺せないので、早めに準備しておきましょう!という話を耳にすることがあると思います。では、遺言書があれば備えは十分でしょうか。認知症になった際、口座に年金が入ってきても、介護費や生活費支払いにきちんと充てることができるでしょうか。実際の手続きと合わせてお話していきます。
「遺言書作っていれば、認知症になっても大丈夫。」は本当か?

まとめ

今回のテーマは、保険金を請求するときに請求者の状況によっては対策をしておく必要があるというテーマでお話させていただきました。

認知症でも未成年者でも、事前に『指定代理請求人』を決めておくことで、保険金を受け取る際の不安が減ります。

ただし、未成年後見制度を利用する場合、今回のような保険金の受取り等が解決しても後見人の職責はそのまま続きます。第三者の専門職が後見人になっている場合は、未成年者の財産から報酬を支払わなくてはなりません。

後見人制度にはそのような特徴があるため、利用には慎重にならざるを得ないといえるでしょう。

保険加入者が認知症になったとき、死亡されたとき、保険請求についてどのような対策ができるのか、専門家にご相談いただけましたらご家族にとって適した方法をご提案いたします。

家族を守る制度の検討については、ぜひ司法書士等の専門家へご相談ください。

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