銀行口座の凍結は、名義人が死亡したり、認知症と判断された時などに起こります。

口座凍結が起こると、預金口座からの引き出しや、振込、窓口での手続きなど、一部または全部の取引ができなくなってしまいます。

正しい知識を持って対策を行えば、口座凍結を防ぎ、不要なトラブルを回避することもできますので、本記事で詳しく解説していきます。

要約

  • 口座凍結とは、銀行口座の一部または全部の取引が停止されること
  • 口座凍結は、名義人が死亡したときや認知症だと判断された時に起こる
  • 死亡による口座凍結を解除するには銀行が指定する書類(戸籍謄本等)を提出する
  • 認知症による口座凍結を解除するには成年後見制度を利用する
  • 家族信託、任意後見制度、遺言などで口座凍結の対策ができる
  • 口座凍結直前直後の安易な預金の引き落としには注意が必要

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口座凍結とは

口座凍結とは、銀行口座の一部または全部の取引が停止されることを指します。

口座が凍結されると、例えば、キャッシュカードや通帳での預金の引き出し、家賃や公共料金の引き落とし、他口座への振込などができなくなります。

では、口座凍結はいつ、そしてなぜ起こるのでしょうか。

詳しくみていきましょう。

口座凍結はいつ起こる?

口座凍結が起こるタイミングは、主に以下の4つです。

  • 名義人の死亡が確認されたとき
  • 名義人が認知症だと判断されたとき
  • 債務整理手続きが開始したとき
  • 犯罪等への不正利用の可能性があるケース

口座凍結の理由と合わせてみていきましょう。

名義人の死亡が確認されたとき

名義人の死亡が確認されたとき

親族からの連絡などにより、銀行が口座名義人の死亡を確認したとき、口座が凍結されます。

死亡後の口座凍結では、預金の引き出し、家賃やクレジットカードの自動引き落とし、振込、窓口手続きなど、一切の銀行取引が停止されます。

口座名義人が死亡すると口座の残高は相続財産となりますが、相続人への承継や相続税の課税が適切に行われるようするためには、相続財産を確定しなければならないためです。

よって、余計な取引やトラブルが起こらないように、名義人が死亡した際は一時的に口座が凍結されるのです。

ここで重要なのは、名義人の死亡により口座が凍結されるのは、銀行が死亡を「確認したとき」だということです。

死亡届を役所に提出したときや、銀行が死亡の事実を第三者から耳にしたときに、自動的に凍結されることは原則ありません。

相続財産を確定し、余計な取引やトラブルが起こらないようにするためにも、名義人が死亡した場合は速やかに取引銀行に連絡しましょう。

名義人が認知症だと判断されたとき

名義人が認知症だと判断されたとき

口座名義人の言動や取引履歴などから、銀行が名義人を認知症だと判断した場合も、銀行口座が凍結されてしまいます。

なぜなら、認知症により名義人の判断能力が低下し、悪徳業者の勧誘や振り込め詐欺などの被害に巻き込まれることを防ぐためです。

この場合、現金の引き落としや定期預金の解約など、一部の手続きは制限されますが、自動引き落とし(家賃・公共料金など)や他口座からの振込などは継続して行われます。

その他のケース

名義人の死亡や認知症以外にも、以下の場合に口座凍結が起こります。

  • 債務整理手続きが開始したとき
  • 犯罪等に不正利用された可能性が確認されたとき

債務整理手続きの場合は、基本的に司法書士や弁護士などの専門家に依頼して手続きを行うため、予期せぬ口座凍結とはなりません。

ただし、犯罪等に不正利用された可能性が確認された場合は、事件の発生により警察から銀行に直接連絡が行き、本人への確認を介さずに口座凍結が起こる可能性があります。

この場合は、自分が事件に関与していないことを証明する一定の手続きが必要となります。

事件や犯罪に巻き込まれないためにも、日頃から銀行の口座情報や個人情報、暗証番号などは厳重に管理する習慣をつけておきましょう。

名義人の死亡による口座凍結の解除方法

名義人の死亡による口座凍結の解除は以下の流れで行います。

  1. 銀行に口座凍結解除に必要な書類を確認する
  2. 必要書類を収集する
  3. 必要書類を銀行に提出する
  4. 銀行が提出書類を確認する
  5. 凍結解除(解約または名義変更)

順に解説していきます。

1. 口座凍結解除に必要な書類を銀行へ確認する

名義人の死亡による口座凍結を解除するには、銀行が指定する必要書類を集めて提出する必要があります。

必要書類は「遺言書」「遺産分割協議書」の有無や、銀行によっても異なるため、まずは銀行と連絡をとり、必要な書類を確認しましょう。

必要書類の例は以下の通りです。

口座凍結解除に必要な書類の例(遺言書・遺産分割協議書がない場合)

  • 銀行所定の相続届(法定相続人全員の署名・捺印(実印)が必要)
  • 戸籍謄本(原本)
  • 印鑑証明書(発行日より6ヶ月以内のもの)法定相続人全員分
  • 通帳(証書)・キャッシュカード・貸金庫の鍵など

参考: ご用意いただく書類|三菱UFJ銀行

遺言書や遺産分割協議書がある場合は、該当の書類と、相続する者の戸籍謄本・印鑑証明書等も必要となります。

詳しくは、各金融機関のHPをご確認ください。

名義人の死亡による口座凍結解除に必要な書類

  • 三菱UFJ銀行
  • 三井住友銀行
  • みずほ銀行
  • ゆうちょ銀行
  • りそな銀行

2. 必要書類を収集する

銀行の指示に従い、必要書類を収集します。

戸籍謄本・印鑑証明書が代表的な必要書類ですが、重要なのは、被相続人・相続人全員のものが必要となるということです。

相続人が遠方に住んでいたり、関係性が良好でない場合でも、全員分を集めなければならないので、親族間での話し合いや遺言の作成など、事前に相続人全員で対策しておくことの重要性が伺えます。

戸籍謄本の原本は、現状住所登録している地域ではなく、本籍地を管轄する役所で取得しなければなりません。

また、出生から死亡までの全ての戸籍謄本を集める必要があるため、結婚や引越しなどで転籍を繰り返していれば、全ての本籍地の役所に交付請求を行う必要があります。

転籍の履歴も役所に残っていますので、できる限り窓口に直接出向き、どこに転籍したか(次はどの役所で戸籍謄本を取得すれば良いか)を聞くとスムーズに書類収集を進められるでしょう。

戸籍謄本(原本)の取り方

  • 本籍地を管轄する役所の窓口で請求する
  • 本籍地を管轄する役所に郵送で請求する

印鑑証明書の取り方

  • 住民登録している住所を管轄する役所の窓口で請求する
  • インターネットで請求する
    ※自治体によって異なります。

3. 必要書類を銀行に提出する

収集した必要書類を銀行に提出します。

複数の銀行で口座を所有していた場合、銀行の数だけ凍結解除の手続きを行う必要がありますが、銀行によっては提出した戸籍謄本の原本が返却されるまでに時間がかかるケースがあります。

返却に時間がかかると、他の銀行口座での凍結解除手続きも滞るため、その場でコピーしてもらい、原本を速やかに返却してもらうように交渉するとよいでしょう。

4. 銀行が提出書類を確認する

銀行が、提出された書類を確認します。

基本的な必要書類は各銀行でそれほど変わりありませんが、取引の内容や親族・相続の事情によって追加書類の提出を依頼されるケースもあります。

その場合は、速やかに対応し、不明点は必ず聞いてから書類収集を行うようにしましょう。

5. 凍結解除(解約または名義変更)

提出した書類に問題がなければ、口座凍結が解除され、取引ができるようになります。

凍結が解除された預金口座の遺産は、主に以下の2つの方法で相続人に承継されます。

  • 預金口座を解約して現金を相続人の口座に振り込む
  • 預金口座の名義を相続人に変更する

また、口座凍結解除の手続きに気を取られて、相続税の申告を忘れないようにしましょう。

相続税の申告は、死亡を知った時点から10ヶ月以内に行わなければならず、適切な申告を行わなければ特例措置や控除なども適用されないため、注意が必要です。

相続対策や相続税の申告・節税に関しては、専門的な知識が必要となりますので税理士や司法書士などに相談することをおすすめします。

名義人の認知症による口座凍結の解除方法

名義人の認知症による口座凍結の解除は、以下の流れで行います。

  1. 「後見開始の申立て」の準備をする
  2. 家庭裁判所へ後見開始の申立てをする
  3. 後見開始の審判が下され、成年後見人が選任される
  4. 成年後見人が銀行に必要書類を提出する
  5. 銀行が提出書類を確認する
  6. 凍結解除(成年後見人による代理手続き開始)

大きな特徴は、成年後見制度の利用が必要だということです。

認知症により判断能力を欠いた口座名義人は、銀行の取引や手続きで必要となる有効な意思表示ができません。

そこで、判断能力を欠いた本人の代わりに、手続きや契約を行ったり、日常生活を法的に支援したりする成年後見人が、凍結解除の手続きを行わなければならないのです。

成年後見人が、凍結解除の手続きを行わなければならない

では、具体的な手順について詳しくみていきましょう。

1.後見開始の申立て準備をする

まずは、家庭裁判所に「後見開始の申立て」を行うための準備をします。

なぜなら、申立てを行うには家庭裁判所が指定する複数の書類や申立て費用が必要となるためです。

後見開始の申立て

具体的な必要書類と費用の一部をご紹介します。詳しくは 最高裁判所公式HP をご確認ください。

申立てに必要な書類(例)

  • 申立書

  • 申立添付書類

    • 本人の戸籍謄本(全部事項証明書)(発行から3ヶ月以内のもの)
    • 本人の住民票または戸籍附票(発行から3ヶ月以内のもの)
    • 成年後見候補者の住民票又は戸籍附票
    • 本人の診断書
    • 本人の健康状態に関する資料(介護保険認定書、身体障害者手帳などの写し)
    • 本人の財産に関する資料(預貯金通帳写し、不動産登記事項証明書、ローン契約書写しなど)
    • 本人の収支に関する資料(年金額決定通知書、給与明細書、施設利用料、国民健康保険料等の決定通知書など)

申立てに必要な費用

  • 申立手数料 収入印紙800円分
  • 連絡用の郵便切手
  • 登記手数料 収入印紙2600円分
  • 鑑定費用(必要な場合)

参考1: 後見開始|最高裁判所、後見・保佐・補助開始の審判の申立てについて|最高裁判所
参考2: 後見・保佐・補助開始の審判の申立てについて|最高裁判所

申立ての準備は本人の家族が行うことももちろん可能ですが、慣れていなければ非常に時間がかかってしまう可能性もあります。

必要書類に不備があった場合、再度適切な書類を集めて出直さなければならないためさらに時間と手間がかかるでしょう。

そのため、できる限り司法書士など、成年後見制度の利用や申立て手続きに慣れていて、知識も豊富な専門家に相談することがおすすめです。

弊社でも、成年後見制度や相続対策などの豊富な知識と経験を踏まえながら、本人とご家族の状況に応じてご提案や支援をさせていただいております。

「認知症の親の口座が凍結してしまった」「自分や親の口座が認知症で凍結するのが不安」という方は、ぜひまずは一度お気軽にお問い合わせください。

2.家庭裁判所へ後見開始の申立てをする

必要書類と費用を準備できたら、本人(認知症になった口座名義人)の住所地を管轄する家庭裁判所へ提出します。

申立て後、裁判所の職員が、申立人、後見人候補者、本人から事情を聞いたり、本人の親族に後見人候補者についての意見や事情を聞いたりする「審問」や「調査」が行われます。
参考: 裁判手続 家事事件 Q&A「手続の流れは,どのようになっているのですか。」|裁判所

※本人の状況によっては、鑑定(本人に判断能力がどの程度あるかを医学的に判定するための手続き)を行うこともありますが、鑑定を実施する割合は全体の約4.9%と多くはありません。
参考: 成年後見関係事件の概況―令和4年1月~12月―(p.9)

3.成年後見人が選任される

申立てに基づき、家庭裁判所の職員が調査・審問・鑑定などを行ったうえで「後見開始の審判」をすると同時に、最も適任と思われる方が成年後見人に選任されます。

申立書は、本人の親族を後見人候補として提出することも可能ですが、必ずしも候補者が選任されるとは限りません。
見ず知らずの専門家が成年後見人に選任される可能性もあります。

実際の統計からも、8割程度の割合で親族以外の専門家が成年後見人に選任されていることが分かります。

一方で、親族が成年後見人に選任されたとしても、後見業務は家庭裁判所の監視のもと本人が亡くなるまで続けなければならず、後見人にとって身体的・精神的な負担となってしまう可能性もあるでしょう。

慣れない後見開始の手続きや後見業務において、本人や家族の精神的な負担が重ならないようにするためにも、成年後見制度を利用する際は、司法書士などの専門家へ相談するようにしましょう。

4.成年後見人が銀行に必要書類を提出する

成年後見人が選任されれば、成年後見人が本人に代わって口座凍結解除の手続きを行えるようになります。

口座凍結を解除するには、銀行が指定する書類の提出が必要です。

銀行によって必要な書類は異なりますが、具体例は以下の通りです。

  • 銀行所定の届出書
  • 成年後見制度利用に係る「登記事項証明書」
  • 成年後見人の本人確認書類
  • 口座名義人の本人確認書類
  • 預金口座の通帳、成年後見人の実印・届印・印鑑証明書

参考: 成年後見制度に関するご案内|三菱UFJ銀行

成年後見人が手続きする際には、成年後見制度利用に係る「登記事項証明書」が必要となることが特徴的です。

成年後見制度を利用していることを公的に示す証明書で、法務局に対して交付申請を行い、交付を受けることができます。

5.銀行が提出書類を確認する

成年後見人が提出した書類に不備がないか、銀行が確認します。

状況によっては、追加で書類の提出を求められることもあります。

6.凍結解除(成年後見人による代理手続き開始)

提出した書類に問題がなければ、口座の凍結は解除されます。

成年後見人が本人に代わって、預金の引き出しなどの預金口座に関する手続きを行えるようになります。

ただし注意したい点は、成年後見人の役割はあくまでも本人の財産の保護や維持であるということです。

よって、成年後見人が自由に、または本人の希望の通りに預金口座のお金を扱えるわけではありません。

例えば、本人が「孫の入学祝いにまとまったお金を渡したい」という希望をもっていても、その行為は孫への贈与であり、本人の利益には直接的につながるものではないため、後見人の行為としてふさわしくないとみなされてしまうのです。

このように、成年後見制度は認知症の名義人の口座凍結を解除できる唯一の手段ですが、実は「財産管理が制限される」「本人が亡くなるまで(口座凍結が解除できた後も)続く」などのデメリットがあることも覚えておかなくてはなりません。

成年後見制度については、以下の記事でもより詳しく解説していますので、ぜひご確認ください。

成年後見制度(せいねんこうけんせいど)とは、認知症や知的障害などで判断能力が低下した人の契約や財産管理のサポートを行う制度です。「成年後見人」を家庭裁判所から選任してもらい、本人に代わって様々な手続きを行なってもらいます。この記事では成年後見制度についてわかりやすく説明し、同時に最近注目を浴びている家族信託との比較についても解説します。
【完全版】成年後見制度とは?司法書士がわかりやすく解説
成年後見制度は、認知症や知的障害などで判断能力が低下した方々を、不利益や不当な契約から守る制度です。しかし、法的な拘束力が高く「成年後見制度はひどい」と言われることもあるようです。本記事では、成年後見制度がひどいと言われる理由や代わりに使える制度などについて解説していきます。
成年後見制度はひどい?使ってはいけない場合や他の制度を全て紹介します

死亡による口座凍結も、認知症による口座凍結も、そのリスクや凍結後の影響について事前に考え、本人と親族や相続人で対策しておくことで、煩雑な手続きやトラブルを最大限に回避できます。

遺言を作成したり、家族信託(後述)を利用したりなど、できる対策は複数ありますが、これらは全て法的な行為であり、本人の「意思能力」が必要です。

何よりも「認知症になる前の元気なうちに」対策することが大きなポイントです。

では、事前にできる口座凍結への対策について、詳しく解説していきます。

予期せぬ口座凍結への3つの対策

予期せぬ口座凍結への対策法は、以下の3つです。

  1. 家族信託を利用する
  2. 任意後見制度を利用する
  3. 遺言を作成しておく

それぞれ詳しく解説していきます。

1.家族信託を利用する

家族信託とは、本人が元気なうちに、財産管理を信頼できる家族に託しておく法的な制度です。

本人が認知症になると、預金口座が凍結されるだけでなく、所有する不動産の売却や契約などができなくなる「資産凍結」の状態に陥ってしまいます。

そこで、家族信託を利用し、財産の管理・運用を委託者から受託者へ委託しておけば、委託者が認知症になったとしても、受託者が預金口座からの引き出し、不動産を売却などの財産管理を滞りなく行えるのです。

口座凍結を含めた「資産凍結を防ぐ」ことができる制度です。

その他にも、家族信託を利用するメリットは複数あります。

家族信託で財産を信託しておくメリット

  • 委託者が認知症になっても滞りなく財産の管理や運用が行える
  • 成年後見制度では難しい財産の運用や投資などが柔軟に行える
  • 委託者が亡くなってからの財産承継についても定められる(遺言の代用になる)

家族信託のメリットや具体的な進め方については、以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひご確認ください。

家族信託は「認知症による資産凍結」を防ぐ法的制度です。認知症が進行し意思能力を喪失したと判断されてしまうと、銀行預金を引き下ろせない、定期預金を解約できない(口座凍結)、自宅を売却できないなどのいわゆる「資産凍結」状態に陥ってしまいます。そのような事態を防ぐために、近年「家族信託」が注目されてきています。この記事では家族信託の仕組みやメリット、デメリットをわかりやすく解説します。
家族信託とは?わかりやすくメリット・デメリットを徹底解説します

よくある家族信託のパターンは、親の認知症に備えて子が受託者となり、委託者である親の財産の管理を任される、というものです。

さらに、家族信託では委託者と受託者に加え、財産から発生した利益や権利を得る「受益者」を設定します。

例えば、金銭は受益者の利益のために使われますし、アパートなどからの家賃収入、不動産を売却した際の売却益は受益者が得ることができます。

家族信託の場合、受益者=委託者(親)として定められることが多く、親も安心して受託者に財産管理を任せることが可能です。

家族信託の仕組み

委託者の判断能力に関わらず、家族ごとの信託の内容に基づいて柔軟に財産管理を続けられるという、大きなメリットを持つ制度ですが、実際に進めていく際は、司法書士など法律の専門家のサポートを受けることをおすすめします。

なぜなら、家族信託を組成するには信託法や民法など法律の知識が必要となるためです。

また、相続対策や税金対策なども踏まえて準備しておきたい場合は、税金の詳しい知識も必要となります。

弊社では、司法書士などの専門家がご家族の状況に合わせて、家族信託のサポートを行っています。

家族信託は比較的新しい制度であり、専門家でも家族信託の実績を多く有している方は多くありません。

銀行口座や資産の凍結が不安な方、家族信託を検討している方は、ぜひ一度弊社までお気軽にお問い合わせください。

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2.任意後見制度を利用する

2つ目の対策は、任意後見制度です。

任意後見制度は、認知症などの判断能力低下に備えて、本人が元気なうちにあらかじめ任意後見人を指定し、財産管理や入院・施設の入所契約などの事柄(身上監護)について代理権を与えておく制度です。
参考: 4 任意後見契約|日本公証人連合会

前段の「名義人の認知症による口座凍結の解除方法」で解説した成年後見制度は、口座の名義人が認知症になった後に家庭裁判所が後見人を選任する「法定後見制度」を指しますが、任意後見制度では、事前に後見人となる人や後見の内容を定めておける点が異なります。

本人に十分な判断能力があるうちに、財産管理と身上監護について、任意後見人に代わりにしてほしいことを「任意後見契約」にて定め、2者間で締結しておきます。

ここで、本人の預金口座からの引き出しや、生活費・医療費・介護費などの支払いを任意後見人が行えるように定めておけば、本人が認知症になったとしても口座の凍結は起こりません。

任意後見契約の効力が発生するのは、本人が認知症になり判断能力が低下した際に家庭裁判所へ申立てを行い、家庭裁判所が「任意後見監督人」を選任した時点です(任意後見契約に関する法律2条の1)。

自由に任意後見人を指定できる分、任意後見監督人による監督や家庭裁判所の関与があるため、家族信託と比較すると財産管理の柔軟性は制限されます。

法定後見制度と同様、リスクを伴う資産運用や投資、本人の財産が減るような行為は後見内容として認められませんので、注意しましょう。

ただし、任意後見制度では、家族信託では定められない身上監護に関する代理権(医療や介護、日常生活で必要な契約や手続きに関する代理権)を任意後見人に与えられるというメリットもあります。

家族信託と併用し、両方の制度のメリットをうまく利用することも可能ですので、ご検討の際はぜひ司法書士などの専門家にご相談ください。

3.遺言を作成しておく

遺言を作成しておくと、名義人の死亡による口座凍結の解除手続きや遺産分割協議、相続税の申告などにかかる親族の負担が大きく軽減されます。

また、遺言がなければ、本人とは疎遠となっていた親族に財産が相続されたりと、本人の意図しない形で財産が相続される可能性もあります。

遺言は民法で定められた法律行為であり、認知症などで判断能力が低下してから作成したものは無効となってしまいますので、早めに作成しておきましょう。
(遺言は新しいものが適用されますので、後から書き換えることも可能です。)

遺言内容を確実に実現させるためには、公正証書での作成をおすすめします(公正証書遺言)。

遺言の作成方法は大きく分けて3種類(自筆証書・公正証書・秘密証書)がありますが、公正証書遺言は最も法的な証明力と信頼性が高い遺言です。

公正証書遺言は、公証役場へ出向き、必要な資料や面談などを経たうえで、証人2名の前で本人が遺言内容を述べ、公証人が作成する遺言です。

公正証書遺言は公証役場で保管されるため、紛失のおそれもなく、相続発生時の家庭裁判所による検認も不要なため、死亡後の口座凍結解除や相続手続きがスムーズに行えるようになります。

※検認:相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして,遺言書の偽造・変造を防止するための手続きのこと
参考: 遺言書の検認|最高裁判所

ただし、法的な証明力が高い公正証書で遺言を残すには、書類の提出や公証人との打ち合わせなどの手間が発生します。

自分たちだけで作成するには、慣れない手続きに手間や負担がかかることもあるため、法律の専門家である司法書士などに相談することをおすすめします。

口座凍結に備えてやっておいた方が良いこと4つ

前段では、口座凍結に備えてできる法的な対策や制度をご紹介しました。

その他に、日常生活からできる小さな工夫や対策を行っておくことも重要です。

口座凍結に備えてやっておいた方が良いことを4つご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

  • 預金口座を整理しておく
  • 一定額の現金を引き出しておく
  • 公共料金や家賃等の引き落とし口座を変更しておく
  • 生命保険に加入しておく

それぞれ解説していきます。

銀行口座を整理しておく

1つ目は、銀行口座を整理しておくことです。

なぜなら、死亡や認知症により銀行口座が凍結した場合、所有している口座が多かったり、通帳やキャッシュカードがなかったりすると、その分口座凍結の解除にかかる手間や時間が増えるためです。

現在使用していない口座や不要な口座はできる限り解約し、シンプルにしておくことをおすすめします。

また、相続発生時や後見開始時には、本人のすべての財産を把握しなければなりませんので、取引銀行や口座の一覧表を作っておくと良いでしょう。

預金口座の整理

  • 不要な口座は解約しておく
  • 取引銀行・預金口座の一覧表を作成しておく
  • 各銀行口座の届出印・通帳・キャッシュカードを整理し、保管場所を家族に共有しておく

一定額の現金を引き出しておく

2つ目は、一定額の現金を引き出しておくことです。

口座の凍結は銀行が規定する手続きを踏めば解除できますが、凍結解除には一般的に約2〜3週間ほどの時間がかかります。

状況によっては必要資料が追加で必要になったりするとさらに長期間を要する可能性もあるでしょう。

手続きの期間にも、死亡による凍結の場合は葬儀費用、認知症による凍結の場合は生活費や医療・介護費が必要となりますので、一定金額を引き出し、金庫などに保管しておくと安心です。

(後述の「仮払い制度」の利用も可能ですが、所定の手続きや上限がありますので、現金での備えもしておきましょう。)

公共料金や家賃等の引き落とし口座を変更しておく

公共料金や家賃、クレジットカードの引き落とし口座は、子や配偶者名義などの口座に変更しておくことをおすすめします。

なぜなら、口座凍結が起こると(特に死亡による凍結の場合)、全取引が停止され、自動引き落としもできなくなるためです。

引き落としがされなければ、未払いの状態が続くことになり、遅延損害金が発生するおそれもあるため、注意しましょう。

生命保険に加入しておく

生命保険に加入しておくことも有効な対策です。

生命保険の保険金は本人の死亡後、あらかじめ指定された受取人が受け取ることができ、口座凍結による影響を受ける心配がないためです。

口座凍結の影響を受けずに保険金を受け取れれば、本人の死亡時にかかる葬儀費用や遺品整理費用などに充てることもできます。

また、生命保険の保険金も相続税の課税対象にはなりますが、非課税枠の活用もできます。

生命保険の非課税枠は以下を参考にしてください。

生命保険金の非課税限度額=500万円×法定相続人の数

すべての相続人が受け取った保険金の合計額が非課税限度額を超えるときに相続税の課税対象になります。

課税対象になる生命保険金の金額は以下の式で算出されます。

参考: No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金|国税庁

相続税には、他にも配偶者の税額の軽減や、小規模宅地等の特例などの軽減措置があります。

親族や資産の状況によってどの制度が最適かは異なり、複雑な試算を要するケースもあるため、不安な方はぜひ専門家へご相談ください。

すぐにお金が必要な場合は「仮払い制度」が利用可能

「仮払い制度」とは、口座凍結の解除手続きや遺産分割協議をする前でも、被相続人の口座から一定額を引き出せる制度です。

仮払い制度で引き出せる金額には上限が定められています。

引き出し上限額
相続開始時の口座貯金額 ×1/3×相続人の法定相続分
※同一の金融機関からの仮払い金額が150万円を超える場合は、150万円が上限となります。

例:
「被相続人に配偶者無し、子が二人」というパターンですと、法定相続分は、子Aも子Bも2分の1ですので、

300万×1/3×2分の1=50万円
子Aと子Bはどちらも50万円を上限として引き出しが可能です。

(民法909条の2)

仮払い制度の利用に必要な書類や手続きは銀行によって異なりますが、一般的なものは以下の通りです。

仮払い制度の利用に必要な書類

  1. 被相続人(亡くなられた方)の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書(出生から死亡までの連続したもの)
  2. 相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書
  3. 預金の払い戻しを希望される方の印鑑証明書

参考: ご存知ですか?遺産分割前の相続預金の払戻し制度|一般社団法人 全国銀行協会

このように、仮払い制度を利用すれば、銀行口座が凍結した状態でも、申請を行えば上限を超えない範囲でお金を引き出すことができます。

凍結前に預金口座の手続きを行う際の注意点

前述の通り、銀行口座が凍結されるタイミングは「銀行が名義人の死亡を知った時」や「銀行が名義人を認知症だと判断したとき」です。

中には「銀行にバレていないうちにまとまった金額を引き出しておこう」「凍結されたら面倒なので事前に全額を引き出しておこう」などと考える方もいるかもしれません。

口座凍結にはできる限り早い段階で対策しておくことが重要ですが、凍結直前などにまとまった金額の取引を行う場合、以下の点に注意する必要があります。

  • 負債も相続しなければならなくなる(相続放棄ができなくなる)可能性がある
  • 相続人間でのトラブルが発生する可能性がある

それぞれ見ていきましょう。

負債も相続しなければならなくなる可能性がある

口座凍結されたら面倒だからと、凍結前に被相続人の口座からまとまったお金を引き出すと、相続放棄や限定承認ができなくなる可能性があります。

相続放棄・限定承認

相続放棄
相続人が被相続人の権利や義務を一切受け継がないこと

限定承認
被相続人の債務がどの程度あるか不明であり,財産が残る可能性もある場合等に,相続人が相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐこと

参考: 相続の放棄の申述|最高裁判所

通常、相続放棄や限定承認を選択する場合は、相続開始を知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所にその旨の申述をしなければなりません(民法915条の1)。

ただし、申述もせずに被相続人の口座から現金を引き出したり、消費したりすると、単純承認と見做される可能性があります(民法921条の1,3)。

単純承認とみなされた場合は、被相続人の借金や債務が発覚した場合も、すべて受け継がなければなりません。

名義人が元気なうちに行う計画的な預金残高の整理などであれば問題はないですが、口座凍結直前・直後の預金の引き出しには注意しましょう。

相続人間でのトラブルが発生する可能性がある

口座凍結される前に特定の相続人が預金を引き出した場合、その事実が発覚すれば他の共同相続人から不信感を抱かれたり、相続トラブルや親族間の関係性の悪化につながる可能性があります。

上述の「仮払い制度」など、定められた手順を踏み、葬儀費用などの明確な用途があれば問題はありませんが、誰にも相談せずに勝手に被相続人の預金を引き出してしまうと、私的に利用したと勘違いされてもおかしくありません。

基本的には名義人が死亡した後、まだ口座が凍結されていないとしても、勝手に預金の引き出しを行うことは控えましょう。

相続は相続人全員の合意のもと行われなければなりません。相続人全員が相続財産について明白に把握できるようにしておくことが重要です。

口座凍結についてのよくある質問

口座凍結についてのよくある質問をまとめました。

口座凍結解除にかかる日数はどれくらい?

口座凍結解除にかかる日数は、10日ほどと言われています。

ただし、凍結解除に必要な書類の収集に時間がかかった場合や、金融機関によってはさらに時間がかかってしまうこともあります。

連絡もなくいきなり口座凍結されることはある?

基本的には、連絡もなくいきなり口座凍結されることはありません。

口座凍結は、親族が銀行に口座名義人の死亡を伝えた時や、名義人本人の言動などから認知症だと判断した時に起こるためです。

銀行側が新聞のお悔やみ欄やニュースなどで死亡を知ったとしても、親族に事実確認が入ります。

連絡もなくいきなり口座凍結されるケースは、犯罪などに悪用された可能性があり、警察から銀行に連絡が入った場合などが考えられます。

ネットバンキングの口座も凍結される?

ネットバンキングの口座も同様に凍結されます。

ネットバンキングでは、銀行員と直接やり取りできる窓口がないため、凍結解除の手続きは郵送、オンラインなどで行われます。

まずは銀行に電話などで問い合わせ、必要書類や申請書類が記載された書類が届き、その内容に従って必要書類を郵送するという流れが一般的です。

ネットバンキングでは、直接のやり取りができない分凍結解除にかかる時間も増えることが考えられます。

認知症・相続両方に備えるなら「家族信託」

口座凍結が起こる理由や口座凍結解除方法について詳しく解説してきました。

口座が凍結された場合、所定の手続きにより凍結解除はできますが、何も対策していないのと、認知症や相続発生時に備えて万全な対策をしていた場合とでは、家族や親族の負担やかかる手間が大きく異なります。

中でも、家族信託は認知症対策と相続対策の両方に使えるためおすすめです。

認知症対策としては、受託者へ財産管理を託すことにより、委託者が認知症になったとしても滞りなく財産の管理や運用を継続できます。

家族信託で締結する信託契約の中には、委託者が死亡した際にどのように財産が承継されるかについて指定できるため、遺言の代用としての機能も備えています。

口座凍結が不安な方、認知症や相続に関する対策を検討している方、家族信託を検討している方は、ぜひ認知症対策・相続対策の知識と経験が豊富な弊社まで、お気軽にお問い合わせください。

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家族信託の「おやとこ」では、認知症・資産凍結・相続などに悩むお客様に、司法書士等の専門家がご家族に寄り添い、真心を込めて丁寧にご対応します。

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