家族信託は、信頼できる相手に財産を託して、認知症対策などをする仕組みです。
今は信頼できる相手だといっても、今後も自分の大切な財産をきちんと管理してくれるかどうか自信がない、全面的に信頼できるわけではない、状況次第で人は変わる、と不安に思う方もいるでしょう。
不動産や預貯金、自身で築き上げた大切な資産を誰かに託すことは、たとえ家族であっても、気軽にはできないと思います。不安になる気持ちはとてもよくわかります。
「受託者を手放しで信用できない」
「家族信託をしてむしろ不安になってしまった…」
そんなことになってしまっては、対策ができたとは言えないでしょう。
では、全面的に信頼できる人がいない場合、家族信託を諦めたほうがよいのでしょうか。
方法はありますので、この記事を参考にしていただけたらと思います。
要約
- 受託者が信用できない場合には信託監督人を選任する
- 信託監督人は信頼できる第3者として受託者を監督してもらう役割を果たす
- 受託者の財産管理に不正などがあった場合、信託監督人は都度対応できる権利を持っている
- 信託監督人は、未成年者・判断能力がある人物・信託の受託者以外の人物なら誰でも可能
- 弁護士や司法書士等の専門家も信託監督人になることができる。
- ただし、弁護士や司法書士等の専門家に受託者になってもらうことはできないので注意
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参考記事:
家族信託とは?メリット・デメリット・費用をわかりやすく解説
家族信託とは?メリット・デメリットや手続きをわかりやすく解説!
家族信託は「認知症による資産凍結」を防ぐ仕組みです。本記事では家族信託の詳細や具体的なメリット・デメリット、発生する費用などについて詳しく解説します。将来認知症を発症しても、親子ともに安心できる未来を実現しましょう。目次
信託監督人を選ぶ
全面的に受託者を信用できないという場合には、「信託監督人 」 を選んでおくと良いでしょう。
信託監督人とは、委託者が財産を預ける受託者を監督する役割を果たす人です。
- 受託者が信託財産を私用で使っていないか
- 当初定めた信託の目的とは違う目的で財産を管理していないか
具体的なチェック方法としては、受託者が管理をしている信託用の口座通帳や領収書等を、期間を決めて信託監督人に提出してもらい、受託者が何にいくら使ったのか、不正がないか等の確認をします。
信託法にて信託監督人の権利が定められていますので、もしも不正を発見した場合は受益者の代わりに、不正使用の資産を受託者から取り戻したり、受託者が行った行為を取り消すことができます。
類似記事『家族信託の受託者がお金を使い込んだときは?』でも対策法について解説しています。
信託監督人は誰にすれば良い?
では、信託監督人はどのような人を選ぶと良いのでしょうか。
信託法上は、未成年者や受託者以外の人、また判断能力を有している人であれば、誰でも
選ぶことができます。
つまり、未成年者、成年被後見人、被保佐人、当該信託の受託者は、信託管理人になることはできません。
理想としては、受託者と結託することなく、適正なチェックをしてくれる人を選べると良いでしょう。
もし、家族や知人にそのような人を見つけられなかった場合でも、信託監督人には弁護士や司法書士等の専門家も就任できます。
受託者は家族に任せるけれども、その監督は専門家に任せる、という形の信託契約でも良いでしょう。 受託者の任務遂行をチェックするには、信託法に詳しい専門家が適しています。
ただし、専門家に信託監督人を任せるときには、信託監督人の報酬を支払うこととなりますので、コストがかかってしまうということは留意してください。
信託監督人についてはこちらの記事『信託監督人とは?〜家族信託を監視・監督する重要な役割〜』でも解説しています。
そもそも受託者を専門家に頼むことはできないのか
受託者を監督する人を専門家に依頼することが出来るのであれば、そもそも受託者を専門家に依頼出来ないのでしょうか。
信託監督人とは異なり、受託者については専門家が就任することはできません。
専門家が受託者として仕事をするには、信託業法という法律により、内閣総理大臣の免許を受けた信託会社(株式会社)等でなければならないからです。
そのため基本的に、弁護士や司法書士等の専門家は受託者になることはできません。こちらの記事では家族信託で受託者になれる人について解説しています。
一方、信託監督人については規制がないため、弁護士や司法書士でも信託監督人になることができるのです。
まとめ
今回は、信託監督人についてお話しました。
家族信託では、成年後見制度と違い、裁判所等の第三者機関の監督を受けません。そのため家族の中で相互の管理監督体制を整える必要があります。
受託者に対して少し不安に思っていたり、万が一のことを考えてしまうけれど、家族信託で認知症対策をしたいという場合は、信託監督人という手段を検討してみてください。
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