「他の家系には代々受け継いだ財産を渡したくない!何か良い方法はありますか?」
土地や収益物件を所有しているオーナーさんから上記のような悩みを伺うことがあります。
遺言では自身が亡くなった後の財産の承継者を指定できますが、その次の承継については指定できません。
一方、家族信託では、遺言では指定できない複数世代にわたる承継について定めることが可能です。
資産の受け継ぎ方やその考え方はそれぞれだと思います。
本記事では、そのような地主さんやオーナーさんの想いをかなえる手段の一つとして「後継ぎ遺贈型の受益者連続型信託」という家族信託の仕組み、活用方法を解説します。
複数世代にわたる財産承継をご検討の方へ

親御様の大切な財産について、複数世代にわたって承継者を決めておきたいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
家族信託を適切に組成することで、親御様やご家族のご希望を柔軟に実現できる可能性があります。
「後継遺贈型の受益者連続信託」は、そのための1つの選択肢です。
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*2023年11月期調査(同年10月15日~11月11日実施)に続き2年連続
調査機関:日本マーケティングリサーチ機構
目次
家族信託とは
家族信託とは、一般的に資産所有者の認知症対策として用いられる財産管理の方法の一つです。
家族内で信託契約を結ぶことで、子世代に資産の管理を託し、老後のお金の管理や所有している不動産の処分を任せる方法です。
信託法に沿って柔軟な仕組みづくりができ、それぞれの家族に適した財産管理が可能となります。
家族信託の基礎知識については、以下の記事もぜひご覧ください。
家族信託とは?メリット・デメリットや手続きをわかりやすく解説!
家族信託は「認知症による資産凍結」を防ぐ仕組みです。本記事では家族信託の詳細や具体的なメリット・デメリット、発生する費用などについて詳しく解説します。将来認知症を発症しても、親子ともに安心できる未来を実現しましょう。
後継ぎ遺贈型の受益者連続信託とは
「後継ぎ遺贈型の受益者連続信託」とは、財産の承継者を次世代、次々世代までコントロールする仕組みです。
家族信託は、遺言のように死亡後の財産の承継先を指定できる「遺言代用機能」という特徴をもっています。
そして、遺言では指定できないさらに次の世代への財産承継について定めることも可能です。
例えばある財産を、当初の委託者兼受益者(親)が亡くなったあとは配偶者に承継し、その配偶者が亡くなったあとはお子様やお孫様に承継する、ということを生前に定められます。
「後継ぎ遺贈型の受益者連続信託」はこのように、信託財産を予め指定された人に順次承継されるように規定しておく信託です。
その他「妻に相続した後、子どもがいないので自分の兄弟に財産を渡したい」 などの意向を叶えることもできます。
遺言では自分の財産の承継先の指定は可能ですが、その次の相続については指定できません。
このような財産承継の形は信託が唯一の手段だといえます。
後継ぎ遺贈型受益者連続信託の活用例
後継ぎ遺贈型受益者連続信託の、実際の活用例を2つ紹介していきます。
- 収益不動産の管理と収益の分配
- 自社株の集約・管理
それぞれみていきましょう。
活用例1.収益不動産の管理と収益の分配
年間の収益が数百万、数千万にのぼるような不動産を保有している場合、相続によって共有者を増やしたくはないが、不動産による収益は各相続人でうまく分割したいという状況も起こりえます。
資産の所有者が複数存在すると意思決定には合議が必要となり、名義人が増えると運用・処分が難しくなるという問題点があるためです。
また、相続のたびに共有者が増え、権利関係が複雑になるリスクも考えられます。
この状況を回避し、トラブルを防ぐために、後継遺贈型の受益者連続型信託が活用できます。
具体的には、不動産の管理は特定の受託者に任せながら、受益権としての収益を複数の相続人で分割することが可能です。
例えば、年間で1000万の収益がある一棟ビルを保有するオーナーの相続人が3人、次の相続でも相続人が3人想定される場合、管理は受託者となる人物が引継ぎ、年間1000万の収益は受益権として平等に分割することが可能となります。
活用例2.自社株の集約・管理
中小企業のオーナーの悩みとして「自社株が親族間などに分散してしまっている」ということがあります。
オーナー一族以外の親族に株が分散している場合、オーナー一族以外の株主は、配当目的などで株を保有している可能性が高いため、このような場合にも家族信託は有効です。
信託契約により株式を信託することで、受託者への議決権の集約を試みることが可能です。
交渉による合意形成が前提にはなりますが、家族信託後も株主は今まで通り配当を受け取ることができます。
後継ぎ遺贈型受益者連続信託の注意点
後継ぎ遺贈型の受益者連続信託を活用し、不動産や自社株などの管理・運用に関する問題を解決する仕組み作りは可能です。
ただし信託の期間に限りがあるという注意点があります。
信託法第91条では、信託契約から30年を経過したあとは、受益権の新たな承継は一度しか認められないという旨が定められています。
(受益者の死亡により他の者が新たに受益権を取得する旨の定めのある信託の特例)
第九十一条 受益者の死亡により、当該受益者の有する受益権が消滅し、他の者が新たな受益権を取得する旨の定め(受益者の死亡により順次他の者が受益権を取得する旨の定めを含む。)のある信託は、当該信託がされた時から三十年を経過した時以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって当該受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでの間、その効力を有する。
出典:信託法第91条
そのため、後継ぎ遺贈型信託を利用する際は、以下のような取り組みも必要となります。
自社株の信託:適した時期にオーナー一族や会社が買取る
専門家に相談しながら、信託終了時のことも想定して、計画を立てることをおすすめします。
後継遺贈型の受益者連続信託をご検討の方へ

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まとめ
後継遺贈型信託は様々な課題を解決できる優れたスキームです。仕組みづくりの際に多少複雑な面もありますが、長期にわたる資産承継が可能となります。
この記事をお読みいただき、ご自身でも後継遺贈型信託の活用が必要であると感じられた方は、ぜひ家族信託の経験が豊富な専門家に相談をしてみてください。





