認知症対策のための財産管理の手法「家族信託」をご存じでしょうか?
家族信託は「信頼できる人(家族)に財産管理を託す」信託契約を指します。高齢の親などの資産所有者が「委託者」となり、子などの「受託者」に資産を管理してもらいます。
財産から得られる利益は「受益者」が受け取りますので、「委託者=受益者」の信託契約をすることで資産保有者(親)は安心して収入が得られる、資産の管理をしてもらえる、という制度です。
このような家族信託ですが、厳密には信託財産は誰の持ち物になるのでしょうか。また、信託財産から利益が得られる場合、その「受益権」にはどのような特徴があるのでしょうか。
まずは家族信託について詳しく知りたい、あるいは家族信託のメリット・デメリット・費用について調べたい場合は、こちらの記事をご参照ください。
【参考記事】
・家族信託とは?わかりやすくメリット・デメリットを説明します
・家族信託は危険?実際に起こったトラブルや回避方法
・自分には家族信託は必要ない?家族信託が使えない・不要となる場合を解説
・【家族信託の手続き方法まとめ】手続きの流れ・やり方を解説
・【家族信託の失敗と後悔】よくある家族信託の失敗事例12選
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目次
家族信託で信託された財産は誰のもの?
家族信託を契約すると、信託財産の管理・運用・処分権は信託契約に定められた範囲で「受託者」に移ります。
この場合、信託財産の「所有権」はどうなるのでしょうか。
【事例】一般的な家族信託
Aさん(78歳)は複数の投資用不動産と預貯金を保有しています。
これまでは、Aさんが自分で賃貸借契約の締結や管理会社とのやりとり、修繕の実施、銀行での預貯金の出し入れなどを行っていました。
しかし、体調を崩したことがきっかけとなり、今後の財産管理に不安を覚えるようになりました。
そこで、長男Aさんと「家族信託契約」を締結します。
- Aさん(委託者)保有の不動産や金銭を長男(受託者)に信託
- Aさんが助言しながら、長男が受託者として信託財産の管理・運用・処分を行う
- 投資不動産から得られる賃料と必要経費を除いた信託金銭…Aさんの生活・介護等のために使用(受益権)
このように保有している資産の管理運営を子世代に託し、依頼した側は利益を介護費や生活費に使用することができるようになります。
以上が家族信託の一般的な形式です。
(1)信託財産の管理・運用・処分権は「受託者」に移る
信託法において、信託財産は「受託者に属する財産」と定められています。
例えば、
- 不動産の賃貸借契約や売買契約の締結
- 預貯金の信託管理口座からの入出金
- 所有している株式の議決権の行使
これらすべて、原則として受益者の関与なく、受託者の判断で行うことができます。
また不動産をAさんから長男に信託した場合は、Aさんから長男に不動産の名義を移すための登記の目的は「所有権移転」になります。
そのため不動産を信託した場合、所有権は受託者に移転するものと考えられています。
信託した資産は信託登記を行うなど、受託者の個人の資産とは分離して管理します。
(2)信託された財産の「収益」は「受益者」のもの
一方で、信託された財産にかかる「収益(不動産の賃料や売却代金、信託された金銭等)」は「受益者」のものとなります。
受託者が所有権を得たといっても、財産からあがってくる収益を受け取る権利である「受益権」を取得するのは受益者です。
一般的には資産の所有者(委託者)が「受益者」を兼ねます。
「委託者=受益者」以外の信託組成も可能
通常は贈与税を回避する目的もあるため、「委託者=受益者」が一般的な方法となっていますが、受益者は他の人物に設定することも可能です。
例えば高齢の配偶者の生活費を確保する目的で受益者を特定の人に設定したり、受益者を複数の人物に設定したり、信託組成を工夫することも可能です。
(3)受託者が取得する「所有権」は「利益の獲得」を意味しない
民法において、所有権は「自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利」と定められています。
しかし、受託者が取得する信託資産の所有権は、この概念とは異なることが分かります。
信託資産については
- 受託者は信託契約で依頼された業務を実行するという責任を負う
- 受託者が利益を受け取るという意味はない
このような特徴があるのです。
受益者とは
では、利益を受け取る「受益者」はどのような立場なのでしょうか。そして家族信託の「受益権」は通常の利益と同じものなのでしょうか。
まず、「受益者」について確認しておきましょう。
信託契約の「受益者」は、委託者の子などの個人だけでなく、兄弟など複数人で引き受けることも可能ですし、例えば親族で法人を設立して法人を受託者とすることも可能です。
【受益者】
- 委託者本人(贈与税は発生しない)
- 複数の親族
- 将来生まれる予定の親族(子や孫)
- 法人
信託契約で定めれば受益者として設定できます。
信託契約の変更について
受益者など契約内容を変更したい場合は、後から変えることもできます。
ただし契約内容の変更は委託者の意思能力のある段階である必要があり、また、一部の信託契約の変更により全体の構成に不具合が生じないよう、専門家等のアドバイスを受けることをお勧めします。
受益者を変更する場合、贈与税にも注意
また、受益者を変更する場合、贈与税についても注意しましょう。
委託者本人が受益者である場合のみ贈与税は発生しませんが、それ以外が受益者となった場合、みなし贈与として贈与税が課税されます。
また、受益者が他の人物に無償で受益権を贈与したりすると、新しい受益者に贈与税が課税されます。
そのため家族内とはいえ、信託契約の組成内容や利益のやり取りに問題はないか、また、信託が開始した後も、不意の課税が起きないかどうかについて確認しておく必要があるといえるでしょう。
受益者のもつ「受益権」とは何か?
次に受益者の「受益権」について見ていきましょう。
信託契約における受益権は、利益を得る権利だけではありません。信託法の規定により大きく分けて以下の2種があります。
① 信託契約に基づいて、受託者に対して信託財産(に属する財産)の「引渡しや給付を求める」権利
② 上記①の権利を確保する目的で、信託法の規定に基づき、受託者等に対して「一定の行為を求める」権利
①受益者が利益を受ける権利
①は「受益債権」と呼ばれるものです。
例えば、信託契約において「受益者Aさんは、信託不動産から得られる収益の中から、毎月10万円を受け取ることができる」と定められている場合、その定めに基づいて受託者(例えば長男)に利益を請求できます。
受益権は債権であるため、性質としては譲渡・売買も可能です。ただし、譲渡・売買により課税対象となる点に注意しましょう。
②受託者の仕事を監督する権利
②は、受益者が信託契約に定められた財産をきちんと受け取るために、「受託者の仕事を監督する権利」のことです。
具体的には、受益者は信託事務について受託者に報告を求めたり、受託者が信託契約の規定に違反してその任務を遂行しようとした際に、受託者の行為の差止を請求するなどの権利を持ちます。
- 信託事務について受託者に報告を求める権利
- 受託者を解任する権利
- 新しい受託者を選任する権利
この監督する権利は非常に重要な権利であり、他の人が「受益者代理人」に就任して代理することも可能です。
信託契約で同代理人を誰にするか決めておいたり、選任する方法(合意などの手続き)を規定しておくことで、必要に応じて就任してもらうこともできます。
家族信託の「受益権」は民法上の「利益」と異なる
このように家族信託における「受益権」は、一般的なイメージとは異なる特徴を持ちます。
また、受託者は信託資産の「所有権」を持ちますが、利益を受け取る意味ではなく、信託契約で依頼された業務を実行するという責任を負います。
通常、「所有者」であれば、その所有物にまつわる「利益」を当然、受け取りますが、信託契約では意味が異なるのです。
さいごに
今回は、信託財産が誰に帰属するかということ、受益権の意味、また、受益者や受託者の立場についてお伝えしました。
信託契約では得られる利益や所有権についてこのような違いがあります。
とくに「受託者は負担なのでは?」という考え方もあるかもしれません。
しかしそのように負担に感じる分だけ、高齢者世代にとってはお金や資産の管理が難しいということを意味しているともいえるでしょう。
成年後見制度などを申し立てると、専門家が後見人に就いて業務として資産の管理をしてくれますが、負担が無くなる代わりに家族の資産を第三者が管理することとなり、また、専門家に一定の報酬を支払う必要があります。
家族信託であれば委託者が元気なうちに契約しておくことで、初期の費用負担はあるものの、資産管理や介護への備え等を、家族内で分担していくことができるのです。
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