家族信託の契約を締結するためには、準備しなければならない書類等がいくつか存在します。

今回の記事では、家族信託をするときに必要となる主な書類等と、手元にあるべき書類をもし紛失していた場合の対処方法についてご説明いたします。

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家族信託に必要となる書類とは?

家族信託の契約をする際に必要となる主な書類について下記ケースを想定して解説します。

● 公証役場において公正証書化する
● 信託財産に不動産が含まれる

委託者(兼受益者)1名・受託者1名として解説しますが、この他、信託契約に関わる人全員の本人確認書類を用意しましょう。

例えば受益者が委託者とは別の人物の場合や受託者が複数名の場合、信託監督人がいる場合など、全員分の書類が必要です。

【信託契約で必要となる重要書類】

(1)委託者・受託者の実印・印鑑証明書
(2)委託者・受託者の身分証(運転免許証、マイナンバーカード等)
(3)信託財産となる不動産の権利証(登記識別情報又は登記済証)
(4)不動産評価証明書(4月1日以降の最新のもの)
(5)受託者の住民票の写し

上記書類のうち、(1)の印鑑証明書と実印は本人確認資料として利用されます。

公証役場において信託契約書を公正証書化する場合には、この2点の持参を求められ、公証人が委託者と受託者の本人確認を行います。

印鑑証明書は、各人が住んでいる役所で発行されますので、転居により市区町村が変更になった場合は改めて実印を登録し直す必要があります。

また、(2)身分証と(3)権利証、(4)不動産評価証明書、(5)受託者の住民票の写しは、信託財産が不動産である場合に、その不動産の所有権の名義を委託者から受託者に移転させる移転登記と信託登記のために必要となります。

信託契約を私文書のまま締結する場合について

家族信託を公正証書で作成しない・できない場合について、下記記事にて解説しています。

私文書のままでは契約の信頼性の面などで不利となる場合や、金融機関の窓口にて手続きを進められないケースもあります。信託契約についてはできるだけ公正証書で作成することをおすすめします。

印鑑証明書がない場合はどうすればいいか?

前述の(1)から(4)の書類等を、もし当事者が紛失し手元に無い場合には、それぞれどのように対応すればいいでしょうか?

(1)の印鑑証明書を紛失した場合、印鑑カードまたはマイナンバーカードをお持ちであれば再発行できます。

しかし例えば印鑑カードも紛失し、印鑑証明書を取得することができない場合にはどうすればいいでしょうか?

公証役場での手続きについて

公証役場での信託契約については、別の方法で本人確認を進める可能性もあります。

印鑑証明書と実印による本人確認は、公証人が当事者の本人確認を行うために使用するものですので、他の方法により手続きを進める可能性もあります。

身分証明書の提示など具体的な確認方法については契約により取扱いが異なる可能性があり、公証人とあらかじめ打ち合わせをしておくことをお勧めします。

印鑑カードの再発行や実印登録について

印鑑カードを紛失した場合には再発行の手続きが可能です。

実印を紛失した場合についても新たな印を用意して、市区町村の役場にて新たに実印登録をすることができますので、再発行できるなら、印鑑カードの再発行を行いましょう。

公証人への提出用の他、不動産の信託登記手続きにも委託者の印鑑証明書が必須となるため、印鑑証明書を取得してしまう方法が一番簡単です。

不動産の権利証を紛失した場合はどうすればいいか?

(3)の権利証については、正式には「登記識別情報」又は「登記済証」と呼ばれるもので、不動産の権利が登記名義人にあると証明するためのものとなります。

この権利証を紛失(登記識別情報の場合は失念等)により手元にない場合に、どのように信託による受託者への所有権移転及び信託登記をすることになるのでしょうか。

権利証が無い場合の対応として、以下の方法があります。

  1. 事前通知
  2. 司法書士による本人確認情報の作成
  3. 公証人による登記委任状の認証

いずれの方法も、不動産登記法上の手続きです。

【法務局による「事前通知」で手続きをする場合】

1の「事前通知による方法」とは、権利証の無い状態で登記の申請を行い、管轄の法務局から委託者の登記上の住所に宛てて「この登記の申請は間違いないですね?」というお尋ね書面の通知を受けるというものです。

その通知を、委託者から法務局へ「間違いない」旨を記載して返送し、法務局がその返送を受け取り問題なければ名義変更の登記が完了します。

この方法なら、コストはかかりませんが、法務局がこの通知を発送してから2週間を経過しても委託者である登記名義人からの返送が無ければ申請が却下されてしまうリスクがあります。

【司法書士や公証人経由で手続きをする場合】

このリスクを考慮して、司法書士や公証人による手続きがあります。

2.司法書士による権利証に代わる本人確認情報の作成

2の方法は、手続きに関与する司法書士により、登記名義人である委託者が本人であることに間違いがなく、また、この所有権移転及び信託の登記の申請意思があることを確認し、それを証明する書面を作成して法務局に提出するというものです。

3.公証人による登記委任状の認証手続き

3の方法は、登記を司法書士に依頼する場合に作成する登記の委任状に、登記名義人である委託者本人が署名し実印を押したことを公証人が認証し、その認証文付きの委任状をもって登記申請を行うというものです。

この2、3の方法を取った場合には、1の事前通知は行われません。

ただし、この2と3の方法は、それぞれ司法書士と公証人に作成費用が生じますので注意が必要です。

事前通知だと、登記申請後も委託者の対応が必要となり、最悪手続きが却下される恐れがありますが、委託者が登記申請後の郵送のやりとりに問題なく対応できる状態であれば、1の方法を採用することで問題ないでしょう。

但し、1の通知の送付先は住所地に限られ、病院や施設への送付はしてもらえないので、住所地に委託者がいない場合には、2や3の方法を選択することになります。

まとめ

今回は、家族信託をするときに必要となる主な書類等と、もし紛失していた場合の対処方法についてご説明いたしました。

家族信託をするときに必要なものが何か、必要なものが揃っているかどうかがご不安でしたら、家族信託を多く取り扱っている弊社にぜひご相談ください。

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