家族信託は、親が元気なうちに信頼できる家族に財産の運用や管理を託すことで、希望通りの財産管理や資産承継を実現できる素晴らしい制度です。
一方で、家族信託の利用を検討するのであれば、そのデメリットも理解することが非常に重要です。
デメリットを把握することで、家族信託の利用が最適かどうか判断できるとともに、親族間トラブルや金銭トラブルなどの落とし穴を回避でき、より良い家族信託の組成につながります。
本記事では、家族信託の12のデメリットを包み隠さず徹底的に解説していきます。
要約
- 家族信託の一番のデメリットは受託者の負担が一定あること
- 他にも農地は転用しないと信託できない、「身上監護」がないなどにも注意
- 家族信託は新しい制度のため、十分に経験を積んだ専門家が少ないこともデメリットの1つ
- 経験豊富な専門家に相談して、きちんとデメリットを回避できる家族信託を作りましょう
家族信託をご検討中の方へ

家族信託の「おやとこ」では、認知症による資産凍結問題に悩むお客様に、司法書士などの専門家がご家族に寄り添い、真心を込めて丁寧にご対応します。
全国から年間数千件のご相談に対応し、サービス満足度も96%を超えるなど、どなたにもきっとご満足いただけるご提案ができると考えております。
目次
家族信託のデメリット12選
家族信託のデメリット12個は以下の通りです。
- 受託者を引き受ける人が見つからない場合がある
- 受託者の負担が大きい
- 親族間で不公平感・トラブルが発生する可能性がある
- 「身上監護」には対応していない
- 信託できない財産もある
- 信託財産以外による所得との損益通算ができない
- 家族信託=節税対策ではない
- 信託財産からの収益があれば税務申告の手間がかかる
- 専門家への相談や手続きの代行には費用がかかる
- 受託者に無限責任がある
- 遺留分侵害額請求を受ける可能性がある
- 家族信託を熟知した専門家が少ない
ここからは、家族信託のデメリット・注意点とその解決策について、1つずつ詳しく解説していきます。
※家族信託の制度についてはこちらの記事を参照ください。
(1)受託者を引き受ける人が見つからない可能性がある
家族信託は 財産を託す人(委託者・親) と 託される人(受託者・子) がいてはじめて成り立ちます。
当然ながら「受託者」を引き受けてくれる人がいなければ、家族信託は利用できません。
しかし、実際は「身内に信頼して頼める人がいない」「子に受託者を依頼したが引き受けてもらえなかった」というケースもよくあります。
このようなケースでは、どうすればよいでしょうか。解決策は以下の通りです。
受託者を引き受ける人が見つからない場合の解決策
解決策1:家族以外の信頼できる人を探す
受託者は甥・姪など、家族でなくとも就任可能です。
信頼できる人であれば血縁関係のない第三者でも就任できます。
※司法書士などの士業は信託法に抵触するため直接「受託者」にはなれません。受託者をサポートする「信託監督人」の立場であれば就任可能です。
解決策2:信託内容を再検討する
受託者の負担が大きいことが原因で身内が受託者への就任を拒んでいる場合は、信託財産を限定したり、信託内容を工夫すれば、受託者の負担を軽減にもつながります。
司法書士等の専門家に相談してみましょう。
解決策3:商事信託を検討する
どうしても受託者がいない場合は、信託会社や信託銀行が提供する信託サービスの利用も可能です。
費用が高額となったり、利用条件が定められている場合があるため、専門家の意見を聞きながら慎重に進めることをお勧めします。
(2)受託者の負担や義務が重い
家族信託では、受託者が抱える負担が大きいことを理解しておきましょう。
家族信託では、自由で柔軟に信託内容を定められるものの、法的な制度であるため、「信託法」に則って受託者の義務を全うする必要があるのです。
信託法には以下のような受託者の義務が定められています。
受託者の主な義務
・善管注意義務
善良な管理者として、細心の注意を払って信託事務を行う義務(信託法第29条)
・忠実義務
受益者のために忠実に信託事務を行う義務(信託法第30条)
・分別管理義務
信託財産を受託者自身の固有財産と分けて管理する義務(信託法第34条)
・信託事務を第三者に委託する際の選任・監督義務
信託事務の処理を第三者に委託するときは、受託者は、信託の目的に照らして適切な者に委託しなければならない(信託法第35条)
・帳簿等の作成・報告・保存義務
毎年、信託財産について貸借対照表などの必要書類を作成し、その内容を受益者に報告する義務(信託法第37条)
前段でも例に挙げた「 帳簿等の作成・報告・保存義務 」は特に受託者にとって大きな負担となりがちです。
委託者の生活費や医療費などの出費を全て記録し、作成した帳簿や関連書類(領収書等)を保存しておくなどの事務が発生します。
「帳簿等の作成・報告・保存」の具体的な事務内容
・委託者の生活費、介護費、医療費など支出の記帳
・領収書・レシートなどの保管
・信託財産である不動産を売却した場合の記帳
・毎年、貸借対照表、損益計算書の作成、受益者(委託者)への報告、保存
信託内容によっては、毎日このような事務作業が発生することもあります。
エクセルや手作業での記帳などは受託者の時間が割かれ、大きな負担にもつながるでしょう。
解決策として、例えば当社では「おやとこ」アプリを通じて、これら受託者の事務作業の負担を大幅に軽減するシステムを提供しています。
日本初の家族信託専用のアプリで、受託者の負担が軽減するとともに、信託財産に関する記録をアプリ上に明白に残せるため、委託者・受益者の方の安心にもつながります。
その他に考えられる、受託者の負担を軽減できる解決策は以下の通りです。
受託者の負担が大きいことへの解決策
解決策1:信託内容を工夫する
「管理の難しい不動産は信託財産から除外する」「委託者が持つ金銭の一部のみ信託する」など、信託内容をシンプルにすれば、受託者の負担も軽減されます。
解決策2:受託者への報酬を設定する
受託者への報酬を信託契約に盛り込み、受託者の仕事を引き受けやすくする環境を作ることも大切です。
高額すぎると税金逃れとみなされたり、他の親族から不満が発生する恐れもあるため、注意しましょう。
解決策3:「信託監督人」を設定する(専門家への依頼も可能)
信託契約の中で「信託監督人」や「受益者代理人」を設定し、受託者の監督とともに受託事務のサポートも行う旨を信託契約に盛り込むことも可能です。
信託監督人とは?〜家族信託を監視・監督する重要な役割〜
この記事では「家族信託の重要人物〜信託監督人〜」と題して、家族信託における「信託監督人」についてお伝え致します。家族信託では委託者は資産の管理・運用を受託者に依頼しますが、さまざまな理由から、受託者の財産管理に不安があるケースもあると思います。その場合に活用できる信託監督人について、この記事でご紹介します。
(3)親族間で不公平感・トラブルが発生する可能性がある
家族信託は、委託者と受託者のみで締結でき、相続人全員の了解を得ずとも相続財産の管理・運用方法を決められます。
「親族のうち特定の1人が受託者として財産管理をする」という状況から、親族から不満や不公平感が生まれ、親族間トラブルに発展する可能性があります。
よって、家族信託を始める際は必ず、 信託契約の当事者(委託者・受託者)以外の親族からも理解を得る ことが重要です。
親族間でのトラブルを防ぐ解決策
解決策1:信託契約を公正証書で作成する
「公証役場でしっかりとした手続きを踏んで契約した」という事実があれば、他の親族からも疑念を抱かれにくくなります。
親族間トラブルがない場合でも、家族信託は公正証書で結ぶのが基本です。
家族信託に公正証書が必要?私文書では危険?メリット・デメリット、必要書類や手続きの流れ、費用を解説
家族信託も信託契約になりますので信託法のルールに沿って作成することになるのですが、法的には公正証書で作成しなくても問題はない、という解釈になります。今回は「公正証書化」が必要なケースについてご紹介します。信託契約書を公正証書で作成した方が良いケース、公正証書での作成にすべきケースについても説明していきます。
解決策2:専門家から説明をしてもらう
家族信託の契約では、当事者を含めた親族全体の納得感が重要ですので、専門家からの説明や解説は理解を得るために有効な手段です。
専門家を交えて親族間で話し合いの場を持てば、その場での意見を信託契約に盛り込むなどの対応もできます。
(4)「身上監護」には対応していない
身上監護とは、判断能力のない本人に代わって、介護施設の入居・治療や入院など、本人の身の上に関わる契約手続き(法律行為)を行うことを指します。
成年後見制度では、上記のような法律行為を行ううえで、後見人に「代理権」が認められているため、被後見人に代わって介護施設や入院などの契約が可能です。(民法第859条)
※介護や食事の世話など、実際に暮らしを支援する行為は、身上監護の範囲には含まれません。
一方で、家族信託における受託者の役割は、委託者から託された財産に関する管理・運用・処分の業務を行うことです。
よって、委託者の介護や入院に関する契約の代理権なく、身上監護には対応していません。
信託契約の中に身上監護に関する規定を含むこともできますが、介護や入退院の手続きには、どうしても本人の意思確認が必要な場合があります。
身上監護についても定めておきたい場合は「任意後見制度」と家族信託を併用するという手段もありますので、専門家に相談し、ご家族のご状況に合わせた提案を受けることをお勧めします。
家族信託と成年後見制度の違いについては、以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
家族信託と成年後見の違いは?どちらを使うべき?
高齢者の財産を本人以外が管理するには、家族信託と成年後見制度があります。家族信託と成年後見制度は特徴が異なるため違いについてしっかり理解することが重要です。家族信託と成年後見制度の違いや、どちらを使うべきか?について解説します。
(5)信託できない財産もある
委託者が管理や運用を受託者に任せる財産を「信託財産」といいます。
基本的に、財産的価値があるものであれば家族信託の対象とすることが可能です。
信託できる財産の例
• 金銭
• 有価証券(上場株式・非上場株式・自社株式など)
• 不動産(土地・建物など)
• 動産(自動車・船舶・ペットなど)
• 知的財産権(著作権・特許権など)
一方で、法律上信託できない財産や、実務上信託が難しい財産も存在します。
信託できない/信託が難しい財産の例
• 農地
• 年金受給権・生活保護受給権などの一身専属権
• 預金債権

農地
家族信託において、農地は信託できません 。(農地法第3条2項3号)
現況が農地として利用されていなくても、登記上の地目が農地(「田」「畑」等)の場合は、一定の条件を満たした上で農業委員会の許可(届出)がなければ、信託財産にはできません。(農地法3条2項3号)
手続きには数か月かかる場合もありますので、早めに手続きを開始しましょう。
一般的に農地関連の手続きは行政書士に依頼して行います。
農地は家族信託できるのか?司法書士がわかりやすく解説
家族信託は、高齢者の財産を家族が代わって管理する制度です。信託される主な財産には、預貯金などの他、土地や建物などの不動産が考えられます。ただし、信託する土地に地目が「農地」の物件があった場合、信託の対象にする際に注意が必要です。今回は地目が「農地」の土地について詳しく説明します。
年金受給権などの一身専属権
年金受給権は、親権や資格などと同様、委託者本人以外への帰属が不可能な「一身専属権」に該当します。
よって、たとえ受託者が家族であっても信託対象とすることはできません。
しかし「受給権」ではなく、本人の預金口座に振り込まれた残高を、金銭として信託することは可能です。
よって、振り込まれた公的年金は、受託者が管理する信託口口座に残高を移す形で信託しましょう。
または、そもそも信託財産としては設定せず、年金受取口座を固定費(家賃や水道光熱費など)の引き落とし口座に設定し、振り込まれた年金から自動的に本人の生活費が支払われるルートを作っておく方法も有効です。
預金債権
「〇〇銀行 □□支店 口座番号△△ の普通預金」などといった「預金債権」を信託財産として設定することはできません。
通常、預金口座を開設する際には、金融機関と口座名義人の間で「譲渡禁止特約」が定められているためです。
金銭の信託は可能なため、信託契約書では「金〇〇円」という表現で具体的な金額を記載し「金銭の信託」という形で設定しましょう。
(6)信託財産以外からの所得との損益通算ができない
信託財産に賃貸アパートなどの収益不動産が含まれている場合、信託財産から生じた損失は、なかったものとみなされます。(租税特別措置法第41条4項の2)
つまり、信託された収益不動産の所得が、大規模修繕などにより赤字になったとしても、信託財産以外の収益不動産からの所得と損益通算はできません。
その結果、課税対象の所得が増え、通常より多くの所得税を支払わなければならなくなる可能性があります。

所有不動産の一部のみを信託する際は、収益の見込みを想定して、信託するかどうかを決めるようにしましょう。
また、管理の予測ができない財産については早めに処分を検討するなど、所有資産をスリム化しておくことも選択肢の1つです。
信託財産に不動産を含めたい場合は、司法書士や税理士などの専門家に相談すると良いでしょう。
(7)家族信託=節税対策ではない
家族信託を利用しても直接的な節税の効果はありません 。
実際に「家族信託を利用したら相続税の節税になりますか?」という質問は非常に多いです。
正しくは、直接的な節税効果はありませんが、以下のように間接的な効果は期待できます。
- 委託者の判断能力喪失後も受託者が主となって相続対策を続けられる
- 二次相続(孫など相続人が亡くなった後の相続)の対策ができる
- 将来的な相続争いの回避による最適な相続を実現できる
これらは全て、家族信託という制度をしっかりと理解し、最適な形で進めた結果得られる間接的な効果であり「家族信託をすれば節税対策ができる」というわけではありません。
「家族信託=節税対策」という訴求でセミナーを開催したり、書籍を出したりする専門家には注意してください。
【家族信託と相続税対策】家族信託をすると節税できるって本当?
この記事では、家族信託をすることで相続の対策(相続税対策)ができるのか、家族信託と税金の関係について解説します。また、相続対策としての家族信託の実際の活用事例や、その際支払う税金についても、わかりやすくご紹介します。
(8)信託財産からの収入があれば税務申告の手間がかかる
信託財産から年間3万円以上の収入がある場合(例:賃貸アパートなど)は、信託計算書・信託計算書合計表を税務署に提出する必要があります。
また、毎年の確定申告の際、信託財産から不動産所得がある方は、不動産所得用の明細書の他に信託財産に関する明細書を別に作成して添付しなければなりません。
税理士へ依頼する場合でも、費用がかかるためさらに出費がかさんでしまいます。
このような税務上の手間を大幅に削減するために、当社では「おやとこ」アプリを通じて、必要書類の自動作成、帳簿等の作成などができるシステムを提供しています。
家族信託で税務署に提出する書類、計算書と受益者別調書の書き方を解説!
家族信託を利用した場合、税務署に届け出るケースがある手続きについてご存知でしょうか。この記事では、どのような場合に税務署への届出が必要なのか、どの税務署に届け出るのか、届出すべき書類の書き方などについてくわしく解説します。
(9)専門家への報酬が発生する
家族信託を利用するには、実費を含めて一定の費用がかかります。
具体的には、以下のような費用が発生します。
- 家族信託の内容や手続きに関するコンサルティング費用:信託財産の1%程度
- 家族信託契約書作成費用:10〜15万円程度
- 信託登記手続きの代行にかかる費用:5〜15万円程度
- 家族信託契約書を公正証書化する費用:13〜25万円程度
- 不動産の信託登記のための登録免許税:信託不動産の固定資産税評価額の0.3%〜0.4%
上記の1〜3の費用は家族信託を専門家に依頼する際の費用の一覧です。
家族信託にかかる費用の総額は、信託財産の種類や額によっても異なりますが、一般的には30〜70万円程度だといえます 。
ただし、家族信託は成年後見制度とは異なり、専門家への月額の報酬が基本的に不要のため、まとまったお金が必要となるのは最初の契約時のみです。
家族信託における費用の詳細や、費用を安く抑える方法については、こちらの記事を参照ください。
【家族信託の費用・相場】安く抑えるためのポイントとは?司法書士が解説
家族信託の費用は信託する財産の額によって異なります。専門家に依頼すると実費に加えてコンサルティング費用かかりますが、費用削減だけを考えて自分でやるとトラブルが発生する可能性も高まります。家族信託の費用や自分でやる際の注意点をみていきましょう。
(10)受託者は無限責任を負う
家族信託における受託者は、受託者としての業務について、個人としても弁済する義務を負います。(信託法第21条)
つまり、受託者は個人の預金などを持ってでも、受託者の業務を全うする義務があるということです。
例えば、受託者として委託者のために金銭を管理し、日々生活費や医療費の支払いなどを行なっているとします。
この場合、委託者から託されている信託財産が、受託者の業務を行う上で足りなくなってしまった場合でも、受託者は個人の財産をもって弁済しなければなりません。
受託者を引き受ける方には、信託法上このような「無限責任」を負う可能性があるということを把握しておいてもらう必要があるでしょう。
(11)遺留分侵害額請求を受ける可能性がある
遺留分とは法定相続人(主に配偶者・子・父母)に最低限保障された相続財産のことです。
遺言や家族信託契約によって「特定の人物に遺産を全て引き継ぐ」など、遺留分を侵害する内容がある場合には、法定相続人は「遺留分侵害額請求」という手続きを行うことができます。(民法第1046条)
よって、家族信託の信託内容を設計するときは、遺留分を配慮して考える必要があります。
信託の内容は委託者と受託者の2者のみの間で定められますが、相続人全体の中で不平等にならないように遺産の配分について定めることが重要です。
(12)家族信託を熟知した専門家が少ない
家族信託は、近年認知度が高まっているとはいえ、まだ世の中には家族信託に熟練した士業は少ないのが現状です。
弁護士や司法書士なら誰でも適切に相談に乗ってくれるというわけではないため、注意しましょう。
家族信託を利用するには、特有の税金の知識や法的解釈も必要となるため、家族信託を熟知していて経験と実績が豊富な専門家選びが肝となります。
さらに、税金に関する細かな内容には税理士、農地の宅地転用には行政書士など、さまざまな専門家の力が必要となることもあります。
よって、幅広く高品質な専門家ネットワークを有している司法書士法人であれば、最適な対応が可能です。
当社においても、家族信託の利用実績は豊富に有しており、司法書士だけでなくさまざまな専門家との優良なネットワークを活用し、最適なご提案をさせていただいております。
家族信託をご検討の際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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家族信託の「おやとこ」では、認知症による資産凍結問題に悩むお客様に、司法書士などの専門家がご家族に寄り添い、真心を込めて丁寧にご対応します。
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デメリットを考慮しても家族信託が必要な5つのケースとは?
家族信託のデメリットを12個挙げて、詳しく解説してきました。
上記のデメリットを理解したうえで、家族信託を利用するかどうか、または進め方について悩んでいる方もいるでしょう。
デメリットはあれど、専門家の適切なアドバイスのもと対策を施しながら進めていけば、委託者や家族の希望が叶う最適な家族信託を組成できます。
ここからは「デメリットを考慮しても家族信託が必要なケース」をご紹介します。
- 成年後見制度を使わずに、認知症による資産凍結を防ぎたい
- 二代目以降の相続に関しても決めておきたい
- 相続財産に共有不動産がある
- 事業承継対策をしたい
- 融資を受けて積極的な運用をしたい
認知症による資産凍結を防ぎたい
認知症による資産凍結を防ぎつつ、財産の管理や運用について第三者が関与することなく、 信頼できる家族だけで進めていきたい という場合は、家族信託を利用するのがよいでしょう。
家族信託とよく比較される成年後見制度では、成年後見人や後見監督人として第三者である専門家が関与したり、家庭裁判所による監視やチェックが入ります。
家族信託なら、裁判所や専門家などの第三者が関与することなく財産の管理・運用を希望通りに進めていけるでしょう。(家族信託組成時は専門家のサポートのもと進めることをお勧めします。)
二代目以降の相続に関しても決めておきたい
家族信託は、委託者の死後だけでなく、その先の孫やひ孫など、二代目以降への相続についても決めておくことができます。
これを「受益者連続型信託」といい、家族信託の大きな特徴の一つです。

確実に孫へ引き継ぎたい不動産があったり、委託者の配偶者が亡くなった後の相続について決めておきたい場合にも有効となります。
相続財産に共有不動産がある
相続財産に共有不動産がある場合は、特に家族信託を利用した方が良いでしょう。
共有不動産は、共有者全員の合意がなければ売却や処分等の意思決定ができません。
共同所有者の一人が認知症で判断能力をなくしたり、売却等に反対意見を持っている場合は、せっかくの貴重な不動産を動かすことのできない「塩漬け状態」となってしまいます。
そこで家族信託を利用して、不動産の管理や売却・処分の権限を1人の受託者に集めれば、共有不動産の凍結や持分の分散リスクを防ぐことができます。
ただし、この場合も、特定の1人が不動産の管理や処分を行うことについては、共有者全員に説明し理解を得た上で家族信託を定めることが重要です。
共有の不動産を家族信託するメリット・デメリットについて
家族で不動産を共有名義にしているケースは多いと思います。不動産の持分の一部のみを家族信託の財産にすることはできるのでしょうか?その場合、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。今回の記事では、共有の不動産を家族信託するケースについてご説明します。
事業承継対策をしたい
家族信託では「株式」も信託財産として設定できます。
会社のオーナー兼社長が、仮に認知症により判断能力を喪失した場合、議決権が行使できなくなるため、その後の会社の意思決定が進まなくなり、事業承継が難しくなってしまいます。
家族信託を活用して自社株式を子などに信託しておけば、議決権の凍結が回避でき、親の判断能力が喪失してもスムーズな事業承継が可能です。
また、受益者連続信託とすれば、二代目以降の承継者も決めておくことができます。
自社株式の信託について、以下の記事でも詳しく解説していますので、ご覧ください。
家族信託で解決!過去の相続税対策で自社株が分散しているケース
中小・中堅企業の自社株式について、オーナーの相続税対策などで家族や一族、または役職員など会社にとっての重要人物に譲渡されていることは少なくありません。このような事業に関するケースでも「家族信託」が活用できます。今回は具体的な活用方法を見ていきましょう。
融資を受けて積極的な運用をしたい
家族信託では、収益のための積極的な融資を受けることもできます。
具体的には「信託内借入」と「信託外借入」という2つの方法の利用が可能です。
信託内借入
信託契約で定められた権限の範囲で受託者が借り入れられる融資。融資を受けた金銭は信託財産として扱う
信託外借入
委託者が信託契約の範囲外で借り入れる融資。融資を受けた金銭は信託契約関係なく委託者の金銭となる。融資を受けて完成したアパートや不動産を受託者へ「追加信託」する。
成年後見制度では基本的に、被後見人に直接的な利益がない行為は認められないため、このような積極的な融資を受けた財産の運用もできません。
相続税対策に余剰な資金を不動産に変えたい場合など、成年後見制度では難しい柔軟な管理や運用が実現できます。
まずは専門家へ早めの相談を
以上、家族信託の12のデメリットを挙げた上で、デメリットを考慮しても家族信託を利用した方が良いケースについて解説しました。
どのような制度にも必ず落とし穴があります。特に家族信託においては、法律・税務面での注意点もあり、十分な注意が必要です。
家族信託をする際には、必ず専門家と相談しながら進めることをお勧めします。
家族信託をご検討中の方へ

家族信託の「おやとこ」では、認知症による資産凍結問題に悩むお客様に、司法書士などの専門家がご家族に寄り添い、真心を込めて丁寧にご対応します。
全国から年間数千件のご相談に対応し、サービス満足度も96%を超えるなど、どなたにもきっとご満足いただけるご提案ができると考えております。
- 家族信託で一番大きいデメリットはなんですか?
-
受託者(財産を託される人)に負担が一定かかることです。
受託者には、家族信託をする上で守らないといけない義務があります。
特に「帳簿に関する義務」では、収支を記帳し、領収書を保存するなど、お金の出入りを細かく記録するなどを義務付けています。
当社のおやとこアプリでは、これらの事務作業を大幅に軽減できますが、多くの会社はエクセルや手作業での記帳を受託者に依頼しているのが現状です。
- 成年後見制度とどちらを使うべきですか?
-
家族信託は以下の点で成年後見制度より優れています。
- (1) 自由な財産管理が可能
- (2) 遺言の機能を持たせられる
- (3) 家族で財産を管理できる(第三者が管理しない)
- (4) 費用が比較的抑えられる(永続的な報酬はない)
一方、成年後見制度にしかできないこともあります。家族信託だけではカバーし切れないニーズがある際は、任意後見などを組み合わせることも有効でしょう。
詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
▶家族信託と成年後見の違いは?どちらを使うべき?