家族信託では、親が委託者、子を受託者として、親から子へ財産管理を託すケースが一般的です(その他、兄弟や他の親族が受託者に就任するケースもあります)。
受託者は、信託された財産の管理や運用を行う重要な役割です。
そこで、受託者について以下のような疑問や悩みが多く寄せられます。
- 兄弟のなかで誰が受託者になるべき?
- 受託者の負担はどれくらい大きい?
- 具体的に信託事務をどのように進めていけば良いのか?
そこで本記事では、受託者の具体的な役割や義務、受託者の選び方、信託財産を管理していくうえでの注意点について、詳しく解説していきます。
家族信託の基本的な仕組みや特徴を知りたい方は、以下の記事からご確認ください。
家族信託とは?メリット・デメリットや手続きをわかりやすく解説!
家族信託は「認知症による資産凍結」を防ぐ仕組みです。本記事では家族信託の詳細や具体的なメリット・デメリット、発生する費用などについて詳しく解説します。将来認知症を発症しても、親子ともに安心できる未来を実現しましょう。
要約
- 家族信託の受託者は、委託者から託された財産を管理・運用する役割がある
- 未成年者や士業専門職(司法書士・弁護士など)は受託者になれない
- 家族信託で受託者を複数設定することもできる
- 受託者の負担軽減のため、信託監督人や第二受託者を設定するケースもある
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目次
家族信託の受託者の役割と義務
家族信託の受託者は、委託者から託された財産を適切に管理、運用する重要な役割を担っています。
例えば、親が子に財産を信託する場合、子(受託者)は以下のような事務を行います。
- 家族信託専用の口座を管理し、親の入院費や介護費を支払う(振り込む)
- 親の生活費を家族信託専用の口座から引き出し、親に渡す
- 信託された実家を売却して介護施設の入所費用を捻出する
- 信託された上場株式を代わりに運用する(得た配当は親のもの)
このように受託者は、受益者(=委託者)のために財産管理の事務を全うします。
信託法では、受託者の義務が具体的に定められており、重要なものは以下のとおりです。
| 信託法で定められた 受託者の義務 | 内容 ※親が委託者=受益者、子が受託者と仮定 |
|---|---|
| 忠実義務 (信託法第29条) | 子(受託者)は、親(受益者)のために、忠実に信託事務を行わなければなりません。子自身の利益のためではなく、常に親(受益者)の利益を最優先に行動するという義務です。 |
| 分別管理義務 (信託法第34条) | 親(委託者)から託された財産を、子(受託者)自身の固有の財産と区別して管理する義務です。 |
| 帳簿等の作成等、報告及び保存義務 (信託法第37条) | 子(受託者)が信託財産の状況や信託事務の内容を正確に記録した帳簿を作成し、報告する義務です。また作成した帳簿は、一定期間保存する義務があります。 |
分別管理義務(信託法第34条)
子(受託者)は、自分自身の固有の財産と、信託された財産を明確に区別して管理しなければなりません。
分別管理の例
- 金銭の場合
→家族信託専用の口座を開設し、信託された金銭はその口座内で管理する。 - 不動産の場合
→信託登記を行い、該当の不動産は信託されたものであることを公的に明確にする。
帳簿等の作成等、報告及び保存義務(信託法第37条)
子(受託者)は、信託財産の状況や信託事務の内容を正確に記録した帳簿を作成し、保存する義務があります。
家族信託で作成する帳簿の例は、以下のとおりです。
- 金銭の場合:現金出納帳(家族信託専用の口座における出入金の日時・金額・内容などがわかるもの)
- 収益不動産(アパートなど)の場合:貸借対照表や損益計算書など
家族信託で必要な帳簿の種類や作成方法、保存期間などについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
【家族信託の報告義務】家族信託をしたら受託者は面倒な作業が必要?
高齢になった親のサポート目的などで成年後見制度を利用した場合、親族が後見人に就任すると、毎年、家庭裁判所に収支状況等の報告義務があります。「財産目録」や「収支状況」等の内容です。では、家族信託を利用した場合、そのような報告義務はあるのでしょうか。受託者が作成する義務のある書類の内容について見ていきましょう。
家族信託の受託者になれない人はいる?
信託法では「未成年者」が受託者になれないと定められています(信託法第7条)。
また、司法書士や弁護士などに相談し、受託者となってもらうことを考える方もいるかもしれませんが、注意が必要です。
士業が対価を得て提供するサービスとして受託者となるには、信託銀行と同じく信託業法で定められた免許や登録が必要となります。
この場合は「商事信託」という分類になり、家族信託とは取り扱いが異なります。
(※商事信託:免許や登録を受けた信託会社や信託銀行が営利目的で行う信託)
家族信託は営利を目的としない「民事信託」ですので、士業や企業が対価をもらって受託者になるということはできません。
受託者候補がいない場合はどうするべき?
お子さんが遠方に住んでいたり、おひとりさまの高齢者の方であったりと家族信託の受託者候補がいないというケースも考えられます。
ですが、家族信託は必ず「親子」で結ばなければならないというルールはありません。
この場合は、信頼できる他の親族(甥、姪、義兄弟姉妹など)や第三者が受託者になることも可能です。
また、家族信託以外にも、以下の制度を利用する選択肢があります。
- 任意後見制度:判断能力が低下する前に本人が自らの後見人を選任しておく
- 法定後見制度:すでに本人の判断能力がない場合に、家庭裁判所が後見人を選任し財産管理や身上監護を行う
- 商事信託:信託会社や信託銀行が商品・サービスとして行う信託(信託会社や銀行が受託者となる)
任意後見制度では、本人(財産管理を依頼する人)が元気で判断能力が十分ある段階で、将来任意後見人になる人を指定しておきます。
元気なうちに、支援してくれる人を選んでおくという意味では家族信託と似ていますが、任意後見制度では家庭裁判所が関与します。
例えば、親の判断能力が低下して子(任意後見人)による後見がはじまると、子は「任意後見監督人」から後見事務について監督を受け、定期的に報告しなければなりません。
よって、財産管理の柔軟性という観点では家族信託が優位ですが、ご家族の状況によっては、家族信託と任意後見制度を併用するなどさまざまな対策方法があります。
ご自身のご家族でどのような制度が最適なのかは、まずは家族信託の専門家へ相談してみることがおすすめです。
受託者を複数人選任することも可能
家族信託では受託者を複数人選任することも可能です。
その場合、複数の受託者が協力して信託財産を管理するため、受託者1人あたりの負担を減らすことができます。
受託者を複数人選任する主なメリットは以下です。
- 信託事務の負担の分散ができる(子ども1人に負担が偏らない)
- 受託者が財産を適切に管理しているか、お互いに監督することができる
一方で、受託者を複数にする場合は注意点もあります。
例えば、信託事務の処理において受託者の過半数の一致が必要であり、複数いる受託者の意見が割れた場合、信託の運営が停止してしまうリスクがあります。
そこで、受託者の負担を分散したい場合には、以下のような設計にする選択肢もあります。
- 長男を受託者、次男を受託者の監督をする「信託監督人」に設定する
- 長男を受託者、次男を第二受託者(予備的受託者)に設定する
以下の記事では、受託者を複数人設定した場合の家族信託について、詳しく解説していますので、参考にしてください。
家族信託で受託者複数は可能?兄弟全員で受託者になるメリット・デメリット
家族信託において、委託者は資産の保有者ですので確定していますが、受託者については兄弟間で議論になることもあるかもしれません。そこで、受託者を複数名にすることは可能なのでしょうか?結論から言えば、可能です。今回は受託者を複数人にするメリット面とともに注意点について解説します。
受託者が死亡した場合はどうなる?
受託者が死亡した場合でも、すぐに家族信託が終了するわけではありません。
具体的には、受託者が死亡したあと、新受託者が就任しない状態が1年間続くと、信託は終了すると定められています(信託法163条第3号)。
よって、上記の「新受託者が就任しない状態」が1年間続き、信託の運営が停止しないように、実務では後継の受託者を定めておくことがあります。
例えば、父を委託者(=受益者)、長男を受託者とする家族信託において、長男に何かあったときのために次男を第二受託者と指定しておく、という形です。
信託契約書を工夫して作成することで、このようなリスクや万が一の出来事に備えられます。
家族信託中に受託者が死亡した時の対応・対策まとめ
家族信託において、受託者のほうが先に亡くなってしまうということも当然ありえます。では受託者が先に亡くなってしまった場合、家族信託はどうなってしまうのでしょうか?今回は、受託者が先に死亡した際に家族信託がどうなるのか、また、財産の取り扱い方法や次の受託者の選定について解説します。
受託者に報酬を設定することはできる?
家族信託の信託事務の対価として、受託者は「信託報酬」を受け取ることができます(信託法第54条)。
家族間で家族信託を契約した際、受託者の報酬を定めないケースが多いですが、信託事務にかかる家族の負担を考慮して報酬を設定する場合もあります。
受託者への報酬を定める場合は、信託契約で、受託者が報酬を受け取る旨と、報酬の金額を明確に記載しておきましょう。
他の家族が不信感を抱くことを防ぎ、信託の運営を円滑にするためです。
報酬額は、受託者の業務内容に応じて適切に設定することが望ましいため、詳しくは家族信託の専門家へ相談するのがおすすめです。
信託財産や業務の量によって報酬額を決定する
受託者の報酬に関しては、成年後見制度の報酬を目安に定めることが一般的です。
家庭裁判所が提供するガイドラインでは、成年後見制度における報酬は月2~6万円とされています。
信託財産の規模や業務量によって適切な報酬額は異なるため、信託契約書に報酬を定める際は、ご家族でよく相談してから設定するようにしましょう。
ほかにも、信託財産が収益物件である場合、賃料収入の5%~10%を報酬とするケースもあります。
受託者が年間20万円以上を信託報酬として受け取る場合には「雑所得」に該当するため、確定申告と所得税の納税が必要な点には注意してください。
信託報酬について詳しく知りたい方は、以下の記事でも解説していますので、ぜひ参考にしてください。
家族信託の受託者の信託報酬はいくらにする?目安や注意点を解説
家族信託における受託者の「信託報酬額の目安」や「税務上の疑問」などでお悩みではありませんか?この記事では、受託者の「信託報酬」について、報酬額の目安や税務上の注意点などをわかりやすく解説します。
受託者の負担や信託の設計にお悩みの方へ

家族信託の受託者は、委託者(主に親)の財産管理を担う重要な役割です。
信託の設計方法次第では、受託者の負担を和らげるためにほかの役割を設定するなどの対策が可能です。
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*2023年11月期調査(同年10月15日~11月11日実施)に続き3年連続
調査機関:日本マーケティングリサーチ機構
- 家族信託の受託者が認知症になったらどうする?
受託者が認知症で判断能力を喪失し、後見開始の審判を受けた場合は、受託者の任務が終了します(信託法第56条第1項第2号)。
では、受託者が後見開始の審判を受けてはいないものの、判断能力の低下がみられる場合はどうなるのでしょうか?
この場合は、個別に信託の設計を工夫し、例えば『後見相当であるとの医師による診断を受けたこと』等の事由を受託者の任務の終了事由として、受託者を交代できるようにする必要があります。
このような複雑な信託契約書の作成は、専門的な知識が必要となりますので、詳しくは家族信託の専門家へご相談ください。
- 家族信託の受託者になれるのは何親等まで?
家族信託の受託者には、血縁関係や親等の制限は定められていません。
家族信託では、信頼できる家族・親族(子、兄弟、甥、姪、義兄弟など)へ財産管理を託すことができます。
ただし、未成年者や営利目的の士業は家族信託の受託者にはなれません。





