家族信託では一般的に、親の認知症対策として、親が保有する資産(金銭・不動産・自社株など)を子が管理・運用します。
つまり、親が委託者(=受益者)、子どもが受託者となる設計です。
しかし、受託者には個人だけでなく「法人」がなることもできるのです。
今回は家族信託で法人を受託者とするケースやそのメリット・デメリットについて解説します。
家族信託の仕組みや利用の流れについては、以下の記事で詳しく解説しています。
家族信託とは?メリット・デメリットや手続きをわかりやすく解説!
家族信託は「認知症による資産凍結」を防ぐ仕組みです。本記事では家族信託の詳細や具体的なメリット・デメリット、発生する費用などについて詳しく解説します。将来認知症を発症しても、親子ともに安心できる未来を実現しましょう。
要約
- 家族信託の受託者は「個人」だけでなく「法人」でも可能
- 受託者になれる法人は「一般社団法人」のみ
- 株式会社や合同会社では営利目的とみなされ、信託法に違反する可能性があるため不可
- 受託者を「法人」とした場合、受託者の死亡や認知症などのリスクを防ぐことができる
- 「法人」に自社株を家族信託すると、法人のメンバーで協力しながら議決権を行使できる
- 受託者を「法人」とした場合、維持費等で年間15~20万円のコストがかかるため注意
- 受託者を「法人」とする場合は契約の内容以外に法人の定款も必要なため、専門家に相談を
受託者の設定についてお悩みの方へ

家族信託の受託者には「個人」だけでなく「法人」がなることもできます。
「個人の受託者(子など)に完全に財産管理を託すのは不安」
「まだ委託者(親)が元気なので、財産管理を子と共同で行っていきたい」
など、さまざまな想いがあるかと存じます。
「おやとこ」では、そのようなご家族のご意向をお聞きし、最適な信託の設計方法、または他の制度の選択肢についてもご提案が可能です。
相談は無料です。まずはお気軽にお問い合わせください。
無料で相談する
目次
受託者を「法人」とする場合の信託の特徴
受託者を法人とする場合、資産保有者である委託者自身(主に親)も法人の構成員として入ることができます。
したがって、委託者も信託財産の管理についての意思決定に参加できることが大きな特徴です。
受託者が法人の場合と個人の場合の特徴をまとめると、以下のとおりです。
| 受託者が法人の場合 | 受託者が個人の場合 |
|---|---|
| 1. 長期に渡る信託を安定して運用できる 2. 親子で協力して意思決定できる 3. コストが比較的大きい | 1. 受託者の死亡、受託者自身の高齢化 などのリスクがある 2. 意思決定権が子供に移る 3. コストが比較的小さい |
受託者が「法人」の場合のメリット
受託者を法人とした場合のメリットは、以下のとおりです。
- 受託者の不存在を回避できる
- 意思決定権が完全に受託者(子)へ移行するのを回避できる
詳しくみていきましょう。
メリット1.受託者の不存在を回避できる
親の資産を子が受託者として管理していく一般的な家族信託を例に考えましょう。
受託者が1人のみの場合、委託者の認知症の進行だけでなく、受託者側にも一定のリスクが存在します。
- 委託者(親)よりも受託者(子)が先に死亡するリスク
- 受託者(子)自身が認知症になり親の財産管理が難しくなる=「受託者の高齢化に伴うリスク」
受託者が個人(1名のみ)の場合、このような「受託者の死亡のリスク」や「受託者の高齢化に伴うリスク」も考えられます。
代々引き継いでいる収益不動産を信託する場合など、受託者の仕事が長期にわたることが想定される場合、受託者を法人とすることで安定して信託を運営できるというメリットがあるのです。
例えば、先祖代々の土地を引継いで子供や孫に承継先を決めていく信託(受益者連続型信託)の場合、信託の期間が約60〜70年に及ぶこともあります。
そこで、受託者を一般社団法人とすることで受託者の不存在を回避し、長期にわたる信託の安定的な運用が可能となります。
なお、一般社団法人を受託者とした場合、構成メンバーは必要に応じて(メンバーの一部が死亡した場合など)、変更する必要があります。
この点については定款規定によってメンバー変更のルールを設けておきましょう。
詳しくは一度、専門家へご相談ください。
メリット2.意思決定権が完全に受託者(子)へ移行するのを回避できる
家族信託を早めに契約して備えておきたいものの、受託者を子1名とした場合「意思決定権が完全に子へ移ってしまう」という点が問題になることがあります。
例えば、オーナー経営者が自社株の信託をする場合、自社株をそのまま次世代へ信託すると、議決権も次世代へ移ってしまいます。
この場合、自身の認知症対策はしておきたいものの、次世代に議決権を渡すにはまだ早いと考え、家族信託そのものを躊躇することもあるでしょう。
そこで、現経営者の父と次世代の息子をともに構成員とし、かつ父親が元気なうちは父親が運営権限を有する形の一般社団法人を設立する方法があります。
受託者が「法人」の場合のデメリット
一方で、一般社団法人を受託者とした場合「コストがかかる」というデメリットがあります。
例えば、以下のようなコストがかかります。
- 法人設立費用 登録免許税:約6万円/定款認証費用:約52,000円
- 法人住民税均等割 最低額:毎年7万円
- ②について税務申告をする場合の税理士報酬
- 役員変更登記 ※2年に1回の役員変更登記が必要となる
全体で1年あたり平均15~20万円のコストとなります。
このコスト感も把握した上で、受託者を一般社団法人にするかどうかを検討する必要があるでしょう。
まとめ
家族信託の受託者を法人とするメリットは非常に大きいですが、コストの問題もあるため、一概に法人が適しているということもできません。
ただし、信託中に受託者が死亡した場合などに備えられるため、受託者(子)の年齢や健康状態なども踏まえて検討していくとよいでしょう。
家族信託中に受託者が死亡した時の対応・対策まとめ
家族信託において、受託者のほうが先に亡くなってしまうということも当然ありえます。では受託者が先に亡くなってしまった場合、家族信託はどうなってしまうのでしょうか?今回は、受託者が先に死亡した際に家族信託がどうなるのか、また、財産の取り扱い方法や次の受託者の選定について解説します。
また、法人を受託者とする場合には、信託契約の内容だけでなく法人の定款の設計も必要となるため、専門家に相談しながら手続きを進めることをお勧めします。
「一般社団法人」を受託者にするメリットとデメリット

受託者を一般社団法人とすることで、複数人で安定した信託を運営できる可能性があります。
一方で、コスト面や、手続きの手間に関するデメリットも考えられるため、ご家族ごとに慎重な検討が必要です。
20,000件を超えるお問い合わせ実績を持つ「おやとこ」では、現在無料相談を実施中です。
お悩みの際は、お電話やメールからお気軽にご相談ください。専門家が真心を込めて丁寧に対応いたします。
無料で相談する





