家族信託では、財産を託す方(委託者)が70代以上であるケースが多いです。
委託者となる方が高齢の場合、本人が介護施設などに入所している・または入所予定であるというケースがよくあります。
もちろん、委託者となる方が施設に入居している場合でも、十分な判断能力があれば家族信託は可能です。
しかし、施設が面会を制限しているなどの事情がある場合、本人確認や意思確認がスムーズに行えず、信託契約ができないことも考えられます。
そこで本記事では委託者となる親が施設に入所している(する予定がある)場合に家族信託を進める方法について、実例を踏まえて解説していきます。
家族信託の仕組みや流れについては、以下の記事にて詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
家族信託とは?メリット・デメリットや手続きをわかりやすく解説!
家族信託は「認知症による資産凍結」を防ぐ仕組みです。本記事では家族信託の詳細や具体的なメリット・デメリット、発生する費用などについて詳しく解説します。将来認知症を発症しても、親子ともに安心できる未来を実現しましょう。
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目次
高齢の親が施設に入所する際の注意点
持ち家のある親が高齢となり施設に入所すると、それまで住んでいた自宅は空き家となる可能性があります。
空き家を放置しておくと安全面や衛生面、経済面(所有している限りは固定資産税が課せられる)などさまざまな観点でリスクがあります。
そこで「自宅を売却して介護施設の費用に充てたい」という方が多いですが、本人が認知症で判断能力がない状態の場合は、以下の点に注意が必要です。
- 自宅の売却ができず、施設の入所費用を工面できない可能性がある
- 本人の預金口座から施設の入所費用を引き出せなくなる(子などが立て替えなければならない)可能性がある
具体的にみていきましょう。
1.自宅の売却ができず、介護費用の工面ができない
「介護費用は自宅を売れば捻出できる」と考えている方も多いのではないでしょうか。
しかし、不動産の名義人(親)が認知症などによって判断能力を失うと、売却行為ができなくなる可能性があります。
本人の判断能力がない状態では、売買や賃貸などの法律行為ができないためです。
他にも、自宅を賃貸したり、業者と請負契約を結び大規模な修繕をしたり、ということもできなくなるおそれがあります。
このように、名義人の判断能力がなくなると、不動産は事実上「凍結状態」となってしまうのです。
2.預金口座から入所費用を引き出せない
口座の名義人本人が、認知症などにより判断能力をなくすと、銀行はトラブルを防ぐために預金の引き出しや定期預金の解約などの取引を停止する可能性があります。
この状態になると、原則本人の家族であっても、口座からお金を引き出すことはできません。
このように、不動産や口座が事実上凍結してしまうと、施設の入居に必要なまとまったお金を用意することが難しくなり、子や親族が立て替えなければならなくなる可能性もあります。
家族信託はこの「認知症による資産凍結」を未然に防ぎ、親の介護費用や今後の生活費などを柔軟に管理していくための制度です。
事実上の「資産凍結」となった場合:成年後見制度の検討
もし認知症などで判断能力をなくし、資産が凍結状態となった場合は、一般的に「成年後見制度」の利用を検討することになります。
成年後見制度では、本人の代わりに財産管理を行う後見人が選任され、資産凍結の解除が可能となるためです。
成年後見制度
家庭裁判所へ申立てを行い、本人の代わりに財産管理を行う後見人が選任される。
→後見人は本人の法的な代理人となる
→本人の代わりに預金の引き出しや定期預金の解約などを行える
=資産凍結の解除が可能
ただし、成年後見制度では家庭裁判所が関与し、様々な制限があるため、理解しておく必要があります。
成年後見制度の注意点
成年後見制度では 「本人の財産」を守ることが目的とされます。
よって、本人のためではない支出や、リスクのある資産運用などは原則認められません。
また、自宅の売却も必ずしも行えるというわけではなく、家庭裁判所の許可が必要です。
親の財産を柔軟に動かしたり、相続に備えて対策したりすることは難しくなり、子や親族にとっても負担となる可能性があります。
だからこそ、家族信託を踏まえた「事前の対策」が非常に重要であり、それは親本人だけでなく、子や親族のための対策ともいえるのです。
成年後見制度についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、ご確認ください。
【保存版】成年後見制度とは?仕組みや注意点をわかりやすく解説します
成年後見制度とは、認知症などで判断能力が低下した人の法的な行為や財産管理のサポートを行う制度です。本記事では具体的な制度の内容や費用はいくらかかるのか、利用する流れ、認知症対策として注目の家族信託との違いをわかりやすく解説します。
家族信託の前提となる「意思能力」
老後・介護の資金準備や自宅の管理・売却において必要な「事前の備え」は、家族信託で実現できる可能性があります。
家族信託で、親が元気なうちに子や親族へ財産管理を託しておけば、たとえ認知症になったとしても、本人の不動産や預金を柔軟に動かせます。
ただし、家族信託では「信託契約」を結ぶため、委託者(親)の意思能力が必要な点に注意しましょう。
具体的には、家族信託の趣旨を理解し「自分の財産を受託者(主に子)に預けて管理してもらう」という意思が明確でなけれななりません。
そして、信託の組成をサポートする専門家や公証人などが、委託者及び受託者の意思を確認し、問題ないと判断したうえで家族信託の契約手続きを進めます。
親が施設に入所している場合でも、この意思確認は必須です。
場合によっては対面での意思確認が難しいケースなども考えられますが、近年では、意思確認には様々な方法がありますので、詳しくは家族信託の専門家へご相談ください。
施設に入所している方が家族信託を行った事例
親が施設に入居中の場合、親の状況や感染症などの各種事情により面会が制限されるおそれがあります。
この事例でも面談などの日程調整を検討していたところ、入所先の施設が面会を制限しているという連絡を受けました。
それでも適切な手順を踏むことで、最終的に施設側に面会時間を確保していただき、信託契約の締結が完了しました。
この事例についてご紹介します。
面会の申請の段階で重要性を理解してもらうことが重要
この事例では、施設に入所されている親御様をもつ長男から、家族信託のご相談を受けていました。
そこで、弊社「おやとこ」の担当者が、お客様から家族信託の相談を受けている専門家として、施設へ以下のように説明しました。
- 家族信託という制度を利用するために契約を締結したい旨
- 財産を預ける大切な契約なので、対面で対応をしている旨
- 認知症などが進んだ場合には、契約締結が難しくなる旨
- 面会時間は1時間で構わない旨
施設側が面会を許可するための具体的な理由と緊急性を理解できるように説明する必要があります。
親族が施設に面会を求める場合、通常の面会希望と同様に受け止められたり、単に親族が面会を強く希望している程度にしか捉えられないこともあるかもしれません。
しかし今回のように専門家から面会希望を申請することで、専門家が介入して進めている重要な事柄であることが伝わりやすくなります。
今回、結果として、施設の責任者の方に家族信託の契約の重要性と面会の必要性などを理解いただけたことで面会の許可が下りました。
無事に公証人立会いのもと、信託契約の締結が完了しました。
まとめ
上記で解説した事例のように、親が施設に入居している場合、さまざまな事情で面会が制限され、委託者となる方の意思確認が難しくなることもあります。
ただし、面会が制限されている場合でも、施設側に面会時間を確保してもらいたい旨をしっかりと説明することで理解を得られる場合があります。
説明の際には、「家族信託の契約の重要性」「委託者との面会の必要性」「認知症などが進むと契約ができなくなるリスク」をしっかりと施設側に伝えるように心掛けましょう。
場合によっては家族信託の専門家が代わりに説明することで、面会や信託契約の重要性が伝わりやすくなる可能性があります。
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