相続や終活については話題に上りやすいかと思いますが、同じように老後対策として今話題となっている「家族信託」という言葉をご存知でしょうか。
相続に関するセミナー等においても、「家族信託」をテーマとしたものは大変注目されていて、たくさんの方が参加されています。
では、どうしてこれほどまで「家族信託」の注目度が急上昇しているのでしょうか?
それは、老後に向けた生活対策の手段として、家族信託という制度が非常に有用だからです。
この記事では、家族信託を活用した老後生活や相続などの対策について解説をしていきます。
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目次
家族信託の仕組みとは?
まず最初に「家族信託」という制度についてお伝えします。家族信託は、2007年の信託法改正以降、注目されるようになりました。
この制度を利用することにより、従来とは異なり「遺言書作成」「後見人制度」等の利用に代えて、家族の希望に沿った財産管理が可能になったのです。
【家族信託とは】
- 所有する財産の「管理」を信頼できる家族に託すこと
- 自分の財産管理能力低下によって、自分の財産が利用できなくなってしまうことを予防すること
つまり、自分の老後に備えて所有財産の管理を子などの家族に託す手段となります。
[1]認知症などによる「長生きリスク」とは?
実際に家族信託が役立つのはどのような場面になるのでしょうか。
歳を重ねると、誰しもが能力の低下を感じ、人によっては、認知症を発症し、物事の判断ができなくなってしまう可能性もあります。
意思能力が低下すると
- 金融機関にて利用口座の凍結を受けると、年金等を含め預貯金を引き出せなくなる
- 介護施設などの入所資金のため自宅の売却を検討したくても、不動産の売却・賃貸の契約などができなくなる
このような不具合が想定されます。
ここで家族信託契約をしておけば、万が一物事の判断ができなくなってしまっても、財産を引き継いだ家族が自分に代わって銀行口座からお金を引き出したり、不動産の契約をしたりすることができるのです。
家族信託は決して豊富な資産を有する一部の人のための制度ではなく、このような日常的に起こりやすいリスクこそ対策が可能となる制度なのです。
[2]口座凍結対策の必要性について
先ほど簡単に触れたように、高齢の方が認知症などにより物事の理解力を失ってしまった場合には、銀行口座からお金を引き出すことができなくなってしまいます。
ご存知の通り、現在、銀行でお金をおろす際や口座の開設・解約に際しては、本人確認が必要です。
しかし、高齢となり認知症が進んでしまった場合はどうでしょうか。
昨今では、高齢者の詐欺被害も大変多いため、銀行側の預貯金保有者本人への意思確認の姿勢も以前に比べてより厳しくなっています。
例えば、現在では、配偶者などの親族が代理人として銀行の窓口に行ったとしても手続きはさせてもらえませんし、本人からの委任状を持参したとしても手続きはできません。 必ず、本人の意思確認が要求されるようになっています。
つまり、本人が認知症などにより物事の理解力を失ってしまっていると、銀行が要求する意思確認ができず、仮に本人が窓口に行ったとしても、銀行預金をおろせない、という状況に陥ってしまうのです。
これがいわゆる「口座凍結」です。
銀行は、このような場合には、「家庭裁判所に後見人をつけてもらって、後見人から手続きをしてください。」というような案内をしてきます。
[3]後見制度と家族の負担について
ここで、後見制度は認知症の進行した本人のために役立つ制度となります。
しかし、家庭裁判所を通す制度であり、親族にかかる負担も大きくなるため、その利用については特徴をよく知っておくべき制度だといえます。
まず、制度を利用する場合でも手続きには早くても数か月程度の期間を要しますので、その間は預金を下ろしたり、不動産の手続き等も出来ない状態が続きます。
本人の生活費や介護費、医療費が必要な状態であっても、本人の預金が使えない状況が続くのです。その負担は本人を支える家族にのしかかってくることになります。
また、一度、後見制度を利用すると、認知症の回復まで継続することとなり、実質的に本人死亡の時まで制度利用が続くことになります。
後見人には報酬を支払う必要があるため、その負担も大きなものとなります。
このような事態を事前に防ぐためにも、口座凍結対策として「家族信託」が有効な手段となるのです。
家族信託を使うメリットは何か?
このように、家族信託はどうしても選択肢が狭くなってくる老後生活の対策として、有効な手段となり得ます。
このような家族信託についてのメリットとデメリットについて見ていきましょう。
メリット1|振り込め詐欺の防止
高齢者を狙った詐欺事件は多発しています。
家族信託の制度を利用することで、親の資産(預貯金等)の名義が受託者に変わるため、信託財産については振り込め詐欺に遭いにくい環境を作ることができます。
メリット2|口座凍結に備える
口座保有者が適切な判断が出来ない状況になると、事故防止のため口座が凍結され預貯金の引き出しができなくなります。
家族に預貯金を信託していれば、その残高(信託口等の口座残高)については必要に応じて預金の引き出しが可能となります。
高齢の親世代は銀行の定期預金やゆうちょ銀行の定期貯金、定額貯金等を利用している人が多いと思います。
これらを信託資産にして信託口口座へ移動しておくことで、受託者は必要に応じた引き出しが可能となります。
【介護施設の入所金について】
介護施設によっては初回の入居金などで数百万等の資金が必要になる場合もあります。
中には入居金を抑えた費用設定の施設もありますが、希望通りの施設に入所できるかどうかは分かりません。
入所が決まるまでに介護費用の支出(介護保険以外の自己負担分)が膨らむ可能性もありますので、入所資金についてはまとまった額を備えておくべきだといえます。
親孝行のために子世代が代わりに出す、という方法もありますが、介護費用や入所費用を預貯金から支出することで相続税の対策にもなるのです。
メリット3|資産を整理するきっかけになる
家族信託を行う際には、財産すべてを信託する必要はありません。どの資産を信託財産とするかは委託者が決めることができます。
終活などで遺言書を作成する際などに自身の資産状況をまとめる段階がありますが、財産の状況を把握したり、子世代と共有したりする機会は非常に少ないのではないでしょうか。
しかし自身の老後資金を考えるためには資産の把握は必須であり、そのことで相続について考えたり、相続の際の分割や相続税について考える機会となります。
一般的には相続が発生するまで子は親の財産を全く把握できていないというケースが多いものです。
もちろん、資産について子にすべて開示する必要はありませんが、家族信託で信託する予定の財産だけでも子世代と情報を共有することで、資産管理や財産について相談をする有効な機会となります。
この点も家族信託にまつわる大きなメリットと言えるでしょう。
メリット4|遺言の代わりとして機能させる
家族信託の契約では、委託者(財産所有者)の死亡後、資産の最終的な相続先(帰属先)について指定することができます。そのため遺言の代わりとして機能させることも可能です。
さらに家族信託の契約内容を工夫することで、世代を超えた財産継承が可能となります。
例えば、相続先を【父⇒母⇒子⇒孫】といった形に指定することができます。
このような世代を超えた財産の承継先の決定は遺言では指定できず、家族信託特有の機能となっています。
メリット5|間接的な節税効果
財産を贈与すると贈与税が発生します。贈与税は非常に税率が高いため、親族間で財産の贈与を行う場合でも、多額の税金を支払う必要が出てきてしまいます。
また、相続時点で多額の預貯金がそのまま残っていると相続税が高くなってしまいます。
そこで家族信託を利用すれば、委託者本人の意思能力が低下した後でも信託財産で投資用物件を購入したり、維持管理を依頼することが可能です。
不動産は購入価格よりも固定資産税評価額の方が低くなり、収益物件であれば利益が発生します。預貯金等の資産を減らして相続税対策となり、同時に収入先を確保する有効な方法となるのです。
家族信託のデメリットについて
ここまでメリットについて説明してきましたが、家族信託のデメリットや注意点についても確認しておきましょう。
- 財産を託された「受託者」が強い権限を持つようになるため、しっかりと管理ができる人物に依頼する必要がある
- 相続時のトラブルを防ぐため、親族内の人間関係に応じて、他の相続(予定)者にも家族信託について説明して同意を取り付けておく必要がある
- 家族信託は、本人の意思能力のあるうちに契約を結ぶ必要がある
- 公正証書での作成が一般的であり、公証役場への支払い費用が発生する
- 不動産が絡む場合など、法律・税金の知識が必要なケースがあり、信託登記についても申請が難しいケースもある。専門家に依頼した場合には専門家への報酬が必要となる
- 不動産を信託した場合、登録免許税が発生する
これらの内容を確認の上で家族信託の利用を検討していただきたいと思います。
家族信託を含めて、老後に向けた対策はできるだけ早めに取り掛かりましょう。
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家族信託の準備と手続き
ここまで家族信託の特徴について説明してきました。実際の手順についてご紹介していきましょう。
STEP1|信託契約の内容を決める
まず最初に行うべきことは家族間での話し合いです。
【話し合い整理する観点】
② 誰に信託するか
③ どの財産をどれだけ信託するか
④ 委託者(受益者)が死亡した時には、誰が財産を引き継ぐか
①~④に基づいて信託契約を作成します。
STEP2|契約書を作成する
家族信託の内容が決まったら契約書に起こします。
金融機関との取引がある場合は、金融機関の指定内容の記述が必要な場合がありますので、取引予定の金融機関で契約内容をチェックしてもらいましょう。
【公正証書の作成】
契約書が出来上がったら、公正証書を作成します。
- 公正証書を作成する際には、信託する人とされる人の印鑑証明書を公証人に提出します。
- 不動産を信託する場合には、事前に登記事項証明情報(登記簿)や固定資産納税通知書のコピーをあらかじめ公証人に提出しておく必要があります。(事前提出はFAXやメールなどで可能です。)
- 公正証書にする段階で公証役場にて公証人から委託者への本人確認や意思確認が行われます。
家族信託の手続きはまだ途中ですが、信託契約の効力そのものは公正証書作成時に発生します。
STEP3|資産の名義を移す
信託契約書が出来上がったら信託した財産の名義を変更していきます。
- 預貯金…受託者が金融機関の信託口口座または信託専用口座を作成し、委託者が資金移動する
- 不動産…法務局で信託登記を申請
- 信託物件の火災保険などの名義変更
- 取引用口座などの変更
以上の工程を経たら、晴れて家族信託が完成です。
信託契約書の作成や不動産の信託登記など、専門家の力を借りた方がよい部分もありますのでアドバイスを受けると良いでしょう。
老後対策だけではない家族信託の活用法
ここまで老後資金を中心に家族信託について解説してきましたが、その他の利用方法をいくつかご紹介します。
家族信託には老後の生活費対策にとどまらない利用方法があるのです。
事例①|介護施設への入所で実家が空き家になるケース
高齢夫婦のどちらかが他界し、残された一人が施設へ入所すると、実家が空き家になります。
このようなケースで何の対策もしていなかった場合、名義人の意思能力によっては実家の処分は難しくなります。
このような事態に備えて前もって家族信託をして子が実家の賃貸借契約や売買契約を行えるようにしておけば、得られた資金を施設への入所費用や医療費・介護費に充てることが可能となります。
事例②|収益物件の管理を引き継ぎたいケース
収益物件の所有者が高齢になり、不動産の管理(施設の管理、賃料の回収等)が負担になることもあります。
こうした場合にも家族信託を利用することで、賃貸物件の管理、売却などに関する権限や業務を受託者である家族に託すことが出来ます。
定期的な管理に加えて購入・売却・営繕など、受託者が必要に応じて手続きをすることが可能になるのです。
事例③|直系の孫への資産承継
資産の引継ぎ先についても、家族信託で指定が可能です。
信託契約によって信託資産を次世代に承継させることができますので、相続先を子や直系の孫(まだ生まれていない子、将来生まれる可能性のある子)に引き継がせることが可能です。
まとめ
今回は家族信託を活用した老後の生活費や活用法についてご紹介してきました。
家族信託は信託法に沿った制度のため難しそうに感じますが、一度知ってしまえばその有効性についてもご理解頂けると思います。
超高齢社会である日本においては2025年には5人に1人が認知症になると言われています。
必ず認知症になるわけではありませんが、長寿化に伴って認知症の可能性も高まります。将来のもしもに備えておきましょう。
今はまだ家族信託は必要ないのではないか、わが家は不要では、と感じているご家族についても、年数が経過するとこうした制度を利用する必要性が出てくる可能性があるかもしれません。
将来的に利用する可能性のある情報として、ぜひ心に留めておいて頂きたいと思います。
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