認知症は、ご高齢の方にいつ降りかかるかわからない大きな問題です。

「認知症は怖いけど、本人はまだ大丈夫だと言っているし。」
「世の中、たくさんの人が認知症になっているんだから、何か良い対策法があるはず。」

こんな風に思っていませんか?

この記事では、家族信託の契約が遅くなったために困った事態に陥った事例を通して、「なぜ認知症対策や家族信託の準備は早めに検討すべきなのか」という問題についてお伝えします。

【参考記事】
家族信託とは?わかりやすくメリット・デメリットを説明します
家族信託は危険?実際に起こったトラブルや回避方法
自分には家族信託は必要ない?家族信託が使えない・不要となる場合を解説
【家族信託の手続き方法まとめ】手続きの流れ・やり方を解説
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家族信託の「おやとこ」では、認知症による資産凍結問題に悩むお客様に、司法書士などの専門家がご家族に寄り添い、真心を込めて丁寧にご対応します。

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高齢の親が検討したがらない心理

80代の父親を持つ娘さんから、「父の自宅について家族信託を利用したい」と相談を受けました。

家族信託についてのご説明をするためにご自宅に伺い、お父さんと娘さんとお会いしました。

家族信託の制度は理解していただいたものの、お父様がなかなか信託をすることに前向きではありません。

「自分は、まだ元気だから、信託はする必要がない。」というのが、お父様のお気持ちでした。

娘さんは家族信託を進めたいと思っていらっしゃったものの、お父様の了解なしに手続きを進めることはできないため、具体的な家族信託の組成について話を進めることはできませんでした。

お父様は自分が認知症になるということを考えることすら嫌だというご様子で、以後、娘さんから家族信託や認知症対策の話をすることができなくなってしまったそうです。

急に財産管理ができなくなることも起こり得る

その後、しばらくして、お父様が転倒して足を骨折。入院してしまったということでした。

様子をお伺いすると、強い痛みもあり、今後のことを考えることができず憔悴しているとのこと。会話も減り、治療のことや転院、施設の利用について話をしたくてもなかなかできない状態とのことでした。

このような状況になったとき、親族としては以下のような困りごとが起こります。

  • どの銀行にどのくらいの預金があるのかも分からない
  • いつも利用している銀行はあるが、本人でないと預金を下ろせないと言われた
  • 今後の介護費用を考えると、今の預金では足りないかもしれない

今回の事例でも深刻な状況になっていました。

仮に本人に代わって預金を下ろそうとする場合、

[1]代理人カードを利用する(代理人の制度がある場合)
[2]成年後見制度(法定後見/任意後見)を利用する
[3]家族信託を利用する

これらの方法がありますが、「法定後見」以外は本人の意思能力や事前の手続きが必要です。

預金の取扱いについて、過去記事『家族が認知症患者の預金を引き出すための4つの方法』でも解説しています。それぞれの方法には利点もあれば不便な所もありますので、ぜひご参照ください。

[1]代理人カードの利用

金融機関によっては、本人に代わって親族等による預金の引き出し等が可能となる「代理人カード」のある所があります。

ただし、口座名義人本人の意思確認を前提としているため、意思能力を失ってしまうと利用が終了することになります。

また、本人の意思がある段階であっても、定期預金の解約はできない、引き出し額に上限がある、などの制約が設けられています。

[2]法定後見の利用

成年後見には「法定後見」と「任意後見」の2つの制度があり、「法定後見」のみ、意思能力を失った後でも利用開始できる制度です。

家庭裁判所へ申し立てることで後見人(法定代理人)を選任してもらいます。

ただし資産の利用には制約が設けられ、後見人への報酬が必要になる可能性が高いという特徴もあります。事前にその特徴をよく理解しておくことが大切です。

[3]家族信託の契約にも本人の意思表示が必要

家族信託を利用するためには、本人が「家族信託をしたい」という意思表示をする必要があります。

体調的に明瞭な会話ができない状態であったとしても、筆談やジェスチャーで明確に意思表示をしていることが確認できれば、家族信託は利用することができます。

【家族信託で本人の意思確認が行われるタイミング】

① 公正証書で信託契約する場合
② 信託口口座に資金を移動する際
③ 信託資産に本人の自宅など不動産を入れる場合

上記のようなタイミングで意思確認が行われます。

① 信託契約を公正証書で作成する場合

信託契約を公正証書で作成する場合、公証人が本人確認や意思確認を行います。

この際に疑義があれば、主治医の診断書等を求められることも考えられます。手続きについては事前に公証役場に確認をしておくと安心です。

信託契約の公正証書化については、このように本人の意思能力を証明する書類にもなります。

また、金融機関との取引の際に公正証書での信託契約書を求められることが一般的ですので、家族内の契約であっても公正証書での作成をお勧めします。

② 預貯金を信託資産に入れる場合

預貯金を信託資産に入れる場合、受託者は個人の資産とは分けて管理するため、信託口口座などの信託専用口座を新たに作成します。

その口座への資金移動が完了した後に、その資金の受託管理が始まります。

ただし、信託専用口座への資金移動のために預金口座から資金を引き出すのは口座名義人(委託者)であるため、本人の意思能力や意思表示が必要となるのです。

③ 不動産を信託資産に入れる場合

不動産を信託資産に入れる場合は、信託登記を行う司法書士が信託契約の意思確認を行います。

意思表示能力が低下した後の代替方法

高齢になると、認知症以外にも体調不良などの原因で意思表示ができなくなるケースがあります。ケガや手術、入院など環境の変化により意識障害が起きることもあります。

今回の事例でも、会話や周囲の状況の把握も難しい状態になり、家族信託についての意思表示すら行うことができない状態になっていたのです。

そのため残念ながら、家族信託の利用をあきらめることになりました。

このようなケースの代替方法として、一般的に利用されるのが成年後見制度(法定後見)の利用です。

急なケガや発病により入院や介護施設へ入所せざるを得ない状況となると、その他の選択肢は無くなってしまいます。

成年後見制度(法定後見)の利用


家族信託を利用できないため、代わりに「成年後見制度(法定後見)」の利用を検討することになりました。

しかしデメリット面も多く、ご相談者様は利用を躊躇していらっしゃいました。

そんな中、お父様が病院から介護施設へ入所することとなり、700万円程度の入居金が必要だということが分かりました。

親族が把握している本人の預金だけでは足りず、家族が立て替える必要があります。

もし、最初にご相談を頂いたタイミングで家族信託の話を進めていたら、全体的な資産状況をリストアップすることも出来たでしょう。

また、介護費用の捻出のため、必要に応じて自宅不動産の管理処分を親族にゆだねることもできたかもしれません。

今回は時期的に進めることが難しくなりましたが、家族信託は早期に手続きを進めておくことで介護資金の目途も立ち、親族もサポートしやすくなるのです。

施設入所中の信託契約について

委託者本人が施設に入所中でも信託契約は可能なのでしょうか。

本人から契約の意思を確認できれば信託契約そのものは可能です。ただし意思確認のための面談を要します。

まとめ

高齢の方が増え平均寿命もどんどん延びているなか、認知症の問題はどんどん深刻さを増しています。

「自分はまだ大丈夫」「これから検討すればいい」という後回しの考え方では、ご家族に必要のない苦労をかけてしまうことがあり得ます。

家族信託を始めるには、信託契約への理解も必要であり、利用するにも一定の決断が必要でしょう。

親族といえども無理な押しつけはできないと思います。

何よりも、資産保有者である本人が、委託者として信託契約に同意する意思があって初めて成立する契約だからです。

そのため一概には言えませんが、乗り気でない親にどのように話を持ち出すのか、工夫が必要になると思います。

契約意思をはっきり表示できる段階での手続きが重要となるのは間違いありません。将来に備えて、早めの検討をしておきましょう。

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