信託財産は「信託」において、委託者から託された受託者が、一定の目的に従って管理・運用・処分を行う財産のことです。
信託財産は固有財産とは異なる性質を持ち、相続や財産承継の考え方・流れも特殊です。
そこで本記事では、固有財産とは異なる信託財産の特徴や、信託を検討すべき財産の種類、信託財産の相続の考え方などを詳しく解説していきます。
要約
- 信託財産とは、委託者から受託者へ管理を託された財産である
- 信託財産やその管理方法を柔軟に定められる信託方法として、家族信託が注目されている
- 不動産や金銭などの財産的な価値があれば信託できるが、農地や年金受給権など、一部の財産は信託できない
- 将来法律行為が必要な不動産や、委託者の生活に必要な金銭などは優先して信託すべきである
- 信託財産は、遺産分割や遺言の対象にはならないが、承継した場合は相続税が課される
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目次
信託財産とは?
信託財産とは「信託」において、委託者から受託者へ管理・運用・処分を託された財産 です。
金銭・不動産・有価証券など、財産的な価値があれば、原則「信託財産」になり得ます。
財産を信託する動機や目的は、人によってさまざまです。
例えば病気や高齢により、自分のお金を適切に管理できなくなったとき、財産を失くしたり詐欺に遭ったりしないように、第三者へ財産の管理・運用・処分を託すケースなどが挙げられます。
信託財産は、信託銀行や信託会社などの企業へ託すことも、子や兄弟などの身内へ託すことも可能で、前者は「商事信託」、後者は「民事信託」といいます。
商事信託でも民事信託でも、信託財産の性質は変わりませんが、大きな違いは免許や登録を受けた信託業者が受託者となるか、そうではない一般の人や組織が受託者となるか、という点です。
両者の違いを以下の表に挙げておきます。
信託は、2006年に行われた大きな信託法の改正により、金融商品としてだけではなく、一般市民でも身近で使いやすい制度となり、民事信託の普及は拡大してきました。
参考: 信託法改正に伴う信託業法の改正の概要について|金融庁
また、民事信託のなかでも、子や兄弟など信頼できる家族に財産を託す「家族信託」が大きく注目されていますので、後段で詳しく解説します。
前提知識として、まずは「信託の仕組み」について触れておきましょう。
信託の仕組み
信託とは、 委託者が受託者へ財産を託す ことです。
信託において、受託者は「受益者のために」信託財産の管理を行い、受益者は信託財産から発生した利益や、信託財産からの恩恵を得る権利を持ちます。
この、委託者・受託者・受益者が信託の主な登場人物です。
信託では、信託法をはじめとする法律のルールを守り、信託の目的に沿って、受託者・信託財産・管理方法などを細かく設計する必要があります。
よって信託は、法律や相続・税務などの専門的な知識が必要で、難易度が高い業務です。
近年注目されている「家族信託」とは
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詳しくは、こちらの記事でも解説しています。
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主に「認知症による資産凍結対策」として活用されています。
認知症による資産凍結とは、親の認知症により、本人の財産が凍結し、動かせない状態になることです。
例えば銀行が本人の認知症を把握した場合、適切に口座取引を行う判断能力がないとみなし、本人の預金口座の取引を停止(口座凍結) したり、意思表示ができないことにより、所有不動産の売却などができなくなったりすることがあります。
このような資産凍結のリスクを防ぐために、信頼する家族に財産の所有権をあらかじめ移し、委託者が認知症でも、受託者が柔軟に財産を管理できるようにしておくのが、家族信託です。
銀行の口座凍結、不動産の凍結については、以下の記事でも詳しく解説していますので、ご確認ください。
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この特徴を理解しておくことで、より信託をうまく活用することにもつながりますので、次章で詳しくみていきましょう。
信託財産の5つの特徴
信託財産の特徴は、以下の5つです。
信託財産の5つの特徴
- 誰のものでもない特殊な財産である
- 形式的な所有者は受託者である
- 受託者や委託者の破産・差押の影響を受けない
- 一定の目的に沿って管理される
- 信託財産の「受益権」は、承継可能である
1つずつみていきましょう。
1. 誰のものでもない特殊な財産である
信託財産は、誰の固有財産でもない特殊な財産です。
家族信託に関与する委託者・受託者・受益者、誰のものでもありません。
なぜなら、信託では「信託財産を所有する人」と「信託財産からの利益・恩恵を受ける人」が分離されているためです。
固有財産では通常、所有権もその価値(財産権)も、同じ1人の人物が持ちます。
ただし、信託財産では、信託財産を所有・管理する「所有権」と、信託財産からの利益を受け取る「受益権」が分かれていて、所有権を「受託者」が、受益権を「受益者」が持ちます。
また、一般的な家族信託は、受託者を子、委託者兼受益者を親として、子が親の財産を管理し、その利益は受益者である親へ渡すというスキームです。
親は家族信託における受益者ですので、認知症によって財産管理の能力を失った後でも、財産からの利益を受け続けられるのが大きなメリットだといえます。
2.形式的な所有者は受託者である
受託者は信託財産の「所有者」となりますが、その地位は形式的なもので、信託財産が受託者の固有財産になるわけではありません。
例として、不動産を信託したケースをご紹介します。
不動産を信託する場合、その不動産の登記には、所有者として受託者の名前が記載されます。
つまり、不動産の所有権が委託者から受託者へ移転するということです。
受託者が登記上の所有者となることで、信託した不動産の売却・譲渡・賃貸などの法律行為を、委託者の判断能力の有無に関わらず、単独で行えるのです。
ただし、登記上は「受託者 〇〇」と表記されるため、受託者自身の固有財産ではなく、信託による形式的な所有者であることも、明確になります。
3.受託者や委託者の破産や差押えの影響を受けない
信託財産は、受託者や委託者の破産や差押えの影響を受けません(信託法23、25条)。
なぜなら、信託財産は、受託者や委託者の固有財産ではないためです。
前述の通り、信託財産の所有権は受託者へ移転し、委託者の手元からはなれます。
よって、委託者の債務不履行や破産などにより、委託者の債権者は信託財産を差し押さえることはできなくなるのです。
ただし、債務を逃れるために、悪意に(そのことを知ったうえで)行った信託は、詐害信託として、債権者から信託の取り消し請求をされることがあります(信託法11条)。
信託は、適切な目的に沿って行われるべきだということです。
一方、信託財産の所有権は受託者にありますが、信託財産は受託者の固有財産でもなく、独立した特殊な財産であるため、受託者の債権者による差押えを受けることもありません(信託法23条、25条)。
ただし、受託者が信託事務を行う中で負った債務については、信託財差に関しても差押えや強制執行の対象にできます。(信託法23条)。
(例:融資を受けて不動産を建築し、当該不動産を担保とする など)
4.一定の目的に沿って管理・運用・処分される
信託財産は、委託者・受託者間の信託契約に定められた一定の目的のために、管理・運用・処分されます。
つまり、受託者は、信託財産の所有者だからといって、好きなように財産を売却したり、譲渡したりできるわけではないということです。
あくまでも、家族信託契約に従って管理されるため、委託者・受益者、その他の相続人などは、安心して受託者へ財産を託せます。
5.信託財産の「受益権」は、承継可能である
信託財産の受益権は、当初の受益者(=委託者、主に親)が死亡した後も、第二、第三受益者へ承継可能です。
このように、受益権を連続して承継していく信託を「受益者連続型信託」といい、遺言ではなしえない、複数世代にわたる相続を定められます。
よって、受益権は相続財産となり、承継した受益者には相続税が課されます。
ここまで、固有財産とは異なる信託財産の特徴について、ご紹介しました。
家族間で信託ができ、当事者間で信託内容を定められる家族信託ですが、法律の規定上または実務上、信託が難しい財産もありますので、把握しておきましょう。
信託できる財産・できない財産
財産の種類によって、信託できるものとできないものがあるため、家族信託に取り組む際は、注意が必要です。
信託できる財産
- 金銭
- 不動産
- 有価証券
- 動産(宝石、自動車など)
- 知的財産権(特許、著作権、商標権など)
信託できない財産
- 農地
- 年金受給権
- 預金債権
- 上場株式や投資信託(実務上難しいケースが多い)
詳しくみていきましょう。
信託できる財産
財産的な価値があるものは、基本的に信託が可能です。
代表的なものは、金銭・不動産・自社株式などです。
その他、動産や知的財産権などの信託も可能です。
信託できない財産
信託できない(信託が難しい)財産は、農地・年金受給権・上場株式などです。
農地の信託は、農地法で禁止されています(農地法3条の2の3)。
また、現状田んぼや畑として使用していなくても、登記上の地目が「田」や「畑」の場合、そのままでは信託できません。
農業委員会への許可申請(または届出)の手続きを行い、地目を変更する必要があります。
以下の記事で、農地の信託について詳しく解説していますので、ご確認ください。
農地は家族信託できるのか?わかりやすく解説します
家族信託は、高齢者の財産を家族が代わって管理する制度です。信託される主な財産には、預貯金などの他、土地や建物などの不動産が考えられます。ただし、信託する土地に地目が「農地」の物件があった場合、信託の対象にする際に注意が必要です。今回は地目が「農地」の土地について詳しく説明します。年金受給権は、権利を持つ本人にのみ帰属する「一身専属権」であるため、信託や譲渡をしたり、担保にしたりなどの行為はできません(厚生年金保険法41条、国民年金法24条)。
生活保護受給権や、親権などの一身専属権も同様です。
上場株式や投資信託など、証券口座を介して取引される有価証券は、証券会社が家族信託に対応していなければ、実務上信託が困難です。
委託者が元々取引していた証券会社が家族信託に対応していない場合は、対応している証券会社へ株式を移管する、一度現金化して新たに口座を開設して株式を購入するなどの方法があります。
また、証券会社によって商品の内容や条件が異なり、有価証券の移管ができないケースもあるため、注意しましょう。
ただし、家族信託の普及に伴い、家族信託に対応する証券会社も増えてきていますので、まずは問い合わせてみることをおすすめします。
家族信託を検討すべき財産とは?
家族信託では、委託者の財産を全て信託すれば良いというわけではありません。
なぜなら、信託ができない(難しい)財産があったり、信託財産を増やすほど受託者の負担が大きくなる、他の相続人が不満を抱くなどのリスクも考えられるためです。
そこで、優先的に信託を検討すべき財産を、把握しておきましょう。
家族信託を検討すべき財産
- 売却予定の不動産
- 管理が必要な収益不動産
- 老後や介護・医療の資金に充てたい金銭
- 事業承継を検討している自社株式
それぞれについて、詳しく解説していきます。
売却予定の不動産
家族信託を検討すべき1つ目の財産は、売却予定の不動産です。
なぜなら、所有者が認知症などで判断能力を欠いた場合、不動産の法律行為(売却・贈与など)に必要となる意思表示ができなくなるためです。
そこで、例えば、親の認知症に備えて、親から子へ売却予定の自宅不動産を信託しておけば、親の判断能力がなくとも、子が受託者の権限で自宅不動産を売却できます。
売却ができれば、その利益で親の医療や介護にかかる費用をまかなえたり、親が介護施設に入居しても、不動産が空き家状態で放置されることを防げたりと、数々のメリットを得られるでしょう。
管理が必要な収益不動産
アパートやマンションなどの管理が必要な収益不動産も、優先的に信託を検討すべきでしょう。
なぜなら、親の判断能力が低下すると、収益不動産に関して以下のようなリスクがあるためです。
収益不動産に関するリスク
- 不動産管理業務を適切に行えなくなる
- 入居者との契約を締結できなくなる
- 収益不動産の売却ができなくなる
不動産管理を子孫に引き継いでいきたい場合でも、一代限りで売却を考えている場合でも、認知症になってからでは、不動産の引き継ぎも売却も、何もできなくなるおそれがあります。
収益不動産の現状や、本人・家族の希望などを総合的に踏まえた上で、積極的に信託財産に含めることをおすすめします。
老後や介護・医療の資金に充てたい金銭
委託者(兼受益者)の介護施設への入居や入院に必要な費用や生活費は、信託を検討すべきだといえます。
なぜなら、認知症などで判断能力が低下した場合、銀行は預金口座の取引を停止し、お金が引き出せなくなる「口座凍結 」に陥るおそれがあるためです。
一度口座凍結が起こると、成年後見制度を利用しなければ、預金を引き出せない可能性があります。
成年後見制度は、本人の財産を守る制度ですが、一度利用すると原則本人が亡くなるまで続き、家庭裁判所の監視などもあるため、費用的にも、精神的にも負担になるかもしれません。
よって、本人が認知症になっても、本人のお金を動かせるように、できる限り早い段階で対策しておくと良いでしょう。
そこで、家族信託を利用すれば、口座凍結や成年後見制度による費用や精神的負担が生じるリスクを防げる可能性が高まります。
成年後見制度について詳しくは、以下の記事で確認いただけます。
【完全版】成年後見制度とは?わかりやすく解説します
成年後見制度(せいねんこうけんせいど)とは、認知症や知的障害などで判断能力が低下した人の契約や財産管理のサポートを行う制度です。「成年後見人」を家庭裁判所から選任してもらい、本人に代わって様々な手続きを行なってもらいます。この記事では成年後見制度についてわかりやすく説明し、同時に最近注目を浴びている家族信託との比較についても解説します。成年後見制度の5つのデメリットとは?利用による問題点や生じた事例と対策も解説
この記事では、成年後見制度の注意点やデメリットの中から、5つのポイントに絞って解説します。家族が将来、同制度を利用するかもしれないと考えている場合はぜひ参考にしてみてください。事業承継を検討している自社の株式
家族信託は、事業承継対策 としても活用されます。
代表的な方法は、自社株式を後継者へ信託し、議決権を移転させる方法です。
これにより、本人が認知症になった時に、意思表示ができなくなり、議決権を行使できずに、会社の動きが止まってしまうことを防げます。
現在のオーナー社長が、急に後継者に議決権を全て渡すことに不安な場合は、引き続きオーナー社長も経営に参加できるよう、受託者を親や子を含む一「般社団法人」とする方法もあります。
以下の記事もぜひ参考にしてください。
家族信託で一般社団法人を受託者とするメリット・デメリット
家族信託のイメージは、親の認知症対策のため親が持つ資産(アパート、自社株、金銭など)を子が管理していくというパターン(委託者が父親、受託者が息子)だと思います。実は受託者は個人だけではなく「法人」が受託者になることもできるのです。今回は家族信託で法人を受託者とするケースやそのメリット・デメリットについて解説します。認知症により意思決定ができなくなると、経営判断やM&Aなどの法律行為の際にも、成年後見制度を利用しなくてはならず、手続きの手間やストレスが伴ってしまいます。
その点でも、事前に議決権凍結の対策を柔軟に行えることは、家族信託の大きなメリットです。
財産を家族信託する流れ
ここからは、実際に財産を家族信託する流れを解説していきます。
財産を家族信託する流れ
- 家族で希望や財産状況を共有する
- 信託内容を設計する
- 信託契約書の条文を作成する
- 信託契約書を公正証書で作成する
- 分別管理の準備を行う
- 受託者による信託財産の管理を開始する
以下の記事では、細かい手続きまで詳しく解説していますので、ぜひご確認ください。
家族信託の手続き完全ガイド|流れや必要書類を徹底解説!
家族信託の手続きは、家族会議→家族信託契約書の作成→信託口口座開設など信託の準備、という流れで進めていきます。本記事では、家族会議から信託開始までの全体の流れと、信託財産ごとに必要な詳細の手続きについてわかりやすく解説していきます。1.家族で希望や財産状況を共有する
まずは家族で家族信託について理解し、親(委託者)の希望や保有財産の状況、家族や親族の考えを共有します。
家族信託は委託者と受託者間の契約で成立しますが、他の家族や相続人となる可能性のある親族など、関係者にはできる限り共有し、話し合いの上で進めましょう。
なぜなら、委託者や家族の希望や想いを実現するため、かつ相続発生時の親族間トラブルや、他の親族が不満を抱えることを防ぐためです。
家族信託については、まだまだ知らない人が多いですので、家族での話し合いに家族信託の専門家に同席してもらうことも有効です。
2.信託内容を設計する
家族・親族で話し合った内容を元に、具体的な信託内容を設計します。
上述の通り、財産の中には、法律上信託できないものや、信託するために複雑な手続きを踏まなければならないものもあります。
さらに、受益権を複数世代にわたって承継するのか、一代限りで終了するのか、受託者をサポートする信託監督人や第二受託者を設定するのかなど、決めるべきことは多岐にわたりますので、専門家と進めることが一般的です。
3.信託契約書の条文を作成する
設計した家族信託の内容に沿って、委託者と受託者で締結する信託契約書の条文を作成します。
信託契約書の作成は、司法書士などの専門家と相談しながら進めましょう。
わずかな不備でも、贈与税や不動産取得税などの予期せぬ税金が課税されたり、当事者同士または他の親族とのトラブルにつながったりするおそれがあるためです。
専門家に相談するには費用がかかりますが、家族信託によって将来得られるメリットや、精神的な負担の軽減などを考えると、費用対効果は十分見込めるでしょう。
信託契約書の作成については、以下の記事でも詳しく確認いただけます。
家族信託契約書のひな形と作り方を徹底解説!自分で作成or専門家へ依頼どちらがいい?
家族信託契約書は自分で作成することも可能ですが、法律の専門的な知識が必要なため、専門家へ依頼することがおすすめです。インターネット上には信託契約書のひな形が公開されています。ただし、家族信託の設計によって契約書に記載すべき内容は異なりますので、そのまま使用しないよう、注意しましょう。4.信託契約書を公正証書で作成する
家族信託の契約書は、法的な証明力を担保するために、公正証書で作成することが一般的です。
公正証書とは、契約書や定款(会社の根本的な規則)等を公証人(法務大臣からの任命を受けた法律の専門家)が確認したうえで「確かに契約の当事者本人の意思に基づいて作成しました」ということを法的に証明した書類です。
公正証書の作成は、公証役場で行います。
契約書の内容について公証人と打ち合わせした後、別日に公証人と2名の証人の前で署名捺印を行うことで、公正証書の作成は完了です。
公正証書で契約書を作成しておけば、何らかのトラブルにより親族や第三者が家族信託を無効だと主張してきたり、反対意見を述べてきたりした時に、家族信託の内容が正しいことを証明し、法的に対抗できます。
必ず公正証書で作成しなければならないという決まりはありませんが、後々のトラブルの避けるためにも、公正証書で作成した方が安全でしょう。
5.分別管理の準備を行う
公正証書で家族信託契約書の作成が完了すれば、実際に財産管理を行う段階に入ります。
受託者は、信託財産を管理する際、自分自身の固有財産とは明確に分けておかなければなりません。
これを受託者の「分別管理義務」といい、信託法34条で定められている受託者の義務です。
具体的には、不動産など登記可能なものは信託登記をする、金銭は家族信託専用の口座で管理するなどがあります。
以下は、財産の種類ごとの分別管理の方法です。
分別管理の方法
- 不動産:登記
- 金銭:信託口口座の開設
- 株式:株式名簿の書き換え、信託財産である旨の記載
- 動産:外形上区別できる保管方法
- 特許・自動車など:登記または登録
信託登記や信託口口座開設の具体的な手続きについては、以下の記事をご確認ください。
家族信託は銀行で出来る?信託口口座に対応する銀行一覧をまとめました
銀行の家族信託は、家族間で行う一般的な家族信託とは異なり、営利を目的とする「商事信託」です。銀行自身が受託者となって委託者の財産管理を担い、信託報酬を得ます。 本記事では銀行の家族信託の具体的な特徴や、家族信託における銀行の活用方法にを詳しく解説します。不動産を家族信託した場合、登記情報の書き換えは必要?
不動産を購入した時には、「登記情報」に、自分の権利(所有権)が表示されます。登記情報には不動産の登記簿や譲渡登記に関する情報、土地所在図や地積測量図などが含まれます。それでは不動産を信託した場合には、この登記情報の書き換えは必要なのでしょうか?この記事では、不動産の信託と登記情報の関係について解説していきます。6.受託者による信託財産の管理を開始する
信託財産の分別管理の準備が完了したら、受託者による信託財産の管理が始まります。
受託者は信託財産の管理とともに、財産の出入りを記録し、領収書などの証明書類も大切に保管しておかなければなりません。
受託者の義務として「帳簿等の作成等、報告及び保存の義務」が定められているためです(信託法37条)。
また、年間で信託財産から3万円以上の収益が得られる場合、受託者は税務署に「信託の計算書」と「信託の計算書合計表」を、計算期間の翌年1月31日までに提出しなければなりません。
参考: 信託の計算書(同合計表)|国税庁
弊社では、このような信託財産の管理や、管理に伴う書類の作成などの負担を大幅に軽減する家族信託専用アプリを運用しています。
レシートの自動読み込み機能や、銀行口座との情報連携機能などを備えていたり、家族がいつでも財産の状況を確認できたりと、家族信託を簡単・安心に運用できるようになります。
家族信託をご検討の方は、小さなことでもお気軽にご相談ください。
信託財産の相続について
相続が発生した場合、信託財産の承継や、相続税はどうなるのかという疑問をお持ちの方も多いでしょう。
そこで本章では、信託財産の相続について、詳しく解説していきます。
信託財産は遺産分割協議や遺言書の対象財産になる?
信託財産は遺産分割協議や、遺言による遺産分割の指定の対象にはなりません。
なぜなら、前述の通り、信託財産は委託者の所有する財産ではなくなるためです。
ただし、信託財産(受益権)は管理は委託者がするが実質的には受益者の財産となるので、遺留分の対象になると考えられています。
では、委託者が死亡したとき、信託財産の承継はどうなるのかというと、信託契約書で初めから定めておくことが一般的です。
一般的には、以下の具体例のような形で定められます。
【具体例】
- 父(委託者兼受益者)の死亡により家族信託は終了し、信託財産は長男(受託者)に帰属させる(=長男の固有財産となる)。
- 父(委託者兼受益者)の死亡後、受益権および委託者の地位を母が引き継ぐ。母の死亡後、家族信託は終了し、信託財産は長男(受託者)に帰属させる。
このように、信託財産は信託終了後の帰属先を定められることから、遺言と同様の機能も持ちます。
信託財産の帰属を受けたら、相続税は課せられる?
信託財産は相続手続きの対象にはならないものの、相続税の課税対象にはなります(相続税法9条の2の4)。
信託の終了により、信託財産が帰属権利者へ帰属した場合、実質的には相続と同様の権利移動が発生しているためです。
帰属権利者は、信託財産を相続により取得したとみなされ、信託財産の評価額に対して相続税が課されます。
では、当初の委託者兼受益者の死亡により、第二・第三受益者へ受益権が承継される「受益者連続型信託」ではどうなるのでしょうか。
信託財産の受益権を承継したら、相続税は課せられる?
受益者連続型信託において、受益権を承継した場合でも、相続によって受益権を取得したとみなされ、第二受益者には相続税が課されます。
受益権の承継でも、信託財産の相続と同様に、財産額が評価され、相続税が課されます。
また、受益権の承継により、信託財産に関する負債も同時に取得したものとみなされるため、この場合の債務控除は可能です。
信託財産の相続における債務控除
委託者兼受益者の死亡により信託が終了し、信託財産が帰属権利者へ帰属する場合、相続により取得したとみなされ、帰属権利者へ相続税が課せられます。
ただし、信託財産に関する債務が残っている場合、少し話はややこしくなります。
信託終了後には、信託財産に関する債務の支払いや財産の整理などを行う「清算手続き」が行われ、残った財産が帰属権利者へ給付されます。
帰属権利者には、信託財産を相続したとして、相続税が課されますが、この場合は相続税の債務控除ができない可能性があるのです。
相続税法では、信託の終了により信託財産の帰属を受けた場合において、「資産及び負債を取得または承継したものとみなす」旨を定めていません(相続税法9条の2の1〜4、6)。
例えば、委託者兼受託者=父、受託者=長男で、父の死亡により長男に信託財産が帰属する信託では、信託財産に関する債務が残っていたとしても債務控除ができず、プラスの資産に対してまるまる相続税が課せられてしまうおそれがあるということです。
ちなみに、受益者連続信託における「受益権」の承継においては、相続税法にて「資産及び負債を取得または承継したものとみなす」という定めがあるため、債務控除ができるとされます。
このように、法律の専門的な知識を踏まえずに家族信託を組成してしまうと、法的に不安定な設計になることも考えられます。
上記のような不安定さは、家族信託契約書の条文を工夫することで防げる可能性があるため、信託に取り組む際は、経験豊富な専門家への相談をおすすめします。
家族信託の検討は専門家への相談がおすすめ
家族信託を検討されている場合はまず、専門家へ相談することをおすすめします。
とはいっても、専門家に家族信託の相談や手続きの代行を依頼する際の費用について、心配されている方も多いでしょう。
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弊社では初回の相談をメール・電話にて無料でお受けしていますので、ぜひお気軽にご連絡ください。
信託財産まとめ
信託財産の特徴、信託を検討すべき財産、信託財産の相続について、詳しく解説してきました。
信託財産は特殊な性質を持ちますが、家族信託を利用すると、遺言や成年後見制度ではなしえない柔軟な財産管理や、複数世代にわたる相続などが実現できる可能性があります。
本記事を参考に、信託しておきたい財産は何か、どの財産を優先的に信託すべきかなどを、ご家族で話し合ってみてはいかがでしょうか。
認知症対策や相続対策は、当事者の判断能力が失われてからでは思い通りに実行できない可能性があります。
効果的な家族信託を組成するには、専門的な知識や法律の解釈なども必要となりますので、家族信託の経験が豊富な専門家へ相談することをおすすめいたします。
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