2025年には高齢者の5人に1人が認知症になると言われ、いまや認知症は誰もがかかる可能性のある病気となりました。
現在において認知症が完治する治療法はなく、発症した場合の進行はやむを得ません。
とはいえ、もし自分やご家族が認知症と診断されたら「進行するとどうなるのか」「認知症によってどんなトラブルが起こるのか」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。
本記事では認知症が進行するとどうなるのか、トラブル事例とともに解説します。
認知症に対する不安を抱え、事前対策をしたいという方はぜひ最後までご覧ください。
要約
- 認知症は前期・初期・中期・末期の4段階で進行する
- 認知症が進行すると発生するトラブルは資産関連と生活関連の2種類がある
- 資産関連トラブルは家族信託がおすすめ
- 認知症の進行を緩やかにする方法は「健康的な生活・脳の活性化・社会とのつながり」
- 認知症は早期発見・早期対策がなにより大切
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目次
認知症が進むとどうなる?進行段階別の症状
認知症は時間の経過とともに少しずつ進行する病気です。
進行は以下の4段階に分かれており、時間の経過とともに重症化していきます。
- 前期(軽度認知障害)
- 初期(軽度)
- 中期(中度)
- 末期(重度)
本章では段階ごとに症状や介護の必要度を解説します。
前期(軽度認知障害)
前期(軽度認知障害)は「認知症の疑い」の状態であり、以下のような症状が見られます。
- 同じことを何度も言う
- 探し物が増える
- 以前と比較して怒りっぽくなったり頑固になったりする
もの忘れや言動の繰り返しなど記憶力の低下が見られますが、日常生活への影響はほとんどなく、自立した生活が可能です。
認知機能も正常範囲であり、認知症とは診断できません。
前期(軽度認知障害)は「加齢による症状だろう」と考え見過ごしがちですが、認知症の発症を遅らせるためには早期発見が重要です。
軽度認知障害の症状が出現した場合、年間約5~15%が認知症に移行するとされています。
しかし、早期発見によって適切な認知症の予防策を講じることで、年間16~41%の人は健常な状態に戻れることがわかっています。
参考:
あたまとからだを元気にするMICハンドブック|国立長寿医療研究センター
状態の回復や認知症への移行を遅らせるためにも「これまでと違う」という気になる症状がある場合は、かかりつけ医やお住まいの地域包括支援センターなどに相談しましょう。
初期(軽度)
初期(軽度)は認知症の発症段階です。
以下のような症状が出始めますが、誰かの見守りがあれば自立した日常生活を送れます。
- 物の紛失が多くなる(通帳・保険証など)
- 曜日や時間の感覚が不明瞭になる
- 不安感が強く、気分が落ち込みがちになる
これまでとは異なる言動に家族は困惑してしまうこともあるでしょう。
しかし、認知症の初期症状は本人にとっても「今までできていたことができなくなる」という不安が強くあります。
頭ごなしに怒ったり否定したりせず、本人の不安に寄り添ってください。
初期段階はまだまだ自身でできることが多いので、役割を奪わずに見守ることも大切です。
また、早期に適切な治療を開始することで、認知症の進行が緩やかになる可能性があります。
認知症に気づいたら早めに医療機関を受診しましょう。
中期(中度)
認知症中期(中度)は症状が進行し、日常生活に介護や手助けが必要な状態です。
具体的には以下のような症状が見られます。
- 薬や金銭の管理ができない
- 排泄や着替えなどがひとりでできないことがある
- 妄想や感情的になる様子が見られる
認知症には脳の機能が失われる「中核症状」と、中核症状によって引き起こされる周辺症状である「行動・心理症状(BPSD)」がありますが、進行段階が中期になると徐々に行動・心理症状(BPSD)が見られるようになります。
認知症による代表的な問題行動のひとつである「徘徊」も中期の症状です。
行動・心理症状が増えると、身体的にも精神的にも介護者の負担が大きくなります。
介護サービスを利用するなどして、介護者がストレスを抱えすぎないようにしてください。
末期(重度)
認知症末期(重度)は、常に介護が必要な状態です。
傾眠傾向になり、以下のような症状が見られます。
- 言葉によるコミュニケーションが難しく、意思疎通ができない
- 歩行・食事・排泄など日常動作ができない
- 飲み込む動作が難しくなり、誤嚥性肺炎などの合併症リスクが高まる
認知症末期になると、本人が「わからないこと」や「できないこと」が増えてきます。
食事や排泄、お風呂など日常生活において常に介護が必要なため、家族の負担も大きくなりがちです。
ケアマネージャーに相談し、介護サービスを利用したり、施設への入所を検討したりして負担軽減を図りましょう。
また、家族にとっては避けたい内容かもしれませんが「最期をどう迎えるか」について話し合う必要があります。
認知症末期では誤嚥性肺炎や尿路感染症といった合併症リスクが高まるため、容体が急変することもあります。
口からの食事が困難になったら胃ろう増設をするのか、万が一の際には人工呼吸器を使用するのかなど、についても考える必要があります。
認知症が進むと何が起こる?トラブル事例9選
認知症が進行するとどのようなトラブルが起こるのか、と心配な方も多いでしょう。
認知症トラブルは、自立状態の低下に起因する「生活関連トラブル」と、意思能力の低下によって法的に不可能となる「財産管理・相続関連トラブル」との2種類があります。
本章では認知症によるトラブル事例を上記2種類に分けてご紹介します。
どんなトラブルが生じるか、事前に把握していれば対策が可能な場合もあります。
それぞれ順番に見ていきましょう。
法的に不可能となる資産・相続関連トラブル事例
まずは法的に不可能となる資産・相続関連のトラブルです。
認知症を発症すると意思能力が不十分であるとみなされ、以下のような資産・相続手続きができなくなります。
- 預貯金の引出し・解約
- 不動産の売買
- 相続税対策
- 遺言書の作成
それぞれ順番に確認していきましょう。
1. 預貯金の引出し・解約ができなくなる
認知症と診断されると銀行口座が凍結され、預貯金の引出しができなくなります。
その理由は、判断能力が低下した名義人とその財産を守るためです。
本人が銀行を訪問したとしても口座凍結は解除できず、家族が代理で行うこともできません。
長らく貯めてきた定期預金に関しても、解約手続きの際は窓口にて本人確認が必須のため、解約できない事態に陥る可能性があります。
「親が認知症になったときは親の預貯金から介護費用を捻出しよう」と考えていても、口座が凍結されてしまうと計画が破綻し、家族による建替えを要する事態も考えられます。
口座凍結は後見人を立てることで解除できますが、後見人は「意思能力が低下した人の財産を保護する役割」であるため、後見開始後は家族による自由な財産管理等はできません。
後見人を立てる「成年後見制度」に関して、詳細は後述します。
また、認知症による銀行口座の凍結に関しては下記記事にて詳細を解説しているので、こちらもご覧ください。
認知症による口座凍結って?原因や基準、事前にできる対策を徹底解説!
認知症になると、口座が凍結するおそれがあります。名義人が詐欺などの被害に遭わない世に、預金の引き出しなど、一部の取引が停止されるのです。口座凍結される認知症の基準や、事前にできる対策などを詳しく解説していきます。2. 不動産の売買ができなくなる
認知症を発症し、判断能力が低下すると不動産の売買ができなくなります。
こちらも銀行口座の凍結と同様に、本人の意思にそぐわぬ財産の流出を防ぐためです。
施設への入所が決まったり、お子さんの家で同居が決まったりすると、それまで住んでいた自宅が空き家になるケースがあります。
空き家にしておくと管理が大変なので、そのタイミングで売却したいと考える人も多いのではないでしょうか。
しかし、認知症を発症していると自宅を売却することはできません。
口座凍結の解除と同様に後見人を立てると自宅売却の申立てができますが、裁判所の許可が必要なため時間を要する可能性があります。
自宅を売却した収益で介護費用を捻出しようと考えている場合は、計画に支障が出ることもあるので注意が必要です。
また、賃貸物件などの不動産を有している場合は、名義人が認知症となると賃貸借契約の更新・解除や物件の修繕もできなくなるため、気を付けなければなりません。
3. 相続税対策ができなくなる
多額の資産を有している場合は、将来かかる相続税を見越して「生前に対策をしなければ」と、考えている方も多いでしょう。
しかし、資産の所有者が認知症を発症すると相続税対策はできません。
相続税対策は例えば以下のようなものがあります。
- 生前贈与(暦年贈与)
- 生命保険契約
- 賃貸物件の建設
上記を実行するためには、すべて契約が必要です。
しかし、認知症を発症して意思能力が低下した場合、契約行為ができなくなります。
暦年贈与を計画していたとしても、途中で認知症を発症してしまうとそこから先は贈与できません。
これらは口座凍結の解除のように、後見人を立てたとしても不可能です。
相続税対策を考えている方は認知症の発症前に行う必要があるため、専門家に相談するなど早めの行動をおすすめします。
5. 遺言書の作成ができなくなる
資産を相続するにあたって親族内で紛争の可能性がある場合、遺言の作成は不可欠です。
しかし、認知症を発症すると遺言の作成はできません。
なぜなら、遺言の作成は法律行為であるため、意思能力を必要とするからです(民法963条)。
認知症診断後や、認知症のうたがいがある状態で作成した遺言は無効となる可能性があります(民法3条の2)。
参考:
遺言能力をめぐる諸問題|J-STAGE
遺言は遺言者自身の最終意思を明らかにするためのものなので、代理人が作成することは認められていません。
つまり、口座凍結や自宅売却とは異なり、後見人を立てても認知症発症後は遺言の作成はできないのです。
相続による紛争のおそれや、民法で定められた法定相続人以外の人に相続をしたい場合は早めに遺言を用意しておくと良いでしょう。
自立状態の低下に起因する生活関連トラブル事例
ここからは自立状態の低下に起因する以下の生活関連トラブル事例をご紹介します。
- 金銭の管理ができなくなる
- ひとりでの生活が困難になる
- 行方不明になるリスクが高まる
- 自動車事故を起こす可能性がある
- 悪質商法の被害にあうおそれがある
5. 金銭管理ができなくなる
認知症を発症すると、自身での金銭管理が困難になります。
初期ではお金の計算が合わなくなったり、支払いにお札しか使わなくなり財布が小銭でいっぱいになったりするなどの例がありますが、症状が進行するにつれ金銭管理事態が難しくなります。
判断能力が低下するため年金支給日にすべてのお金を使ってしまったり、相次いで高額商品を購入してしまったりと、計画的に生活費を使用できなくなることも珍しくありません。
また、認知症の代表的な症状に金品などを盗まれたと思い込む「物盗られ妄想」がありますが、その多くは保管場所を忘れてしまうことが原因です。
本人以外が保管場所を知らなければ、結果的にお金は手元にありません。
認知症を発症すると判断能力と記憶力の低下により、自身で金銭の管理ができなくなってしまうのです。
6. ひとりでの生活が困難になる
認知症の症状が出現すると、ひとりでの生活が難しくなる場合があります。
具体的な状況の例は以下のとおりです。
- ひとりで排泄ができなくなる
- ひとりで買い物ができなくなる
- 火の管理ができなくなり、火事の危険性がある
認知症が進行すると、排泄の失敗が見られるようになります。
トイレの場所がわからなくなったり、尿意を感じられなくなったりと原因は様々ですが、排泄は日常に必ず起こる現象です。
また、同じものを何度も買ってしまったり、会計を通さずに持ち帰ってしまったりと、買い物でのトラブルも起こりがちです。
買ったことを忘れてしまうので冷蔵庫に食品が溜まりがちになり、消費期限の管理ができず食中毒を起こす危険性もあります。
料理でガスコンロを使用した際に鍋を焦がすなどの失敗も多く見られ、火災の危険性も高まります。
排泄や食事は生きていくうえで欠かせないものなので、これらが困難になるとひとりでの生活は難しいでしょう。
7. 行方不明になるリスクが高まる
認知症の症状が進行すると行方不明になるリスクが高まります。
認知症の代表的な行動に「徘徊」がありますが、自分で家を出たものの帰り道が分からなくなるなどして帰れなくなるケースが多くあります。
警視庁の発表によると、令和4年は18,000人以上が認知症により行方不明となりました。
認知症による行方不明は年々増加しているのが現状です。
参考:
令和4年における行方不明者の状況|警視庁
このようなデータを目にすると「なるべく自宅から出さないようにしなければ」と考える方も多いでしょう。
しかし、認知症の人への行動制限は症状を進行させる原因になる可能性があります。
万が一に備えて認知症の人が身につける衣服や靴に名前を書いたり、玄関のドアにセンサーやベルなどを付けたりするなど対策をし、できる限り見守ることが重要です。
8. 自動車事故を起こす可能性がある
認知症を発症すると安全な自動車運転が難しく、交通事故を起こす可能性があります。
なぜなら道路状況に応じた判断や、歩行者や対向車の状況など複数のことを同時に処理する能力が低下してしまうからです。
警察庁交通局のデータによると、死亡事故をおこした75歳以上の高齢運転者の約半数は、免許更新時の認知機能検査で「認知症のおそれがある者」または「認知機能が低下しているおそれがある者」という結果を受けていました。
参考:
平成29年における交通死亡事故の特徴等について(P23~)|警察庁交通局
認知機能の低下は交通事故を起こすリスクを高める要因となり得るのです。
車の傷が増えていないか定期的にチェックをし、該当する場合は自動車免許返納の検討をおすすめします。
とはいえ、自動車の運転は生活に必須であったり、運転能力の低下を指摘されるとプライドが傷ついたりと返納は一筋縄ではいかないこともあるでしょう。
そんなときは運転免許センターなどにある都道府県警の「安全運転窓口」に相談するのもひとつの方法です。
参考:
安全運転相談窓口について|警視庁
家族以外の第三者から話を聞くことで、納得できる場合もあります。
認知症の症状が出現したら、重大な事故を起こす前に対策することが重要です。
9. 悪質商法の被害にあうおそれがある
判断能力が十分でない認知症を狙った悪質商法の被害にあう可能性があります。
近年の悪質商法は手口が巧妙化しており、認知症の人のみならず消費者トラブルが増加しているのが現状です。
実際に以下のような悪質商法が横行しています。
- 家庭訪問:排水管の点検・屋根の点検などを装って高額な工事契約をさせる
- 電話勧誘販売:健康食品等の販売・投資の勧誘など
- かたり商法:公的機関をかたった還付金詐欺など
認知機能が低下した認知症の人が上記のような現場に立っても、トラブルにあっているという認識が低く、悪質かどうか判断するのは困難です。
家族の知らぬ間に、悪質商法の被害にあっていたということも珍しくありません。
「家に未開封の同じ商品などがたくさんある」といった悪質商法の被害が疑われる場合は、お住まいの地域の消費生活センターなどに相談してください。
特にひとり暮らしをしている認知症高齢者はターゲットにされがちです。
近くに家族がおらず、ひとり暮らしがやむを得ない場合は成年後見制度を利用して、万が一の際には契約を取消せるようにするなどといった対策をすると良いでしょう。
成年後見制度に関する詳細は後述します。
早めにやっておくべき認知症対策
前章では認知症の進行によるトラブル事例について紹介しましたが、特に法的に不可能となる資産・相続関連のトラブルは早期対策が重要です。
認知症の症状が出現してからでは利用できない対策もあるため、発症前の検討が望ましいです。
本章では、以下の認知症対策について解説します。
- 成年後見制度の利用
- 家族信託の組成
- 公正証書遺言の作成
- 生前贈与
- 住環境の見直し
それぞれ順番に見ていきましょう。
成年後見制度の利用
成年後見制度とは認知症などにより判断能力が低下した人に代わって、後見人が財産管理や契約行為行い、法的に支援する制度です。
裁判所に申立てをすることで、認知症トラブル事例で紹介した口座凍結や自宅の売却などが可能となります。
また、後見人には本人の行った行為を取消せる「取消権」があるため、前述した悪質商法被害の契約などを取消せる場合もあります。
成年後見制度には「法定後見」と「任意後見」の2種類がありますが、認知症発症後に利用できるのは「法定後見」のみです。
法定後見では後見人を裁判所が選任するため、司法書士など面識のない専門家が着任する場合もあります。
後見人を立てれば口座凍結や自宅の売却など解決可能な問題もありますが、後見制度は「意思能力が低下した人の財産保護」が目的であるため、後見開始後は家族による自由な財産管理はできません。
例え本人のためであっても後見人が不要と判断すれば本人の財産は動かせないのです。
任意後見であれば判断能力があるうちに後見人を指名する契約のため、本人の信頼する任意の人を後見人に選任でき、法定後見と比較すると自由度は高いといえます。
とはいえ任意後見監督人の監督があるため、やはり自由な財産管理は難しいでしょう。
成年後見制度に関しては下記記事にて解説しているので、詳細はこちらをご覧ください。
【完全版】成年後見制度とは?わかりやすく解説します
成年後見制度(せいねんこうけんせいど)とは、認知症や知的障害などで判断能力が低下した人の契約や財産管理のサポートを行う制度です。「成年後見人」を家庭裁判所から選任してもらい、本人に代わって様々な手続きを行なってもらいます。この記事では成年後見制度についてわかりやすく説明し、同時に最近注目を浴びている家族信託との比較についても解説します。家族信託の組成
家族信託とは、あらかじめ家族に財産の管理や運用を行う権利を与え、認知症による資産凍結を防ぐ制度です。
本記事にて紹介した以下のトラブル事例は、家族信託を組成することで解決可能な場合があります。
- 預貯金の引出し・解約ができなくなる
- 不動産の売買ができなくなる
- 相続税対策ができなくなる
- 遺言の作成ができなくなる
家族信託では資産の管理や運用を行う権利が与えられているため、成年後見制度ではできなかった家族による自由な財産管理が可能です。
また、家族信託は直接的な節税効果があるわけではありませんが、結果として相続対策になることもあります。
加えて遺言の機能もあわせ持っており、認知症の発症から死後の相続まで一貫して行えます。
ただし、家族信託は契約行為であるため、認知症の発症前でないと組成できません。
とはいえ、程度によっては契約可能な場合があるため「家族信託を組成したい」という場合は早めに家族信託の専門家にご相談ください。
家族信託とは?メリット・デメリットや手続きをわかりやすく解説!
家族信託は「認知症による資産凍結」を防ぐ仕組みです。本記事では家族信託の詳細や具体的なメリット・デメリット、発生する費用などについて詳しく解説します。将来認知症を発症しても、親子ともに安心できる未来を実現しましょう。公正証書遺言の作成
相続時に親族間で紛争のおそれがある場合は遺言の作成をおすすめします。
遺言の作成は法律行為にあたるため、認知症を発症し意思能力がないと作成が不可能です。
したがって、遺言は認知症発症前に作成しなければなりません。
遺言制度には以下の3種類がありますが、公正証書での作成を推奨します。
自筆証書での遺言は、公証人が不要で費用もかからないことから手軽に作成が可能です。
しかし、万が一不備があると無効になってしまうこともあります。
加えて本人以外が遺言の存在を知らなければ、相続時に発見されない可能性もゼロではありません。
その点、公正証書遺言であれば公証人が関与するため無効になりにくいです。
公証役場にて原本を保管するため紛失や隠蔽、未発見のおそれもありません。
参考:
Q2.公正証書遺言には、どのようなメリットがありますか?|日本公証人連合会
また、前段で「家族信託は遺言機能も合わせ持っている」と解説しましたが、家族信託と併用して遺言を作成することも可能です。
遺言書についてもあわせて、専門家と検討することをお勧めします。
相続税対策
認知症を発症すると意思能力がないと見なされ、相続税対策ができなくなります。
例えば、相続税対策として暦年贈与する計画を立てていたとしましょう。
しかし、途中で認知症を発症してしまったらどうでしょう。
暦年贈与は贈与のたびに契約が必要です。
認知症を発症し、意思能力がないと判断されるとその後の暦年贈与はできません。
生命保険の非課税枠を活用した相続税対策も同様です。
本人の契約行為を必要とする相続税対策を検討している場合は、認知症発症前の意思能力があるうちに行う必要があります。
一方で前述した家族信託を組成すると、契約内容によっては相続対策が可能です。
例として賃貸物件等の不動産建築などがあります。
直接的な節税効果はありませんが結果的に相続対策となる場合もあるので、相続税対策をお考えの方は家族信託の組成も検討候補に入れると良いでしょう。
家族信託を活用した相続対策は下記記事にて詳細を解説しているので、こちらもぜひご覧ください。
【家族信託と相続税対策】家族信託をすると節税できるって本当?
この記事では、家族信託をすることで相続の対策(相続税対策)ができるのか、家族信託と税金の関係について解説します。また、相続対策としての家族信託の実際の活用事例や、その際支払う税金についても、わかりやすくご紹介します。住環境の見直し
生活関連の認知症トラブル対策としては、住環境の見直しを早めに行っておくと安心です。
具体的には以下のような例が挙げられます。
- 自宅内の段差をなくす
- トイレの場所を目立たせる
- ガスコンロからIHに変える
認知症になってから上記のような対策を施すと、使い慣れていないために混乱してしまう可能性があります。
必要なタイミングで適切に使用できるよう早めに見直しをおすすめします。
また、認知症の進行度合いによって将来的には同居や施設への入所を考えている方もいらっしゃるでしょう。
いざ必要なタイミングで情報収集を始めるのではなく、事前に利用できる介護サービス等を調べておくとスムーズに対応が可能です。
ケアマネージャーやお住まいの地域包括支援センターへ相談するのも一つの方法です。
万が一に備えて、認知症が進行する前に住環境の整備や介護サービスの予習をしておくと良いでしょう。
大切なのは早期発見と早期対策!資産・相続の認知症対策は家族信託がおすすめ
認知症は誰しもがなる可能性のある病気ですが完治する治療法はなく、時間の経過とともに進行は避けられません。
認知症は早期発見と早期対策が重要です。
早期発見ができれば適切な治療を受けられ、進行のスピードを遅らせられる可能性があります。
また、事前に起こり得る問題を知っておけば、あらかじめ対策を立てることも可能です。
認知症の症状によって起こり得る問題は「資産・相続関連」と「生活関連」の問題がありますが、特に「資産・相続関連」の問題は認知症を発症すると法的に不可能となるため、対策が必須でしょう。
認知症によって、財産や不動産の管理、相続など多数の問題が生じますが、家族信託であれば幅広い対応ができます。
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