世界一の高齢社会である日本では、認知症患者が増え続けています。
認知症介護は発症前とのギャップや辻褄の合わない行動などから、本人に悪気がないことは理解しつつも介護者が疲弊しがちです。
介護者の中にはどんな対応をすれば良いのか、どんな接し方が本人に悪影響を及ぼしてしまうのかと悩んでいる方も多いのではないのでしょうか。
本記事では「認知症の人にやってはいけないこととその対策」と「認知症の人への接し方のポイント」について解説します。
認知症の人への対応でお悩みの方はぜひ最後までご覧ください。
要約
- 認知症の人にやってはいけない対応は「驚かせない・急かさない・自尊心を傷つけない」
- 認知症の人に誤った対応をすると症状を進行させるおそれがある
- 親が認知症になったら症状を理解し、医療・介護などの対策をしておく
- 認知症を発症したら資産凍結されることを忘れてはいけない
- 認知症の人に寄り添った対応をするためには介護者の精神的余裕が重要
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目次
認知症の人にやってはいけない9つの事例
認知症の人への接する際のポイントは「驚かせない・急かさない・自尊心を傷つけない」の3点です。
参考:
認知症の人への接し方|埼玉県
誤った対応をすると不安や恐怖などのストレスを感じ、認知症の症状を進行させてしまうおそれがあります。
本章では、上記を踏まえたうえで認知症の人にやってはいけない9つの事例を紹介します。
- 大きな声で叱る
- 行動を制限する
- 役割を奪う
- 失敗を責める
- 強制する
- 否定する
- 過度に励ます
- 生活環境・習慣を変える
- 周囲に認知症を隠す
それぞれ順番に見ていきましょう。
1. 大きな声で叱る
認知症の人に大きな声で叱ってはいけません。
なぜなら、認知機能が低下しても自尊心や羞恥心がなくなるわけではないため、プライドが傷つくからです。
また、認知症の人はなぜ叱られているのか理解できないことがあります。
よって、大きな声で叱るなどの高圧的な言動は恐怖を植え付け、不安な気持ちだけが残ってしまうのです。
とはいえ「叱ってはいけない」と理解していても、介護による疲労が蓄積し、苛立つこともあるでしょう。
近時記憶力の低下により繰り返し同じことを聞かれたり、直前に食事を終えたにも関わらず「ご飯はまだか?」などと言われたりすると、つい大きな声を出しがちです。
そんなときは数を数えて深呼吸をしたり、その場を一度離れたりするなどして冷静になる方法を身につけ、都度答える心の余裕を持ちましょう。
参考:
認知症の方への接し方|二本松市
2. 行動を制限する
認知症の人に行動制限をするのは望ましくありません。
その理由は、行動を制限することによって認知症の症状が進行する可能性があるからです。
認知症の困る行動の代表例として徘徊が挙げられます。
例として「徘徊が不安なので家から出られないようにした」としましょう。
確かに昼夜を問わない家の抜け出しや、見当識障害によって帰って来られないおそれを考えると介護者の負担は大きいです。
しかし、行動を制限すると本人の孤独感を深め、欲求が満たされないため他の問題行動が誘発される場合もあります。
認知症の人の行動に困っている場合は無理に制限せず、危険がないように見守ることが大切です。
とはいえ、認知症の人を常に見守るのは難しいでしょう。
そんなときは、万が一に備え以下の対策が効果的です。
・ 靴や服など身につけるものに名前を書いておく
・ GPS端末を持たせておく
・ あらかじめ交番に協力を依頼しておく
認知症の進行を防ぐためにもなるべく行動制限はせず、できる対策をして見守ってください。
3. 役割を奪う
認知症の人から役割を奪うのは理想的ではありません。
これまでできていたことを奪われてしまうと、自信喪失に繋がります。
例えば、これまで毎日食器洗いをしていた人が認知症と診断されたので、介護者が「今後は代わりに私がやるから大丈夫」と伝えたとしましょう。
介護者は良かれと思って申し出ていますが、役割を奪って何もさせないのは逆効果です。
確かに認知症になると失敗も増え、以前のようにできないこともあります。
しかし、役割を奪うとかえって認知症を進行させてしまうおそれがあるのです。
また「認知症の人に役割を与えたら問題行動が減少した」という事例もあります。
参考:
高齢社会への心構えと介護の基礎知識|人事院
危険は排除しなければなりませんが、できることをお願いすると認知症の人は「自分は必要とされている」と実感できます。
そして、実行できた際には「ありがとう」と感謝したり、「すごい」と褒めたりすることで達成感を得られ、自尊心が向上するでしょう。
4. 失敗を責める
認知症を発症すると失敗をしがちですが、それを責めてはいけません。
その理由は、認知症が進行しても「失敗をして情けない」という感情は残っているからです。
認知症による失敗として代表的な「排泄」を例に考えてみましょう。
認知症が進行するとトイレの場所や衣服の着脱方法がわからなくなることがあり、排泄の失敗が多く見られます。
参考:
認知症患者さんの排泄障害|J-stage
その際に「また失敗して」などと責める行為は、本人に不安感を与えてしまうため避けなければなりません。
とはいえ、繰り返し失敗されると介護者の気が滅入ってしまうこともあるでしょう。
そんなときは、失敗の要因を探して対策を施すことをおすすめします。
排泄の対策例は以下のとおりです。
・ トイレの位置を分かりやすくする
・ 一定時間でトイレの声かけをする
・ ベッドに防水シーツを敷く
万が一失敗をしてしまっても、後処理が楽になるように工夫をすれば心にゆとりが持て「大丈夫ですよ」といった穏やかな声掛けができます。
失敗したときには責めず、両者の負担が軽減する対策を考えると良いでしょう。
5. 強制する
認知症の人が嫌がることを強制してはいけません。
なぜなら「本人のため」と思って促したとしても、本人が「やりたくない」と感じているのであれば効果は得られず、介護者への不信感に繋がるからです。
認知症の人が拒否しがちなことのひとつに「入浴」があります。
体臭や感染症のリスクなどの問題があるため、介護者は入浴を拒否されると困ることでしょう。
しかし、認知症の人が「拒否」するのには必ず理由があります。
入浴を拒否する理由の例はこちらです。
・衛生観念の低下
・浴場が寒い
・服を脱ぎたくない
どうしても入浴をしたくなければ蒸しタオルで全身を拭くなど、拒否する理由を聞き出し対策を講じることで解決可能な場合があります。
ひとりでは解決方法を考えられない場合は、ケアマネージャーなどの専門家に相談するのもおすすめです。
嫌がることを無理強いせず、本人の同意を得て進めることで信頼関係を築けるでしょう。
6. 否定する
認知症の人が事実と異なることを話しても否定してはいけません。
なぜなら認知症の人は真実だと信じて話しており、否定されると混乱してしまうからです。
認知症の症状のひとつに、現実には見えないものが見える「幻視」があり、実際には誰もいないのにもかかわらず「誰かが窓から覗いている」と言うなどの例があります。
参考:
認知症-こころの情報サイト|国立精神・神経医療研究センター
他にも、妄想の発現によって「金品を盗まれた」と思い込むなどもメジャーな言動です。
幻視や妄想はどれも現実に起こっていませんが、否定せずに共感し、話を合わせることが大切です。
声を荒げて言い返してしまうと不信感がつのるため、一緒に確認するなどして本人の不安を取り除きましょう。
また、妄想や幻視が見えている場合は話にあいづちを打ち、「それは怖いですね」など共感を示すことで落ち着きを取り戻せる場合もあります。
話を否定せずに共感することで、自尊心を傷つけずに不安を軽減することが可能です。
7. 過度に励ます
認知症の人を過度に励ますのは推奨できません。
理由は、励まされることで「できない」という事実を突きつけられ、プレッシャーから不安を感じてしまうからです。
「頑張って」「次はできるよ」などといった声掛けは一見明るいものに感じますが、逆効果の場合もあります。
できないことを励ますよりも、できることを褒めるように心がけましょう。
また、子どもに接するような対応も望ましくありません。
認知症を発症し、できないことが増えても、大人のプライドは維持されています。
子ども扱いすると自尊心を傷つけ、心が不安定になってしまうこともあります。
認知症の人と接するときは敬いの気持ちを持ち、人生の先輩として接しなければなりません。
8. 生活環境・習慣を変える
認知症の人を介護する際には、生活環境や習慣を変えるのは望ましくありません。
なぜなら、これまでの環境や習慣を継続することで穏やかに過ごせるからです。
例えば、起床やお風呂などを認知症発症前と同じ時間に行ったり、思い入れのある品を近くに置いたりすると効果的です。
認知症の人は環境の変化に敏感なため、介護者の都合のみを優先させて習慣を変えないようにしましょう。
とはいえ、施設の入居やひとりでの生活が困難になった際の引越しなど、環境を変えざるを得ないこともあります。
そんなときは、これまでと同一のヘルパーに継続依頼をするなど、人間関係を変えずに維持するなどの対策を講じることで、認知症の人は安心感を得られるでしょう。
参考:
高齢社会への心構えと介護の基礎知識|人事院
9. 周囲に認知症を隠す
認知症を患っていることを周囲に隠すのは好ましい状況ではありません。
なぜなら、認知症介護をひとりで行うのは負担が大きく、時には周囲の助けを借りる必要があるからです。
例えば、認知症の代表的な症状である「徘徊」をしてしまったとき、近所の人が事情を知っていれば協力を得られるかもしれません。
また、家族以外の他人とコミュニケーションをとることで、認知機能の低下が抑えられます。
参考:
「人との交流」が認知症予防のカギになる!?|100年人生レシピ 日本生命保険相互会社
近隣に友人がいない場合はスマートフォンで会話をしたり、認知症カフェに参加して同じ境遇の方と交流をしたりするのも良いでしょう。
認知症は恥じることではありません。
2025年には認知症患者が700万人を突破すると予測されており、誰しもが発症の可能性を抱えています。
参考:
認知症施策の総合的な推進について|厚生労働省老健局
認知症が発覚したらひとりで抱え込まず、周囲に打ち明けましょう。
親が認知症になったらやるべきこと
認知症介護は長期化することもあり、生活や金銭面の不安が尽きません。
安心して介護をするために、親が「認知症」と診断されたら以下の準備をしましょう。
それぞれ順番に解説していきます。
認知症について理解する
認知症の人と接するうえで最も大切なのは「寄り添うこと」です。
寄り添った対応をすることで、認知症の人の不安は軽減されます。
そのためには、認知症の人が何を考えて行動しているのか理解しなければなりません。
認知症に関する勉強は、書籍・インターネット・Youtubeなどでも十分可能です。
また、対面での講習を希望する場合は、各自治体で「認知症サポーター養成講座」が開催されています。
参考:
認知症サポーター|厚生労働省
認知症について勉強するための媒体は多数あるので、ご自身に合った教材を選択し、理解を深めると良いでしょう。
医療面の対策
認知症に関する受診が可能な医療機関は「かかりつけ医」と認知症の知識や技量を有する専門医がいる「専門医療機関」の2種類があります。
まずは認知症の症状だけでなく日常の体調変化などを相談できる「かかりつけ医」の受診がおすすめです。
かかりつけ医は認知症の専門医である必要はなく、一般的な内科などでも問題ありません。
認知症の人は環境の変化に敏感なため、いつもの病院でいつもの医師に診察してもらうことで安心感を得られるでしょう。
一方で、認知症専門医が在籍する医療機関では専門的な診療や検査を受けられます。
かかりつけ医で対応できない場合は専門医療機関の受診を勧められることもあるので、通院距離や待ち時間の長さなど認知症の人の負担を考慮して、希望の専門医療機関をチェックしておくとスムーズです。
専門医が在籍する医療機関は日本認知症学会のホームページから探せます。
参考:
日本認知症学会認定専門医|日本認知症学会
認知症の症状が見られたらまずは「かかりつけ医」を受診し、専門的な診療を受けるための「専門医療機関」も探しておくと安心です。
介護サービス・サポート体制の対策
認知症を発症したら介護サービスや地域の相談先を事前に調べておきましょう。
認知症の人はサービスを受けることで、孤独感の解消や生活機能の向上などにも役立ちます。
それだけでなく、一時的に離れる時間を得ることで介護者の負担軽減にも有効です。
認知症が初期の場合は、現時点ではサービスの利用を考えていないという方もいらっしゃるでしょう。
しかし、利用時に備えて調べておくと、いざ利用したいタイミングで慌てることなくスムーズな行動が可能です。
具体的な介護サービスの内容や相談先については後述します。
生活環境の整備
認知症が発覚したら、生活環境を整備する必要があります。
具体的な環境整備の例は以下のとおりです。
・ 馴染みのものが視界に入るようにする
・ 危険なものを排除する
・ トイレに目印をつけてわかりやすくする
これまで使用していた馴染み深いものや、家族写真等が視界に入ると認知症の人は安心します。
一方で認知機能が低下するため、危険なものの判別がつきづらいです。
包丁やライターなどの自身を傷つけてしまうおそれのあるものや、漂白剤やボタン電池など誤飲すると危険なものは手の届かない場所に置くようにしましょう。
また、認知症を発症すると排泄を失敗しがちですが、理由のひとつに「トイレの場所がわからない」ことがあります。
トイレのドアに貼り紙をするなど、認知症の人にわかりやすい目印を設置すると良いでしょう。
認知症の人が安心して過ごせる空間を作ることが大切です。
参考:
認知症ケア法-認知症の理解|厚生労働省
資産凍結・相続対策
認知症を発症したら介護や生活だけでなく、資産凍結に関する対策が必要なことを忘れてはいけません。
判断能力が低下した名義人の財産を守るため、認知症を発症すると資産が凍結されたり、相続対策ができなくなったりします。
確認すべき事項の例は以下のとおりです。
・ 預金口座
・ 証券口座
・ 自宅売却の可能性の有無
・ 相続対策の必要有無
もし何の対策もせず認知症を発症してしまった場合、資産凍結の解除をするためには所定の手続きが必要です。
認知症を発症すると介護や生活に気をとられがちですが、資産が凍結されると介護費用の捻出にも関わるため、対策を忘れないようにしましょう。
具体的な対策については後段にて解説します。
認知症になったときに利用できる資産凍結対策
認知症になった場合の資産凍結対策は以下の2つがあります。
・ 成年後見制度
・ 家族信託
どんな制度なのか、順番に見ていきましょう。
成年後見制度
成年後見制度とは、認知症などにより判断能力が低下した人に代わって後見人が契約行為や財産管理を行い、法的に支援する制度です。
裁判所に申立てをすることで、口座の仕組み除をしたり、自宅の売却申請ができるようになったりします。
成年後見制度は法定後見と任意後見の2種類がありますが、認知症を発症し判断能力が低下した後に利用できるのは法定後見のみです。
後見人を立てれば口座凍結の問題は解消しますが、後見制度は意思能力が低下した人の財産保護が目的のため、家族であっても自由な財産管理はできません。
また、法定後見では後見人を裁判所が選任するため、面識のない司法書士や弁護士等の専門職が着任する可能性もあります。
任意後見の場合は判断能力があるうちに後見人を指名できる契約のため、法定後見と比較すると自由度が高いです。
とはいえ任意後見監督人の監督があるため、やはり自由な財産管理は難しいでしょう。
成年後見制度に関しては下記記事にて解説しているので、詳細はこちらをご覧ください。
【完全版】成年後見制度とは?わかりやすく解説します
成年後見制度(せいねんこうけんせいど)とは、認知症や知的障害などで判断能力が低下した人の契約や財産管理のサポートを行う制度です。「成年後見人」を家庭裁判所から選任してもらい、本人に代わって様々な手続きを行なってもらいます。この記事では成年後見制度についてわかりやすく説明し、同時に最近注目を浴びている家族信託との比較についても解説します。家族信託
家族信託とは、あらかじめ家族に財産の管理や運用を行う権利を与え、認知症による資産凍結を防ぐ制度です。
成年後見制度と比較して以下のようなメリットがあることから、近年注目を集めています。
・ 自由な財産管理・運用ができる
・ 相続対策や遺言などの側面も持ち合わせている
・ 継続年数が長いほど成年後見制度よりも経済的
ただし、家族信託を組成するためには、意思能力が低下する前に契約しなければなりません。
しかし、認知症を発症しても程度によっては家族信託契約を結べる場合もあります。
「認知症の症状が出始めたが家族信託を利用したい」という場合は早めに認知症対策の専門家へ相談してください。
なお、家族信託の詳細や認知症発症後の家族信託組成については下記記事にて解説していますので、詳細はこちらをご覧ください。
家族信託とは?メリット・デメリットや手続きをわかりやすく解説!
家族信託は「認知症による資産凍結」を防ぐ仕組みです。本記事では家族信託の詳細や具体的なメリット・デメリット、発生する費用などについて詳しく解説します。将来認知症を発症しても、親子ともに安心できる未来を実現しましょう。認知症の人への接し方のポイント
認知症の人の対応する際に心がけるポイントは以下の3点です。
上記を心得たうえでどのように接するべきか、詳しく見ていきましょう。
正面から目線を合わせて笑顔で対応
認知症の人と話すときは、正面から目線を合わせることが大切です。
なぜなら、認知症の人は視野が狭くなりがちなため、横から話しかけられても認識できなかったり、後ろから話かけると驚かせてしまったりする場合があるからです。
正面から表情を見せて話しかけることで、認知症の人は安心します。
明るい笑顔で接するとより効果的です。
さらに、高齢者は高音域が聞こえづらくなるため、低くゆっくりとした声で話しかけることを意識すると良いでしょう。
参考:
老人性難聴について|益田地域医療センター医師会病院
視覚だけでなく、聴覚にもうったえることでスムーズな会話が可能です。
認知症の人と会話をする際は、正面に回りこみ、笑顔と目線、声の高さを意識してください。
本人のペースに合わせ自尊心を刺激する
認知症の人と接する際は本人のペースに合わせて、自尊心を高めることが重要です。
人間は年をとると認知症による症状だけでなく、加齢に伴って動作に時間がかかるため、できないことが増えていきます。
介護者は仕事が山積みのため「早くしてほしい」と思いがちでしょう。
しかし、急かすと認知症の人は焦って混乱し、さらに時間を要するため逆効果です。
また、認知症の人は「自分でできた」という経験によって自尊心を保て、症状の安定に繋がります。
自尊心を高めるためには以下の対応が効果的です。
・ 自分でできたことや特技などを褒める
・ 「~してくれて助かります」など、頼りにしている声掛けをする
・ 教えを乞う
人は褒められると嬉しくなるものですが、それは認知症の人も同じです。
得意としていることについて教えを乞われたり、頼りにされたりすると自尊心が高まります。
急かしたり過剰に世話をやいたりするのではなく、自分自身で作業を完了できるまで気長に待ち、自信に繋げることで両者に良い影響があるでしょう。
心にゆとりを持ち介護疲れを防ぐ
認知症介護は接し方などのテクニックだけでなく、介護者の精神的余裕が重要です。
周囲に頼らず全て自分でやろうと思うと余裕がなくなり、些細なことでもイライラしてしまいます。
認知症介護は生活の補助だけではなく、財産管理などあらゆる場面で介助や代行が必要です。
しかし介護者は介護のプロでもなければ、法律のプロでもありません。
困難なことは専門家に相談するなど、ひとりで抱え込まずに周囲の力を借りてください。
認知症の人に寄り添った対応をするためには、介護者の心のゆとりが不可欠です。
そして心のゆとりを持つためには、介護疲れを軽減しなければなりません。
穏やかな対応をすると認知症の人も安心し、症状の安定にも繋がるので、介護者の精神的余裕を大切にしてください。
認知症介護による疲弊を軽減する方法については後段にて解説します。
認知症介護による疲弊を軽くするために
認知症介護の質は介護者の精神的余裕によって大きく異なります。
しかし、昼夜を問わず見守りや介助が必要なため、介護者の負担が大きく疲弊しがちなのが現状です。
そんな介護者の疲労を少しでも軽くし、ストレスを溜めないようにするためには以下のような対策があります。
それぞれ順番に解説します。
介護サービスを利用する
認知症は以下のような介護サービスを利用可能です。
- デイサービス(通所介護):食事や入浴、レクレーション等をする
- デイケア(通所リハビリ):理学療法士や作業療法士などからリハビリを受ける
- ショートステイ:短期間の入所をし、日常生活の支援や機能訓練をする
- 訪問リハビリ:理学療法士や作業療法士などが自宅を訪問し、リハビリをする
- 訪問介護:ホームヘルパーが自宅を訪問し、介護や生活支援をする
特にデイサービスやデイケア、ショートステイは認知症の人と介護者が一時的に離れる時間がとれるため、負担軽減になります。
また、本人もレクレーションや機能訓練を受けることで脳の活性化に有効です。
介護サービスはお互いにとって重要であるため、積極的な利用をおすすめします。
ただし、要介護認定によって利用できるサービスが異なる場合もあるので、まずはケアマネージャーに相談してみてください。
参考:
認知症の人と家族の暮らしを支える手引き|公益社団法人 認知症の人と家族の会
周囲の経験者に相談する
周囲にいる認知症介護経験者に相談するのも、ストレスを解消する方法の一つです。
なぜなら、経験者は現在抱えている悩みをすでに乗り越えていることが多いからです。
具体的な体験談やアドバイスを得られるかもしれません。
アドバイスを得られずとも、苦労話を共感できる相手の存在は重要です。
悩みを吐き出せる先があるだけで、ストレス緩和に繋がります。
とはいえ、近しい友人などには話しづらいという方もいらっしゃるでしょう。
そんな場合は「認知症カフェ」の利用がおすすめです。
認知症カフェは「認知症と診断された本人や家族が集える場所」として、全国6000カ所の地域で開催されています。
デイサービスなどとは異なり、コーヒーを飲みながら話をしたり講話を聴いたりする場のため、気兼ねなく相談が可能です。
また、認知症の人や家族だけでなく介護や福祉の専門家も参加しているため、情報収集の場としても最適です。
認知症カフェに興味がある方は、お住まいの地域の役所高齢担当課や地域包括支援センターなどでお尋ねください。
参考:
私たちの認知症カフェ|厚生労働省
介護者のリフレッシュする時間を確保する
認知症介護におけるストレス軽減には、介護者が自分自身の時間を確保することが重要です。
認知症の人と四六時中一緒にいると気が滅入ってしまうこともあるでしょう。
デイサービスやショートステイを有効利用して、介護者自身が息抜きをする時間を作りましょう。
介護は「終わりのタイミング」が定かではなく、長年続くことも珍しくありません。
公益社団法人生命保険文化センターの調査によると、介護の平均年数は5年を超えています。
参考:
介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?|公益社団法人 生命保険文化センター
介護者が疲弊によって心身の不調をきたす前に、適度なリフレッシュタイムを確保すると良いでしょう。
とはいえ「自分が家にいるのにデイサービスに預けるなんて」などの理由から、介護サービスの利用をためらってしまう方も多いのではないでしょうか。
介護サービスの利用に後ろめたい感情を持つことはありません。
利用することで、昼夜のリズムが保たれたり脳が活性化したりと、認知症の人にもメリットがあります。
ひとりで頑張りすぎず、周囲の力を借りて肩の力を抜いてみてください。
「もしも」に備えて相談先を調べておく
トラブルが起こった時に慌てないように、事前に「もしも」の相談先を調査しておきましょう。
万が一の相談先を事前に把握しておくと、トラブルが発生してもスムーズに対応できるため、安心して日々を過ごせます。
具体的な相談先は以下のとおりです。
分野 | 相談先 | 主に相談できること |
---|---|---|
全般 | 地域包括支援センター | ・最適な窓口や専門家への連携 ・介護の進め方、プランの作成 |
介護 | 自治体の福祉課 | ・介護保険の申請 |
社会福祉協議会 | ・介護に関する総合的な悩み | |
相続対策 | 司法書士 | ・相続全般に関する悩み ・家族信託、生前贈与、遺言書、成年後見 |
弁護士 | ・相続におけるもめ事、調停、裁判 | |
税理士 | ・相続税等の対策、手続き | |
行政書士 | ・遺言書、遺産分割協議書 | |
不安や悩み | 認知症カフェ | ・認知症の方やその家族による情報交換、悩み相談 |
認知症の人と家族の会 | ・同 | |
若年性認知症専用コールセンター | ・若年性認知症についての悩み |
相談先については下記記事にて詳細を解説しているので、こちらをご覧ください。
親が認知症になったらどこに相談すべき?介護やお金の相談先について解説
介護やお金、相続についての悩み、さらには親への対応方法や家族との関係にストレスなど、親が認知症になったときの悩みは多岐にわたるでしょう。本記事では、親が認知症になったときの相談先について詳しく解説しています。それぞれの悩みや疑問に対して、頼れる専門家がいたり、地域の相談窓口がありますので参考にしてください。参考: 認知症に関する相談先|厚生労働省
不安を解消して心に余裕を持ち認知症の人に寄り添った対応を
認知症介護は辻褄の合わない言動や、発症前の姿とのギャップに戸惑い、介護者が心身ともに疲弊してしまうことが少なくありません。
どんな対応が悪影響なのか、接し方について悩むこともあるでしょう。
しかし、認知症の人に寄り添った対応をするためには、介護者の精神的余裕が重要です。
ひとりで頑張りすぎず、時には専門家を含めた周囲に相談をしてください。
不安を解消することで心にゆとりが生まれ、良い対応ができるようになるでしょう。
認知症には介護や生活面などの問題がありますが、特に資産凍結や相続に関しては、法律の理解を要するため個人での対策は難しいです。
当社は認知症による資産凍結対策に詳しい専門家が多数在籍しています。
初回無料相談も行っているので、お悩みの方はぜひお気軽にご利用ください。
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