親が認知症になると、家の名義変更ができなくなる可能性があります。

家の名義変更は具体的に、子への贈与や第三者への売却を指しますが、これらは全て「法律行為」になります。

法律行為は当事者の「意思能力」がなければ無効になると定められている(民法3条の2)ため、安易に家の名義変更を行うことは、トラブルの元となり非常に危険です

しかし、正しい知識を持っていれば、家だけでなく親の財産全体に関して、適切な認知症対策や相続対策を行うことできます。

認知症の親の家を名義変更する方法や「意思能力」の判断基準、早めに知っておくべき認知症対策について、詳しくみていきましょう。

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親が認知症になったら、家の名義変更はできる?

認知症などが進行し、本人の意思能力が完全にない状態であれば、家の名義を変更することはできません

家や土地などの不動産において「名義変更」という手続きは存在せず、正確には「所有権移転登記」を指します。

所有権移転登記は、家の「贈与」や「売却」などの法律で定められた原因がなければ行えません。

そして、贈与や売却などの法律行為において、当事者の意思能力がない場合は、その法律行為は「無効」となることが定められています(民法3条の2)。

第二節 意思能力
第三条の二 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。

引用:民法3条の2

よって、親が認知症により意思能力がないケースでは、家の名義変更(所有権の移転)ができないのです

親が認知症により意思能力がないケースでは、家の名義変更(所有権の移転)ができない

ただし「認知症=意思能力の喪失」では必ずしもない、という点に注意しましょう。

認知症でも、症状がまだ軽度であり、それぞれの法律行為に関する意思能力が確認できる場合は贈与や売却の当事者となり、家の名義変更も行うことができます。

では、家の名義変更に必要な意思能力とは、何を指すのでしょうか?

家の名義変更に必要な「意思能力」とは?

意思能力とは、行為の結果を判断するに足るだけの精神能力を指します。
参考: 意思能力の明文化|法務省

家の名義変更(贈与や売却)の場合は、家を贈与・売却して家の所有権が他者へ移ること、売却の場合はその対価を得ること、売却後の利益に対して税金が課せられるなど、その行為の結果を正しく判断できる能力が必要だといえます。

一般的には、意思能力の有無は司法書士などの専門家が行いますので、親子間のやり取りだからといって、贈与や登記手続きなどを自分たちだけで勝手に判断して行うのは大変危険です。

法律行為時の親の意思能力が確認できなければ、後から他の親族や相続人などから契約の無効を主張されたり、のちの相続トラブルに発展する可能性があります。

また、仮に親の意思能力があったとしても、税金の知識がないまま贈与を行い、多額の贈与税が課せられることも考えられます。

親が認知症の場合、まずは司法書士に相談し、名義変更を行える状態にあるか確認すべきでしょう。

【早めの対策が重要】知っておくべき親の認知症対策

親が認知症になり、意思能力がなくなってしまうと、家の名義変更(贈与や売却)以外にも、預金口座からの引き出しや銀行窓口での手続きができなくなったりと、その他の法律行為や手続きなどもできなくなる可能性が高まります。

つまり、親の財産が動かせない「資産凍結」に陥ってしまうのです。

意思能力の喪失後、本人のお金や不動産を動かすためには成年後見制度の利用が必要です。

成年後見制度は、後見人を立て、本人に代わって後見人が財産管理や契約ごとなどを行い、本人を法的に保護・支援する制度です。

詳細は後段で解説しますが、後見人への報酬(2〜6万円程度/月)が必要となったり、家庭裁判所の監督下に置かれるなどの制限が多かったりと、本人や親族の負担になるおそれがあります。

成年後見制度(せいねんこうけんせいど)とは、認知症や知的障害などで判断能力が低下した人の契約や財産管理のサポートを行う制度です。「成年後見人」を家庭裁判所から選任してもらい、本人に代わって様々な手続きを行なってもらいます。この記事では成年後見制度についてわかりやすく説明し、同時に最近注目を浴びている家族信託との比較についても解説します。
【完全版】成年後見制度とは?司法書士がわかりやすく解説

できる限り、親本人や家族のストレスや負担が少ない形で、認知症になった後でも親の財産を自由に動かせる形を実現するには、親の意思能力があるうちに対策しておくことが重要です。

事前にできる親の認知症対策には、以下の3つが挙げられます。

主な認知症対策(資産凍結対策)

・家族信託
・任意後見制度
・生前贈与

詳しく解説していきます。

家族信託

家族信託は、親が元気なうちに、親の財産を管理する権限を、信頼できる家族(主に子)に託しておく法的な制度です。

家族信託は、財産管理を託す委託者(親)、財産管理を託される受託者(子)、財産からの利益を受ける受益者(主に委託者と同一人物)の3人で構成されます。

家族信託は一般的に、信託法に沿って信託の内容をご家族ごとに話し合い、委託者と受託者の間で信託契約を結ぶことで成立します(信託法3条の1)。

家族信託の仕組み

例えば、委託者(親)が所有する家を受託者(子)へ信託したとしましょう。

この場合、親の家の所有権が委託者(親)から受託者(子)へ移転します。

よって、親の家を管理・処分・運用する権限を受託者(子)が持つことになり、委託者(親)の意思能力がなくなったとしても、受託者(子)が当事者として売却・リフォーム・運用などの行為を行えます。

受託者(子)に所有権が移転するといっても、信託財産から得られる利益(売却による利益や居住する権利など)は受益者が得ることになります。

委託者と受益者は基本的に同一人物で設定されるため、このケースでは親が引き続き家に住んだり、売却した際の利益を得ることが可能です。

このように、家族信託は「財産を管理・運用・処分する権利」と「財産から利益を得る権利」を分けられることが大きな特徴です。

また、成年後見制度とは異なり、家庭裁判所の関与もなく、財産の管理・運用方法については自由に決められることが大きなメリットです。

例えば、所有する家の処分の他にも、余剰預金で収益不動産を購入するなどの積極的な投資や、将来を見据えた親族への贈与なども可能となります。

ただし、柔軟な制度とはいえ、家族信託は信託法に定められた法的な制度であり、最大限に活用してメリットを享受するには、法律や税金など幅広い知識が必要となります。

比較的新しい制度で、経験や知識が豊富な専門家もまだまだ少ない状態のため、専門家選びが非常に重要です。

当社では、家族信託に関する経験豊富な司法書士がお客様のご状況をお聞きし、ご本人やご家族のご希望を安心・安全な形で実現できるようサポートさせていただいております。

初回相談は無料で行っておりますので、検討中の方、ご興味のある方はぜひお気軽にお問い合わせください。

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家族信託について詳しくは以下の記事でも解説しています。ぜひご覧ください。

家族信託は「認知症による資産凍結」を防ぐ法的制度です。認知症が進行し意思能力を喪失したと判断されてしまうと、銀行預金を引き下ろせない、定期預金を解約できない(口座凍結)、自宅を売却できないなどのいわゆる「資産凍結」状態に陥ってしまいます。そのような事態を防ぐために、近年「家族信託」が注目されてきています。この記事では家族信託の仕組みやメリット、デメリットをわかりやすく解説します。
家族信託とは?わかりやすくメリット・デメリットを徹底解説します

任意後見制度

任意後見制度とは、本人(親)の意思能力があるうちに、本人が将来の後見人を指定して「任意後見契約」を結んでおき、本人の意思能力が不十分となった際に、家庭裁判所が「任意後見監督人」を選任することで効力を発生する制度です(任意後見に関する法律2条の1)。

任意後見人は、任意後見契約で定められた身上監護や財産管理についての代理権を持ちます。

例えば親が委任者、子が受任者として任意後見契約を結んでおけば、親が認知症で意思能力を喪失した際に、任意後見契約の効力が発生して、子が代わりに親の財産管理などを行えるということです。

このような点で、任意後見制度も認知症対策になるといえます。

ただし、任意後見制度では、家庭裁判所が関与したり、任意後見監督人への報酬の支払いが必要となります。

また、あくまでも本人の財産や生活を保護するための制度のため、積極的な資産運用や本人の財産が減るような代理行為は認められません。

財産管理の柔軟性や自由性においては、任意後見制度と比較して家族信託の方が高いと言えます。

ただし、任意後見制度では、家族信託で含まれない「身上監護」に関する代理権を任意後見人に与えられるという特徴があります。

身上監護は、本人が生活を送る上で必要な介護や医療に関する契約などの法律行為や支払いなどを、本人の代わりに行うことです。

家族信託では、基本的に委託者の財産の管理や運用についてのみ定められますが、任意後見制度では身上監護についても公正証書でしっかりと定められるため、本人やご家族の安心にもつながるでしょう。

両方のメリットを得るために、家族信託と任意後見制度を併用することもあります。

成年後見制度(せいねんこうけんせいど)とは、認知症や知的障害などで判断能力が低下した人の契約や財産管理のサポートを行う制度です。「成年後見人」を家庭裁判所から選任してもらい、本人に代わって様々な手続きを行なってもらいます。この記事では成年後見制度についてわかりやすく説明し、同時に最近注目を浴びている家族信託との比較についても解説します。
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生前贈与

生前贈与とは、言葉の通り生前に本人の財産を家族などに贈与しておくことです。

贈与税の控除制度を活用し、親の意思能力があるうちに贈与を行うことで、贈与税や相続税の節税につながります。

認知症対策・相続対策としての生前贈与では「暦年課税」や「相続時精算課税」という制度を利用します。

暦年課税

暦年課税とは、1/1〜12/31の1年間で贈与を受けた額が110万円以下の場合は、贈与税が非課税になる制度です。
贈与額が110万円を上回った額に対して贈与税が課せられます。

つまり、毎年110万円を超えない範囲で贈与を続ければ、贈与税の課税を回避しながら相続財産も減らし、相続税の節税にもつながることになります。

成年後見制度(せいねんこうけんせいど)とは、認知症や知的障害などで判断能力が低下した人の契約や財産管理のサポートを行う制度です。「成年後見人」を家庭裁判所から選任してもらい、本人に代わって様々な手続きを行なってもらいます。この記事では成年後見制度についてわかりやすく説明し、同時に最近注目を浴びている家族信託との比較についても解説します。
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相続時精算課税

相続時精算課税では、1人からの贈与額の合計が2,500万円以下の場合は贈与税が非課税となり、2,500万円を超える部分には一律で20%の贈与税が課せられます。

さらに、贈与を受けた額は、贈与者が亡くなった際の相続財産に合算され、相続税が計算されます。

贈与税の支払いを相続税として先延ばしにされるイメージです。

この制度は、60歳以上の直系尊属(父母や祖父母)から20歳以上の子や孫への贈与において適用可能です。

やむを得ず一度の贈与額が大きいケース、財産価値の上昇が見込まれるケースなどに有効だといえるでしょう。

暦年課税と相続時精算課税は、どちらか一方しか選択できない(相続税法21条の11)ため、注意が必要です。

ご家族の状況や贈与財産額によって「どちらの制度が節税になるか」「ご家族にとって最適か」は異なります。

家族信託など他の制度との比較検討も踏まえ、認知症対策・相続対策については司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

認知症の親の家を名義変更する2つの方法

認知症の親にまだ意思能力がある場合は、家族信託や任意後見制度を活用し、親の意思能力が喪失した後に備え、家以外の財産管理についても包括的に定めておくことがおすすめです。

そのほかに、早く名義を変更しておきたい事情がある場合には、以下の方法で名義を変更することもできます。

認知症の親の家を名義変更する2つの方法

認知症の親の家を名義変更する2つの方法

  1. 親から子へ家を贈与する
  2. 第三者へ家を売却する

ただし、家の贈与や売却は契約行為にあたります。親の意思能力がない場合は行えないため、注意しましょう。

また、たとえば売却を決断した当初は意思能力に問題がなくても、買主を探している間に親の意思能力が低下し、売買契約の際に意思能力が確認できなくなる可能性があることも留意しなければなりません。

1.親から子へ家を贈与する

親御さまの家を名義変更する1つ目の方法は、親から子へ家を贈与することです。

この場合は、親から子への贈与による所有権移転登記を行います。

(贈与)
第五百四十九条 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

引用:民法549条

贈与における大きな懸念点は、贈与を受けた人(子)に対して贈与税が課せられることです。

贈与税の税率は高く、基礎控除額も低いため、高額になる可能性があります(詳細は後述)。

家の贈与にかかる費用・税金

家の贈与を行う場合、以下のような費用や税金がかかります。

• 登録免許税:不動産の価額×2%
贈与時の不動産の価額×2%で計算します。

不動産の価額とは、市町村役場で管理している固定資産台帳に登録された価格または登記官が認定した価額を指します(登録免許税法9条、10条)。

• 贈与税:(贈与財産額−基礎控除額110万円)×15〜55%-控除額
上述の通り、贈与税の計算は暦年課税または相続時精算課税のどちらか一方を選択します(相続税法21条の11)。

相続時精算課税を選択する場合は、税務署への申告が必要なため、特に申告しない場合は暦年課税の適用となります。

暦年課税の場合の税率・控除額は以下の通りです。

暦年課税の場合の税率・控除額

(相続税法21条の2,5,7、租税特別措置法70条の2の4,70条の2の5)

なお、相続時精算課税を適用した場合は、贈与財産の総額から2,500万円が控除され、2,500万円を超えた分に対して一律20%の税率で贈与税がかかります(相続税法21条の9、租税特別措置法70条の2の6)。

• 不動産取得税:不動産の価額×4%
不動産を取得した人に対して課される税金です。
税額は、不動産の価額×4%で計算されますが、現在、土地と住宅については軽減税率として3%が適用されています。
参考: 不動産取得税|総務省

地方税のため、自治体によって課税額の控除などの特例が定められています。
詳しくは各自治体のHP等をご確認ください。

• 司法書士への登記手続き依頼費用:5〜15万円
司法書士に登記手続きの代行を依頼する場合、報酬の支払いが必要です。
地域や手続きの内容によっても異なりますが、5〜15万円が相場となっています。

家を贈与する際の注意点

親御さまの家を子へ贈与する場合は、以下の点に注意しましょう。

家を贈与する際の注意点

  • 贈与を受けた子に贈与税と不動産取得税が課せられる
  • 贈与税は比較的高額である
  • 控除に関して、暦年課税と相続時精算課税の一方を選ばなければならない

上述の通り、親から子へ贈与を行う上で、懸念されるのは贈与税の額です。

贈与税は、不動産取得税や所得税と比較して基礎控除額が低い上に税率が高く、安易に贈与を行うと高額の贈与税を納めなければならないため、注意しましょう。

例えば、贈与税は基礎控除額が年間で110万円なのに対し、相続税は基礎控除額が3,000万円+600万円×法定相続人の数で決まります(相続税法15条)。

また、税率や税額控除の面からも贈与税は高額になる傾向があります。贈与税と相続税の速算表を比較すると、以下の通りです。

贈与税と相続税の速算表

親子間の贈与自体は親子間だけで行えますが、相続人が複数人いる場合は、安易に贈与を行うと相続人間トラブルに発生する恐れもあります。

また、どのような財産の移転方法が節税となるのかについては、ご本人や親族の状況、法定相続人の数などによっても様々です。

親の家を子に贈与することを考えられている方は、司法書士などの専門家にご相談いただくことを強くおすすめします。

状況によっては、上述のような相続対策・認知症対策の提案を受けることもできるでしょう。

2.第三者へ家を売却する

認知症の親の家を名義変更する方法として、第三者に売却することも可能です。

この場合は、家の所有権(名義)が親から買主である第三者に移転します。

親が介護施設に入所している、または入所する予定があり空き家となるケースや、売却により介護・医療費を捻出したいケースにも有効だといえます。

第三者へ売却した場合でも、売却による利益に対する譲渡所得税や、不動産仲介業者への仲介手数料が発生するため、費用のシミュレーションが必要です。

家の売却にかかる費用・税金

• 登録免許税:不動産の価額×2%
軽減税率として、R8/3/31までの間に登記を受ける場合は1.5%(租税特別措置法72条の1)となります。

• 譲渡所得税:譲渡所得(売却益)×15%
譲渡所得は「売却による収入-金額-(取得費+譲渡費)」で計算されます(所得税法33条の3)。

税率について、所有期間が5年を超える場合の長期譲渡所得を想定し、15%を採用しています。(所有期間が5年以下の短期譲渡所得は30%)

• 司法書士への登記手続き依頼費用:5〜15万円
司法書士に登記手続きの代行を依頼する場合、報酬の支払いが必要です。
地域や手続きの内容によっても異なりますが、5〜15万円が相場となっています。

• 不動産仲介業者への仲介手数料:売却価格×3%+6万円(+消費税)※売却価格が400万円超の場合
不動産の売却価格により異なります。

家を売却する際の注意点

認知症の親の家を第三者へ売却する場合は、以下の点に注意しましょう。

家を売却する際の注意点

• 売主である親に譲渡所得税が課せられる
• 買主が特別な関係(※)である場合、居住用財産を譲渡した際の「3,000万円控除」は適用されない
• 買い手が見つかるまでに意思能力がなくなる可能性がある

※特別な関係には、親子や夫婦のほか生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。
参考:

マイホームを売ったときの特例|国税庁

家を売却する場合、費用面での注意点として、売主である親に課せられる「譲渡所得税」が挙げられます。

マイホームを売った場合は、一定の条件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円の控除が受けられますが、親子や夫婦、他にも内縁関係にある人や特殊な関係にある法人などの特別な関係にある相手が買主の場合は適用を受けられないため、注意しましょう。

また、家を売却する際は、不動産仲介業者を介して売却活動を行うことが一般的ですが、良い買い手が見つかるまでに本人の認知症が進行し、契約時には意思能力がなくなってしまう可能性も考えられます。

贈与か売却、どちらを選ぶべき?

認知症の親の家の名義変更において、贈与か売却のどちらが最適なのかという疑問がでてくるでしょう。

結論、家の不動産価額や売却価格、ご家族の状況やご希望などによって異なります。

贈与であれば、贈与税が高額になる可能性が高いですが、相続時精算課税や贈与税の配偶者控除などを利用すれば、最低限贈与税を節税することも可能です。

ただし、他に相続人がいる場合、特定の子に贈与することが後の相続人間の関係悪化やトラブルに発展するケースもあります。

一方で、売却すれば、財産を現金化できますので、複雑な相続の回避や介護・医療の資金の捻出にも繋がるでしょう。

ただし、良い買い手が見つかるまでに親の認知症が進行して意思能力がなくなれば売買契約を結べなくなるため、売却は実現しません。

このように、家という大きな財産を動かすには、法律や税金、相続についてさまざまな知識を総動員させて考える必要があるのです。

少しでも不安や疑問がある方は、まずは司法書士などの専門家に相談することを強くおすすめします。

認知症の親に意思能力がなければ「成年後見制度」の利用が必須

ここまで解説してきた贈与や売却ができるのは、親に「意思能力」がある場合のみです。

すでに親が認知症により、意思能力が喪失していれば「成年後見制度」を利用する必要があります。

成年後見制度とは、認知症や知的障害、発達障害などによって意思能力を欠く、もしくは不十分な方の権利を守り、本人を法律的に支援する制度です。

成年後見制度では、本人に変わって家庭裁判所に選任された「後見人」が、本人の財産管理や身上監護(医療や介護の契約行為など)を行います。

成年後見制度は、家族や司法書士などが、家庭裁判所に対して「後見開始の申立て」を行い、家庭裁判所が「後見開始の審判」と「後見人(後見監督人)の選任」を行うことで開始します。

成年後見制度では、後見人が本人の代わりに家の売却行為を含む財産管理や、身上監護を行いますが、この際に注意すべき点がいくつかあります。

成年後見制度の注意点

成年後見制度の注意点として、以下が挙げられます。

成年後見制度の注意点

• 本人の居住用財産の売却(処分)には、家庭裁判所の許可が必要
• 本人の財産を維持し、本人が生活を送るために必要な行為や支出のみが認められる
• 後見人に専門家が選任された場合は報酬の支払いが必要
• 後見人と良好な関係性を築けない可能性がある
• 親族が後見人に選任された場合、後見人の業務が大きな負担となる場合がある
• 原則、本人が亡くなるまで辞められない

これらの注意点について、1つずつ説明していきます。

本人の居住用財産の売却(処分)には家庭裁判所の許可が必要

成年後見人が成年被後見人の居住用財産(建物又は敷地)について、売却、賃貸、賃貸借の解除または抵当権の設定などを行う場合は、家庭裁判所の許可を得なければなりません(民法859条の3)。

家庭裁判所によって、売却の必要性や本人の財産状況、推定相続人などの親族が反対していないかどうかなどが総合的に考慮・判断されます。
参考: 成年後見人による居住用不動産の売却|公益社団法人全日本不動産協会

必ずしも許可されるとは限らないこと、書類の準備や手続きにも時間がかかることなどにも、注意が必要です。

本人の財産を維持し、本人が生活を送るために必要な行為や支出のみが認められる
成年後見制度は、あくまでも本人の財産を維持・保護するための制度であるため、基本的には本人が生活を送るために必要な支出や法律行為のみが認められます。

最高裁判所による「成年後見制度と後見人の職務について」 では、後見人が行う職務について、以下のように記されています。

2 財産管理
(4)本人の財産は,あくまで本人のものであり,後見人や第三者のために使用したり,貸し付けたりできません。また,本人名義の財産を後見人個人の名義にすることもできません。

引用:成年後見制度と後見人の職務についてp.3|最高裁判所

よって、本人の財産を増やす目的であっても、本人の財産を使って積極的な投資や運用を行うことはできません。

したがって、本人の家を子や配偶者に贈与することは、適切な対価を得ることなく本人の財産が減少する行為となるため、認められないことになります。

後見人に専門家が選任された場合は報酬の支払いが必要

後見人に専門家が選任された場合は、月1万〜6万円ほどの報酬の支払いが必要となります。

報酬は、後見人が行った後見事務の内容や、被後見人の財産額や内容を裁判官が総合的に考慮して定めます。

通常の後見事務を行う場合は、月額1万〜2万円程度と決定されることが多いようです。

被後見人が保有する財産額(管理財産額)が多いほど報酬も高くなる傾向にあります。

管理財産額が1,000万円〜5,000万円の場合は月額3万〜4万円、管理財産額が5,000万円を超える場合は月額5万〜6万円程度とされることもあります。
参考: 成年後見人等の報酬額について|最高裁判所

後見人と良好な関係性を築けない可能性がある

親族以外の専門家が後見人に選任された場合、親族や本人との相性が合わなかったり、意思疎通が図れず、精神的な負担となってしまうケースもあります。

対策としては、後見開始の申立書の「成年後見人等候補者」欄に、信頼できる専門家をあらかじめ記載しておくなどの方法があります。

自分たちだけで申立てを行うと、いきなり見ず知らずの専門家に、親の財産を一任しなければならない可能性も高まるでしょう。

成年後見制度を利用する際は、まずは司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

親族が後見人に選任された場合、後見人の業務が大きな負担となる場合がある

後見人は、その事務内容や被後見人の財産の収支などに関して、就任後の初回報告と、年に1度の定期報告を家庭裁判所に対して行わなければなりません。

初回報告では、後見人等に選任されてその効力が発生したら、速やかに「財産目録」と「年間収支予定表」を家庭裁判所に提出する必要があります。

定期報告では、原則として年に1回、家庭裁判所に対して後見等事務の報告と財産目録の提出をしなければなりません。

日常においても、定期的、臨時的な収入・支出についての資料を管理したり、記録をしておく必要があります。

親族が後見人となった場合、本人や家族にとっては心理的な安心が得られるかもしれませんが、後見人に対して求められる業務は多く、体力的・精神的な負担が大きくなる場合があるため、注意しましょう。

参考: 後見人等に選任された方へ|東京家庭裁判所後見センター

原則、本人が亡くなるまで辞められない

成年後見制度は、原則一度開始すると本人(被後見人)が亡くなるまで辞められません。

厳密には、後見開始の原因が消滅したとき(本人の意思能力が回復したとき)は、後見開始の審判が取り消されて成年後見制度が終了する場合もありますが、認知症が回復するケースは稀だといえるでしょう。

よって、成年後見制度を利用すると、家の売却や処分が完了した後も、後見人による財産管理・身上監護は続きます。

家の売却を目的に後見開始の申立てを行った場合でも、成年後見制度の効力が一度発生すれば、その後の本人の財産は全て後見人の管理となり、家庭裁判所の管理下に入ることを覚えておきましょう。

成年後見制度には、上記のような注意点がありますが、前提として意思能力を喪失した親を法的に保護・支援してくれる制度です。

成年後見制度についてしっかりと理解した上で、専門家のサポートのもと十分な準備を行えば、親の家の売却もより進めやすくなると考えられます。

親の意思能力の確認も含め、まずは司法書士などの専門家に相談してみましょう。

成年後見制度の利用の流れ

成年後見制度の利用開始までの大きな流れは、以下の通りです。

1. 後見開始の申立て準備
必要書類や費用を用意し、管轄の家庭裁判所へ提出します。

2. 面接予約
申立後、申立人及び成年後見等候補者から詳しい事情を聞くための面接日を予約します。

3. 後見開始の申立て・面接
必要書類を提出し、予約した日時に面接を行います。

4. 審理
書類審査・親族への意向照会・本人調査・候補者調査・鑑定などが行われます。

5. 後見開始の審判
申立てから審判まではおおむね1ヶ月〜2ヶ月かかります。

6. 初回報告
成年後見人は、本人の財産状況を調査のうえ、財産目録及び年間収支予定表を作成し、資料を添えて家庭裁判所へ提出します。

7. 定期報告(年1回)
原則として年1回定められた報告時期に、後見等事務報告書と財産目録及びそれらの資料を提出します。

参考: 手続の流れ・概要|東京家庭裁判所

成年後見制度を利用するには、まずは後見開始の申立てに必要な書類と費用を準備しなければなりません。

申立ては、本人(物事の判断能力が十分ではない方)の住所登録をしている場所を管轄する家庭裁判所へ行います。

主な必要書類と費用は以下の通りです。

主な必要書類
• 後見・保佐・補助 開始等申立書
• 申立事情説明書
• 本人の財産目録及びその資料
• 本人の収支予定表及びその資料
• 親族の意見書
• 後見人候補者事情説明書
• 診断書
• 本人情報シート
• 本人の戸籍抄本・住民票
• 本人の住民票又は戸籍の附票

費用
• 申立手数料(収入印紙800円)
• 登記嘱託手数料(収入印紙2,600円)
• 郵便切手(送達・送付費用) 後見:3,270円、保佐・補助:4,210円
• 鑑定費用(必要な場合)

参考: 後見・保佐・補助開始申立ての手引

後見開始の申立てを行う場合には、上記のような複数の書類や費用が必要となります。

専門家でなければかなり複雑だと感じられる書類や手続きも多いはずです。

親本人やご家族が適切に成年後見制度を利用できるよう、まずは司法書士への相談をおすすめします。

成年後見制度は、家庭裁判所に対して後見人の選任を申立てることで開始します。この申立手続は、本人・配偶者・四親等以内の親族などから行うことが可能です。この記事では専門家に頼らず、本人の家族がご自身で成年後見の手続きを進めるために必要な情報をまとめました。
【完全版】成年後見制度の手続きの流れや申立方法を司法書士が解説

認知症の親の家を名義変更した事例

認知症の親の家を名義変更する際は、親の意思能力が必要であると解説しました。

この意思能力については、専門家でなければ正確に判断することは難しく、自分たちだけで判断して贈与や売却などの法律行為を行うと、大きなトラブルに発展することもあります。

トラブル事例も含め、認知症の親の家を名義変更した事例をご紹介します。

認知症患者の所有する不動産を売ろうとしてトラブルとなった事例

引用: 意思能力|東京都宅建協会

1.宅建業者Xは、売主Aの長男Bから、A所有土地の売却を仲介して欲しいとの依頼を受けた。その際、長男Bからは「父親Aは高齢で、売却に関することは全て私が任されているからよろしく御願いしたい。」とのことであった。

2.宅建業者Xは、買主Cを探し、平成18年12月15日、売買契約を締結した。売主の署名は、売主Aから長男Bに対する委任状に基づきBが代理人として署名した。宅建業者Xは、長男Bの言動を信用し、Aに面談することもしなかった。

3.決済日を一週間後に控えた平成19年1月15日、司法書士に対する委任もあるので権利 書の確認を長男Bにしたところ、長男Bが持ってきたのは「所有権移転登記」の登記済証ではなく、「登記名義人の表示変更」の際の登記済証であり、「所有権移転登記」の登記済証、いわゆる権利証ではなかった。長男Bは、「登記済証と書いてあったので間違いないと思ったが、それ以外の登記済証はない。」とのことだった。

4.慌てた宅建業者Xは知り合いの司法書士Yに相談したところ、「平成17年3月に施行された改正不動産登記法では、権利書を紛失した場合に用いられていた従来の保証書による登記申請制度は廃止され、『事前通知制度』か『資格者による本人確認制度』によらざるを得ないが、『事前通知制度』は、一括決済(すなわち、残代金支払いの際に、売主の設定した従来の抵当権を抹消し、買主が売買代金調達のために新たに抵当権を設定する手続 きを同時にする場合)には使えないので、本件の場合も登記手続きの委任を受けた司法書士が行う『資格者による本人確認制度』によらざるを得ないでしょう。」ということであった。

5.そこで、宅建業者Xは司法書士Yに対し『資格者による本人確認』(当域手続きの依頼を受けた司法書士が売主本人Aに面談して本人確認と売却の意思の確認を行うこと)を 依頼し、司法書士Yは、早速売主Aと面談した。ところが、売主Aは明らかに認知症で意思能力がないことは誰の目からも明らかであった。したがって司法書士Yは「本人の売却意思の確認が出来ないので登記手続きはできない。もしやるという司法書士がいれば、2年以下の懲役刑覚悟で不動産登記違反を敢えてする司法書士であり、あなたも加担すれば同罪になりますよ。」ということであった。

親が認知症になったときの財産管理・相続対策は専門家に相談を

親が認知症の場合、意思能力がなければ親の家の名義変更ができない可能性があります。

認知症になると法律行為ができなくなるわけではありませんが、意思能力がないまま売却や贈与を進めてしまうと、後から大きなトラブルに発展するかもしれません。

親が認知症であり、家などの財産を動かす場合は、司法書士などの専門家へ相談し、意思能力があるかどうか、そして最適な相続対策についてサポートを受けることを強くおすすめします。

また、親がまだ認知症の症状がなくとも、元気なうちに家族信託などを利用して、将来の財産管理や承継について定めておくと、認知症による資産凍結を防ぐことが可能です。

認知症対策・相続対策は早めの着手がカギとなります。

当社においても、経験豊富な司法書士や専門家のネットワークのもとサポートさせていただいておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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家族信託の「おやとこ」では、認知症・資産凍結・相続などに悩むお客様に、司法書士等の専門家がご家族に寄り添い、真心を込めて丁寧にご対応します。

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