「親のもの忘れが増え始め、お金の管理に不安がある」
「親が認知症になったときに、どんなことに困るのだろう」
親が認知症になったときを考えると、お金についての悩みがたくさん浮かびあがるという方も多いのではないでしょうか。
認知症によって判断能力が低下してしまうと、金銭トラブルが起こったり、口座が凍結されたりするおそれがあります。
本記事では、認知症になると起こり得る金銭トラブルの事例や、認知症を見据えたお金の管理方法、口座が凍結された場合の対処法まで詳しく解説します。
要約
- 認知症になると、認知機能の低下により自身でのお金の管理が難しくなる
- 認知症になると、預金などの口座が凍結されるおそれがある
- 親の認知症を見据えたお金の管理方法は家族信託がおすすめ
- 認知症の親のお金を管理するときは使用したお金の記録を徹底する
- 認知症になったときのお金の管理についての相談は家族信託・生前対策の専門家へ
親御様の認知症で
お悩みの方へ
家族信託の「おやとこ」では、親御様の認知症によるお金の管理について悩まれているご家族に、専門家がご家族に寄り添い、最適な解決策を一緒に考えさせていただきます。
全国から年間数千件のご相談に対応
し、かつサービス満足度も96%を超えるなど、経験豊富な専門家が多く在籍しております。
家族信託・後見・遺言・相続
など幅広い相談が可能です。
目次
認知症になると起こり得る3つの金銭トラブル事例
認知症になると、次のような金銭トラブルが起こる可能性があります。
認知症になると起こり得る金銭トラブル事例
- 自分で金銭管理ができなくなる
- お金に執着するようになる
- 特殊詐欺の被害にあうおそれがある
それぞれどのような事態が起こり得るのか、具体的に見ていきましょう。
1.自分で金銭管理ができなくなる
認知症になると、日常的な金銭管理を自分でできなくなる 場合があります。
認知機能が低下するため、計画的に物事を考えたり判断したりすることが、難しくなるためです。
認知症の人の行動として、以下のような例があげられます。
金銭管理にまつわるトラブル
- 年金を支給日にすべて使ってしまう
- 何度も同じ商品を買ってしまう
- 手元に現金があるのにも関わらず、たびたび預金を引き出してしまう
時には、生活するうえで必要なお金まで使い込んでしまうこともあります。
これまで当たり前にできていたお金の管理ができなくなってしまうのです。
認知症になった後は、状況に応じて、買い物の付き添いや定期的な在庫確認といった、家族の協力が必要となるでしょう。
2.お金に執着するようになる
認知症になると、お金に執着するような言動が見られる 場合があります。
なぜなら、認知症によって記憶障害が起こるためです。
特に 「金品を盗まれた」と思い込む「物盗られ妄想」は、アルツハイマー型認知症の典型的な症状です。
認知症の症状を悪化させないように、本人がお金に執着するような言動をしても否定せずに、話を合わせるようにしましょう。
また、物盗られ妄想の多くは、保管場所を忘れてしまうことが原因です。
対策として、子も通帳や財布などの保管場所を把握しておくと良いでしょう。
3.特殊詐欺の被害に遭うおそれがある
認知症になると、特殊詐欺の被害に遭うおそれ があります。
判断能力の低下によって、自分にとって必要か否かを正確に判断できないため、営業担当者の話のままに契約してしまう場合があるためです。
また、認知症の人は自分が被害に遭っている認識が薄いため、発覚までに時間がかかるケースもあります。
その手法は、電話勧誘から訪問販売までさまざまです。
中には認知症の方を狙った、悪質な事業者も存在します。
電話に録音機能をつけたり、見知らぬ訪問者はインターホン越しに対応するよう徹底したり、あらかじめ対策をしておきましょう。
なお、認知症の人を狙った詐欺・悪質商法の詳細や、親を守るための対策については、下記記事にて詳しく解説しているのでご覧ください。
認知症の親を詐欺や訪問販売から守る対策は?事例から相談先まで徹底解説!
認知症高齢者を狙った詐欺や悪質商法があとをたちません。自身の親が被害に遭わぬよう、本記事では実際にあった被害事例から被害に遭ったときの相談先、被害に遭わないようにするための対策まで詳しく解説いたします。困るのは金銭トラブルだけじゃない!認知症による口座凍結
親が認知症になると、本人名義の銀行口座が凍結されるおそれ があります。
認知症により判断能力が低下しているとみなされる場合、金融機関は本人の財産を守らなければならないからです。
口座が凍結されると家族はもちろん、本人でさえも預金の引き出しや窓口での手続きができなくなります。
しかしながら、口座が凍結したとしても、生活費や介護施設の利用料をはじめとした、本人にまつわる費用は発生し続けるでしょう。
そのため、口座が凍結されてお金が動かせなくなる前に、親のお金の管理方法について事前に家族で対策を打っておくことが重要です。
認知症になる前にできる対策や、口座凍結が起きた場合に凍結を解除する方法については、後段にて解説します。
親の認知症を見据えたお金の管理方法
親が認知症になったら、「代理でお金の管理をする必要がある」と思いつつも、家族が代理で行うことは可能なのかと悩まれている方も多いのではないでしょうか。
親が認知症になった事態を想定して、事前にできる対策は以下のとおりです。
親の認知症を見据えたお金の管理方法
- 家族信託を利用する
- 任意後見制度を利用する
- 銀行の資産承継制度や代理人カードを利用する
- 日常生活自立支援事業を利用する
制度の詳細や具体的な効果について、順番に解説します。
方法1.家族信託を利用する
親が認知症になっても、口座凍結を避けられ、子などの代理人がお金を管理する方法として「家族信託 」があります。
家族信託とは、家族間で信託契約を結んで親が子に自分の財産管理を託す制度です。
親は財産管理を委託する「委託者」、子が財産管理を行う「受託者」となり、親のお金の管理を行います。
家族信託では一般的に「信託口口座」と呼ばれる、子が親のお金を管理するための専用の口座を作成します。
信託口口座は、家族信託で預けたお金を子が管理・運用する口座であるため、もし親が認知症になったとしても、口座凍結の心配はありません。
親の預金を信託口口座に移したうえで、子の判断で親の生活・介護・医療などに必要なお金を引き出したり、支払いをしたり、といったお金の管理を行えます。
親の意向も取り入れた自由なお金の管理方法を定められ、柔軟に運用が可能であるというメリットがあるため、近年注目を集めているのです。
家族信託の詳細や具体的なメリット・デメリットは以下の記事でも詳しく解説していますので、こちらもご確認ください。
家族信託とは?メリット・デメリットや手続きをわかりやすく解説!
家族信託は「認知症による資産凍結」を防ぐ仕組みです。本記事では家族信託の詳細や具体的なメリット・デメリット、発生する費用などについて詳しく解説します。将来認知症を発症しても、親子ともに安心できる未来を実現しましょう。親御様の認知症で
お悩みの方へ
家族信託の「おやとこ」では、親御様の認知症によるお金の管理について悩まれているご家族に、専門家がご家族に寄り添い、最適な解決策を一緒に考えさせていただきます。
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し、かつサービス満足度も96%を超えるなど、経験豊富な専門家が多く在籍しております。
家族信託・後見・遺言・相続など幅広い相談が可能です。
方法2.任意後見制度を利用する
認知症に備えた事前対策として、任意後見制度 の利用が効果的です。
任意後見制度とは、成年後見制度の一種で、判断能力が低下した際に、本人に代わってお金の管理や契約などを行う「任意後見人」をあらかじめ決めておく制度です。
本人の希望で弁護士や司法書士などの専門家のほか、家族を任意後見人に指定することもできます。
しかし、後見制度は本人の財産を守ることが前提です。
したがって、任意後見人の意思で「相続税対策として生前贈与をする」「孫のために預金を引き出す」といった「本人の財産が減る行為」はできません 。
また、任意後見制度では、任意後見人が任意後見契約の内容どおり、適正に仕事をしているかを監督する「任意監督人」という役割が存在します。
任意後見人は任意後見監督人に財産目録などを提出しなければならないため、仮に家族が後見人になっても、家族信託のような自由な財産管理を実現するのは難しい可能性があります。
加えて、任意後見監督人へ報酬の支払いが発生するため、本人の経済的な負担もあるという点に注意が必要です。
任意後見制度は本人の意思尊重を重視する制度ですが、メリットとデメリットをよく理解したうえで検討をしましょう。
以下の記事では、任意後見制度の解説や家族信託との比較も行っていますので、ぜひご覧ください。
任意後見制度とは?できること、手続き、成年後見との違いをわかりやすく解説!
任意後見人は、任意後見制度において、判断能力が低下した本人の財産管理や身上監護を行い、本人を守る役割です。特別な資格は不要で、子や兄弟などの家族など、原則誰でもなることができます。任意後見人ができることや、制度の利用における手続きや注意点を詳しく解説していきます。方法3.金融機関の資産承継制度や代理人カードを利用する
親の認知症に備えて、金融機関の「資産承継制度 」や「代理人カード(家族カード) 」などを利用するという方法もあります。
資産承継制度・代理人カードの制度の詳細と、注意点は下図のとおりです。
代理人カードは作成や手続きも簡単な場合があり、非常に便利です。
しかし、代理人カードを使用している間に本人の認知症が進行してしまうと、本人の口座にあるお金は動かせなくなるおそれがあるため、注意しましょう。
各制度でできることや、制度の名称は金融機関によって異なるため、詳しくはお使いの金融機関にお問い合わせください。
方法4. 日常生活自立支援事業を利用する
認知症になったときのことを見据えて、日常生活自立支援事業 を利用してお金を管理するのも一つの方法です。
日常生活自立支援事業とは、各都道府県や指定都市の社会福祉協議会で実施されている事業です。
利用者本人と社会福祉協議会との間で利用契約を結び、「支援計画」に基づいてサービスが提供されます。
認知症などによって、判断能力が不十分な方が受けられる支援の例は次のとおりです。
日常生活自立支援事業のサービス例
- 生活費の管理
- 家賃・公共料金等の支払い
- 郵便物の管理
社会福祉協議会によって事業の内容や料金は異なりますが、生活支援員による支援の料金は1時間につき平均1,200円です。
参考: 日常生活自立支援事業|厚生労働省
ただし、利用するには契約行為が必要なため、本人に契約内容が理解できるだけの判断能力と利用意思がなければなりません。
認知症によってすでに判断能力が低下している場合は、成年後見制度の検討が必要です。
ご利用の相談は、お住まいの地域の社会福祉協議会へお問い合わせください。
認知症によって口座凍結されたときの対処法
認知症によって凍結された口座を解除する方法は、以下の2点です。
口座凍結の解除方法
- 法定後見制度を利用する
- 銀行ごとに定められた制度を利用する
本章では、制度の詳細やメリット、注意点などを解説します。
法定後見制度を利用する
認知症によって口座が凍結されてしまった場合、解除をするためには後見人を立てる必要があります。
後見人を立てる成年後見制度には、前述した「任意後見制度」のほか「法定後見制度」があり、口座が凍結されてしまった後に利用できる制度は「法定後見制度 」 です。
法定後見制度を利用し、口座凍結が解除されたのちには、本人に代わって後見人が財産を管理します。
法定後見制度の後見人は、本人の希望する人を選任できる任意後見制度とは異なり、家庭裁判所が選任します。
後見人に家族を希望することは可能ですが、その採択は家庭裁判所にゆだねられるため、必ずしも家族が後見人になれるとは限りません。
また、認知症になった本人や本人の財産を守ることが前提のため、財産の使用用途は生活費や介護・医療費用など「本人のため」のものに限られます。
家族などが本人のためを思って購入を検討しようとしても、許可がおりない場合もあるのです。
法定後見制度のメリットとデメリットは以下のとおりです。
なお、法定後見を含む成年後見制度の詳細については、以下の記事をご覧ください。
【完全版】成年後見制度とは?わかりやすく解説します
成年後見制度(せいねんこうけんせいど)とは、認知症や知的障害などで判断能力が低下した人の契約や財産管理のサポートを行う制度です。「成年後見人」を家庭裁判所から選任してもらい、本人に代わって様々な手続きを行なってもらいます。この記事では成年後見制度についてわかりやすく説明し、同時に最近注目を浴びている家族信託との比較についても解説します。金融機関ごとに定められた制度を利用する
金融機関によっては、認知症により判断能力の低下が見られても一定の基準を満たせば、預金の引き出しといった手続きが行える場合があります。
2021年2月に全国銀行協会によって「認知症患者の親族が本人のための預金を引き出すことに応じるべき場合がある」という指針が発表されました。
参考: 金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会 福祉関係機関等との連携強化に関する考え方(公表版)|全国銀行協会
つまり、医療費や介護費をはじめとした認知症患者のために必要な預金の引き出しのみ、認められるケースがあるのです。
金融機関によって制度の詳細や判断能力の基準は異なるため、詳しくはご利用の金融機関に問い合わせください。
認知症の親のお金を管理するときの注意点
認知症の親のお金を管理する際は、以下の点に注意しましょう。
認知症の親のお金を管理するときの注意点
- 子だけの判断で親のお金を勝手に使わない
- 「いつ・どこで・何に」お金を使ったか記録する
- 親族間でお金の管理状況を共有する
親の身近にいた特定の親族によってお金がたくさん使われていたり、使途不明金があったりすると、他の親族から不信感を抱かれ、親族関係の悪化につながりかねません。
結果として、将来的に相続人になる人物との間でトラブルに発展する可能性もあります。
調停などに発展すると、費用や手間といった負担はさらに大きくなるでしょう。
親の預金口座にあるお金は「親の財産」であり、将来相続が発生した場合は、子を含む相続人で分配するものです。
認知症の親のお金を管理する場合は不透明な部分がないよう、カードの利用明細や領収書などを控えておき、大切に保管しましょう。
親が認知症になったときのお金の管理についての相談先
親が認知症になったときのお金の管理についての相談先は、以下のとおりです。
親が認知症になったときのお金の管理についての相談先
- 家族信託・生前対策の専門家
- 自治体
- 金融機関
それぞれ順番に見ていきましょう。
家族信託・生前対策の専門家
親が認知症になったときのお金の管理については、家族信託・生前対策の専門家 への相談がおすすめです。
「家族信託」や「成年後見制度」など、ご家族の状況に合わせた提案をしてくれます。
具体的に、相談できる内容は以下のとおりです。
相談できる内容
- 親の預金を含む財産の管理方法
- 「家族信託」の利用に関するサポート
- 「成年後見制度」の利用に関するサポート
- 状況に合わせた最適な相続対策(家族信託・生前贈与・遺言書の作成・成年後見制度など)
ただし、柔軟に親の財産管理を行える 「家族信託」は、親の判断能力が完全になくなってしまうと信託契約を結べません。
親が認知症になる前に、家族で財産や相続について話し合ったり、対策を施したりしておくことが重要です。
自治体
親が認知症になったときのお金の管理について、公的な機関に相談をしたい場合は自治体 に相談しましょう。
自治体の相談先は、地域包括支援センターや社会福祉協議会です。
地域包括支援センターや社会福祉協議会では、認知症や介護をはじめとした住民の幅広い相談を受け付けています。
具体的には、以下のような相談が可能です。
相談できる内容
- 介護保険の申請や手続きに関する相談
- 悩みに応じた地域の最適な窓口への連携
- 日常生活自立支援事業の利用
社会福祉協議会が行っている「日常生活自立支援事業」では、日々のお金の出し入れをサポートしたり、通帳を預かったりして、認知症の人がひとりでは難しいお金の管理についての支援をしてもらえます。
認知症の親のお金の管理について自治体に相談したい場合は、お住まいの地域の地域包括支援センターや社会福祉協議会に問い合わせをしましょう。
参考: ここが知りたい日常生活自立支援事業なるほど質問箱|全国社会福祉協議会
金融機関
金融機関によっては、親のお金の管理について相談を受け付けている場合があります。
代理人カードの発行や、金融機関の資産承継制度の利用を検討される場合は、商品の内容や手数料などが異なるため、ご利用の金融機関に直接相談しましょう。
ただし、サービスや制度の手続きをする際に、親の判断能力が疑われた場合、口座が凍結されてしまう可能性もあるため、注意が必要です。
口座凍結が心配な方は、まずは家族信託・生前対策の専門家に相談し「お金の管理についてどのように動けばよいか」アドバイスをもらうと良いでしょう。
親も子も元気なうちに認知症に備えたお金の管理対策を
親が認知症になったときを考えると、自身でお金の管理ができなくなったり、口座が凍結されるおそれがあったりと、子の悩みはつきません。
認知症になった場合に備えて、あらかじめ認知症対策をしておくことが重要です。
もし、凍結された口座を解除するとなると、成年後見制度を利用して後見人を申し立てるしか方法はありません。
しかし、認知症になる前ならば、家族信託や任意後見制度の利用など、選択肢が増えます。
特に、家族信託では親のお金の管理だけでなく、不動産や有価証券など幅広く柔軟に対応が可能です。
とはいえ、家族だけでは制度の利用が不安という方も多いでしょう。
そんなときは、家族信託・生前対策の専門家への相談がおすすめです。
親も子も元気なうちに親族間でお金の管理について話し合い、本人や家族の意向を反映した最適なお金の管理を目指して、今できることから行動を始めましょう。
親御様の認知症で
お悩みの方へ
家族信託の「おやとこ」では、親御様の認知症によるお金の管理について悩まれているご家族に、専門家がご家族に寄り添い、最適な解決策を一緒に考えさせていただきます。
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