親が認知症になったとき、どこに相談すればよいかパッと思い浮かぶでしょうか?

介護、税金、精神的な不安など、悩みを一人で抱えてしまう方も多いですが、それは結果的に「介護うつ」など、ご自身を痛めつけてしまうことにも繋がります。

本記事では、親が認知症になったときの相談先について詳しく解説しています。

ご自身やご家族の負担を軽減するためにも、ぜひそれぞれの専門家や窓口に頼るようにしましょう。

親が認知症になったら、どこに相談するべき?

介護やお金、相続についての悩み、さらには親への対応方法や家族との関係にストレスなど、親が認知症になったときの悩みは多岐にわたるでしょう。

それぞれの悩みや疑問に対して、頼れる専門家がいたり、地域の相談窓口があります。

以下は、親が認知症になったときの相談先の一覧です。

分野 相談先 主に相談できること
全般 地域包括支援センター ・最適な窓口や専門家への連携
・介護の進め方、プランの作成
介護 自治体の福祉課 ・介護保険の申請
社会福祉協議会 ・介護に関する総合的な悩み
相続対策 司法書士 ・相続全般に関する悩み
・家族信託、生前贈与、遺言書、成年後見
弁護士 ・相続におけるもめ事、調停、裁判
税理士 ・相続税等の対策、手続き
行政書士 ・遺言書、遺産分割協議書
不安や悩み 認知症カフェ ・認知症の方やその家族による情報交換、悩み相談
認知症の人と家族の会 ・同
若年性認知症専用コールセンター ・若年性認知症についての悩み

これらの相談先をしっかり理解しておくことで、認知症の親だけでなく、自分、そして家族や親族を守ることができます。

では、それぞれの相談先について、詳しくみていきましょう。

親の認知症に関する相談先(1)地域包括支援センター

地域包括支援センターとは、地域の高齢者や認知症の方・その家族が抱えるあらゆる相談に応じ、必要な援助を行うための専門家チーム で、全国の市区町村5,000か所以上に設置されています。
地域包括支援センターについて|厚生労働省

地域包括支援センターには、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員等の専門家が配置されています。

「どこに相談すれば良いか」について悩んでいる場合でも、最適なサービスや機関に連携し、多角的なサポートをおこなってくれるため、迷ったらまずは相談してみるのがおすすめです。

お近くの地域包括支援センターをお探しの方は、以下からご確認ください。
全国の地域包括支援センターの一覧(都道府県のホームページへリンク)|厚生労働省

親の認知症に関する相談先(2)介護に関する窓口

親が認知症になり、介護施設への入居など、介護サービスの利用を考えている場合は、介護保険の申請を行いましょう。

介護保険の適用を受けると、施設の入居・福祉機器のレンタルなど所定の介護サービスが、通常の1割〜2割の負担で受けられるためです。

介護保険の申請先は「自治体の福祉課」です。

また、介護保険の申請含め、介護に関する総合的な相談をしたい場合は「社会福祉協議会」へ相談しましょう。

それぞれ解説していきます。

自治体の福祉課(介護保険の申請)

自治体への介護保険の申請・介護サービス利用開始の流れは以下の通りです。

  1. 支援を受ける方(親)がお住まいの自治体(福祉課など)へ相談する
  2. 介護保険の申請を行う
  3. 自治体の担当者が自宅に訪問し、ご本人に対して聞き取り調査(認定調査)を行う
  4. かかりつけ医が意見書を作成する
  5. 認定調査と意見書の内容をもとに要介護度が判定される
  6. 介護サービス計画書(ケアプラン)を作成し、介護サービスの利用を開始する
参考:介護サービス利用までの流れ|構成労働省

上記の流れ5.において判定された要介護度には「要介護1〜5」「要支援1〜2」の7段階、または「非該当」があります。

これらの要介護度に合わせて「家事援助」「通所介護」「福祉用具の利用」など、さまざまな介護サービスを受けられます。

各要介護度で受けられる介護サービスについて、詳しくは以下をご確認ください。
介護保険で受けられるサービスと種類と内容|厚生労働省

社会福祉協議会(介護全般の相談)

社会福祉協議会は、自治体と連携して地域福祉の推進を行う民間団体で、全都道府県に設置されています。

社会福祉協議会の窓口では、介護や認知症に関する総合的な相談を受けてくれます。

また、通所介護や在宅介護などの介護サービスを提供していたり、認知症対策や介護に関するイベント・ボランティア活動なども行っています。

お近くの社会福祉協議会をお探しの方は、以下をご確認ください。
都道府県・指定都市社会福祉協議会のホームページ(リンク集)|全国社会福祉協議会

親の認知症に関する相談先(3)相続や税金の専門家

親が認知症になってしまうと、
「介護費用は親の預金から捻出したい」
「相続対策について考えはじめなければ」
など、お金や相続対策などに関する悩みも出てくるでしょう。

これらの問題については、なるべく早めに信頼できる司法書士・弁護士・税理士・行政書士などの専門家に相談するべきです。

なぜなら、親が認知症になり「判断能力がない」とみなされた場合、親が所有する預貯金・不動産・株式などの財産は、本人にも親にも動かせない「資産凍結」の状態に陥る ためです。

一度「資産凍結」が起きてしまえば、親本人や家族が自由に親のお金を引き出したり、家を売却して介護資金を捻出したりすることができなくなってしまいます。

早めに相談すれば、多くの場合で「資産凍結」を防げますので、ぜひ「認知症かも…」という疑いの段階でも、専門家にご相談いただくことをおすすめします。

とはいっても、専門家によって対応できる分野が異なるため、注意が必要です。

それぞれの専門家の専門分野について、以下の表にまとめてみました。

相談先 専門分野
司法書士 家族信託・成年後見・遺言書など、相続に関する手続き
弁護士 相続のもめ事やトラブルへの対応、調停や裁判
税理士 相続税・贈与税など税金に関する対策や手続き
行政書士 遺言書の作成支援や証人、遺産分割協議書等の書類作成

それぞれみていきましょう。

司法書士

司法書士は、主に不動産や相続の登記手続きなど、法務局や裁判所に対する書類作成や手続きを行う専門家です。

司法書士は、弁護士のように裁判の代理人にはなれないものの、相続対策に関する知識や手続きに関して網羅している専門家がいます。

そのため「親のお金や相続に関して、どこに相談すれば良いか分からない」という方は、まずは司法書士に相談するのがおすすめです。

▼司法書士に相談できること

  • 相続における不動産登記・相続登記の手続き
  • 家族信託における信託登記の手続き
  • 最適な相続対策(遺言書の作成、生前贈与、家族信託、成年後見制度など)の提案とサポート
  • 成年後見人・成年後見監督人としてのサポート

また、上述にて「親が認知症になると資産が凍結されるおそれがある」と説明しました。

この資産凍結を防げる画期的な制度が「家族信託」であり、家族信託の相談先として、司法書士に相談している人が最も多いというデータがあります。

家族信託の組成をどの専門家に依頼したか

家族信託では、親が認知症になる前、もしくはまだ判断能力があるうちに「親の財産を信頼できる家族に信託する」ことで、親と親族の想い・意向を柔軟に反映させた相続対策が実現できます。

親の財産に不動産や株式がある場合も、家族信託を利用すれば、医療・介護資金の捻出など、さまざまな活用ができ、もちろんその利益は親自身が受け取ることができるのです。

以下の記事では、家族信託について詳しく解説していますので、ぜひご確認ください。

家族信託は「認知症による資産凍結」を防ぐ法的制度です。認知症が進行し意思能力を喪失したと判断されてしまうと、銀行預金を引き下ろせない、定期預金を解約できない(口座凍結)、自宅を売却できないなどのいわゆる「資産凍結」状態に陥ってしまいます。そのような事態を防ぐために、近年「家族信託」が注目されてきています。この記事では家族信託の仕組みやメリット、デメリットをわかりやすく解説します。
家族信託とは?わかりやすくメリット・デメリットを徹底解説します

当社においても、経験豊富な司法書士が集結し、家族信託についての最適な提案とサポートをさせていただいております。

家族信託のお話だけでなく、相続対策全般に関するお悩みやご質問など、どんなことでもお気軽にお問い合わせください。

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家族信託の「おやとこ」では、認知症・資産凍結・相続などに悩むお客様に、司法書士等の専門家がご家族に寄り添い、真心を込めて丁寧にご対応します。

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し、かつサービス満足度も96%を超えるなど、経験豊富な専門家が多く在籍しております。

家族信託・後見・遺言・相続など幅広い相談が可能です。

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弁護士

弁護士は主に、相続人の間でのもめ事の解決、調停や裁判の代理人や手続きを専門分野としています。

よって、財産の分割について家族間でトラブルが起こりそうな場合などには、弁護士に相談するとよいでしょう。

ただし弁護士への依頼費用は、一般的に他の士業への依頼費用に比べて高くなってしまう傾向があることに注意しましょう。

税理士

税理士は、その名の通り税金に関する専門家です。

相続や贈与に関する税金、節税の相談をしたい場合は、税理士に相談するとよいでしょう。

ただし、すでに親が認知症で判断能力がないと見なされている場合は、法律行為である贈与や遺言書の作成などができなくなるため、注意が必要です。

また、相続税対策では、目先の税金を減らすだけでなく、親族間のもめ事がない安泰な分配方法を取る方が好ましいケースもあります。

「節税」だけにとらわれないように、最適な相続について考えることが重要です。

行政書士

行政書士は、行政に対して提出する書類や、遺産分割協議書などの事実証明に関する書類の作成・提出手続きを行う専門家です。

相続に関連する業務としては、遺言書の作成や証人、家族信託における信託契約書の作成ができます。

司法書士とは異なり、登記業務はできないため、親の財産に不動産がある場合や、信託登記が必要な場合は、登記業務が得意な司法書士に相談するのがおすすめです。

親の認知症に関する相談先(4)悩み・不安解決のための窓口

親の介護に行き詰まったり、相続やお金に関して考えることが多く、精神的な負担を感じてはてはいませんか?

そんな時は、同じように認知症の家族をもつ人たちのコミュニティや交流会を利用したり、地域のサービスで話を聞いてもらったりするだけでも、心は少し軽くなるものです。

そこで最後に、親の認知症について、悩みや不安を抱えられている方におすすめの相談先を4つご紹介します。

  • 認知症カフェ
  • 認知症の人と家族の会
  • 若年性認知症専用コールセンター

それぞれみていきましょう。

認知症カフェ

認知症カフェは、認知症の方やその家族が集まり、お茶をしながら交流を深めたり、認知症や介護に関する情報交換を行ったりする場です。

介護福祉士や看護師などの専門家が参加することもあり、専門的な相談ができる時もあります。

認知症カフェは自治体やNPO法人など様々な団体により運営され、地域によっても開催内容が異なります。

お近くの認知症カフェをお探しの際は、以下をご確認ください。
認知症カフェ検索|なかまぁる(朝日新聞社)

認知症の人と家族の会

認知症の人と家族の会は、認知症の本人とその家族が、悩みや実際の生活、介護体験などについて情報交換し合うことで、孤独から救い、お互いで助け合うことを目的とした団体です。

全国47都道府県に支部があり、気軽に誰でも参加できます。

また、電話相談窓口も設けられているため「いきなりオフラインで参加するのは不安」という方にもおすすめです。

▼「認知症の人と家族の会」電話相談はこちら
(本部フリーダイヤル) 0120-294-456
土・日・祝日を除く毎日、午前10:00~午後3:00
全国どこからでも無料(携帯電話・スマートフォンからは通話料有料)

▼「認知症の人と家族の会」全国の支部一覧はこちら
全国の支部一覧|公益社団法人 認知症の人と家族の会

若年性認知症専用コールセンター

若年性認知症の方専用のコールセンターもあります。

若年性認知症とは、65歳未満の人が発症する認知症です。

平均発症年齢は51歳くらいといわれており、働きざかりの方に多いことから発覚に時間がかかったり、受診に踏み切れないケースも多いといわれています。

「最近もの忘れが多い…」とお悩みの方や、ご家族に若年性認知症の疑いがある方は、まずは一度お話されてみてはいかがでしょうか。

参考:若年性認知症ハンドブック|厚生労働省

若年性認知症専用コールセンター はこちらから
0800-100-2707
受付時間 月〜土曜日10:00~15:00(ただし水曜日のみ10:00〜19:00)

親の認知症に関する悩みは、ひとりで抱え込まないこと

親が認知症になると「何度も同じことを言う」「話が通じない」「勝手に外にでて帰って来ない」などのさまざまな症状が現れます。
参考:認知症の理解|茨城県

親を支えなくてはならないことはわかっていても、ときにはイライラしてしまったり、大切な人が変わり果てていくという喪失感を感じたりと、知らないうちに大きな精神的負担を背負ってしまうことが多々あります。

特に真面目な方は、悩みを抱え込みやすく「介護うつ」の状態になる可能性も高いです。

相談するのは少し勇気がいるかもしれませんが、同様に親の介護に励んでいる方もたくさんいます。
参考:仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査|厚生労働省、仕事と介護の両立に関するデータ|内閣府

「なんで自分だけ…」と思う必要はありません。
まずは気楽な気持ちで、専門家や相談窓口に問い合わせてみましょう。

まとめ

本記事では「親が認知症になったらどこに相談すれば良いか」について解説しました。

認知症対策は、遅ければ遅いほど症状の進行や資産凍結など、取り返しがつかない事態に陥りやすくなります。

相談先に迷うかもしれませんが、例えば地域包括支援センターは「どこに相談すれば良いか」についても相談に乗ってくれますし、司法書士は相続全般についての知識をカバーしています。

まずは気楽に問い合わせてみましょう。

ぜひ本記事を参考に、専門家へ早めにご相談いただき、少しでも皆さんの負担が軽減されることを祈っています。

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