成年後見制度を利用するには「家庭裁判所への申立て費用」と「成年後見人への毎月の報酬」がかかります。

申立てにかかる費用は実費で2万円程度、専門家に依頼する場合は10〜30万円程度のまとまったお金が必要です。

また、利用開始後は成年後見人への報酬が毎月2〜6万円程度発生し、成年後見制度が終了するまで(原則被後見人が死亡するまで)支払い続ける必要があります。

そのため、申立て手続きの前には、かかる費用やその確保の方法を把握しておくことが重要です。

そこで本記事では、成年後見制度でかかる費用の詳細、支払えない場合の相談先や利用できる制度(立替制度や助成金など)を解説していきます。

要約

  • 成年後見制度では「申立て費用」と「後見人への毎月の報酬」がかかる
  • 申立て費用は実費で2万円程度(+専門家への申請代行の報酬)
  • 成年後見人への毎月の報酬は2〜6万円程度
  • 成年後見人への費用が支払えない場合は、法テラスや自治体の支援が利用できる
  • 本人にまだ判断能力があれば、家族信託も検討できる

成年後見制度の利用をお考えの方へ

専門家のイメージ

成年後見制度を利用するには「申立て費用」と「後見人への毎月の報酬」がかかります。

特に、毎月の報酬は月に2〜6万円程度が相場で、トータルでみるとコストがかさむ可能性もあります。

また、成年後見制度の注意点と費用を考えると、家族信託や他の制度・対策がベストなケースもあります。

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成年後見制度とは?

成年後見制度とは、認知症や知的障がいなどによって判断能力が低下した方を支援する制度です。

家庭裁判所が本人を支援する「成年後見人(または保佐人・補助人)」を選び、本人の利益や権利を守るために、お金の管理や契約行為を代理(保佐人・補助人の場合は同意など)します。

例えば、高齢の親御様が認知症で判断能力をなくしてしまった場合、以下のような支援が行われます。

  • 親御様本人の生活に必要なお金の管理・支払い(財産管理)
  • 電気・ガス代や公共料金の支払い(財産管理)
  • 入院手続き(身上監護)
  • 介護施設の入居手続き・契約(身上監護)

成年後見人の役割には「財産管理」と「身上監護」があります。

身上監護とは上記の入院や介護施設の手続きなど、本人の生活に必要な契約・手続の代理行為のことです。

成年後見制度

以下の記事では、成年後見制度の基本的な仕組みや手続きの流れがわかります。

成年後見制度とは、認知症などで判断能力が低下した人の法的な行為や財産管理のサポートを行う制度です。本記事では具体的な制度の内容や費用はいくらかかるのか、利用する流れ、認知症対策として注目の家族信託との違いをわかりやすく解説します。
【保存版】成年後見制度とは?仕組みや注意点をわかりやすく解説します

法定後見と任意後見

成年後見制度は「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類に分かれています。

法定後見制度は、認知症などですでに判断能力が低下している方が、すぐに後見人を立てて支援してもらうために利用することが一般的です。

一方で、任意後見制度は、本人の判断能力がある元気なうちに「将来後見人となってほしい人(任意後見人)」を指定しておく制度です。

本人の判断能力が低下したら、事前に指定しておいた「任意後見人」が本人の支援を始めることとなります。

法定後見制度任意後見制度
内容すでに判断能力が低下している方に対して家庭裁判所が成年後見人(または保佐人・補助人)を選任し、支援する本人の判断能力があるうちに、将来後見人になる人(家族や信頼できる専門家など)を指定する
本人の判断能力低下後、任意後見人による支援が始まる
主な費用・家庭裁判所への申立て費用
・成年後見人への毎月の報酬
・(選任された場合)成年後見監督人への毎月の報酬
・公正証書での任意後見契約書作成費用
・(契約で定めた場合)任意後見人への毎月の報酬
・任意後見監督人への毎月の報酬

※令和6年12月末日時点にて、成年後見制度の利用割合は法定後見制度・保佐・補助が約98.9%、任意後見制度が約1.1%と大きな差があります。

参考: 成年後見制度の現状|厚生労働省

本記事では、利用者割合の多い法定後見制度でかかる費用について詳しく解説していきます。

任意後見制度の利用をご検討の方、費用を知りたい方は以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

任意後見制度とは、将来的な判断能力の低下に備えて、財産管理や身上監護を本人に代わって行う「任意後見人」をあらかじめ定めておく制度です。本記事では、任意後見制度の仕組みやメリット・デメリット、利用するための手続き方法などについて詳しく解説いたします。
任意後見制度とは?メリット・デメリットや手続き方法、成年後見制度との違いをわかりやすく解説

成年後見制度(法定後見)でかかる費用は?

成年後見制度(法定後見)でかかる費用は主に「申立て費用」と「成年後見人への毎月の報酬」です。

費用相場
成年後見制度を利用するための「申立て手続き」の費用
(=初期費用)
実費2万円程度
(以下、場合によってかかる費用)
専門家に代行してもらう場合:+10〜30万円程度
鑑定が必要な場合:+1〜10万円程度
成年後見人への毎月の費用
(=ランニングコスト)
毎月2〜6万円程度

それぞれについて詳しく解説していきます。

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後見開始の申立て時にかかる費用

成年後見開始時の申立て時にかかる費用は、実費で約2万円程度です。

以下のような費用が含まれます。

後見開始の申立て時にかかる費用

  • 必要書類を取得する手数料
  • 申立て手続きの手数料
  • 後見登記の手数料
  • 郵便切手

※裁判所が鑑定の必要性を判断した場合には、医師による鑑定費用が別途1〜10万円程度かかります(費用は医師によって異なります)。

申立て手続きの相談や代行を専門家へ依頼するときは、上記費用に加えて10万〜30万円程度の報酬が発生することが一般的です。

後見開始の申立て時にかかる費用

申立て書類の準備にかかる費用

後見開始の申立て手続きでは、戸籍謄本や医師の診断書など、各種書類が必要です

これらを取得する際に、手数料がかかります。

【一覧】後見開始の申立て手続きの必要書類と取得費用

必要書類取得先費用
本人の戸籍謄本自治体1通450円程度
本人・後見人候補者の住民票自治体1通300円程度
診断書医療機関5,000~10,000円程度
後見登記されていないことの証明書法務局300円
残高証明書金融機関1通800円程度
不動産の登記事項全部証明書法務局1通600円
※オンライン請求の場合:490円または520円

戸籍謄本の取得費用(取得先:自治体)/450円程度

本人の戸籍謄本(1通)が必要です。

自治体の窓口や郵送で請求する場合は1通につき450円程度、コンビニ交付の場合は1通につき400円程度かかります(自治体によって異なる)。

住民票または戸籍附票の取得費用(取得先:自治体)/300円程度

本人と後見人候補者の住民票または戸籍附票が必要です。

自治体の窓口や郵送で請求する場合は1通につき300円程度、コンビニ交付の場合は1通につき250円程度かかります(自治体によって異なる)。

診断書の取得費用(取得先:医療機関)/5,000円〜10,000円程度

後見開始の申立てでは、本人の精神状態について記載された医師の診断書が必要です。

診断書取得費は5,000円〜10,000円程度が目安です(医療機関によって異なる)。

後見登記されていないことの証明書(取得先:法務局)/300円

本人について、すでに成年被後見人や被保佐人等の登記がされていないことを証明する書類が必要です。

取得費は1通あたり300円です。

参考: 登記されていないことの証明申請(後見登記等ファイル用)|法務省

残高証明書(取得先:金融機関)/800円程度

本人の預貯金や有価証券の残高がわかる資料として、預貯金通帳写しまたは残高証明書などが必要です。

取得費は金融機関によって異なりますが、1通につき800円程度が目安です。

不動産の登記事項全部証明書(取得先:法務局)/600円

本人が不動産を所有している場合、本人の財産状況がわかる資料として、不動産の登記事項全部証明書が必要です。

登記事項全部証明書は法務局で取得しますが、請求方法や交付(送付)方法によってかかる費用が異なります。

  • 郵送または窓口における書面での請求:600円/1通
  • オンラインでの請求・送付:520円/1通
  • オンラインでの請求・窓口での交付:490円/1通

※未登記の場合は「固定資産評価証明書」が必要です。自治体にて300円前後で取得できます。

参考: 登記手数料について|法務省

申立て時にかかる費用(書類準備以外)

必要書類の取得費以外に、申立て手数料・後見登記手数料(収入印紙)、手続きにおける郵便切手代が必要です。

費用項目金額
郵便切手3,000~6,000円程度
後見登記手数料2,600円(収入印紙)
申立手数料800円(収入印紙)

郵便切手代(取得先:郵便局)/3,000円〜6,000円程度

申立ての際には、手続きに使用される郵便切手も一緒に納付します。

家庭裁判所によって必要な金額と各切手の枚数が異なります。
また、令和6年10月1日郵便料金改定に伴い、郵便切手の額及び内訳が改訂されましたので、注意しましょう。

例:東京家庭裁判所

後見開始の申立て時に納める郵便切手
合計4,000円
500円×2枚、350円×3枚、110円×15枚、50円×2枚、20円×10枚

参考: 後見関係事件等の予納収入印紙・郵便切手一覧|東京家庭裁判所

各地の裁判所での郵便切手代については、こちらから「郵便料及び予納金一覧」>「家庭裁判所」を選択すると確認できます。

後見登記手数料/2,600円(収入印紙)

後見開始の申立てを行い、後見開始の審判が下ると、法務局にて後見人が選任された旨が登記されます。

この登記の手数料(2,600円)を、申立て時にあらかじめ収入印紙で納付しておく必要があります。
(登記手続き自体は家庭裁判所の依頼のもと法務局が進めてくれます。)

参考: Q21~Q25「制度の利用について」|法務省

申立ての手数料/800円(収入印紙)

後見開始の申立てには、申立手数料が必要です。

家庭裁判所に提出する申立書に収入印紙を貼って納付します。

申立ての内容によって費用は異なり、後見開始の申立ての場合は800円です。

※保佐開始・補助開始の申立てを検討されている方へ

また、保佐開始、補助開始の申立てをする場合で、補助人・保佐人への同意権又は代理権付与の申立てを行う場合は、それぞれにつき800円がかかります。
詳しくは法務省のWebページに記載されています。

参考: Q21~Q25「制度の利用について」|法務省

その他(鑑定費用、専門家への手続き代行・相談料)

上述の書類取得費用や申立て手数料の他に「鑑定費用」と「専門家への報酬」が必要となる可能性があります

費用の概要と相場は以下のとおりです。

申立て手続き〜後見開始でかかる可能性のある費用

概要相場
鑑定費用本人の精神状況の判断のために「鑑定」が必要とされた場合にかかる費用
(例年は全体の4%前後のケースで行われる)
1~10万円程度(医師によって異なる)
専門家への報酬申立て手続きの代行、後見制度の利用についての相談を専門家へ依頼した場合に、専門家へ支払う報酬10~30万円程度(専門家によって異なる)

鑑定費用/1〜10万円程度

後見開始の申立書や診断書の内容によっては、本人の精神状態を判断するための「鑑定」が必要とされる場合があります。

実際に鑑定が行われる割合は低く、令和6年1月〜12月のデータでは全体の3.8% であったとされています。

鑑定が必要な場合は、1〜10万円程度の鑑定費用がかかります(医師によって異なります)。

鑑定費用割合
5万円以下約44.5%
5〜10万円約42.6%
10~15万円約11.4%
15〜20万円約1.4%
20万円超え約0.1%

参考: 成年後見関係事件の概況―令和6年1月~12月―|最高裁判所事務総局家庭局

専門家への報酬(申立て手続き代行・相談など)/10〜30万円程度

上述の必要書類の準備、申立て書類の作成、申立て手続きについて、専門家へ代行や相談を依頼する場合、一般的には10〜30万円程度の費用がかかります。

具体的な報酬額は、依頼する専門家によって異なりますので、個別に確認することをおすすめします。

成年後見人へ毎月支払う費用(ランニングコスト)

専門家が成年後見人に選任された場合は、専門家に対して月額2〜6万円の報酬を支払う必要があります。

一方で、親族が成年後見人に選任された場合は、報酬が発生しないこともあります。

順にみていきましょう。

専門家(司法書士・弁護士など)が成年後見人となる場合

専門家が成年後見人に選任された場合、後見事務の報酬として毎月2〜6万円前後の費用が発生します。

1年間で24〜72万円、成年後見制度が10年間続くとすると、240〜720万円程度かかります。

成年後見人への報酬を決定する要素は、以下の2つです。

  • 本人の財産額によって異なる「基本報酬
  • 特別困難な業務が発生したかどうかで決められる「付加報酬
専門家(司法書士・弁護士など)が成年後見人となる場合

基本報酬

基本報酬は主に、本人が所有する財産の額によって変わります。

本人が所有する財産=後見人が管理する財産となるため「管理財産」ともいわれます。

東京家庭裁判所の資料では、基本報酬の目安は月額2万円とされています。

ただし、管理財産額が1,000万円以上5,000万円以下の場合は月額3〜4万円、管理財産額が5,000万円を超える場合には月額5〜6万円が目安となっています。

基本報酬

参考: 成年後見人等の報酬額のめやす|東京家庭裁判所

付加報酬

基本報酬に加えて、後見事務に特別困難な事情があった場合は「付加報酬」として、報酬が付加されるケースがあります。

付加報酬は、基本報酬額の50%の範囲内で決定されます。

例えば、基本報酬が月額3万円の場合、付加報酬額は1.5万円で設定されるため、最大で月額4.5万円が必要となる可能性があります。

付加報酬が付与される可能性がある例として、以下があります。

  • 施設の入所・変更・退所に関する手続きを行った
  • 本人の代わりに遺産分割協議を行った
  • 本人の不動産売却の手続きを行った

参考: 参考:記入例(報酬付与申立事情説明書)|裁判所

付加報酬

Q.成年後見人の報酬額は誰がどのように決めるの?

A.報酬額は、成年後見人(専門家)自身が家庭裁判所へ「報酬付与の申立て」を行い、1年間の後見事務に関する申立ての内容から、家庭裁判所が決定します。

よって、本人の家族が成年後見人に値下げを交渉するなど、自分たちの裁量で決めることはできません。
報酬額は実際に行われた後見事務の内容をもとに家庭裁判所が判断するためです。

家族や親族が成年後見人となる場合

家族や親族が成年後見人になる場合は、報酬が発生しないこともあります

成年後見人への報酬額は、成年後見人自身の申立てにより決定されるためです。

専門家は「仕事として」後見事務を行いますが、家族は「家族として」後見事務を行うことが多いため、報酬付与の申立てをしない方もいます。

報酬付与の申立てを行わない場合は、上述の毎月2〜6万円の報酬は発生しません。
(家族でも申立てを行えば報酬を得られる可能性はあります。)

家族や親族が成年後見人となる場合

報酬が発生しないのであれば、家族や親族が成年後見人となった方がよいのでは?と思う方も多いでしょう。

ただし、後見事務による負担についても留意しておく必要があります。

成年後見人は、本人の代理人として、責任を持って財産管理や身上監護を行い、全て記録し、家庭裁判所に毎年報告しなければならないためです。

まずは、成年後見人の候補者を誰にするかなどを含め、専門家と相談した上で、申立て手続きを行うことをおすすめします。

ただし「成年後見監督人」が選任されれば報酬が必要

本人の家族や親族が成年後見人になった場合でも、家庭裁判所により「成年後見監督人」が選任される可能性はあります。

成年後見監督人は、成年後見人の事務を監督する役割です。

成年後見監督人の報酬(基本報酬)も、成年後見人への報酬と同様に「管理財産額」をもとに定められます。

成年後見監督人の基本報酬の目安

管理財産額報酬の目安
5,000万円以下月額1〜2万円
5,000万円を超える場合月額2.5〜3万円

参考: 成年後見人等の報酬額のめやす|東京家庭裁判所

成年後見制度が必要なのに費用を払えないときの対処法

成年後見制度を利用する必要があるのに、申立てや専門家への依頼、成年後見人への毎月の報酬を支払う余裕がないというケースもあります。

この場合に利用できる団体や制度がありますので、紹介していきます。

成年後見制度の費用を払えないときの対処法

  • 法テラス(日本司法センター)へ相談する
  • 自治体へ相談する(成年後見制度支援事業の利用)

それぞれ詳しくみていきましょう。

法テラスへ相談する・立替制度を利用する

法テラス(日本司法支援センター)は、総合法律支援法に基づき設立された法務省所管の公的な法人で、法律に関する悩みや不安を相談できる窓口です。

法テラスでは「弁護士・司法書士費用等の立替制度」があります。

本人や家族の収入条件などに関する一定の要件を満たし、援助が必要と判断された場合に、成年後見制度の利用にかかる 「実費」と「着手金(専門家への申立て手続き代行費用など)」を立替えてもらえる制度です。

立替えてもらった費用は、分割で返済します。

以下は、法テラスの立替制度における利用条件や立替内容の一部です。

【弁護士・司法書士費用等の立替制度の利用条件(法テラスホームページより一部引用)】

利用条件

1.収入等が一定額以下であること
2.勝訴の見込みがないとはいえないこと
3.民事法律扶助の趣旨に適すること

「1.収入や資産が一定基準以下であること」について
収入(手取りの平均月収 ※賞与も含む)や資産(お持ちの現金・預貯金及び不動産や有価証券の額)が一定基準以下の方が対象となります。お住まいの地域や住宅ローン・家賃の負担の有無によって基準が異なります。

(東京都特別区・大阪市などの地域にお住まいの場合の基準)

家族人数収入基準資産基準
1人200,200円180万円以下
2人276,100円250万円以下
3人299,200円270万円以下
4人328,900円300万円以下
参考:弁護士・司法書士費用等の立替制度のご利用の流れ|法テラス

【代理援助基準】(代理援助でかかる費用の立替基準)
成年後見人等申立事件

  • 実費:20,000円
  • 着手金:66,000円~110,000円

【書類作成援助基準】(書類作成援助でかかる費用の立替基準)
申立書

  • 実費:15,000円
    ※鑑定費用は、523,808円を限度として、別途被援助者のため追加して支出。
  • 報酬 :44,000円~66,000円
参考:日本司法支援センター業務方法書|法務省(p90~94、別表3)

詳しい情報を知りたい方、法テラスへ相談したい方は、法テラスの公式ホームページをご参照ください。

>法テラスの立替制度について詳しくはこちら

自治体へ相談する(成年後見制度支援事業の利用)

成年後見制度の利用に関する経済的な支援を行う「成年後見制度利用支援事業」が各自治体で行われています。

詳しい利用条件や、支援の内容は自治体によって異なるため、お住まいの市区町村へお問い合わせください。

ここでは、東京都北区の例をご紹介します。

助成の対象条件(1〜5いずれにも該当する方)

  1. 本人、配偶者又は四親等内の親族からの申立てにより成年後見制度を利用しようとする65歳以上の方
  2. 介護保険の保険者が東京都北区の方(住民登録が北区以外でも対象となります)
  3. 申立費用又は家庭裁判所が選任した成年後見人、保佐人又は補助人に対する報酬等の支払いが困難で、下記ア~エを満たす方
    ア.住民税非課税世帯(世帯員全員が非課税)
    イ.当該者の属する世帯の資産が概ね100万円以下
    ウ.年間収入が単身世帯で概ね150万円(世帯員一人増えるごとに50万円を加算)以下
    エ.居住する家屋その他日常生活に必要な資産以外に活用できる資産がないこと
  4. 東京都北区以外の自治体又は団体等が実施する同趣旨の制度で助成を受けていない方
  5. 成年後見人等が、本人の配偶者及び四親等内の親族でない方

助成費用

  1. 申立費用
    申立手数料、登記手数料、郵便切手:8,000円以内
    鑑定費用:100,000円以内
    診断書作成費用:10,000円以内
  2. 成年後見人等への報酬・成年後見人等事務手数料(通信費、コピー代、交通費等)施設入所者:月額18,000円以内
    在宅生活者:月額28,000円以内

参考: 成年後見制度の本人・親族申立費用、後見人等の報酬助成|東京都北区

成年後見制度の利用における3つの注意点

後見開始の申立てを進める前に、成年後見制度について理解しておきたい注意点を解説します。

一度後見開始の申立てを行うと原則取り下げはできないため、慎重に検討しましょう。

成年後見制度の利用における3つの注意点

  • 原則本人が亡くなるまで報酬が発生する
  • 本人の財産の利用用途が限定される
  • 成年後見監督人が選任されたら、さらに報酬が発生する

それぞれみていきましょう。

1.原則本人が亡くなるまで報酬が発生する

成年後見人に専門家が選任された場合、本人が亡くなるまで報酬を支払い続けなければなりません。

成年後見制度は原則、本人が亡くなるまで続くためです。

例えば、成年後見人への報酬が月に3万円の場合、1年間で36万円、10年間で360万円かかることになります。

よって、成年後見制度にかかるトータルのコストは大きな負担となる可能性があります。

原則本人が亡くなるまで報酬が発生する

また、申立てのきっかけとなったこと(遺産分割をする,保険金を受け取る等)が解決して
も、成年後見制度は続きます。

(※ただし、2026年現在、成年後見制度の改正が検討されています。これにより、本人の状況等に応じて途中で制度の利用を止められることや、後見人の交代について検討することも議題として上がっています。)

成年後見制度の改正については、以下の記事で詳しく解説しています。

現行の成年後見制度が大幅に改正される可能性が出てきました。成年後見制度は2000年にスタートした支援制度で、知的障害や認知症などにより判断能力が不十分な人に代わって、財産管理や福祉サービスの契約などを支援することを目的としています。成年後見制度には手続きの面や後見人への報酬を要する点など、時間的・コスト的な問題が従来より指摘されており、思うように普及していない現状があります。しかし、「2025年問題」などに伴う認知症患者の増加を受けて、政府は成年後見制度の改正を急いでいます。本記事では、現在制度が抱えている問題点や、直近の改正の動きも含めて詳しく解説します。現在、成年後見制度を利用している方や、これから利用することを考えている方などは、ぜひご覧ください。
大改正予定の成年後見制度について今後の展望を解説!

2.本人の財産の利用用途が限定される

成年後見制度を利用すると、本人の財産は、原則本人のためになる(本人に直接的な利益がある)ことが明確な場合のみ、支出が認められます。

成年後見制度は、判断能力が低下した本人の生活を保護するための制度であるためです。

本人の財産の利用用途が限定される

たとえば以下のように、本人の財産を家族のために使いたいというケースもあるでしょう。

  • 「孫の入学祝いに10万円のプレゼントを購入したい」
  • 「子の相続税を節税するために、生前贈与で年間100万円ずつ渡しておきたい」

これらのケースは「本人に利益があるもの」ではないため、基本的には認められません。

よって、柔軟な相続税対策も難しくなってしまいます。

3.成年後見監督人が選任されたら、さらに報酬が発生する

成年後見制度では、成年後見人の後見事務を監視する「成年後見監督人」が選任される可能性があります。

成年後見監督人が選任されるかどうかは、事案に応じて家庭裁判所が判断します(選任される割合は、全体の約3.4%程度)。

参考: 成年後見関係事件の概況―令和6年1月~12月―|最高裁判所事務総局家庭局

成年後見監督人が選任された場合は、成年後見監督人に対しても報酬を支払う必要があります。

報酬の相場は、管理財産額が5,000万円以下の場合には月額1〜2万円程度、管理財産額が5,000万円を超える場合には月額2万5,000〜3万円程度とされています。

成年後見人への報酬の約1/2程度の額が必要だと考えておくと良いでしょう。

参考: 成年後見人等の報酬額のめやす|東京家庭裁判所

費用を抑えて柔軟な財産管理ができる「家族信託」の選択肢

「家族信託」を利用すると「成年後見制度」と比較して費用を抑えつつ、本人の財産管理も柔軟に行える可能性があります

家族信託とは、事前に家族へ財産(金銭や不動産など)の管理を託しておく制度です。

預金を引き出したり、不動産を売却したりなどの「財産を動かす行為」には原則判断能力が必要で、本人でしかおこなえません

そこで、判断能力がある元気なうちに家族へ財産管理を託しておくことで、本人が認知症になった場合でも、託された家族が柔軟に財産の管理・運用を行えます。

Q.家族信託は成年後見制度と具体的に何が違う?

A.主な違いとして以下が挙げられます。

  • 家族信託には家庭裁判所が関与せず、家族間で契約する
  • 管理を託す財産の種類や額、管理する方法を家族間で柔軟に定められる
  • (専門家の)成年後見人への報酬はかからない

家族信託では、資産の有効活用や相続対策などを受託者(財産管理を託された人)が代わりに行えるため、より本人や家族の希望を実現しやすい制度だといえます。

家族信託と成年後見制度の違いについては、以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

高齢者の財産を本人以外が管理するには、家族信託と成年後見制度があります。家族信託と成年後見制度は特徴が異なるため違いについてしっかり理解することが重要です。家族信託と成年後見制度の違いや、どちらを使うべきか?について解説します。
家族信託と成年後見の違いは?どちらを使うべき?

ただし、家族信託も、民法や信託法などに基づいた法的な制度のため、利用を検討される場合、まずは専門家の意見を聞くことがおすすめです。

以下の記事では、家族信託の全体像やメリット・デメリットがわかるようになっています。

家族信託を初めて聞いたという方、興味を持った方はぜひご覧ください。

家族信託は「認知症による資産凍結」を防ぐ仕組みです。本記事では家族信託の詳細や具体的なメリット・デメリット、発生する費用などについて詳しく解説します。将来認知症を発症しても、親子ともに安心できる未来を実現しましょう。
家族信託とは?仕組みやメリット・デメリットを専門家がわかりやすく解説

ご家族の財産管理についてお悩みの方へ

専門家のイメージ

高齢、または認知症の親御様がいらっしゃる場合は 「資産凍結」についての対策を検討しておくことがおすすめです。

その選択肢の一つが「家族信託」です。

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*2023年11月期調査(同年10月15日~11月11日実施)に続き3年連続
調査機関:日本マーケティングリサーチ機構

【成年後見制度と家族信託】初期費用と毎月の費用を比較

家族信託をおすすめする理由として、成年後見人への毎月の報酬がかからないことを挙げました。

具体的には、初期費用は家族信託の方が高いことが多く、ランニングコストは家族信託の方がかなり低いため、家族信託ではトータルの費用を抑えやすくなります

では、成年後見制度(法定後見)と家族信託でかかる費用は、初期費用も含めて全体的にどの程度違うのか解説していきます。

初期費用の違い

成年後見制度(法定後見)と家族信託の初期費用は、以下のようになっています。

家族信託と成年後見制度(法定後見)の初期費用

家族信託成年後見制度(法定後見)
・自分でやる場合:20万円程度
・専門家に依頼する場合:40〜60万円程度
※信託する財産の種類や額などによって変動します。
・実費:2万円
・専門家への相談・手続き代行費用:10〜30万円
・鑑定費用1〜10万円程度

このように、初期費用だけでみると家族信託の方が高くなりそうです。

では、毎月かかるランニングコストをみてみましょう。

毎月かかる費用(ランニングコスト)の違い

成年後見制度(法定後見)では月に2〜6万円(年間24〜72万円)、家族信託では月額費用は原則不要です。

しかし、中には、家族信託のサポートをしている専門家が、継続的なサポートのための費用として、月額や年額で費用を定めているケースもあります。

弊社が提供している家族信託の「おやとこ」では、月額費用として2,728円(税込)〜を設定しております。

弊社独自の家族信託専用アプリでの財産管理ができたり、アフターサポートが充実していたりするため、トータルでは成年後見制度と比較して大きくコストカットできるはずです。

家族信託の費用について詳しく知りたい方は、以下の記事をご確認ください。

家族信託の費用は信託内容によって異なりますが、一般的には30万円~60万円程度が相場です。本記事では家族信託の費用の内訳や具体的なシミュレーション、安く抑えるコツを詳しく解説します。
家族信託の費用はいくら?相場と内訳、安く抑える3つのコツを徹底解説!

成年後見制度(法定後見)を利用すべきケースとは?

家族信託では、トータルのコストが抑えられ、柔軟な財産管理が実現するというメリットがあることがわかりました。

ただし、そのようなメリットを考えても、成年後見制度(法定後見)を利用すべきケースがあります。

それは、本人が認知症などですでに判断能力をなくしているケースです。

成年後見制度(法定後見)を利用すべきケースとは?

参考:民法3条の2

なぜなら、家族信託は親子間での信託契約により効力が発生する法律行為であり、認知症で判断能力を失ってしまうと、有効な契約は結べないためです。

しかし、認知症になるとすぐに法律行為ができなくなるというわけではありません。

法律行為に必要な判断能力は、その行為ごとに個別具体的に判断されるためです。

ご本人の状態によっては、家族信託で対策ができる可能性もありますので、まずは早めに家族信託の専門家へ相談いただくことをおすすめします。

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成年後見人への費用まとめ

成年後見人に支払う毎月の費用をはじめ、申立てに必要な費用や、家族信託の費用との比較などを解説してきました。

成年後見人には、月額2〜6万円の報酬が発生し、成年後見制度が終わるまで、つまり原則本人が亡くなるまで支払い続ける必要があります。

すでに本人の判断能力が大きく低下していたり、預金口座が凍結されてしまったりした場合には、成年後見制度(法定後見)を利用しなければ財産を動かすことができません。

しかし、まだ本人の認知症が軽度な場合や、まだ元気に動ける状態の場合は、家族信託などの他の制度を活用し、より柔軟に本人や家族の希望を実現できるような対策を行えるかもしれません

本当に成年後見制度の利用が必要な状態なのか、判断能力の有無は経験豊富な専門家でなければジャッジが難しい部分でもあります。

家族関係や財産状況なども踏まえて、どのような制度の活用が最適なのか、早めの段階で専門家へ相談することをおすすめします。

弊社では、家族信託を含め、経験豊富な専門家がお客様の状況を丁寧にヒアリングし、各ご家庭に応じたサポートを提案させていただきます。

全国どこでも、電話やメールで無料の初回相談が可能です。まずはお気軽にお問い合わせください。

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よくある質問
成年後見制度の費用は誰が支払うのですか?

原則として、成年後見制度にかかる費用はご本人(被後見人)の財産から支払います。主に必要な費用は以下の通りです。

・家庭裁判所への申立てにかかる費用(収入印紙・郵便切手・登記手数料・必要に応じて鑑定費用など)

・後見人・後見監督人への報酬

ご本人の資力が乏しい場合には、親族が負担したり、市区町村の「成年後見制度利用支援事業」などの助成制度を利用できるケースもあります。

成年後見制度の費用はいつまで支払わなければならないのですか?

成年後見人への報酬は、成年後見人の役割が続く限り(多くの場合はご本人が亡くなるまで)支払いが続きます。

成年後見人の報酬は、後見開始時に固定されているわけではなく、通常は1年に1回程度、成年後見人が家庭裁判所に「報酬付与」の申立てを行い、その都度家庭裁判所が金額を決めます。

決定された額を、まとめてご本人の財産から支払うのが一般的です。

家族が成年後見人になる場合は、費用は発生しませんか?

家族が成年後見人になる場合、成年後見制度の申立て費用、後見事務における実費(交通費や備品の購入費など)は本人の財産から支出します。

一方で、成年後見人への「報酬」については、成年後見人が「報酬付与の申立て」をしない限りかかりません。

親族が後見人であっても、家庭裁判所に「報酬付与」の申立てをすれば、専門職と同様に報酬を受け取ることができます。

ただし実務上は、「家族なので報酬はいらない」として申立てをせず、無報酬としているケースも多いとされています。

認知症になっていたら成年後見制度一択ですか?

認知症の診断を受けた場合でも、成年後見制度(法定後見)しか選択肢がなくなるというわけではありません。

もし、家族信託や任意後見制度など、判断能力が必要な制度でも、その内容や趣旨を理解できる判断能力があれば、取り組める可能性があります。

ただし、判断能力が完全になくなると、成年後見制度(法定後見)一択になる可能性もあるため、高齢の親御様がいる場合は早めに専門家に相談しておくことがおすすめです。