家族信託は、親の財産を子が管理する方法として広く利用されている新しい制度です。
家族全員の合意の下で手続きを進めていくのが理想ですが、中には合意を取り付けることが難しいケースもあるでしょう。
この記事では、家族の話し合いができない場合に、どのような点に気をつければいいのか、対策法を含めて解説します。
【参考記事】
・家族信託とは?わかりやすくメリット・デメリットを説明します
・家族信託は危険?実際に起こったトラブルや回避方法
・家族信託に必要な費用を解説!費用を安く抑えるポイント
・家族信託で気をつけるべきデメリット・注意点10選
・認知症になると銀行口座が凍結される理由と口座凍結を防ぐ方法
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目次
家族信託は2者間で成立する
もし、高齢の親が認知症を発症したとしても、家族信託を利用していれば財産の管理は子どもが代わりに行えるため、ご家庭の財産管理のあらゆる問題を解決できます。
家族信託は、基本的には財産を預ける人「委託者」と、預かる人「受託者」の2者間の信託契約で成立します。
そのため、法律的には、利用にあたってそのほかの家族の同意は必要ありません。極端に言うと、仲が悪い家族には内緒で手続きを進めることも可能です。
それでも、一般的には家族の同意を取り付けながら家族信託の手続きを行うことが推奨されています。
これは、相続人の一部の人が親の財産を管理している場合に、将来その財産の管理方法について、兄弟間でトラブルになってしまうケースが少なくないからです。
家族の資産を扱うからこそ反感を買いやすい
例えば、親の資産を長男が預かり、2者の信託契約で管理している場合、仮に長男がしっかりとした管理をしていたとしても、他の兄弟にとっては内情まで分かりません。
また、家族信託制度のことを良く知らないために兄が大きな権限を持っていることに不満を持つ場合があります。
資産を管理する受託者は管理上の義務も負う立場なのですが、権限が集中するという性質上、他の家族からの反感を買ってしまいがちです。
また、認知症の高齢者の方には、被害妄想の症状が出るケースもあるため、自分の財産を盗られたという思い込みを言ってしまうケースもあるでしょう。
親族間トラブルに対処するには
このような場合は、預ける親と子、親族間の信頼関係が非常に重要です。また、家族信託の知識の共有がカギとなるでしょう。
親族間の不和を避けるには、家族信託についてなるべく家族全員の話し合いの上で進めることが推奨されます。
そのため、状況によっては家族信託の利用は控えた方がよいケースもあるのです。
また、家族信託の仕組みや契約内容の説明など、家族の話し合いに専門家が介入することで客観性を持たせることができ、契約が進む可能性もあります。
家族信託の取り扱いに慣れている専門家が入ることで、家族間の不信感の解消も期待できる可能性があるため、専門家へ相談をしてみてはいかがでしょうか。
親族の理解が得られない時の対策法
預ける人と預かる人の意思が合致していれば家族信託を利用することはできますが、他の家族からの同意を得ることが難しい場合、注意を要するポイントがあります。
家族信託に関わる疑いやトラブルを防ぐには、客観的な視点や専門知識が不可欠です。これらの対策法について考えてみましょう。
【1】信託契約書は公正証書で作成
公正証書とは、第三者である公証人が契約内容のチェックの上、当事者の本人確認を行い、本人が公証人の前で内容確認を行ったことを証明する証書です。
本人の意思能力についても確認の上、そして契約内容に合意していることを確認の上で契約書が作成されたことが証明されます。
家族信託の契約書は、公正証書を作成せずとも有効なのですが、契約の内容について後から異議が唱えられトラブルに発展するケースもあるため、公正証書での作成をお勧めします。
「親の判子を勝手に使って契約書を作ったのではないか。」
「認知症になった親をだまして、契約書にサインをさせたのではないか。」
このような疑いを避けることができます。
また、契約当初は元気だった親(委託者)も、認知症が進んでしまうと契約当初のことを忘れてしまう可能性がありますので、このような疑いを払しょくすることが非常に重要です。
公正証書であれば、後から異議を唱えられた際にも証明になりますし、契約内容を変更されたりする心配もありません。
【2】受託者の監督人を設定する
資産の管理をする受託者に反感が集まる可能性がある場合は、受託者の業務を監督する「信託監督人」を置く方法があります。
信託監督人は、本来受託者を監督する立場の「受益者」に困難な事情があるケースで設置される役目であるため、受託業務のチェック役として適任だといえるでしょう。
信託監督人は信託法により、受託者を監督するために必要な権限が認められています。
また、信託監督人は文字通りの監督目的だけでなく、受託事務のサポートも行うことができます。受託者の負担を減らす目的や支える立場としての設置もお勧めです。
【3】入出金の記録・報告書の作成
財産を管理している方が、ほかの兄弟に疑われないためにも、財産の用途については細かく記録を残すことをお勧めします。
【信託された金銭を使ったとき】
- 領収書を必ず保管する
- 支払先の記録が残るように銀行振込で支払う
- 通帳をこまめに記帳する
- 現金での支払先についても、請求書や領収書を保管する
このように普段から記録を残すようにしましょう。
また、信託法では「年に一回、財産を預かっている人が、預けている人(受益者)に対して報告書を作成して報告しなければいけない。」という規定があります(信託法37条)。
いずれにしても年に1回の報告書作成がありますので、日常的な記録が大切です。
家族信託専用アプリ「おやとこ」の利用
金銭の利用方法について記録を取り、年度末報告書をきちんと作成することは非常に重要ですが、手作業で行う負担や、提示を求められた際の対応などの負担もかかります。
資金管理に備える方法として「おやとこ」という専用アプリがありますので利用を検討してみてはいかがでしょうか。
おやとこは、信託したお⾦や資産をアプリで簡単に管理することができる国内初の家族信託用財産管理サービスで、データ連携による銀行口座等の情報の自動取得も可能です。
身内からの疑いやトラブルを避けるには、資産管理の透明性が解決策の一つになることがあります。いつでも資産管理の情報を提示できる状態を作ることでトラブル回避に役立つといえます。
【4】遺留分侵害額請求に備える
家族信託には、本人の生前の財産管理を行うだけでなく、遺言書としての機能を信託契約に盛り込むことができます。
財産を預けた人(親)が死亡した場合の信託財産の承継先を定めておくことができるのです。
そのような条項を備えた信託契約書は、実質的に遺言書と同様の機能を果たします。
ただし、相続人の一部の人が財産のほとんどを受け取るような内容にしてしまうと、他の相続人から、「遺留分(いりゅうぶん)」を請求される可能性があります。
これは遺言書で指定した場合と同様で、遺留分は各相続人が有する最低限相続する権利割合です。
兄弟姉妹のみが相続人になった場合には発生しませんが、それ以外の相続人がいるケースでは遺留分を無視することはできないのです。
配偶者4分の1、子(全員で)4分の1など、相続人の構成により割合が定められ、この遺留分相当額の金銭を支払うよう請求することを、「遺留分侵害額請求」といいます。
遺留分請求に対応する方法
遺留分を主張する権利は、遺言や信託契約をもってしても変更することができません。
信託契約書で財産の行き先を指定することはできますが、遺産のほとんどを希望により配分する場合は、他の家族からの遺留分請求に備えておきましょう。
方法としては、預貯金や生命保険などを活用して請求分を支払えるだけの資金を用意しておくことが対策となります。
家族信託は委託者と受託者の2者でも成り立つ便利な制度である一方、活用の際には他の親族との争いの種となりやすい面も含んでいます。
相続人をはじめ、契約当事者以外の権利を侵害しないよう、そして猜疑心などを抱かせないよう、家族の意見も尊重しながら対策を考えておきましょう。
【5】組成段階からトータルで専門家へ相談する
家族信託は柔軟に財産の管理承継が可能となりますが、家族という身近な存在が当事者となるからこそ、独特の問題が起きやすくなります。
そのようなトラブルについては家族信託の専門家によるサポートを受けることで解決しやすくなります。
専門家へ相談することで、信託の組成のサポートから、公正証書契約の手続き、遺留分の対策も行うことができます。
さらにアフターフォローにも対応している専門家であれば、信託開始後の相談にも対応してもらえるため大きな安心となるでしょう。
トラブルを防ぐ仕組み作りを
以上のように、家族全員の同意を得ずに家族信託を行う場合には、様々なトラブルを想定して対策を立てる必要があります。
家族信託は、家族全員の同意のもとで行うことが理想ですが、なかなかそうもいかないケースもあるでしょう。
状況により受託者監督人を設定したり、上記でご紹介した「おやとこ」などのツールの利用もお勧めです。
信託契約当初はなかなか理解が得られなかったとしても、透明性を維持しながら資金管理を継続することで得られる信頼もあると思います。
対策法や契約方法、資産管理については家族信託を熟知した専門家へぜひご相談ください。
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