家族信託とは 「認知症による資産凍結」を防ぐ法的制度 です。
「費用を安く抑えるために、家族信託を自分でやることはできるか?」というご質問をいただくことが多くあります。
この記事では、家族信託を自分でする際のメリット・デメリット、手続きの流れや費用、注意点等を解説します。
要約
- 家族信託を自分でやるメリットは、費用が安く抑えられる
- 家族信託を自分でやるデメリットは、高度な専門知識なしではトラブルを起こしかねない点
- 例えば、法律違反や相続税が余分にかかるような家族信託を組んでしまう人も
- 家族信託とは単なる契約書の作成行為だけではなく、家族の資産承継設計でもある
- 間違った家族信託をしないために、専門家への相談をオススメします
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目次
家族信託を自分でやるメリット・デメリット
家族信託を自分でやるメリット
自分で家族信託をやるメリットは、専門家への費用が安く抑えられることです。
専門家に依頼した場合は信託財産額の0.5〜1%の費用が発生しますが、自分でやる場合、この費用を抑えることができます。
家族信託を自分でやるデメリット
家族信託をご自身だけでやる場合、費用を抑えられる代わりに大きなリスクが発生します。
家族信託は複雑な契約行為であり、法務・税務等の分野における専門的な知識が必要です。
自分で家族信託を作成する場合には、専門家のアドバイスや専門的な知識がないと、有効な家族信託を作れない可能性すらあります。
たとえば、
- 本来支払う必要がない税金(贈与税など)が課税されてしまう
- 家族信託契約に基づき財産管理・処分などの行為を行おうとしたときに、家族信託契約書の不備を指摘され、無効と判断される
- 信託期間終了後の財産についての帰属先で親族で対立してしまう
など、家族信託の設計時における考慮漏れ等により、さまざまなリスクが生じてしまう可能性があります。
家族信託には専門知識が必要であることを念頭に置き、専門家のサポートも検討しながら具体的な手順・方法を理解していきましょう。
【関連記事】家族信託の仕組みについて:家族信託とは?メリット・デメリット・費用をわかりやすく解説
家族信託を自分でやる場合の手続き方法
専門家に頼らず家族信託を自分でやる場合、どのような手順で何から始めればよいのでしょうか。
まずは大まかな流れをご紹介します。
手順① 家族信託の内容について話し合う
まずは本人を含め、家族の中で家族信託の内容について理解し、どのように利用するのか話し合います。
家族信託には委託者・受託者・受益者という3者の役割があります。
- 「委託者」自分の財産の管理や処分を託す。
- 「受託者」委託者からの依頼で信託契約に沿って財産の管理等を行う。
- 「受益者」財産の管理・処分等によって発生する利益を受け取る。
信託契約上、3者をそれぞれ別の人物に設定することができますが、贈与税が発生しないように、ほとんどのケースで「委託者=受益者」としてスタートします。
家族信託について親族間で話し合う時は、この3者だけでなく、できる限り他の家族にも「家族信託をする理由」等について説明し、理解してもらうことが大切です。
それにより、後から財産に関するトラブルのような事態を防ぐことができます。
具体的に話し合うべきポイントは以下の通りです:
家族信託の目的
家族信託の目的について話し合いましょう。
「認知症に備えるため」「相続発生後の財産を誰が引き継ぐのかを決めるため」など、家族信託の目的も家族の事情により異なるでしょう。
将来のご家族の相続や財産管理における、ご家族全員の希望を考慮し、家族信託の目的を定める必要があります。
家族信託する財産
家族信託では、すべての財産を信託する必要はありません。
財産の中から信託するものを選んで指定できます。
預貯金、不動産、株式・有価証券といった財産の中からどの財産を信託して受託者に管理等を託したいのか、慎重に決めましょう。
受託者に依頼する権限
そして、受託者にどのような権限を与えるのかについても決める必要があります。
たとえば「不動産を信託する場合に、売却する権限まで与えるのか、賃貸したり管理する権限のみ与えるのか」など、依頼する内容は自由です。
家族の目的のため、どの程度の権限を与えるとよいのかについて、しっかりと検討しましょう。
家族信託の期間
次に、家族信託を設定する期間を決めましょう。
「受益者が死亡するまで」「信託開始から◯年」など、信託契約を終了させる事由を設定することができます。
家族信託終了時の財産の帰属先
家族信託が終了したときの信託財産、また信託財産以外の財産について誰に帰属するのか明確にします。
現時点で決まっていない場合、「相続人で協議する」としておくこともできます。
手順② 合意内容に基づいた家族信託契約書を作成する
話し合って決まった内容に基づいて、信託契約書を作成します。
信託契約書の作成には厳密なルールがあるわけではありませんが、できるかぎり具体的な内容にして、意味合いが違ったり、誤解が生じたり、揉める要素のない内容にすることが大切です。
信託財産の規模や種類によっては、司法書士などの専門家の助言を要するケースがあります。とくに不動産が含まれる場合には専門家へ相談の上で信託を設計することをおすすめします。
また、信託契約書は自分たちで作成したものに署名捺印するだけでも契約として有効ですが、公証役場で公正証書にしてもらうのが一般的です。
公正証書とは、法務大臣が任免した法律の専門家である公証人が作成する文書のことです。公正証書にすることで、公的証明力の高い契約書となり、トラブルを防ぐことにつながります。
家族信託契約書の具体的な作成方法については、次章で詳しく紹介します。
手順③ 受託者が財産を管理するための信託口口座を開設する
信託財産に現預金がある場合には、受託する人は個人の口座とは分けて受託者用の口座を作成します。これが信託専用の「信託口口座」です。
ただし、すべての金融機関が信託口口座を作ってくれるわけではありません。
また、信託口口座を開設する際に、金融機関で信託契約書の提示が必要となる場合があります。
金融機関によって口座開設に必要な資料や費用は異なるので、事前に確認しておくことをおすすめします。
手順④ 信託財産の名義を委託者から受託者へと移す
家族信託を始めるにあたり、現預金だけでなく、不動産などの財産においても、名義(所有者)の変更が必要になります。
◎信託財産が現預金の場合
受託者は、「自分の財産」と「信託された財産」を分けて管理しなければなりません(分別管理義務といいます)。
委託者の現預金は上記の信託口口座に移し、以後、信託財産の専用口座でお金を管理していきます。
なお預金口座そのものを信託することはできないので、信託口口座への送金が必要です。
◎信託財産が不動産の場合
信託財産が不動産の場合には、委託者から受託者へ、不動産の登記名義を変更する「所有権移転登記」と「信託の登記」をする必要があります。
これにより、当該不動産が信託財産であることが公になることになります。
不動産の名義変更手続き(登記申請)は不動産の所在地を管轄する法務局で行う必要があるため、注意してください。
◎金融商品を信託する場合
有価証券や金融商品を信託する場合には、委託者がその商品を保有している証券会社にて信託口口座を開設します。
ただし信託口口座を開設できる証券会社は一部に限られているため、有価証券などの信託をしたい場合には、信託契約を締結する前に、証券会社に信託口口座の開設が可能か確認しておきましょう。
※家族信託に必要な書類や費用等について、こちらの記事でも詳しく解説しています。
→【家族信託の手続き方法まとめ】手続きの流れ・やり方を解説
家族信託を自分でやる前に検討すべきこと
遺言書を作成するかどうか
まずは家族信託・遺言それぞれの特徴を把握しておくことをおすすめいたします。
例えば以下のような要望がある場合、遺言書の作成をしておくと良いでしょう。
- 信託することのできない財産(年金など)があり、その財産の承継先を決めておきたい
- 信託したい財産と、信託したくない財産がある
- 家族信託締結後に発生する財産がある
- 身分行為に関して定めたいことがある
家族信託と遺言はどちらが優先されるのか
原則、家族信託が優先されます。
◎家族信託を先に締結した場合
父Aが「すべての財産を子Cに相続させる」という内容の遺言を作成。
その後、父Aが子Bとの間で信託契約を締結し「父Aが死亡して信託が終了した後、財産は子Bに承継させる」と定めた。
⇒この場合、家族信託が優先されます。
遺言は信託契約の作成後も、撤回・書き換えが可能だという特徴があるからです。
遺言作成後に家族信託が契約された場合は、財産の信託化により管理が受託者へ移るため、信託の契約により自動的に遺言が撤回されたものとして扱われます。
◎遺言書を先に作成した場合
父Aと子Bが、父Aが死亡して信託が終了した際には、子Bが信託財産をすべて承継するという内容の信託契約を締結。
その後、父Aは「すべての財産を子Dに相続させる」という内容の遺言を作成したと仮定。
⇒この場合も、家族信託が優先されます。
父Aが子Bに対して信託をすると、財産は子Bに譲渡されたことになり、父の固有財産ではなくなるからです。
税法上、受益権はみなし相続財産として相続税の課税対象ですが、受益権は相続法上の相続財産には該当しません。
父Aが信託された財産について遺言を作成しても、その財産はすでに信託財産であるため信託契約が優先されるということになります。
【関連記事】家族信託と遺言、どちらの法的効力が強い?司法書士が解説します
任意後見制度を使うかどうか
認知症などにより正常な判断能力を失ってしまった方の代わりに、家庭裁判所を通して後見人が選任され、本人の財産を管理する「成年後見制度」。
その中に「 法定後見制度 」と「 任意後見制度 」の2つの制度があります。
任意後見制度は本人が健常なうちに契約する制度で、将来、後見人を依頼したい人との間で任意後見契約を締結しておくものです。
実際に本人の判断能力が低下して、本人や親族が家庭裁判所に申し立てることで後見監督人が選任され、任意後見契約の効力が生じます。
一方で、家族信託は信頼できる家族や親族との間で「信託契約」を締結し財産管理を任せるものです。
こちらは任意後見制度と違い、判断能力の状況や家庭裁判所への申し立ても不要で、契約を締結した時からすぐに効力が生じるものです。
家族信託と任意後見制度の違いを理解し、どちらを使うべきか判断しましょう。
家族信託を自分でやる場合の注意点やリスク
家族信託を自分で行うことは不可能ではありません。
しかし専門的な知識が必要で、かつその難易度が高いこともあり、法的正しさや税務において問題がないかしっかり確認する必要があります。
家族信託を自分でやる際の注意点について、詳しく解説します。
契約書など書類に不備がある可能性
家族信託を組成するためには、信託契約書を作成する必要があります。
家族信託について書かれている書籍やインターネット記事では、家族信託契約書の見本や雛形が多数掲載されています。
これらを少し加工すれば家族信託契約書を作成できそうですが、実際に使用する家族信託契約書では、家族内の目的や要望を反映させた内容で作成しなければ意味を為しません。
そのため、見本やサンプルはそのまま転用しないよう注意しましょう。サンプルを見ながら作成していると、記載間違いを誘発する可能性もあります。
万が一契約書に不備や無理があると、家族信託契約自体を無効とみなされ、取り返しのつかない事態に陥る可能性もあります。
無料公開されているようなひな形をそのまま用いることは絶対に避けましょう。
家族信託は危険?実際に起こったトラブルや回避方法を徹底解説
優れた機能を持つ家族信託ですが、ノウハウ不足から危険な設計がされたり、トラブルに陥るケースがあり危険性があります。本記事では、家族信託に潜む危険性、リスク、トラブル事例やその回避方法をご紹介します。
不動産登記の難易度が高い
家族信託をした不動産については、その管理・処分権や売却等をする権利は受託者にありますので、これを公示するために登記情報についても名義を受託者に変更する必要があります。
ただし、受託者というのは所有者とは異なる概念となり、 登記情報上も 「受託者 〇〇」 という形で名義が登記され、その不動産が信託財産であることが分かるような表示になっています。
登記を自分で行うことは一般には難しく、司法書士など有資格者であるなど特別な状況にない限りはオススメしません。
家族内で揉める可能性がある
家族信託の受託者は、財産を適切に管理・処分し信頼できる親族が選ばれます。
受託者に誰が選ばれたかによって、親族間での仲が悪くなってしまう可能性もあります。
受託者に選ばれなかった人は信頼されていないと感じ、不満を持つきっかけになるかもしれません。
家族の1人が他の家族の合意なく受託者となることを委託者と合意して進めることには危険性があります。
しっかりと第三者が仲裁に入った上で、家族全員が納得できる形で進めなければ、後々に争相続へと発展する可能性があります。
内容の不備に注意
自分で契約書の作成や手続きを行った場合、思い違いや不備が生じる可能性もあります。
大きな誤りがある場合には、公証役場や法務局で指摘を受けることができたり、修正して作り直すこともできますが、信託契約の詳細の不備や不明確な表現、将来的なリスクについては自分たちで気づくほかありません。
後から不備が分かり、その時点で修正できると良いのですが、もし委託者が認知症などを発症した段階であれば、契約の修正ができなくなります。
取り返しのつかない事態になるリスクもあるので契約書の作成や手続きには充分な注意が必要となります。
細かい箇所まで完備できるかどうか、専門家のチェックを要する可能性もある点に注意しましょう。
相続発生を含めた知識や計画が必要
家族信託を利用する場合、委託者が健康なときだけではなく、認知症発症後や相続発生後も含めて委託者の財産にかかわっていきます。
家族信託のおかげで相続まで含めた対策を講じることができ、それがメリットですが、相続税や贈与税の対策・相続発生後の財産争いを防ぐための対策についても総合的に考える必要があります。
個人で全体的な計画をして万全な対策を打ち出すには限界があり、思い違いや書類のミス、契約内容の誤りにより、想定外のことが起きて対処できなくなる可能性も否定できません。
契約の設計や見通しについては、充分な注意が必要なのです。
家族信託がスタートした後、受託者にとって負担になる義務作業もある
家族信託が開始すると、受託者は財産の管理、運用などの義務作業を自らの判断で行うこととなります。
また、付帯する作業として帳簿付けや財産目録の作成、税務署への申告などといった作業も発生します。
これらは受託者として義務付けられている作業であり、手続き漏れやミスのないよう注意が必要です。
家族信託がスタートした当初はできていた作業でも、不測の事態により個人で判断するのが難しいケースが発生することもあります。
家族の協力により、また、専門家のアドバイスを仰ぐなどして、適正な事務処理を進めていきましょう。
家族信託契約書の作成方法
家族信託契約書はどのような内容にすればよいのでしょうか。
家族信託契約書に記載する内容には決まりがあるわけではありませんが、主に以下のような内容を記載するとよいでしょう。
家族信託契約の趣旨
信託契約がどのような趣旨で契約されるのかを記載します。
記載例
委託者甲は、受託者乙に対し、第〇条記載の信託の目的を達成するため、第〇条記載の財産を信託財産として管理、運用、処分およびその他当該目的達成のために必要な行為をすることを信託し、受託者乙はこれを引き受けた。
家族信託の目的
何のために家族信託を行うのか、家族信託の目的を記載します。
記載例
本信託は、受託者による資産の適正な管理、保全、運用、処分を通じて、委託者の判断能力が低下した場合にも、信託された財産を守り、併せて受益者及びその家族に必要な資金を確保及び給付するなどして生活の安定に寄与することを目的とする。
当事者(委託者・受託者・受益者)
信託の当事者となる「委託者」「受託者」「受益者」を明記します。
この際に、契約時点での受託者が死亡した場合に備えて、第2受託者についても記載が可能です。指定しておくと、もしもの際にも安心だといえるでしょう。
家族信託する財産
受託者が管理等を引き受ける信託財産を明記します。財産が特定できるように具体的に記載する必要があります。
不動産の場合には、登記事項証明書に記載されている通りに記載しましょう。
家族信託の内容
信託財産をどのように管理、運用するかなど、信託の内容について記載します。
記載例
1 受託者は、本件信託財産の管理、運用を行い、信託不動産については、受託者が相当と認めるときは、これを第三者に賃貸し、あるいは売却等の換価処分するものとする。そして、受託者は、本件信託不動産から生ずる賃料その他の収益、換価代金並びに信託財産に属する金融資産をもって、信託不動産等にかかる公租公課、保険料、管理費及び修繕費、敷金保証金等の預り金の返還金、管理委託手数料、登記費用、その他の本件信託に関して生ずる一切の必要経費等を支払う。
2 受託者は、受益者の要望に応じ、受託者が相当と認める受益者の生活・看護・療養・納税等に必要な費用を、前記信託不動産の賃料等収益、換価代金並びに信託財産に属する金融資産の中から受益者に随時給付し、また受益者の医療費、施設利用費等を支払う。
受託者の権限及び義務
受託者にどのような権限を与えるのか、義務を負わせるのかについて記載します。
記載例
1 受託者は、本件信託不動産の保存及び管理運用に必要な処置、特に当該不動産の維持・保全・修繕等について、受託者が適当と認める方法、時期及び範囲において行うものとする。
2 受託者は、本件信託不動産に付する損害保険については、速やかに受託者を契約者とする手続き又はそれに準じた手続きをするものとする。
3 本件信託不動産については、それを第三者に賃貸することが相当であると認められる 場合には、その時の賃料相場を勘案した適正な賃料にて第三者に賃貸することができる。
4 受託者は、信託の目的に照らして相当と認めるときは、本件信託不動産を売却することができる。
信託の終了事由や信託の期間
どのような場合に信託が終了するのか、信託の期間をいつまでにするのか、期間・期限について記載します。
記載例
本件信託は、次のいずれかの事由が生じたときに終了する。
(1)委託者兼受益者が死亡したとき
(2)受益者及び受託者が合意したとき
(3)信託財産が消滅したとき
(4)信託法で定める終了事由に該当したとき
家族信託にかかる費用
家族信託にはどれくらいの費用がかかるのでしょうか。費用の目安について紹介します。
自分で家族信託をやる場合
家族信託を自分でやる場合、高額な費用がかからないことが特徴です。
自分で家族信託をやる場合の費用としては、印鑑証明書等の手数料や信託契約書の印紙税のほかに以下のようなものがあります。
信託契約書を公正証書で作成する際の費用
信託契約書を公正証書で作成する場合、公正証書作成の手数料として公証人へ支払う費用が発生します。
手数料の金額は契約の内容や信託財産の金額などにより費用が異なり、相場はおおよそ3~10万円です。
信託財産の額に応じて高くなるため、信託財産が5000万円程度の場合は約5万円、信託財産が1億円程度の場合は約7万円の手数料などとなります。
不動産がある場合の登記申請手続き費用
信託財産に不動産がある場合、法務局で信託した旨の登記「所有権移転及び信託」の申請をします。
- 不動産の名義を委託者から受託者に変更「所有権移転」
- その不動産が信託財産であることを登録「信託の登記」
「所有権移転」については信託の場合、課税されることはありません。
ただし「信託の登記」については登録免許税が発生し、不動産の固定資産税評価額に税率0.4%をかけて計算します。
たとえば、固定資産税評価額が3000万円の場合は12万円の登録免許税がかかります。(土地の税率については令和5年3月末まで租税特別措置法により軽減税率0.3%)
固定資産税評価額は、固定資産税の納付書と同封されている課税明細書に記載されているので確認してみてください。
専門家に依頼する場合
家族信託を自分でやるのではなく、司法書士などの専門家に家族信託を依頼する場合は、以下のような費用が発生します。
公正証書作成費用
公正証書作成を専門家に依頼する場合には、別途専門家への報酬が発生し、費用相場は10~15万円です。
これは信託契約書の作成のみを依頼した場合の金額になり、契約内容などの相談は含みません。
つまり、公正証書を作成する時の費用としては、信託財産5000万円で専門家に手続きを依頼したと仮定すると、公証役場の手数料+専門家報酬で15~20万円程度が目安となります。
不動産登記費用
登記の手続きを司法書士に依頼する場合、別途司法書士への報酬が発生します。
登記の手続きのみを依頼する場合、10〜15万円程度が報酬の目安です。
つまり、信託する不動産の固定資産税評価額が3000万円のケースで司法書士に手続きを依頼した場合は、登録免許税+報酬で22〜27万円程度が費用の目安となります。
家族信託を専門家に全て依頼する場合
家族信託のコンサルティング、信託の仕組みの作成から契約書作成・登記などの手続きをトータルで専門家に依頼する場合、どのくらいの費用がかかるでしょうか。
これは、依頼する専門家・事案の複雑さ・財産の種類や金額などによって異なりますが、信託財産に対して1%などと定めているケースが多く見られます。
(ただし、最低金額として30万円程度はかかるという料金設定になっている場合が多いようです)
たとえば信託財産が預貯金5000万円で不動産評価額5000万円という合計1億円の信託については、報酬が1%のケースで100万円ということになります。
家族信託は複雑で、かつしなければならない手続きも多いため、家族信託の組成時には専門家に全て依頼することが一般的です。
専門家に相談のみをする場合
最初から全部を依頼するとは決めておらず、まずは専門家に相談だけしてみたいというケースもあるでしょう。
この場合、相談を1時間程度から依頼することができます。
費用の目安は1時間あたり5000円から1万円程度で、とりあえず個人で手続きできそうかどうか、問題点はあるかどうか、税務上はどうか、などの概要について相談をすることもできます。
電話などで無料相談を受けつけている会社もあります。まずは無料相談で初期的な相談をしてみるのも良いでしょう。
【家族信託の費用・相場】安く抑えるためのポイントとは?司法書士が解説
家族信託の費用は信託する財産の額によって異なります。専門家に依頼すると実費に加えてコンサルティング費用かかりますが、費用削減だけを考えて自分でやるとトラブルが発生する可能性も高まります。家族信託の費用や自分でやる際の注意点をみていきましょう。
専門家に依頼する場合のポイント
家族信託を自分でやることは不可能ではないものの、一般的には専門家でない方が自分で家族信託をやることは相当難しいと言えるでしょう。
そのため、専門家にトータルで依頼することで安心して家族信託を設計することができます。
ここでは、専門家に依頼する場合のポイントについて紹介します。
家族信託についての実績や熟練度
家族信託は2007年(平成19年)にスタートした比較的新しい制度であり、弁護士や司法書士・税理士などの専門家であっても、家族信託の知識や実績について差がある可能性があります。
自分たちの希望に沿った内容の家族信託の実現のため、家族信託に力を入れている専門家を選んで依頼しましょう。
将来を見据えた万全な対策を考えてくれるか
家族信託は、長期的な視点に立ち起こりうる様々なケースを想定し、対応できるように万全な対策を立てていくことが大切です。
ケースによっては、家族信託に加えて遺言書作成など他の手続きも併せて行うことが効果的な場合もあります。
専門家に相談する場合は、相続発生後の対策も含めてトータルな提案を行ってくれるかどうかも大切なポイントとなるでしょう。
家族信託がスタートした後も相談に乗ってくれるか
家族信託は、スタートした後にも財産の管理・運用などに伴い様々な手続きが必要となるため、継続的に相談に乗ってくれる専門家だと安心です。
疑問点や困ったことがあったとき、その都度しっかりと相談に乗ってくれる専門家であるかどうか、まずは契約前の相談に行って話を聞いたうえで見極めるとよいでしょう。
料金についての説明をしっかりしてくれるか
専門家に家族信託を依頼する場合、通常は数十万円以上の費用がかかります。
料金について、どのような計算方法でどれくらいの費用がかかるのか、事前に説明してくれる専門家がやはり安心だといえるでしょう。
参考記事:家族信託は司法書士・行政書士・弁護士のうち誰に頼むべきか?
失敗のない家族信託を設計するために
家族信託を自分でやることは不可能ではないものの、一般的には難易度が高く、専門家へトータルで依頼したほうが安心して利用できるというメリットがあります。
まずは専門家に相談にし、
- 意向をしっかりとくみ取った提案をしてくれるかどうか
- 家族信託についての知識や経験が豊富であるかどうか
- 長期的なアドバイスやサポートをしてくれるかどうか
などについて確認してみてはいかがでしょうか。
家族信託をご検討中の方へ

家族信託の「おやとこ」では、認知症による資産凍結問題に悩むお客様に、司法書士などの専門家がご家族に寄り添い、真心を込めて丁寧にご対応します。
全国から年間数千件のご相談に対応し、サービス満足度も96%を超えるなど、どなたにもきっとご満足いただけるご提案ができると考えております。
- 家族信託を自分ですることはできる?
-
可能ですが、非常に危険です。
家族信託は非常に難しい手続きで、信託内容や信託財産の設定を間違えてしまうと、法的に認められない信託になり、家族信託の目的を達成できなくなる可能性もあります。
詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
▶家族信託を自分でやる?必要な手続き・やり方・注意点を解説
- 家族信託は誰に相談すべき?
-
家族信託に特化した、司法書士などの専門家がおすすめです。
家族信託は最近注目を集め始めた難しい制度のため、司法書士であれば誰でも良いわけではありません。
年間数千件程度の家族信託の相談を受けている、家族信託のアフターフォローが充実しているなどの会社を選び、まずは無料相談を活用することをおすすめします。
詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
▶家族信託はどこに頼むべき?相談先を決めるポイントを解説