任意後見制度は、本人の判断能力低下に備え、本人の支援をする任意後見人を事前に決めておく制度です。
任意後見人は、本人との間で任意後見契約を締結し、契約で定めた本人の財産管理や身上監護を行うことで、本人の財産や生活を守ります。
「任意後見人ができることを具体的に知りたい」
「任意後見人と成年後見人の違いを知りたい」
という疑問を持たれる方も多いでしょう。
本記事では、任意後見制度の概要や、任意後見人の役割、成年後見人との違いなどを、わかりやすく解説していきます。
要約
- 任意後見制度は、本人の判断能力低下に備え、本人の支援をする任意後見人を事前に決めておく制度
- 任意後見人は、任意後見制度において本人の財産管理や身上監護を行う役割
- 任意後見人ができることは、任意後見契約で定めた一部の財産管理と身上監護
- 任意後見人は、任意後見監督人や家庭裁判所の監督のもと後見事務を行う
- 判断能力が低下すると任意後見契約の締結ができないため、法定後見制度の利用が必要となる
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目次
任意後見制度とは
任意後見制度とは、本人の判断能力が低下した時に備えて、財産管理や生活の支援をおこなう「任意後見人 」を「任意後見契約 」であらかじめ指定しておく制度です。
認知症や病気によって、本人の判断能力が低下したときに、任意後見契約の効力が発生し、任意後見人による支援が始まります。
任意後見制度は、認知症のリスクがある高齢者の財産や生活を守るために利用されることが一般的です。
任意後見制度の利用者は2023年で2,773人程度と、多いとはいえませんが、支援を必要とする人の尊厳ある生活を継続させるために、政府も制度の利用を促進する取り組みを行っています。
よって、今後は利用者数が増加することも予測されるでしょう。
参考: 成年後見制度の現状|厚生労働省
任意後見人とは
任意後見人とは、任意後見制度において、本人の財産管理や生活を守り支援する人です。
本人の判断能力が低下し、制度の効力が発生するまでは「任意後見受任者」と呼びます。
では、任意後見人が行う「本人の支援」とは具体的にどのような行為をいうのでしょうか。
また、任意後見人には誰でもなれるのでしょうか。
では、任意後見人について、
- できること
- 仕事内容
- なれる人
- 事務を開始する時期
を詳しく解説していきます。
任意後見人ができること
任意後見人ができることは、任意後見契約の代理権目録に記載された、一部の「財産管理」と「身上監護」 です。
つまり「任意後見人ができること」は、任意後見契約であらかじめ決めておいたことです。
また、任意後見契約は本人と任意後見人(受任者)同士の契約ですので、当事者間である程度自由に決められます。
財産管理とは、金銭、預金、不動産などの管理行為をいい、身上監護とは住環境の整備、介護、医療に必要な契約行為や手続きをいいます。
具体的には、以下の通りです。
任意後見人ができること
財産管理
- 預金口座の管理、金融機関窓口での手続き
- 定期的な費用、公租公課、保険料、ローンの支払い
- 生活に必要な物品の購入、支払い、取引
- 不動産の管理・売却
- 収益不動産の管理、賃貸借契約の締結・変更・解除
- 有価証券の管理
身上監護
- 介護契約や福祉サービスの契約、支払い
- 医療の契約、医療費・入院費の支払い
ただしここで理解しておきたいのが、任意後見制度は「本人を守り、支援するための制度」 だということです。
よって、任意後見人に認められるのは、あくまでも本人のためになる行為のみとなります。
生前贈与として子や孫へお金を振り込んだり、孫の入学祝いとして預金を引き出したりという行為はできません。
任意後見人になれる人
任意後見人には、家族・親族・第三者など、原則誰でもなることができます。
特別な資格も不要です。
ただし、以下の欠格事由に当てはまる場合は、任意後見人になることができません。
任意後見人の欠格事由
- 未成年者
- 家庭裁判所で法定代理人、保佐人、補助人を解任された者
- 破産者
- 被後見人に対して訴訟をした者、その配偶者、その直系血族
- 行方の知れない者
参考:民法847条、任意後見契約に関する法律8条
任意後見人の仕事内容
任意後見人の仕事内容は主に「本人の財産管理・身上監護 」と「任意後見監督人への報告 」です。
上述の通り、任意後見人が行う財産管理や身上監護の範囲や内容については、任意後見契約書の代理権目録に記載し、定めておきます。
また、任意後見人は、家庭裁判所が選任した任意後見監督人の監督を受けるため、報告書類の作成や提出も仕事内容に含まれます。
任意後見人が行う報告業務には、主に以下の2つがあります。
任意後見人が行う報告業務
- 初回報告(任意後見人への就任後、速やかに行う)
- 定期報告(年に1度、決められた時期に行う)
報告業務では、以下のような書類を任意後見監督人へ提出します。
任意後見監督人への提出書類
- 任意後見事務報告書
- 財産目録
- 収支予定表
- 本人の預金通帳のコピー
- 有価証券取引残高報告書のコピー(有価証券を保有している場合)
- その他所定の書類
参考: 任意後見人のしおり|千葉家庭裁判所(p5,6,15,16)
各書類の書式や記載方法の詳細は、管轄の家庭裁判所の規定および任意後見監督人の指示に従います。
任意後見人の事務を始める時期
任意後見人が後見事務を始める時期は、本人の判断能力が低下し、家庭裁判所により「任意後見監督人」が選任されたとき です(任意後見契約に関する法律2条の1)。
本人の判断能力が低下して支援が必要な状態になると、本人・配偶者・四親等内の親族・任意後見受任者のいずれかが「任意後見監督人選任の申立て」を行い、申立て内容に従って家庭裁判所が任意後見監督人を選任します。
任意後見人および任意後見監督人は、家庭裁判所から審判の通知書を受け取り、任意後見受任者は正式に任意後見人として後見事務を始めます。
任意後見監督人とは
任意後見監督人とは、本人(被後見人)の財産や生活が適切に守られるように、任意後見人の業務を監督し、家庭裁判所へ報告する役割 です。
任意後見制度では、任意後見監督人が必ず選任されます。
任意後見監督人の仕事
任意後見監督人の仕事は、主に以下の4つです。
任意後見監督人の仕事
- 任意後見人の事務を監督すること
- 任意後見人の事務に関し、家庭裁判所に定期的に報告をすること
- 急迫の事情がある場合に、任意後見人の代理権の範囲内において、必要な処分をすること
- 任意後見人又はその代表する者と本人との利益が相反する行為について本人を代表すること
参考:任意後見契約に関する法律7条
任意後見監督人は、家庭裁判所へ後見事務や財産状況について報告するために、任意後見人へ報告や書類の提出を求めます。
任意後見監督人がその役割を果たすことで、本人の生活や財産が確実に守られ、任意後見人による職権濫用の防止にもつながるということです。
任意後見監督人になれる人
任意後見監督人になれるのは、本人とも任意後見人とも関係がない第三者 で、近い親族や利害関係者は除外されます。
これは、本人の財産や生活を確実に守り、利益相反行為などによるトラブルを防ぐためです。
任意後見監督人には、主に弁護士、司法書士、社会福祉士、税理士などの専門職、法律や福祉に関わる法人などが選任されます。
以下の欠格事由に該当する者は、任意後見監督人にはなれません。
任意後見監督人の欠格事由
- 任意後見受任者(任意後見人)
- 任意後見人の配偶者、直系血族および兄弟姉妹
- 未成年者
- 家庭裁判所で法定代理人、保佐人、補助人を解任された者
- 破産者
- 被後見人に対して訴訟をした者、その配偶者、その直系血族
- 行方の知れない者
参考:任意後見契約に関する法律5条、民法847条、任意後見契約に関する法律7条
任意後見制度が必要なケースとは?
任意後見制度の必要性が高い主なケースは、以下の通りです。
任意後見制度の必要性が高いケース
- 判断能力の低下による資産凍結を回避したい
- 判断能力低下後も安心安全に生活できるよう対策したい
- 後見人に特定の人を指定したい
- 高齢で身寄りがなく将来が不安である
それぞれ詳しく解説していきます。
判断能力の低下による資産凍結を回避したい
本人の判断能力低下による資産凍結を回避したい場合は、任意後見制度の利用がおすすめです。
なぜなら、任意後見制度では、本人の判断能力が低下し、財産管理や法律行為ができなくなったとしても、任意後見人が代理人として財産を動かせるためです。
例えば、任意後見人は、本人の代わりに預金の引き出し、不動産の管理や売却、諸費用の支払いなどを行えます。
上述の通り、任意後見人に認められる権限は、あくまで任意後見契約に定める範囲内であり、リスクを伴う積極的な運用などはできません。
とはいえ、資産凍結を回避して、家庭裁判所の監督のもと財産が守られる点は、本人や家族の大きな安心にもつながるでしょう。
判断能力低下後も安心安全に生活できるよう対策したい
本人の判断能力が低下しても、お金・生活・医療・介護など、さまざまな面で安心安全に生活できるように対策したい場合は、任意後見制度を利用すると良いでしょう。
その主な理由は、以下の通りです。
- 任意後見人が財産管理や法律行為を代理するため、特殊詐欺や不当な契約による被害を防げる
- 任意後見人が介護施設の入居契約や入院手続きなどを代理し、介護や医療を適切に受けられる
任意後見制度では、任意後見監督人および家庭裁判所の監督があるため、本人は法的にしっかりと守られます。
また、監督により、任意後見人による代理権の濫用なども防げるため、本人や親族の精神的な安心も得られるでしょう。
後見人に特定の人を指定したい
後見人に特定の人を指定したい場合は、任意後見制度の利用が必要です。
なぜなら、将来の後見人を指定できる制度は任意後見制度のみであるためです。
成年後見制度には、任意後見制度の他に法定後見制度があります。
両者の違いは後段で詳しく解説しますが、法定後見制度では、後見人の候補を挙げることはできるものの、確実な指定はできず、最終的には家庭裁判所の判断で後見人が選任されます。
よって、後見人を配偶者、子、兄弟など特定の人物にお願いしたい場合は、任意後見制度の利用が必須です。
ただし、すでに本人の判断能力がない場合は、法定後見制度一択となってしまいますので、早めに対策することをおすすめします。
高齢で身寄りがなく将来が不安である
高齢で身寄りがないもしくは近くに頼れる親族がおらず、将来の生活や財産の管理などに不安を抱えられている場合も、任意後見制度が活用できます。
任意後見制度では、信頼する弁護士や司法書士などを任意後見人に指定することもできるためです。
例えば、長年お世話になっている弁護士や、信頼のおける友人に紹介してもらった司法書士などに依頼するという手段があります。
近くに頼れる人がいない場合は、早めに相談してみましょう。
弊社でも、任意後見制度の利用や、将来の財産管理や相続などに関する相談をお受けしています。
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より柔軟な財産管理・相続対策なら「家族信託」
任意後見制度と併せて検討していただきたい制度が、「家族信託 」です。
なぜなら家族信託では、資産凍結対策に加え、より柔軟な財産管理を実現できるためです。
家族信託では、委託者から受託者へ財産を託し、受託者が財産管理を担当することで、委託者が認知症になっても財産を動かすことができます。
また、家族信託では、法定後見制度や任意後見制度とは異なり、家庭裁判所の監督は受けません。
ただし、家族信託は財産管理に特化した制度なので、身上監護について定めたい場合は、任意後見制度の併用を検討すると良いでしょう。
身上監護については家族が代わりに手続きできるため、一般的には大きな問題になることはあまりありませんが、家族が海外や遠方に居住しているケースもあり、状況によっては身上監護について対策が必要なケースもあります。
任意後見制度の手続きの流れ
任意後見制度を利用する際の手続きを4つのステップで解説します。
任意後見制度の手続きの流れ
- 委任者と受任者間で任意後見契約を締結する
- 家庭裁判所へ申立てを行う
- 任意後見人が選任される
- 任意後見人による後見が開始する
順番にみていきましょう。
ステップ1. 任意後見契約を公正証書で締結する
委任者(本人)と任意後見受任者(将来の任意後見人)の間で任意後見契約を締結します。
任意後見契約は、公正証書で締結する(任意後見契約に関する法律3条)ため、公証役場で本人確認や意思確認、契約内容の確認などの手続きを踏む必要があります。
具体的な流れは、以下の通りです。
任意後見契約書の作成・締結手順
- 任意後見受任者を決める
- 契約内容(代理権の範囲、証書等の保管方法、任意後見人への報酬設定など)を決める
- 任意後見契約書案を作成する
- 公証役場に連絡し、公証人と打ち合わせを行う
- あらかじめ予約した日時に委任者(本人)と受任者で出向き、公正証書で契約を締結する
作成した公正証書は、将来本人の判断能力が低下したときに備えて、大切に保管しておきます。
ステップ2. 家庭裁判所へ申立てを行う
本人の判断能力が低下して支援が必要な状態になったら、まず家庭裁判所へ「任意後見監督人選任の申立て」を行います。
申立てを行えるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、任意後見人受任者です(任意後見契約に関する法律4条1項)。
また、本人以外が申立てを行う場合は、本人の同意が必要となります(任意後見契約に関する法律4条3項)。
任意後見人選任の申立てでは、必要書類と費用を管轄の家庭裁判所へ提出します。
基本的な必要書類と費用は以下の通りです。
任意後見監督人選任の申立ての必要書類
- 申立て書類
(任意後見監督人選任申立書、申立事情説明書、親族関係図、本人の財産目録及びその資料、相続財産目録及びその資料、本人の収支予定表及びその資料、任意後見受任者事情説明書) - 診断書、診断書附票、本人情報シート
- 本人の戸籍抄本
- 本人の住民票又は戸籍の附票
- 任意後見受任者の住民票又は戸籍の附票
- 登記事項証明書(任意後見)、本人が成年後見人等の登記がされていないことの証明書
- 任意後見契約公正証書のコピー
申立てにかかる費用
- 申立て手数料(収入印紙):800円
- 登記手数料(収入印紙):1,400円
- 郵便切手:3,270円
※申立て後、鑑定が必要となった場合は、別途鑑定費用(10〜20万円程度)がかかります。
書式や必要な費用などは、管轄の家庭裁判所によって異なる場合がありますので、詳しくはそれぞれのホームページや電話などで確認しましょう。
ステップ3. 任意後見監督人が選任される
申立て内容をもとに、審理(本人や親族への調査・意向照会、必要な場合は鑑定など)が行われ、家庭裁判所が任意後見監督人を選任します。
任意後見監督人を選任した旨の審判書が郵送され、任意後見契約の効力が発生します。
ステップ4. 任意後見人による後見事務が開始する
任意後見契約の効力発生により、任意後見人による後見事務が開始します。
はじめに、本人の財産状況や収支の予定を報告する書類を作成し、任意後見監督人へ提出しなければなりません(初回報告)。
また、本人の預貯金管理に関する代理権を持つ場合は、本人が取引する金融機関全てに届け出書を提出する必要があります。
通帳の名義やキャッシュカードの取り扱いなどの対応は、金融機関によって異なるため、個別に確認しましょう。
任意後見人と成年後見人の違い
任意後見人の他に「成年後見人」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
成年後見人とは、本人の判断能力が低下した後で利用する「法定後見制度」において、本人を支援する人のことです。
両者の大きな違いは「任意」と「法定」という言葉の違いの通り、後見の内容を自分たちで決められるか否かということです。
例えば、成年後見人は家庭裁判所によって選任され、原則本人の財産管理や身上監護全てにおいて代理権を持ちます。
また、法定後見制度では成年後見人の他に、本人の判断能力に応じて保佐人または補助人が選任されるケースもあります。
保佐人や補助人も、法律に定められた行為や、家庭裁判所から審判を受けた行為に対して同意権・取消権・代理権を行使します。
※同意権:本人が有効な法律行為を行うために同意する権限
※取消権:本人が行った法律行為を取り消す権限
任意後見人と成年後見人・保佐人・補助人の権限の違いは、以下の通りです。
また、任意後見人への報酬については契約の中で定めるため、無報酬で行われることもありますが、成年後見人・保佐人・補助人には専門家が就任することが多く、毎月の報酬がかかります。
法定後見人については、こちらの記事でも詳しく解説していますので、ご確認ください。
法定後見人とは?誰がなれる?わかりやすく解説します
認知症などによって意思能力が低下すると、契約行為をするには後見制度が必要不可欠です。本記事では法定後見人の職務や利用場面、任意後見人との違いについて解説します。任意後見制度でかかる費用
任意後見制度でかかる費用は、以下の3つに分けられます。
任意後見制度でかかる費用
- 任意後見契約の締結にかかる費用
- 効力発生時にかかる費用
- 任意後見人・任意後見監督人への報酬
それぞれについて解説します。
1. 任意後見契約締結にかかる費用
任意後見制度の利用には公正証書の作成が必須ですので、公証役場へ下記の手数料を支払う必要があります。
公正証書の作成にかかる費用
- 任意後見契約書作成費用:11,000円
- 登記嘱託手数料:1,400円
- 法務局に納める収入印紙代:2,600円
- 書留郵便料(登記申請のために公正証書を郵送するための書留料金)
- 正本・謄本の作成手数料:証書の枚数×250円
参考: 4任意後見契約|日本公証人連合会
また、任意後見契約書の作成や、公証役場での手続きを専門家に依頼した場合は、報酬の支払いも発生します。
報酬の相場は専門家によって異なりますが、10〜20万円程度です。
2. 効力発生時にかかる費用
本人の判断能力が低下すると、家庭裁判所に「任意後見監督人選任の申立て」を行いますが、この際にも費用がかかります。
詳細は管轄の家庭裁判所によって異なりますが、東京家庭裁判所の例は以下の通りです。
申立てにかかる費用
- 申立て手数料(収入印紙):800円
- 登記手数料(収入印紙):1,400円
- 郵便切手:3,270円
※申立て後、鑑定が必要となった場合は、別途鑑定費用(10〜20万円程度)がかかります。
参考: 任意後見監督人選任の申立ての手引|東京家庭裁判所(p.6)
3. 任意後見人・任意後見監督人への報酬
任意後見人の後見事務に対する報酬は、任意後見契約で事前に定めておきます。
ただし、任意後見人には身内が就任し、無報酬で後見事務が行われるケースも多くあるようです。
一方で、任意後見制度では必ず第三者の任意後見監督人が選任されるため、任意後見監督人への報酬は必ず発生します。
任意後見監督人への報酬は、月額5,000〜3万円程度とされることが多いようです。
任意後見制度の利用における5つの注意点
任意後見制度は、任意後見人の権限を柔軟に定められることが大きなメリットですが、利用の際には注意したい点もあります。
任意後見制度の利用における5つの注意点
- 任意後見契約を締結するには判断能力が必要である
- 任意後見人には取消権や同意権がない
- 判断能力の低下がなければ効力は発生しない
- 一度申立てを行うと原則取り下げられない
- 一度効力が発生すると原則本人が亡くなるまで続く
では注意点について、それぞれみていきましょう。
任意後見制度7つのデメリットと後悔しないための対策をわかりやすく解説
認知症対策として任意後見制度の利用を検討している方は必見! 任意後見制度にはメリットだけではなくデメリットも存在します。 この記事では、任意後見制度のデメリットやデメリットに対しての対策、手続きの流れや費用相場などをわかりやすく解説します。注意点1. 利用するには本人の判断能力が必要である
任意後見制度を利用するには、本人の判断能力が必要です。
なぜなら、判断能力が低下して意思表示ができない場合は、任意後見契約の締結ができないためです。
契約内容を決めていたとしても、公正証書作成時に公証人による意思確認が行われますので、明確な意思表示が確認できなければ、制度の利用は認められません。
認知症などによりすでに判断能力が低下している場合は、法定後見制度を利用するということになります。
【完全版】成年後見制度とは?わかりやすく解説します
成年後見制度(せいねんこうけんせいど)とは、認知症や知的障害などで判断能力が低下した人の契約や財産管理のサポートを行う制度です。「成年後見人」を家庭裁判所から選任してもらい、本人に代わって様々な手続きを行なってもらいます。この記事では成年後見制度についてわかりやすく説明し、同時に最近注目を浴びている家族信託との比較についても解説します。注意点2. 任意後見人には取消権や同意権がない
任意後見人には、法定後見制度では認められる 「同意権」や「取消権」がありません。
任意後見制度はそもそも、本人が委任者となって、受任者へ特定の行為についての代理権を与える制度であるためです。
よって、もし、本人が任意後見人へ確認せずに法律行為を行ったとしても、それらを取り消すことはできないため、注意しましょう。
同意権や取消権を設定したい場合は、法定後見制度(成年後見・保佐・補助)の利用をおすすめします。
注意点3. 判断能力の低下がなければ効力は発生しない
任意後見制度は、本人の判断能力低下後に効力が発生する制度なので、元気なうちは任意後見人による代理行為はできません。
また、効力発生の基準は「判断能力」にありますので、身体の怪我や不調などがあっても、任意後見契約の効力は発生しないため、注意しましょう。
本人の判断能力がある元気なうちから支援や対策を行いたいという場合には、以下の2つの選択肢があります。
- 財産管理等委任契約
- 家族信託
財産管理等委任契約は、委任者が受任者へ特定の財産管理や身上監護を委任し、家庭裁判所や第三者の関与なく、受任者が本人の支援を行える契約です。
「判断能力はあるが、身の回りのことが不安になってきた」「足腰が不自由で金融機関の窓口に出向けない」などさまざまな事情に合わせて利用でき、判断能力が低下したら任意後見契約へ移行するという形を取ることも可能です。
家族信託は、上述の通り、受託者へ財産を託す形で、本人の財産を柔軟に管理・運用・処分できる制度です。
身上監護については定められませんが、相続対策や税金対策などを本人の代わりに家族が積極的に行っていきたい場合に適しています。
注意点4. 一度申立てを行うと原則取り下げられない
一度、任意後見監督人の選任の申立てを行うと、正当な理由がない限り、取り下げることはできません。
これは主に、本人の保護を図るためです。
よって、任意後見監督人の選任に納得がいかない場合なども、取り下げは許可されない可能性があるため、注意しましょう。
参考: 任意後見監督人選任の申立てをされる方へ|和歌山家庭裁判所
注意点5. 一度効力が発生すると原則本人が亡くなるまで続く
一度任意後見制度の効力が発生すると、原則本人が亡くなるまで、任意後見人による後見事務と任意後見監督人による監督は続きます。
こちらも、任意後見制度が本人の保護を目的としていることが理由です。
つまり、本人に保護が不要な状態にならなければ、制度の利用を中止することはできません。
特に本人が認知症の場合は一度進行すると回復も難しいため、実質本人が亡くなるまで後見が続くこととなります。
一度効力が発生すると、任意後見監督人への報酬は本人が亡くなるまで発生するため、トータルでみると多額の費用がかかることも予測されます。
よって、任意後見制度の利用は、専門家の助言なども得ながら慎重に行いましょう。
任意後見制度にかかる費用はいくらくらい?報酬の相場や手続きなどを詳しく解説
任意後見制度の費用や報酬に関しての相場、制度のしくみや手続きの流れなどが複雑で理解できず悩んでいませんか? この記事では、任意後見制度にかかる費用や報酬の相場、メリット・デメリット、手続きの流れなどについてわかりやすく解説します。まとめ
任意後見制度、任意後見人の役割やできることについて、解説してきました。
任意後見制度は、判断能力の低下に備えて、財産管理や身上監護に関して受任者へ代理権を与えておく制度です。
任意後見人は、家庭裁判所や任意後見監督人の監督のもと、任意後見契約で定めた内容に沿って本人の財産や生活を守ります。
任意後見制度には、本人の認知症による資産凍結を回避したり、適切な医療や介護が受けられたりなどのメリットがありますが、利用の際には公正証書の作成や家庭裁判所への申立てなど、一般の方にとっては慣れない手続きも必要です。
また、本人や家族が何を対策したいか、どんな希望があるかなどによって、家族信託や財産管理等委任契約など、他の制度が適している場合もあります。
任意後見制度を含め、望む将来を実現するためにはどのような対策ができるのか、認知症対策や生前対策の専門家に一度相談してみることをおすすめします。
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