「家族信託を検討しています。 信頼している娘に私の自宅と金銭を管理してもらいたいのですが、娘は海外に住んでいます。 娘に信託をすることは難しいでしょうか?」

最近は、こんなご相談もよくいただきます。

結論として、 海外に住んでいる方を受託者として家族信託をすることはできますが、日本に居住する方を受託者とする場合に比べると、できないことや制約がかかることもあります

では、どのような注意点があるのでしょうか?

冒頭の相談事例をもとに、信託する資産が「預貯金」「不動産」「上場株式」だった場合について解説します。

要約

  • 海外に住んでいる方でも家族信託の受託者になれる
  • ただし預貯金・不動産・上場株式それぞれに注意点がある
  • 海外に住所を移した場合、日本の銀行で新たに家族信託の口座を開設するのは難しい
  • 不動産の家族信託は海外居住者が管理する場合、管理方法に特に注意が必要
  • 上場株式を海外居住者に家族信託することは、極めて難しい
  • 受託者が海外にいる場合は、まずは専門家にご相談を

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【預貯金】海外の受託者に金銭を信託する場合の注意点

家族信託を活用して、金銭を娘さんに信託する場合、娘さんに受託者名義で銀行口座を開設してもらい、相談者(委託者)の預金をその口座に送金して管理をしていきます。

家族信託では、信託財産を管理するために手数料や納税などが発生するため、それらの支払いのためにも預貯金を含めて信託することが一般的です。

家族信託に関する詳細は以下にまとめています。

家族信託は「認知症による資産凍結」を防ぐ法的制度です。認知症が進行し意思能力を喪失したと判断されてしまうと、銀行預金を引き下ろせない、定期預金を解約できない(口座凍結)、自宅を売却できないなどのいわゆる「資産凍結」状態に陥ってしまいます。そのような事態を防ぐために、近年「家族信託」が注目されてきています。この記事では家族信託の仕組みやメリット、デメリットをわかりやすく解説します。
家族信託とは?わかりやすくメリット・デメリットを徹底解説します

受託者の口座として利用する口座は、娘さんが現在使っていない口座があれば、その口座を利用するという選択肢もあります。

そのような口座がなければ、新たに口座開設が必要ですが、娘さんが海外在住の場合はここで問題が生じます。

娘さんが海外居住者の場合、日本の銀行で新たに口座を開設しようとしても住民票を日本に残している等の事情がない限り、対応してくれる金融機関は非常に限られている のです。

今回ご相談いただいた方の娘さんは、幸運なことに日本に住んでいた時に開設した口座を海外に行っても残す手続きをとっていました。

そのため、娘さんと相談し、もともとその口座に入っていた預金を別の口座に移して空にしていただいたうえで、信託管理口座として使用できることになりました。

事例のケースでは上記の形でこの問題を切り抜けることができました。
ところが、もし海外に住所を移していて、国内に使える口座が無い場合は海外から現金を管理する手段がありません。

家族信託の口座の作り方については以下でも解説していますが、金融機関によって取扱い方法や規定が異なるため、事前確認が必須だと言えるでしょう。

家族信託を利用する場合、信託法で受託者は「分別管理義務」を負い、信託された財産と個人の財産とを分別して管理しなければならないとされています。この記事では信託口口座の特徴や口座の開設方法などについてご紹介しますので参考にして下さい。
家族信託の口座(信託口口座)のつくり方について解説

条件によっては信託された財産を管理するための口座の準備・新規開設ができず、その結果、金銭の信託はあきらめざるを得ないこともありうるのです。

【不動産】海外の受託者に自宅や収益物件を信託する場合の注意点

海外に住む娘さんに所有している不動産を信託することも可能です。

信託をすると、不動産の名義人は受託者である娘さんに変わります。

海外居住者の方であっても、日本の不動産の名義人になることは問題ありません

(1)不動産が「自宅」の場合

ご相談者の望みは、 自分が介護施設に入ることになったら自宅を売却して介護資金に充ててほしい というものでした。

娘さんも「自宅の売却が必要になった際は帰国して一連の手続きをします」と約束をしてくれたので、自宅を娘さんに信託する旨を契約に盛り込むことができました。

また、信託する際の登記手続きについては司法書士等の専門家に依頼することが可能です。

(2)不動産が「収益物件」の場合

今回はご自宅を信託財産とするケースでしたが、賃貸アパート等の収益物件を信託財産とする場合はどのような違いがあるのでしょうか。

投資物件になると、賃借人との契約・更新手続きや日々の大家さんとしての仕事もあるため、海外居住者である娘さんを受託者とすることには慎重になるべきと考えられます。

管理会社が入っているかどうかによっても受託者としての業務内容が変わってきます。

管理代行を入れることも含め、管理方法の変更も必要になってくるでしょう。

(3)「納税管理人」の申告手続き

信託をすると不動産の名義人は受託者である娘さんになるので、固定資産税や都市計画税の請求は娘さんに届くことになります。

そのため、海外居住者の方に不動産を信託した後は「納税管理人」の手続きもしっかりとしておきましょう。

納税管理人とは、 不動産の所有者が海外に居住している場合に、その不動産の固定資産税や都市計画税の納付書を所有者の代わりに受け取ったり、所有者の代わりに固定資産税等を納付したりする人のこと をいいます。

家族信託のケースに限らず、海外勤務などのため国内非居住者となる場合に行う手続きのひとつです。

その非居住者の納税地を所轄する税務署長に「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を提出することで税務署が発送する書類が納税管理人宛に送付されるようになります。

確定申告書の際は非居住者の納税地を所轄する税務署長に対して提出します。

そこで、今回は相談者(委託者)を納税管理者として届出をし、委託者が元気なうちは相談者自身で納付書の受取りや納税手続きをする設定にしました。

(4)火災保険の手続き

また、自宅建物の火災保険も委託者から受託者への名義変更が必要です。

保険会社によっては、海外居住者が契約者となることができない会社や、名義変更の際に対面での本人確認が必要となる会社もあります。

信託をする前にどのような手続きになるのかについて確認しておきましょう。

自宅や収益用の不動産を所有している場合、自分でいつまで不動産の管理ができるのか、いざというときには、滞りなく売却して現金化することができるのか、など不安を感じることもあるのではないでしょうか。不動産所有者の場合、家族信託を活用してどのような対策を講じることができるのか、事例を含めて解説します。
【完全版】不動産を家族信託する方法・税金・メリット・デメリットなどを解説

【証券等】海外の受託者に上場株式を信託する場合の注意点

上場株式を信託する場合、家族信託に対応している証券会社に、受託者(娘さん)名義の口座を開設してもらう必要があります。

現在、日本の証券会社の多くは海外居住者の新規口座開設に対応していないため、現状で上場株式を海外居住者である娘さんに信託することは、極めて難しいと言えます。

今後の証券会社のサービス展開に期待していきたいところですね。

家族信託を利用する際、信託財産の中に上場株式を含める場合、どのような手続きをとればよいのでしょうか。上場株式を信託する際には、事前に信託契約書を証券会社で確認してもらう必要もあります。信託契約書に指定の内容を盛り込む必要もあるため、事前の確認が非常に重要となるのです。今回は信託する際の流れや注意点について解説します。
上場株式も家族信託できる!実際の手続きや注意点を司法書士が解説

例えば、娘さんが帰国して国内居住者となった後に手続きを行い、証券等を信託財産に追加することも可能ですが、証券会社での手続き方法には注意すべき点が多数あります。

以下の関連記事もご参照ください。

家族信託を計画しているとき、株式や投資信託などを信託財産にしたいと思っている方も多いのではないでしょうか。その場合には証券会社での手続きが必要となりますが、どのような手順が必要なのでしょう。この記事では、上場株式や投資信託などといった金融商品を家族信託する場合の証券会社での手続きや注意点などについて解説します。
株式や投資信託を家族信託する〜証券会社で必要な手続きを解説

海外居住者を受託者にする場合は相談を

以上「海外に住んでいる家族を受託者として家族信託はできる?」というテーマでお伝えしました。

端的にいえば「海外居住者の方は家族信託の受託者には向かない」ということになりますが「受託者をお願いできる方が海外居住者の方しかいない」ということもあるでしょう。

そのような場合は上記の注意点を踏まえ、海外居住者の方を受託者とする家族信託の組成を検討していきましょう。

以下では「家族信託を検討中だが、受託者になる人がいない時の対応方法」を解説しています。

家族信託の大きな魅力の一つは、「第三者を関与させず、家族の中で、家族にあった財産管理をしていけること」です。しかし、中には「受託者をお願いできる人がいない、、、」という方もいらっしゃいます。今回は、「家族信託を考えているけど、受託者となってくれる人がいないとき」をテーマにお伝えしていきたいと思います。
家族信託を検討しているが、受託者になる家族がいない時の対応方法

今回の事例と同じように、海外にお住まいのお子様への家族信託を検討されている方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

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