昨今、高齢者を狙った詐欺や訪問販売などの悪質商法があとを絶ちません。
訪問販売は全てが悪質とは限らないものの、頻繁に営業担当者から電話があったり、訪問をしてきたりと、迷惑に感じることもあるでしょう。
中には悪質な営業も存在するため、「もし自分の親が被害にあったら……」と不安に思われている人も多いのではないでしょうか。
本記事では、詐欺や悪質商法から高齢の親の資産を守る方法について解説いたします。
加えて、実際にあった事例や被害に遭った場合の相談先を把握し、もしもの際はスムーズに対応できるよう準備をしておきましょう。
要約
- 認知症の人は詐欺や悪質商法のターゲットにされやすい傾向がある
- 認知症の有無に限らず、特殊詐欺被害の85%は65歳以上の高齢者(令和4年集計)
- 悪質商法の中でも特に訪問販売の被害が多い
- 認知症の人の詐欺・悪質商法対策として家族信託が効果的
- 被害に遭った時の相談先は消費者ホットライン・消費生活センター・警察相談ダイヤル
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目次
認知症の人や高齢者が詐欺被害に遭いやすい3つの理由
認知症の人に限らず、高齢者は以下の理由から詐欺や悪質商法の被害に遭いやすいと言われています。
高齢者が詐欺被害に遭いやすい3つの理由
- 悪質業者のターゲットにされがち
- 被害に遭っていることに気づきにくい
- 被害に遭っていることを言い出しにくい
なぜ高齢者は被害に遭いやすいのか、要因を詳しく見ていきましょう。
1.悪質業者のターゲットにされがち
前提として、認知症の発症有無に関わらず、高齢者は悪質商法や詐欺のターゲットになりがちな傾向があります。
なぜなら、高齢者は「お金」「健康」「孤独」 の不安を抱えているためです。
警視庁の報告によると、令和4年に65歳以上の高齢者が被害を受けた特殊詐欺の件数は、17,570件中15,114件でした。
全体の85%以上の被害者が高齢者です。
参考: 警視庁|令和4年における特殊詐欺の認知・検挙状況等について
不安を抱えて生活している中で優しく話を聞いてくれる人が現れると、信用してしまうのは当然の心理でしょう。
加えて、高齢者は家にいる時間が長いため、悪質な電話や訪問に遭遇する確率も高いです。
「ターゲットになりがち」という状況を高齢者自身や家族など周囲の人々がよく理解し、対策する必要があります。
2.被害に遭っていることに気づきにくい
認知症の人や高齢者が詐欺のターゲットとなりがちな要因のひとつに、被害に遭っている自覚の薄さ があります。
詐欺をはたらく人間は、高齢者の不安に寄り添った言動で巧妙に近づくため「自分が被害にあっている」と認識できないのです。
特に認知症の人は、説明を理解していなくても問いかけに対して「はい」と答えてしまう傾向があるため、問題が顕在化しにくいという難点もあります。
参考: 消費者庁|高齢者の消費者トラブルにおける認知機能障害の影響と対応策
また、被害の実態に家族が気づいたとしても、契約時に判断能力が不十分だったことを証明しづらく、解決が困難なケースも多いのが現状です。
詐欺や悪質商法と気づけず、複数回にわたって契約をしてしまった結果、被害が深刻化する場合もあります。
本人は被害に遭っている自覚が薄いため、周囲の人が本人の言動や自宅内の異変などを注意深く観察する必要があるのです。
3.被害に遭っていることを言い出しにくい
認知症の人や高齢者は 「詐欺被害に遭ってしまった」と気づいたものの、 言い出せない ケースもあります。
詐欺被害に遭ったことを恥ずかしいと感じていたり、伝えることで家族に迷惑をかけてしまうかもしれないと考えたりするためです。
近年は一人暮らしの高齢者が増えているため、そもそも「相談する相手がいない」という場合もあります。
万が一被害に遭ってしまったときに備えて、相談できる先をあらかじめ確保しておくと安心です。
被害に遭ってしまったときの相談先については後段にて解説します。
認知症の人や高齢者の被害が多い9つの詐欺・悪質商法事例
認知症の人や高齢者は様々な要因からターゲットにされやすいことがわかりました。
ここからは、実際に高齢者が被害に遭いやすい、詐欺や悪質商法の事例を9つご紹介します。
トラブル事例や手口を把握して、被害を未然に防げるよう備えましょう。
事例1. 電話勧誘販売
電話勧誘販売とは、販売業者が消費者宅に電話をかけ、商品やサービスの購入を促す手法です。
その内容は、食べ物からネット回線契約まで多岐にわたります。
消費者庁の調査によると、認知症の人は健康食品の購入や新聞の購買契約についての相談が多く見られるそうです。
認知症の人は必要か否かの判断がつかないため、販売の電話がかかってくると商品を購入するものの、後日になると全く覚えていないということも多々あります。
留守番電話の設定にしたり、録音機能をつけたりするなどの対策を工夫すると良いでしょう。
参考:
独立行政法人国民生活センター|高齢者の消費者被害
参考:
消費者庁|高齢者の消費者トラブルにおける認知機能障害の影響と対応策
事例2. 訪問販売
訪問販売とは、販売業者が消費者宅を訪問し、商品やサービスを販売する手法です。
中には長時間に及ぶ勧誘や、強引な営業など悪質な事例も多数報告されています。
警視庁の報告によると、令和4年度に検挙された特定商取引等事犯の84.7%が訪問販売に関連した事犯であり、訪問販売による被害の多さがうかがえます。
参考: 警視庁|令和4年における生活経済事犯の検挙状況等について
訪問販売員の要求はきっぱりと断るなど、毅然とした対応が必要です。
とはいえ、電話と異なり対面した状態で勧誘されると断りづらい、という人も多いのではないでしょうか。
そんなときは、インターホン越しに対応するなど、訪問販売員を自宅に入れない工夫をすると良いでしょう。
事例3. 訪問購入
訪問購入とは、自宅に業者が訪れ「不用品を買い取る」と言いながら、高価なものも合わせて買い取る手法です。
「不用品だけを買い取ってもらおうと思ったのに、大切な貴金属まで持っていかれてしまった」といった被害があとをたちません。
訪問購入の被害を避けるポイントとして、突然訪問してきた業者は家に入れないようにするほか、事前に買い取り物品の対象をよく確認することも重要です。
また、クーリング・オフの期間内であれば購入業者に物品の引き渡しを拒むことも可能なので、被害に遭ってしまったら消費者センター等に相談をしましょう。
参考: 独立行政法人 国民生活センター|訪問購入のトラブルが増えています
事例4. 還付金詐欺
還付金詐欺とは、 「還付される税金や保険料がある」といった説明をされ、還付を受け取るための手続きと称し、お金を騙し取る手法です。
電話口で話す人は、有名企業や役所などの関係者に身分を偽っているため、信用してしまいがちです。
還付金詐欺による相談件数は増加傾向にあり、2018年は2,759件だったものが2022年には4,849件にまで増加しています。
対策として、役所等から「お金が返ってくる」という電話がかかってきたら、詐欺の可能性を疑いましょう。
参考: 独立行政法人国民生活センター|還付金詐欺が増加しています!
「返金するために必要」と言われても、銀行名や口座番号等を答えてはいけません。
また、かかってきた電話の情報をうのみにせず、還付金に心当たりがある場合は自身で役所の該当部署に確認をするなど、正確な情報かどうか確かめるようにしてください。
事例5. 金融商品詐欺
金融商品詐欺とは 「必ず儲かる」などの魅力的な言葉とともに、株や投資などの商品購入を勧める手法です。
高齢者は「老後の生活資金が足りるか、老人ホームに入所するための費用はまかなえるか」といったお金の悩みを抱えているため、被害に遭いがちな現状がうかがえます。
なかには、購入の契約をせず電話を切ったにもかかわらず、勝手に購入したことにされ、解約料を請求される悪質な手口も存在します。
「必ず儲かる」などの甘い話は信用しないようご注意ください。
事例6. オレオレ詐欺
オレオレ詐欺とは、親族になりすました人物から電話がかかってきて、トラブルを口実にお金を要求する手口です。
昨今は「オレオレ詐欺」の名が浸透したものの、手口が巧妙化しています。
唐突に電話口で「オレオレ」と言われると違和感を覚える人も多いですが、警察官や弁護士を名乗り「ご子息が事故に遭った」などと言われると、信じてしまいがちです。
事前に家族で合言葉を決めておくなどの対策をしておくと安心です。
また、個人情報や口座の暗証番号などは安易に教えないように徹底しましょう。
事例7. 架空料金請求詐欺
架空料金請求詐欺とは、 「未払いの料金がある」などと伝え、存在しない料金を請求する手口です。
「期日までに支払わなければ強制執行」「信用情報機関に登録」などの不安をあおる文章が書かれているため、利用した覚えがないのに支払ってしまいがちです。
しかし、請求に心当たりがないようであれば、記載されている電話番号等には連絡したり、メールに記載されているURLを開いたりしてはいけません。
また、万が一被害にあってしまったり、悪質業者から新たな請求がきたりしたときに備えて、請求ハガキやメールは証拠として保管しておきましょう。
裁判所などが「コンビニで電子マネーカードを買って、カード番号を教えてください」という案内をすることは絶対にないため、これらの文言にはご注意ください。
参考:
国民生活センター|「利用した覚えのない請求(架空請求)」が横行しています
参考:
警視庁|架空料金請求詐欺
事例8. 点検商法
点検商法とは、無料で自宅の内外を点検したのちに工事契約をさせる手法です。
「老朽化しているので、このままだと住めなくなる」など生活への不安をあおられるため、契約してしまいがちです。
特に「自宅の屋根の点検商法」が多く見られ、2022年に屋根工事について消費生活センターに寄せられた相談は2,885件にのぼり、5年間で約3倍に増加しています。
知らない業者に安易に点検させたり、工事の必要性を迫られてもすぐに契約はしないようにしたりするなどの対策を講じましょう。
参考: 独立行政法人 国民生活センター|屋根工事の点検商法トラブルが増えています
事例9. 送りつけ商法
送りつけ商法とは、注文していない商品を一方的に送り付け、断らなければ購入したものと見なして代金を請求する手法です。
送り付けられた商品は、皇室写真集や叙勲者名簿などが報告されています。
令和3年7月6日に特定商取引法が改訂されたため、売買契約の基づかずに送りつけられた商品はただちに処分することが可能になりました(特定商取引に関する法律 第59条)。
商品を開封したり、処分したりしても金銭の支払いは不要です。
万が一、代金を支払ってしまった場合は消費者ホットラインや警察相談ホットラインに相談をしましょう。
相談先の詳細については後段にて解説します。
参考: 警視庁|悪質商法 ネガティブ・オプション(送り付け商法)
認知症の詐欺・訪問販売対策として有効な家族信託
家族信託は本来、認知症などにより意思能力が低下した人に代わって、家族が財産管理をする制度です。
一方で、使い方によっては、詐欺や訪問販売といった悪質商法の対策として有効なケース もあります。
家族信託は財産の管理権を子などの受託者に委ねる仕組みです。
財産の管理権は受託者に移るため、仮に詐欺や訪問販売の人が訪れても、高齢の親のみでは財産の処分ができない状態になるのです。
ここからは、家族信託でどのように高齢の親の資産を守っていくのか、不動産と預貯金に分けて具体的に解説いたします。
例として、高齢の親を財産の所有者「委託者(兼受益者)」、子を管理者である「受託者」という設定でご覧ください。
家族信託における不動産の詐欺対策
そもそも「なぜ見ず知らずの営業担当者が個人の不動産情報を知っているの?」と疑問に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
その理由は、営業担当者が「登記情報サービス」という検索システムを利用しているためです。
「登記情報サービス」は、インターネット上で誰でも不動産情報が確認できます。
そのため、営業担当者が営業電話を行う際には、登記情報サービスを利用して事前に名義人などの不動産情報を調査します。
不動産の家族信託が詐欺対策となる理由は以下の2つです。
不動産の家族信託が詐欺対策となる理由
- 信託登記により不動産の名義人を受託者に変更するため
- 信託登記により権利証が受託者名義で新しく発行されるため
信託登記により不動産の名義人を受託者にする
不動産を信託登記をすると、営業担当者からの連絡の減少が期待できます。
その理由は、以下の画像のように不動産の名義人が現在の所有者である委託者から受託者に変更されるためです。
営業担当者は「在宅率も高く、アプローチしやすい」と考えて高齢者を狙っています。
登記簿を確認したときに、信託されていると名義人は高齢者でないことが分かるため、連絡がくる確率は下がるでしょう。
信託登記により権利証が受託者名義で新しく発行される
不動産は信託登記をすると、委託者の一存で処分などができなくなります。
なぜなら、信託した不動産の権利証は受託者名義として新たに発行されるため、元々の所有者であった委託者が持っている権利証(登記識別情報)は効力を失うためです。
仮に委託者が不動産の売買や担保権の設定をしようとしても、必ず受託者の確認が必要となります。
万が一委託者が所有している自宅等の売却を持ちかけられても受託者の確認なしに動かすことはできません。
それゆえに、悪質な詐欺等の対策となり得るのです。
家族信託における金銭の詐欺対策
家族信託をすると高齢の親が所有している預貯金を詐欺や悪質商法から守ることができます。
なぜなら、預貯金は信託することで受託者名義の別の銀行口座で管理されるようになるからです。
信託した金銭の引き出しや振り込みができるのは受託者だけであるため、実質的な所有者である受益者(親)は、直接金銭を動かせません。
したがって、詐欺や悪質な訪問販売があったとしても、親の手元には高額な金銭がなく、かつ信託財産から支払いをすることもできないので、被害を未然に防げるのです。
預貯金を信託口口座に移す手続きや注意点については、下記記事にて詳しく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。
家族信託の口座(信託口口座)のつくり方について解説
家族信託を利用する場合、信託法で受託者は「分別管理義務」を負い、信託された財産と個人の財産とを分別して管理しなければならないとされています。この記事では信託口口座の特徴や口座の開設方法などについてご紹介しますので参考にして下さい。家族信託をご検討中の方へ
家族信託の「おやとこ」では、
無料相談を受付中です。
「我が家の場合はどうするべき?」
「具体的に何をしたら良い?」
などお気軽にご相談ください。
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認知症の詐欺対策として家族信託を活用する場合の注意点
家族信託を活用すると、詐欺や訪問販売をはじめとした悪質商法から資産を守ることはできますが、対策可能な範囲には限界があります。
家族信託を認知症の詐欺対策として活用する場合の注意点は次の2点です。
認知症の詐欺対策として家族信託を活用する場合の注意点
- 未来のお金は信託できない
- 認知症発症後は家族信託を契約できない
それぞれ詳細を解説します。
未来のお金は信託できない
信託時点で委託者の手元にある預貯金等の金銭は、信託口口座へ移動させることで信託財産 として管理できます。
しかし、将来的に委託者が手にする予定のお金は信託できません。
具体的には年金や保険の満期金などがあげられます。
特に、年金は定期的にまとまった金額が入金されますが、「年金受給権」は信託財産に該当せず、信託口口座を年金受給口座として指定することも不可能です。
詐欺対策として家族信託を組成し、認知症の親が自由に使える金銭を少なくしても、再び増えてしまっては意味がありません。
そのような場合は、信託契約書に「追加分も信託財産となる旨」を明記しておくと、年金分の資金移動などができるようになります。
年金や保険金が入金されるたびに金銭の移動は必要ですが、詐欺対策としての機能は果たせるため安心です。
認知症発症後は家族信託を契約できない
家族信託は委託者本人が認知症を発症してしまうと契約が結べません。
なぜなら、家族信託は信託契約であるため、委託者本人の意思能力が必要 だからです。
認知症はいつ発症するか予想がつきません。
詐欺対策として家族信託の利用を検討している場合は、早めの行動をおすすめします。
とはいえ、家族信託の存在を知った時点ですでに認知症の疑いが見られるケースもあるでしょう。
家族信託は認知症の症状があっても、判断能力の程度によって契約できる可能性があります。
家族信託の組成に不安がある場合は、家族信託の専門家へご相談ください。
なお、認知症と家族信託の契約については、下記記事にて詳しく解説しているので、こちらもあわせてご確認ください。
家族信託は認知症発症後でもできる?判断基準や始める時期を徹底解説
家族信託は、認知症になったからといって、すぐにできなくなるというわけではありません。 家族信託に関する理解や、判断能力が確認できれば、認知症発症後でも取り組めるケースがあります。家族信託ができるかどうかの判断基準や認知症の程度について、詳しく解説していきます。認知症の人が利用できる家族信託以外の詐欺対策
認知症の人が利用できる詐欺対策は家族信託だけではなく、次のような方法もあります。
認知症の人が利用できる家族信託以外の詐欺対策
- 成年後見制度
- 日常生活自立支援事業
- 自分たちでできる詐欺対策
どのように詐欺対策として有効となるのか、順番に詳しく見ていきましょう。
成年後見制度
親がすでに認知症を発症している場合は、成年後見制度 を利用するという方法があります。
認知症の親が不当な訪問販売により物品を購入してしまったとしても、成年後見制度の利用中であれば後見人が契約を取消すことができます。
ただし、成年後見制度を利用するためには、家庭裁判所への申立てが必要です。
申立てをし、実際に後見が開始されるまでには時間を要します。
また、家庭裁判所の監督下にあるため、資産の使い道が限られる点や、後見人・後見監督人への報酬など、永続的な費用が発生する点もネックです。
成年後見制度は家族信託と異なり、認知症発症後でも利用できる制度ですが、仕組みやメリット・デメリットをしっかり理解したうえで利用するようにしましょう。
成年後見制度の詳細については下記記事にて詳しく解説していますので、こちらをご確認ください。
【完全版】成年後見制度とは?わかりやすく解説します
成年後見制度(せいねんこうけんせいど)とは、認知症や知的障害などで判断能力が低下した人の契約や財産管理のサポートを行う制度です。「成年後見人」を家庭裁判所から選任してもらい、本人に代わって様々な手続きを行なってもらいます。この記事では成年後見制度についてわかりやすく説明し、同時に最近注目を浴びている家族信託との比較についても解説します。日常生活自立支援事業
認知症の人が詐欺や悪質商法の被害を避ける対策のひとつとして、日常生活自立支援業 の利用があげられます。
日常生活自立支援とは、認知症高齢者をはじめとした「ひとりでの契約・判断に不安を抱えている人やお金の管理に困っている人」を支援する事業です。
社会福祉協議会によって行われており、専門員や生活支援員がサポートしてくれます。
詐欺や悪質商法などの対策として、利用できるサービスの内容の例は次のとおりです。
日常生活自立支援事業のサービス例
- 契約を結ぶときの相談
- 商品購入に関するクーリング・オフ制度等の利用手続き
- 通帳やハンコなど希望する重要書類の預かり
上記のサービスを利用するためには、社会福祉協議会での相談が必要です。
家族などの本人以外によるお問い合わせも可能なので、相談やサービスを希望する場合は、お住まいの地区の社会福祉協議会へご連絡ください。
参考: 全国社会福祉協議会|ここが知りたい日常生活自立支援事業なるほど質問箱
自分たちでできる対策
制度やサービスだけでなく、自分たちで被害に遭わないよう工夫できるポイントもあります。
具体的な防衛策の例は以下のとおりです。
自分たちでできる詐欺対策
- 電話に録音機能をつける
- インターホンやドアチェーン越しに対応する
- ひとりで判断して購入や契約をしないよう話し合う
警視庁の調査によると、特殊詐欺に用いられるツールの約9割は電話であることが分かっています。
参考: 警視庁|令和4年における特殊詐欺の認知・検挙状況等について
録音機能をつけておくと、万が一の場合の証拠になるだけでなく、営業担当者への警告にもなるため、セールス目的の電話などを減らす効果が期待できます。
訪問販売に関しては営業担当者を自宅内に入れず、インターホンやドアチェーン越しで会話するなどの対応が効果的です。
また、詐欺や悪質商法が疑われる事態が発生したら、1人で判断せずに家族や支援者に相談するよう徹底しましょう。
制度やサービスと合わせて、自分たちでもできる限りの対策をすると安心です。
認知症で詐欺や悪質商法の被害にあったら契約は無効にできる?
結論から申し上げますと、認知症の人が行った「契約行為」は無効にできます。
民法にて「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする」と定められているためです(民法第3条の2)。
参考: 法務省|民法の一部を改訂する法律(債権法改正)について 新旧対照条文
例えば、高齢の親が自宅を売却する契約をしてしまったとしても、契約時点で認知症であれば無効にできます。
ただし、契約を無効にするためには「契約日時点で認知症であったことの証明 」が必要です。
具体的には病院の診療記録や介護保険主事意見書などが証拠にできます。
とはいえ、「契約を無効にしたくてもどのような手順で進めるのか分からない」という方も多いでしょう。
詐欺や悪質商法の被害にあってしまったら、まずは次章で紹介する機関にご相談ください。
認知症によって詐欺・悪質商法被害に遭ってしまったときの相談先
認知症によって詐欺や悪質商法の被害に遭ってしまった場合の相談先は、以下の3つがあります。
詐欺や悪質商法被害相談先
- 消費者ホットライン
- 消費生活センター
- 警察相談ダイヤル
どのような状況のときにどこに相談するべきか、具体的な内容を見ていきましょう。
相談先1. 消費者ホットライン
詐欺や悪質商法などの被害に遭ったとき、どこに相談するべきか分からない場合は、まずは「消費者ホットライン 」に電話をしましょう。
「188」の3つの数字をダイヤルするだけで簡単にかけられます。
通話料はかかるものの、相談に関する料金は無料です。
消費者ホットラインは、相談者の住所から近くにある消費生活センターや消費生活相談窓口を探し、案内してくれます。
被害に遭った際、初手に迷ったら消費者ホットラインに相談すると良いでしょう。
相談先2. 消費生活センター
被害に遭ったとき、最寄りの消費生活支援センター が分かっている場合は、はじめからそちらに相談するとスムーズです。
消費者ホットラインを挟まずに相談できるため、ひとつ手間が減ります。
消費生活センターは、全国の都道府県および市町村に約850カ所あり、国家資格を持った消費生活相談員や専門的な知識を有した人物に相談が可能です。
法律に基づいた解決のアドバイスをくれたり、必要に応じて事業者との間に入り斡旋を図ってくれたりするケースもあります。
電話だけでなく、センターで直接相談もできるので、万が一に備えてお近くの消費生活センターを把握しておくと安心です。
相談先3. 警察相談ダイヤル(#9110)
被害にあったことを警察に相談したい場合は「警察相談ダイヤル 」を利用しましょう。
不安に感じていることや困っていることを電話で相談でき、内容に応じて相談窓口を案内してくれます。
電話ではなく警察署を訪れて直接相談することも可能ですが、「いきなり警察に行くのは気が引ける」という場合もあるでしょう。
そんなときは「#9110」に電話をかけ、まずは警察相談ダイヤルで相談するのがおすすめです。
なお、警察への緊急通報である「110」と番号が似ているため、かけ間違いにはご注意ください。
認知症の人は詐欺などの被害に遭いやすい!事前の対策と相談先の確保を!
認知症の人は判断能力が低下しているため、詐欺や訪問購入のターゲットにされがちです。
2025年には65歳以上の5人に1人が認知症になると予測されており、高齢な親を持つ人は不安の種のひとつでしょう。
そんな不安を取り除くためには、どのような手口が存在するのか、万が一被害に遭ってしまったときはどうすればよいのかを把握し、事前に対策を立てることが重要です。
家族信託は資産の凍結を防ぐ認知症対策ですが、詐欺や悪質商法などの被害から資産を守る効果もあります。
認知症を発症したときの詐欺や悪質商法対策の選択肢として、家族信託が有効な手段であると覚えておきましょう。
弊社には家族信託に詳しい専門家が多数在籍しており、初回相談は無料となっていますので、ぜひお気軽にご連絡ください。
家族信託をご検討中の方へ
家族信託の「おやとこ」では、
無料相談を受付中です。
「我が家の場合はどうするべき?」
「具体的に何をしたら良い?」
などお気軽にご相談ください。
年間数千件のご相談に対応中。 サービス満足度96%の「おやとこ」が真心を込めて丁寧にご対応します。