大切な人を亡くした後、避けて通れないのが遺品整理です。
しかし、いつから始めるべきか、どのように進めていけばよいのか悩まれる方も多いのではないでしょうか。
故人を偲ぶ気持ちと現実的な問題が交錯する中で、最適な時期を見極めることは重要です。
この記事では、遺品整理を始めるベストなタイミングや進め方、注意点について詳しく解説します。
目次
遺品整理とは
「遺品整理」という言葉は耳にされたことがあっても、具体的にどのようなもので、なぜ必要なのか、詳しくご存じない方もいらっしゃるかもしれません。
遺品整理の定義と目的

亡くなった方(故人様)が残された持ち物や財産を整理し、必要に応じて分類・処分・保管する一連の作業のこと です。
単に物を片付けるだけでなく、故人様の人生の痕跡に向き合い、残されたご家族様が新たな生活に進むための重要なプロセスでもあります。
遺品整理の主な目的は、故人様の生前の意思を尊重し思い出の品を適切に引き継ぐこと、不要な物を処分して新しい生活環境を整えること、そして重要書類や財産関係の書類を見つけ出し諸手続きをスムーズに進めることです。
また、故人様との別れを受け入れ、悲しみのプロセスを進める心理的な意味も持っています。
遺品整理が必要となる背景
現代社会において、遺品整理が大切な課題となっている背景にはいくつかの社会的要因があります。
核家族化が進み、親と子が離れて暮らすことが一般的になりました。
そのため、親が亡くなった後に子どもが実家に戻って大量の遺品を整理しなければならない状況が増えています。
また、一人暮らしの高齢の方が増えていることも課題です。
単身世帯の場合、遺品整理を手伝ってくれる家族が少なく、少人数で多くの作業をこなさなければならないケースも珍しくありません。
賃貸住宅の場合は短期間での退去が求められることが多いほか、持ち家の場合も空き家の防犯・防災上の問題や固定資産税の負担など、さまざまな課題が生じます。
こうした社会変化を背景に、遺品整理は今や個人の問題を超えた社会的課題となっており、計画的かつ効率的な対応が求められています。
遺品整理を始めるタイミング
遺品整理をいつから始めるべきかは、多くの方が直面する悩みのひとつです。
状況に応じた適切なタイミングを見極めることが重要です。

葬儀直後(亡くなってから1週間以内)
葬儀直後は遺族にとって精神的にも身体的にも負担が大きい時期 です。
この時期に本格的な遺品整理を始めることはあまりおすすめできませんが、一部の作業については早期に対応する必要があります。
具体的には、葬儀や各種手続きに必要な情報が含まれる可能性のある財布や手帳、スマートフォンなどの身の回り品の確認や、生鮮食品や植物など時間の経過とともに劣化するものの処分などが該当するでしょう。
ただし、思い出の品などの処分は避け、必要最低限の対応にとどめることをおすすめします。
諸手続き後(亡くなってから1週間後~1ヵ月程度)
葬儀が終わり、最初の緊急的な諸手続きが一段落した時期は、少しずつ遺品整理に着手し始める適切な時期です。
この時期には、相続や各種名義変更に必要な書類の確認と整理を行います。
預貯金通帳、保険証書、不動産の権利証などの財産に関する書類を整理し、公共料金や定期購読、各種会員権などの解約や名義変更手続きも進めていきます。
生活用品については少しずつ整理を始められますが、感情的に整理が難しい思い出の品は後回しにすることも検討されてもよいでしょう。
賃貸住宅の場合は、退去期限も考慮して計画を立てる必要があります。
四十九日法要後(亡くなってから2~3ヵ月程度)
四十九日法要が終わった後は、本格的な遺品整理を始めるのに適した時期 と考えられています。
この頃になると最初の強い悲しみからは少し距離を置けるようになり、比較的冷静な判断ができる方も多いでしょう。
この時期の遺品整理は、衣類や日用品、家具などの生活用品の仕分けが中心です。
「家族や親族に形見として渡すもの」「寄付や譲渡するもの」「処分するもの」などにカテゴリー分けしながら進めていきましょう。
価値のあるものは専門家に相談したり査定を依頼するほか、写真やアルバム、手紙などの思い出の品はデジタル化して保存するなど、場所を取らない形で残す方法もご検討されてみてはいかがでしょうか。
相続税の申告前(亡くなってから7~8ヵ月程度)
相続税の申告期限は被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。
申告が必要な場合は、申告期限の1~2ヶ月前までに遺品整理を完了させることが望ましいでしょう。
この時期に重要なのは、相続財産の確定に必要な書類や資料を揃えることです。
不動産の評価額を確認するための書類、預貯金や有価証券の残高証明書、借金や債務の証明書など、財産に関する一通りの情報を整理して申告の準備を進めます。
また、遺産分割についての話し合いも本格化するため、それに合わせて遺品の最終的な行き先を決定することも欠かせません。
特に価値のある美術品や骨董品、不動産などは相続税評価額にも影響するため、専門家のアドバイスを受けながら対応しましょう。
遺品整理を始める時期の見極め方
遺品整理の開始時期は一般的なガイドラインはあるものの、実際には様々な要因によって最適なタイミングが変わってきます。

遺品の量や種類
遺品整理を始める時期を見極める上で、まず考慮すべきは遺品の量や種類です。
長く同じお家に住んでいらっしゃった方は、何十年もかけて集められた物がたくさんあるため、整理するのに何ヶ月もかかることがあります。
また、貴金属や美術品、骨董品などがある場合は、その価値を正確に判断するために専門家に見てもらう必要があるほか、パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器に保存されたデータの整理も、ある程度の時間を要するでしょう。
そして忘れてはならないのが、すぐに対応しなければならないものの存在です。
ペットや植物の世話、冷蔵庫の中の食品、使いかけの薬品などは早急に対処する必要があります。
これらは他の遺品よりも先に対応することが大切です。
作業者の年齢・人数
遺品整理を行う作業者の条件も開始時期を決める重要なポイントです。
作業者の年齢や健康状態、人数などによって作業効率や進行速度が大きく変わってきます。
ご高齢の配偶者様が一人で行う場合とお若いお子様方が複数で行う場合では、体力的な負担やスピードが大きく異なります。
お客様が主な作業者となる場合は、より長期的な計画を立て、無理のないペースで進めることが大切 です。
また、一人で行う場合は精神的な負担が大きく、複数人で行う場合は意見の相違が生じる可能性もあります。
特に思い出の品の取り扱いについては事前に話し合いの機会を設けることが重要です。
さらに、作業者が故人の自宅から遠方に住んでいる場合は、まとまった休暇を取得して集中的に作業を行うか、地元の専門業者に依頼するなどの工夫が必要となります。
遺品整理の大まかな流れとスケジュールの立て方
遺品整理を効率的に進めるためには、全体の流れを把握し計画的にスケジュールを立てることが欠かせません。
遺品整理の大まかな流れ
遺品整理の全体的な流れは、大きく分けて以下のような段階で進んでいきます。
- 下見と全体の把握を行う
- 重要書類や貴重品を確保する
- 仕分け作業を行う
- 不用品を処分する
- 清掃と原状回復を行う

これらの流れは状況に応じて並行して進めるケースもありますが、優先順位を決めて進めていくように心がけましょう。
遺品整理のスケジュールの立て方
効率的に遺品整理を進めるためには具体的なスケジュールを立てることが重要です。
以下に、一例を載せてみました。
- おおよその整理期間を見積もる
- 作業日を定める
- 優先順位を決める
- 役割分担を決める
- (必要があれば)外部サービスを手配する
スケジュールを立てる際のポイントは柔軟性を持たせることです。
思った以上に時間がかかる作業が発生するケースも少なくないため、余裕を持った計画を心がけましょう。
遺品整理の開始時期が遅れるデメリット
遺品整理はできるだけ計画的に進めることが望ましく、開始時期が遅れることによって様々なデメリットが生じる可能性があります。

賃料や固定資産税などが生じる
遺品整理の開始を遅らせることで最も直接的に影響するのが継続的に発生する費用です。
賃貸住宅の場合、契約が解除されるまでは賃料の支払い義務が続きます。
持ち家の場合も固定資産税や都市計画税などの税金を支払い続けなくてはなりません。
さらに光熱費や通信費なども契約が解除されていなければ基本料金が発生し続けます。
これらの費用は遅れるほど積み重なり、最終的には相続財産を減少させる恐れがあるため注意が必要です。
相続や相続税の申告に支障が出る
遺品整理の遅れは相続手続きや相続税の申告にも影響を及ぼします。
これらの手続きには期限があり、必要な書類や情報が揃わないと手続きの遅延や不備が生じるリスク があります。
相続手続きに必要な書類は遺品の中から見つけ出す必要があることが多く、見つからない場合は再発行手続きをしなくてはなりません。
相続税の申告は10ヶ月以内に行う必要があり、期限に間に合わないとペナルティが課される恐れがあります。
また、遺産分割協議も遺品整理の進行状況に影響されます。
故人の財産の全容が明らかにならないと公平な分割の話し合いが進められません。
空き巣や火災などのリスクが高まる
遺品整理の開始が遅れ故人の住まいが空き家状態で放置されると、防犯・防災上のリスクが高まります。
空き家は空き巣や不法侵入の標的になりやすく、特に貴重品が残されている場合は被害が大きくなる可能性があります。
また、電気配線の老朽化や電化製品の不具合などによる火災リスクも無視できません。
火災が発生した場合は近隣への延焼の危険性もあります。
さらに、空き家の放置は建物の劣化を早め、最終的には修繕費用の増加につながります。
遺品整理をスムーズに進めるためのポイント
遺品整理はできるだけ効率的に進めることが理想でしょう。
ここでは、スムーズに遺品整理を進めるためのポイントについて解説します。

専門業者への依頼
遺品の量が多い場合や、遠方に住んでいて頻繁に通えない場合、体力的に難しいと感じられる場合などは、専門の遺品整理業者に依頼することもご検討されてみてはいかがでしょうか。
遺品整理業者は、遺品の仕分けから不用品の回収、清掃まで一括して対応してくれるケースが多く、短期間で効率的に整理を進められます。
特に貴重品や思い出の品の取り扱いに配慮した業者も増えているので、事前に相談してサービス内容を確認することをおすすめ します。
業者を選ぶ際のポイントは、料金体系の明確さ、実績や口コミ、対応の丁寧さなどです。
複数の業者から見積もりを取り、比較検討することが大切です。
家族・親族との連携
遺品整理は一人で抱え込まず、家族や親族と協力して進めることが重要です。
特に思い出の品の取り扱いや重要書類の確認などは、複数の目で確認することで見落としを防げます。
また、事前に役割分担を決めておくのもよいでしょう。
たとえば、書類整理が得意な人、力仕事ができる人、判断力のある人など、それぞれの特性を活かした分担を考えるのもひとつの手です。
また、遺品の処分方法や形見分けについて意見の相違が生じることもあるかもしれませんが、オープンなコミュニケーションを心がけることで解決策を見つけられるでしょう。
事前の計画と準備
遺品整理を始める前に、全体的な計画を立てておくことが重要です。
部屋ごとや物の種類ごとに整理する順序を決め、必要な道具や資材も事前に用意しておくと作業がスムーズに進みます。
具体的には、段ボール箱や大きめのゴミ袋、ラベルやマーカーなどの文具、手袋やマスクなどの防護具が必要です。
また、自治体のゴミ収集日や粗大ゴミの出し方なども事前に確認しておくとよいでしょう。
写真撮影も有効な手段です。
遺品の全体像を写真に残しておくことで、後から「あのものはどこへ行ったのか」といった疑問が生じた際の確認がしやすくなります。
特に価値のありそうなものや思い出の品は、処分前に写真を撮っておくのをおすすめします。
まとめ
遺品整理は故人への敬意を払いながら、家族が新生活へ進むための大切なプロセス です。
適切なタイミングで計画的に進めることで負担を軽減できます。
一般的には葬儀直後は最低限の対応のみ、1ヶ月後から少しずつ着手し、四十九日法要後に本格的な整理を始めるのがよいでしょう。
相続税申告がある場合は申告期限の1~2ヶ月前までに完了させることをおすすめします。
ただし、遅れると費用負担や相続手続きへの影響、防犯上のリスクが生じる可能性があるため、遺品の量や作業者の状況に応じて判断が求められます。
スムーズに進めるためにも、必要に応じて専門業者を活用するほか、家族との連携、事前の計画を心がけましょう。